峠の釜めし
テンプレート:Vertical images list 峠の釜めし(とうげのかまめし)は、群馬県安中市松井田町にある「荻野屋」が製造・販売する駅弁である。
益子焼の土釜に入れられているという点が特徴の駅弁で[1]、「日本随一の人気駅弁」と評されたこともある[1]。
登場の経緯
荻野屋は1885年、横川駅の開業時[注釈 1]に創業した[2]。初期の駅弁は、おにぎり2個に沢庵漬けを添えたもので、1包み5銭であった[1]。
戦後、旅行者数も増えていったが、この頃の駅弁はどこも似たような内容であったため、飽きられていた[1]。荻野屋も例外ではなく、全列車が横川 - 軽井沢間の碓氷峠通過に際しED42形電気機関車への付け替えが必要なために長時間停車する駅という立地にもかかわらず、業績が低迷していた[1]。そこで、当時の4代目社長であった高見澤みねじは、停車中の列車に乗り込み、旅行者に駅弁に対する意見を聞いて回った[1]。意見の大半は「暖かく家庭的で、楽しい弁当」というものであった[1]。
高見澤と、当時社員で後に副社長となる田中トモミ[注釈 2]は、その意見をどのようにしてそれを駅弁に反映するかを考え、弁当と一緒に販売する緑茶の土瓶に着目した[1]。当時の駅で販売されていた緑茶の土瓶は陶器製であったが、陶器は保温性にも優れていた上、匂いも移らない[1]ため、「暖かい」「楽しい」という要望をクリアできる。さらに、「中仙道を越える防人が土器で飯を炊いた」という内容の和歌にヒントを得て[1]、早速益子焼の職人に相談し、一人用の釜を作成することにした。
こうして、当時の「駅弁=折り詰め」という常識を破り[1]、1958年2月1日から販売が開始されたのが、峠の釜めしである[1][注釈 3]。
商品概要
直径140mm、高さ85mm、重量725gの益子焼の釜に入った薄い醤油味の出汁による炊き込みご飯である。
釜
栃木県芳賀郡益子町の窯元つかもとで製造されており、釜の上半分の上薬が塗ってある茶色の部分に「横川駅」「おぎのや」という文字が刻まれている。釜の上には厚さ5mmほどの素焼きの蓋が付いており、さらにその上に包装紙が被せられ、紐で割り箸とともにくくりつけてある。
この釜を持ち帰れば家庭でも実際に1合の御飯を炊くことができ、おぎのやの公式サイトでも炊き方が紹介されている。
食べ終わった容器(釜)は、不要な場合はおぎのやの各店舗に持ち込めば回収してくれる。一部店舗では、空容器の回収ボックスもある。
- 店舗内で供された物のうち一部の容器は洗浄後に再利用されるほか、リサイクルも進められている[注釈 4]。
具
鶏肉・ささがき牛蒡・椎茸・筍・ウズラの卵・グリーンピース・紅しょうが・栗・杏[3]。
沿革
当時としては画期的だった温かい駅弁であった[注釈 5]こと。文藝春秋のコラムに取り上げられたことから、徐々に人気商品となり、その後の隆盛へとつながるきっかけとなった[注釈 6]。1967年には、フジテレビジョン系テレビドラマ『釜めし夫婦』(池内淳子主演)のモデルにもなった。
この時期前後から、モータリゼーションの進展を受けて、各地の駅弁業者は軒並み苦戦を強いられるようになる。しかし同社では、1962年にこれを逆手にとって国道18号沿いに「峠の釜めしおぎのやドライブイン横川店」を開業。釜めしなどの商品を休憩者に販売することで鉄道への依存を減らしており、現在の同社の販売戦略の基礎となった。1987年時点での1日平均の販売実績は1万個で[1]、多いときには2万5千個の売り上げがあったという[1]。このうち、駅弁としての販売比率は40パーセントほどであった[1]。もちろん、列車での売り上げも多く、3分停車でホームにあった410個が全て売れたこともあったという[4]。
1997年9月30日限りで信越本線横川 - 軽井沢間が廃止されたことに伴い、横川駅での販売量は往時に比べて低い割合に転位することになる。
購入できる店舗
2010年現在の購入可能店について以下に記載する。
- その他の施設
- 碓氷峠鉄道文化むら・峠の湯アプト
また百貨店やスーパーマーケットが開催する「駅弁フェア」などのイベントの定番商品として日本全国に出荷実績がある。
関連商品
2007年に横川 - 軽井沢間廃止10周年として鉄道模型メーカーの関水金属からNゲージで峠の釜めしの駅構内販売用ワゴンと販売員を模した人形が発売された。
脚注
注釈
出典
参考文献
雑誌記事
外部リンク
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