ナガイモ
テンプレート:生物分類表 テンプレート:栄養価 ナガイモ(長芋)は、ヤマノイモ科ヤマノイモ属の Dioscorea batatasの肥大した担根体の通称である。漢名の山薬(さんやく)、薯蕷(しょよ)、英語名のチャイニーズヤム (Chinese yam) とも呼ばれる。
「自然薯」とも呼ばれる「山芋(ヤマノイモ)」は別種である。
品種
中国原産で、日本へは17世紀以前に渡来した。最も高緯度で栽培されるヤムイモのひとつである。雌雄異株のつる植物で、夏に花を付ける。
シノニムとして D. polystachya、D. opposita などがあるが、通常は芋の形状その他によって数種類の品種群に分類されている。ただし、品種として完全に区別されているわけではなく、たとえばナガイモ群からツクネイモが収穫できることもある。
- ナガイモ群…円柱状の芋を持つ。芋の粘りは少なく、きめも粗いが、生産は比較的容易。主な産地は青森県上北地方、北海道帯広市、幕別町、長野県中信・北信地方など。近年では、ヒゲ根や毛穴がほとんどなく、皮ごと調理可能なナガイモが品種登録されている。
- ツクネイモ群…芋は丸みを帯びる。粘り、きめの細かさが最も強く、ヤマノイモ(自然薯)と並び美味とされる。主な産地は兵庫県丹波市・篠山市(黒皮種の丹波ヤマノイモ)、奈良県・三重県(白皮種の大和イモ、伊勢イモ)。
- イチョウイモ群…いわゆる大和芋。芋は扁形で、下に広がる(イチョウ形)。ナガイモよりムチンを多く含み、粘りが強い。主な産地は群馬県太田市尾島地区。
ほかに、ヤマトイモという呼び名もあるが地域によって意味が異なり、ツクネイモまたはイチョウイモをさす。 小売店などでナガイモをヤマトイモあるいはヤマノイモと銘打って販売していることもあるが、ヤマイモ(自然薯)と混同している場合もある。
また、ナガイモはしばしばヤマノイモ、ヤマイモとも呼ばれるが、ヤマノイモは別種 Dioscorea japonica の標準和名である。
利用法
生食
ヤマノイモ同様、長く伸びる根茎を食用にする。すりおろしてとろろとしたり、細く刻んで生食する方法が代表的である。これは、熱に弱い酵素であるジアスターゼ(アミラーゼ)を多く含み、生食が適することによる。すりおろしたとろろは麦とろご飯、山かけ、とろろ蕎麦などに用いられ、焼き上がりをよくするためにお好み焼きなどの生地に混ぜられることもある。また、通常の芋のように適度な大きさに切り分けて煮込む用法もある。
かるかん、薯蕷饅頭など、和菓子の材料としても用いられる事がある。中国料理では、山芋の飴炊きという、大学芋や関西の中華ポテトに類似した点心が作られる。
ヤマノイモ同様、むかご(葉の付け根に生える芽)も食用になる。 サトイモやサツマイモと異なり、ナガイモ・ヤマノイモのどちらも生食可であることは特記すべき特徴である。
薬用
ナガイモ、あるいはヤマノイモの皮を剥いた根茎を乾燥させたものを山薬といい、生薬として利用される。
日本薬局方にも収録されている生薬で、滋養強壮、止瀉、止渇作用があり、八味地黄丸(はちみじおうがん)、六味丸(ろくみがん)などの漢方方剤に使われる。また胃の保護にもなり整腸効果もあると考えられている。
ハーブティーにも使われる。ハーブとしては英語名のチャイニーズヤムで呼ぶことが多い。
なお、「山薬」という漢名は字に意味はなく、避諱のため「薯蕷」を似た発音の字で書き換えたものである。元は薯蕷という名であったが、唐の代宗の名「豫(預)」を避けて「薯薬」となり、北宋の英宗の諱「曙(薯)」を避けて「山薬」となった。
ギャラリー
脚注