山川純一
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山川 純一(やまかわ じゅんいち)は、日本の漫画家。男性。愛称は「ヤマジュン」。ゲイ雑誌『薔薇族』で1980年代に活動した。代表作は『くそみそテクニック』や1991年に実写映画化した『海から来た男』など。「山川純一」は『薔薇族』編集長の伊藤文學が付けたペンネームであり[1]、本名は不明。生没も不明。
作風
過剰なセックスアピールや、ギャグとも取れる強引なストーリー展開を作劇上の基本スタイルとし、なおかつ時代劇やミステリー、第二次世界大戦などのさまざまな題材を手広くゲイと融合させアレンジしている。スタイルのよい長髪・面長の男性キャラクターが登場するのも特徴で、これは後述するように薔薇族での掲載が打ち切りとなる原因となった[2]。
略歴
1982年の掲載開始以来、1988年まで足掛け6年にわたり『薔薇族』で読み切り作品を連載しており(薔薇族増刊の『バラコミ』にも掲載)、単行本も3冊出されていたが、それ以降は少なくとも山川純一名義でのマンガは一切描いておらず、消息は明らかではない(連載が終了した理由は後述)。また、『ヤマジュンパーフェクト』の発刊後も、特にコメントなどは発表されていない。
『薔薇族』の編集長である伊藤文學によると、山川は『薔薇族』の創刊の「5年後」に突然原稿を持ち込みに現れた[3][注釈 1]。山川は本名はおろか、住所や連絡先などの個人情報を一切明かさないばかりでなく[3]、事務所内にも立ち入らず、玄関先で用事を済ませるとすぐに帰ってしまうので、伊藤も山川から詳しい話を聞いたことがなかった[2]。年齢は持ち込み当時約30代後半[2]、「線が細く根暗な青年。ひっそりと暮らしている風」「悪く言えば貧相」[2]「ゲイにはもてないタイプ」[2]という印象で、作品の持ち込みを始めた当時は生活に貧窮していた様子が窺えたという。また伊藤は、山川を実際のハッテン場に入り浸ったり、男性と寝た経験のある人物ではなく [3][4]、作品もほとんど妄想で作ったものと推測しており、それがむしろ彼の作品を面白くしたのではないかと評している[2]。
伊藤によると、連載当時の『薔薇族』のスタッフからは、山川の作品はひどく嫌われており(当時のゲイ漫画では筋肉のしっかり付いた骨太な男体、男臭い描写が好まれる風潮があり、山川の作品に登場する長髪・面長な男性は「少女漫画のようだ」という理由でスタッフに好まれなかった[1][2])、たびたび連載を中止してほしいとスタッフから要請があったため、連載を中止せざるを得なかったという[4]。しかし、当時『薔薇族』からの原稿料のみで生活を立てていた[4]という山川を慮った伊藤は、作品の掲載がないときにも原稿料を支払っていたが、却ってそれを気にしたためか、山川はそれ以降姿を現さなくなった[4][注釈 2]。
山川の作品は1986~1988年の間に3冊の単行本としてけいせい出版から出版されたが、その後けいせい出版が倒産すると、大量の返品された単行本を伊藤の会社である第二書房が買い取ることになった。伊藤は、返品の山となった山川の単行本を見て呆然としたと述懐しているが、その後じょじょに売れ始め、2~3年のうちに返品された単行本は完売したという[4]。
伊藤は現在の山川について「消息は不明であり、もう亡くなっているかも知れない」と死亡説に触れている[3]が、その根拠について、当時の薔薇族の読者らの中に自殺で亡くなった弱い人が多くいたためである、と述べている[2]。2013年現在の年齢は、生きていれば60代である[2]。
インターネットの掲示板などで、山川と尾瀬あきらの画風が似ていることから、山川と尾瀬とは同一人物であるという説が流れていたが、尾瀬は否定している[注釈 3]。レディコミ作家辻あさ美の画風がよく似ていることから同一人物説も流れているが、特に確証はなく、辻あさ美からも特にコメントは出ていない。
インターネット上での広がり
10年以上にわたって特に大きな話題になることのなかったヤマジュン作品が再び脚光を浴びたのは、インターネット掲示板のあやしいわーるど@暫定 (暫定退避)において2002年2月から7月ごろに匿名投稿者が山川の作品『くそみそテクニック』からの1ページをスキャンし、アップロードしたことが発端であった[注釈 4]。本物のゲイともかけ離れた、荒唐無稽とも思える内容や台詞回しが笑いを誘い、一部の閲覧者の間で話題となっていた。
2003年3月ごろ、画像掲示板群であるふたば☆ちゃんねるに山川の作品が公開され、ブームの兆しを見せる。ほぼ同時期、さらに利用者数の多い匿名掲示板群である2ちゃんねるにも飛び火し、笑えるネタとして浸透、認知度が飛躍的に高まった。
作品中の台詞である「ウホッ! いい男……(道下正樹)」「やらないか(阿部高和)」は、たちまちネット上で流行語となり、「ヤマジュン語」と呼ばれ、「ウホッ」という言葉がホモセクシュアルを指す隠語として使われるようになるなど、2ちゃんねるのみならず、あらゆるネット・コミュニティにおいて一大ムーブメントを巻き起こした。
人気の上昇に伴い、国立国会図書館で当時の『薔薇族』を探し、掲載作品をサルベージする(掘り起こす)者が現れ、ほとんどの作品がネット上に違法公開され、ブームは加速してゲーム、Flash、画像コラージュ、アスキーアートなどの二次創作が活発に製作されたほか、オンリーイベントも催された。最終的にはファンによる復刊ドットコムへの復刊運動も発生し、実際に『ウホッ!! いい男たち ヤマジュンパーフェクト』というタイトルで今までの単行本や未収録作品をまとめた本が発売され、漫画としては4800円と高額でありながら初版1000部・第2版400部が完売[3]し、2010年現在で第9版まで重版されている[5]。漫画『もう、しませんから。』では、女性漫画家柚月純の部屋に『ヤマジュンパーフェクト』らしき本が置かれている様子が描かれている。
著作一覧
2006年11月に、『薔薇族』が使用していた事務所の引き払いの際、山川の35作品のうち、『裏切り』『美しき野獣』『快楽の罠』など13作品の原画が23年ぶりに発見された。それぞれの作品は保存状態も良好であったため、インターネットオークションに掛けられファンに売却されることとなった[6]。取引開始価格は当時の買取価格に設定された[7]が、2013年現在、売れたのは「くそみそテクニック」の原稿だけであるという[2]。
さらに2007年6月には、伊藤文學の自宅から未発表の作品4作品が発見され、電子コミック(ウホッ!! いい男たち2〜ヤマジュン・未発表作品集)という形で発表されることとなった。この電子コミックは、2009年に書籍化されている。
作品
- 1982年
- 1983年
- 1984年
- 1985年
- 1986年
- 1987年
- 1988年
- 未発表
- 絆(1988年発表の同名作品とは別作品)
- 義父
- ショーボーイ
- 遍愛-疾走する獣たちPARTII-
単行本
- 1986年
- 君にニャンニャン
- 兄貴にド・キ・ド・キ
- 1988年
- ワクワクBOY ISBN 4874443745
- 2003年
- ウホッ!! いい男たち ヤマジュン・パーフェクト ISBN 4835440676
- 2007年
- ウホッ!! いい男たち2〜ヤマジュン・未発表作品集(電子コミック)
- 2009年
- ウホッ!! いい男たち2〜ヤマジュン・未発表作品集(ソフトカバー)ISBN 483544406X
- (2007年の電子コミックのソフトカバー版。ブッキングより発刊)
その他
- 『薔薇族』公認グッズとして『くそみそテクニック』の登場人物を題材としたTシャツ[8]や抱き枕カバー[9]が製作・販売されている。
- 「消える「新宿二丁目」- 異端文化の花園の命脈を断つのは誰だ?」竜超著、彩流社、ISBN 4779114101
- 「やらないか!「薔薇族」編集長による極秘的ゲイ文化史論」伊藤文學著、彩流社、 ISBN 9784779115820
- 以上の2冊で表紙カバーイラストに使用された。
- 2013年5月15日にIKD Internationalと伊藤文學氏の間で山川純一原作『くそみそテクニック』の著作権管理[10]を取り交わしグッズなどの販売等を行う事になった。
- これは既に存在する二次制作物また今後の創作を制限するものではないと明記されている。さらにニコニコ動画での公式イベントが2014年1月に開催される事になった。
脚注
注釈
- 元の位置に戻る ↑ 『薔薇族』創刊が1971年であるので、山川が1976年に持ち込みを始めて6年後の1982年から連載開始したことになるが、誤りかどうかは不明。「10年後」の誤りか。
- 元の位置に戻る ↑ ZAKZAKの記事中において、山川が消息を絶ったのが2008年時点で25年前(1983年ごろ)のこととされているが、漫画の連載は1988年まで続いているため疑わしい。「20年前」の誤りか。
- 元の位置に戻る ↑ 山川の活動時期、尾瀬は「少年ビッグコミック」で代表作の一つ「初恋スキャンダル」をまさに連載中であり、他にも掲載作品を抱えていたことから、多数の読み切りを描く余裕があったかどうかは疑問である。かつ当時の画風は現在よりも少年漫画風であり、少女漫画風である山川のそれとは似ていない。
- 元の位置に戻る ↑ 2001年からという説もあるが、ログの追跡が困難であったためひとまず確認できた最古の時期を表記する。2002年6月12日にあやしいわーるど@みらいにて大きな話題となっていることが確認されている。
出典
- ↑ 以下の位置に戻る: 1.0 1.1 テンプレート:Cite web
- ↑ 以下の位置に戻る: 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 2.7 2.8 2.9 テンプレート:Cite video
- ↑ 以下の位置に戻る: 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 テンプレート:Cite web
- ↑ 以下の位置に戻る: 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 テンプレート:Cite web
- 元の位置に戻る ↑ テンプレート:Cite book
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