宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち
『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』(うちゅうせんかんヤマト あらたなるたびだち)はフジテレビ系列で1979年7月31日放映のテレビアニメーション及び、東映系で1981年3月14日公開の劇場用アニメーション映画である。
通称「新た」、「新たなる旅立ち」。
目次
概要
「宇宙戦艦ヤマトシリーズ」のひとつ。『宇宙戦艦ヤマト2』の続編として制作され、テレビスペシャルとして放映された[1][2]。西崎義展は当時、本作を「テレフィーチャー」(テレビ用映画)と呼び、かつ劇場版新作への布石として新世代キャラクターを数人、登場させた。CM等を除いた正味の放映時間は93分。
1981年8月15日に日本テレビ系列で再放送された時には、冒頭に『ヤマト2』のダイジェストシーンが数分挿入され、その分、本編の一部がカットされた。
反響
本放送は30%を越える高視聴率を得た。これを受けて放送から2年後の1981年3月14日から4月3日まで「スペースロードショー」として、『ヤマトよ永遠に』との併映で劇場作品として公開された。ただしテレビ版でカットされた水雷艇のシーン等は復活せず、テレビ放映版と全く同一のフィルムが流されている。
ストーリー
時に西暦2201年後半、あの熾烈を極めた白色彗星帝国との戦いから一ヵ月後、『宇宙戦艦ヤマト2』でヤマトと別れたデスラー率いるガミラス帝国残存艦隊が、新天地を探す旅に旅発つ前に、今は廃墟となり無人となった母なる星ガミラスに最後の別れのために立ち寄ったところ、謎の勢力である暗黒星団帝国がガミラシウムを無断で採掘していた。これに激怒したデスラーは攻撃を加え、交戦の結果、ガミラスは大爆発を起こし消滅。それにより連星を構成していたイスカンダルは引力のバランスを崩し宇宙空間を漂流し始める。デスラーは愛するスターシャのいるイスカンダルをただちに追跡するが、暗黒星団帝国のデーダー率いる第一艦隊(旗艦プレアデス)もイスカンダリウムを目的にイスカンダルを追撃していた。
その頃、地球では修復されたヤマトに新たな乗組員を迎え、ヤマトの試験航海を兼ねて訓練航海へと旅立ち、猛訓練に励んでいた。デスラーから発信された、救援を求める通信によりイスカンダルの危機を知ったヤマトは、地球防衛軍長官の命により、スターシャと古代守の救助のためにイスカンダルへと向かう。
放送されなかったエピソード
ロマンアルバムのフィルムストーリーに一部収録、またDVDの特典映像にも収録されている。大きなカット箇所としては以下の2箇所。
- 重力星雲から脱出すべく、水雷艇で出撃しマグマの噴出でイスカンダルを再度漂流させようとする古代守が敵の攻撃を受け、そのピンチを救うためコスモタイガーIIで出撃する真田。
- 第一艦橋で唐突に向き合っている古代と真田のカットに名残が見られる。このシーンは金田伊功の作画。
- 赤色巨星に引きこまれんとするイスカンダルを、同じく飲み込まれようとしている別の星を破壊してその反動で救出すべく、波動砲の準備をするも、別の何者かが同様の目的で砲撃を加えた。
- デスラー艦がゴルバ砲門に突っ込んだ際に撃たれそうになった波動砲は、本来であればこのシーンで撃たずにいて発射準備が整っていたもの。山崎の「波動砲の発射準備は完了しています」といういささか唐突な台詞はこのつじつま合わせのために追加された。また、乗組員の「イスカンダルだ!」や、ゴルバが現れた際の、古代の「おまえがあの惑星を砲撃したのか?」というつながりのない発言もこのシーンの名残。
登場人物
地球防衛軍
- 新たなヤマト乗組員として徳川太助、北野哲、坂本茂が加わったが、本作以降も登場するのは徳川太助のみである。
- この試験航海兼訓練航海では、宇宙戦士訓練学校卒業生の、徳川以下機関部30名、北野以下戦闘部・航海・砲術29名の他、坂本以下飛行科54名の、計113名が新たに乗り込んでいる。
- 戦死した徳川彦左衛門の部下だった山崎奨が昇進し、機関部の班長として登場する。
ガミラス帝国
- デスラー
- ガミラス星の爆発とイスカンダルの漂流時には、スターシャを自らの危険を顧みずに守ろうとし、スターシャを愛していたことに気づく。地球にイスカンダルの危機を伝える通信を送り、スターシャを守るために暗黒星団帝国マゼラン方面軍に対しヤマトと共同戦線で戦うことになる。
暗黒星団帝国
スタッフ
- 企画・原案・製作総指揮・総監督 - 西崎義展
- 総設定・総監修 - 松本零士
- 監修 - 舛田利雄
- SF原案 - 豊田有恒
- 脚本 - 山本英明
- 演出 - 田口勝彦
- チーフディレクター - 白土武
- 助監督 - 棚橋一徳
- 絵コンテ - 安彦良和
- テクニカルディレクター - 石黒昇
- 総作画監督 - 小泉謙三
- 作画監督 - 宇田川一彦
- メカニック設定 - 中村光毅、板橋克己
- 美術監督 - 勝又激
- 音楽 - 宮川泰
- 音響監督 - 田代敦己
- 撮影監督 - 菅谷信行
- 制作 - フジテレビ、アカデミー制作
主題歌
主題歌
- 「ヤマト!! 新たなる旅立ち」
- 作詞 - 阿久悠 / 作曲・編曲 - 宮川泰 / 歌 - ささきいさお、フィーリング・フリー
挿入歌
- 「サーシャわが愛」
- 作詞 - 阿久悠 / 作曲・編曲 - 宮川泰 / 歌 - 島倉千代子、フィーリング・フリー
- 『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』以来、歌謡界からの歌手起用が続き、その全てが他社専属であったが、本作で初めて日本コロムビア所属の非アニソン歌手が起用された。また同時にこれが、大御所的存在のベテラン歌手がアニソン(特撮主題歌も含む)を担当するようになる端緒ともなった。ちなみに島倉は、本作を放映したフジテレビの歌番組『夜のヒットスタジオ』において「サーシャわが愛」を歌唱したことがある。
イメージソング
- 「星に想うスターシャ」
- 作詞 - 阿久悠 / 作曲・編曲 - 宮川泰 / 歌 - ささきいさお
制作
- TV版:製作:フジテレビ、オフィス・アカデミー
- 映画版:製作:オフィス・アカデミー
関連作品
漫画(コミカライズ)
- 『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』 画:ひおあきら/1979年、サンコミックス全2巻(朝日ソノラマ刊) 2005年にメディアファクトリーより復刊[4]
ゲーム
- 「宇宙戦艦ヤマト イスカンダルへの追憶」
- PlayStation2ソフトとして2004年10月6日にバンダイから発売された。『新たなる旅立ち』『永遠に』を原作としたウォー・シミュレーションゲーム「暗黒星団帝国編三部作」の第1作である。
- 原作からの多数の変更点や追加エピソードが加えられており、事実上のリメイク作品となっている。
- 地球側の序盤は白色彗星帝国残党軍との戦闘が描かれている。原作では漂流を始めた後のイスカンダルは銀河系までワープしてきたが、ゲーム版ではワープはせず主星への落下コースを取り始める。
- また、続編との繋がりが強くなり、長距離連続ワープ機関の試作品が登場。さらにデスラーからの技術供与も加わることで、一応の完成を迎え、イスカンダルの救援に大マゼラン星雲まで向かうことになる。
- 結末も大きく異なり、イスカンダルは一度は降伏するが、ヤマトとデスラーの協力によってゴルバを倒し、イスカンダルは救われる。登場人物にも変更点があり、PS版『さらば』で生還した山本がこのシリーズで2代目コスモタイガー隊隊長に就任するほか、オリジナルキャラクターとして椎名晶が登場する。
その他
これまでヤマトのテレビ用作品はよみうりテレビ(NTV系列)で放送されるのが常だったが、本作はフジテレビ系でオンエアされたことが話題となった。この変更には、『さらば宇宙戦艦ヤマト』の劇場公開前夜の1978年8月4日に、劇場版『宇宙戦艦ヤマト』をラストのイスカンダルのくだりをTVシリーズ版同様に差し替えた形でフジテレビ系全国ネットで初放映された縁が関係している。[5]世は正にヤマトブーム、アニメブームであり、その巨大な一連のメディアミックス展開は、これまで日本のアニメーションに例の無かった放送局のボーダーレスをも実現したのである。
当時の雑誌等コメントでは、松本主導色の濃い『ヤマト2』の出来上がり、主に作画等のクオリティ面に対し、西崎プロデューサーにとって不満が残ったことが制作の発端のひとつであることが語られていた。制作時期が劇場版『銀河鉄道999』とぶつかったこともあり、松本零士は敵キャラなどの一部原案程度の参加に留まっており、松本カラーは希薄な作品となった[6]。
また、当作品放映後に販売されたムック本に主演声優の座談会が掲載されたが、出演した感想として、『さらば宇宙戦艦ヤマト』でいったんシリーズとして完結の形をとりながら、さらに続編を作成したことについてとまどいのコメントが吐露されている(特に伊武雅刀には相当の不満があったことがうかがえる)。
『宇宙戦艦ヤマト』制作時からスタッフとして参加していた安彦良和は当作品を最後にヤマトシリーズから降板する。安彦によれば「西崎とケンカ別れした」とのこと。ちなみに当作品と自身が参加した『機動戦士ガンダム』の制作時期が被っており、安彦はスタッフミーティング中にテレビを点けて放送された『ガンダム』第1話のAパートを見た。この時、西崎も一緒に見ており、「まあまあだなって顔をしていた」という[7]。
本作品のランニングタイムは93分だが、当初は総タイム2時間弱を想定とした製作が行われており、そのタイムでの仕上げ作業もほとんど済んでいた。その後、放送局との放送枠の協議の結果、シーンがいくつかカットされ(上記の「放送されなかったエピソード」参照)放送された。
本作にはビデオ、LD、DVD等に収録されているテレビ放映された通常のバージョンと、LPの『宇宙戦艦ヤマト・新たなる旅立ち ドラマ編』で使用された、BGMを差し替えたバージョンの2種類の音源が存在する。これは本編ダビングの際、別テイクで作られたものを採用したため。
ドラマ『北の国から』13話において、純(吉岡秀隆)が吉野(伊丹十三)に連れて行かれた映画館で当作が上映されていた。
脚注
- ↑ ヤマト第一世代とヤマト第二世代を調和させる目的で制作された。『さらば宇宙戦艦ヤマト』で新たに誕生したヤマト第二世代には『宇宙戦艦ヤマト2』が不評であり、『さらば』のような劇場映画を要望する声が強まった。しかし、いきなり3作目の劇場映画を作ると『さらば』で『ヤマト』の映画は終わったと考える第一世代の反発が懸念されたため、本作は緩衝材とされたのである。『アニメジェネレーション ―ヤマトからガンダムへのアニメ文化論』より。
- ↑ ただし本作ならびに次回作の「ヤマトよ永遠に」を「さらば宇宙戦艦ヤマト」の続編であると捉えていたファンも決して少なくはなく、「さらば」との整合性が取れていないことに戸惑う視聴者や観客もいた。
- ↑ 1977年にNHKラジオ第1放送やニッポン放送でそれぞれ放送されたラジオドラマ版『宇宙戦艦ヤマト』とは異なる。
- ↑ MF文庫―宇宙戦艦ヤマトライブラリー「宇宙戦艦ヤマト新たなる旅立ち」全1巻
- ↑ これ以降はこのバージョンが主流になり、ほとんどのビデオ、DVDはこちらを収録するようになっている。
- ↑ スターシャを死なせたことなどから松本には不満が残ったようで、前作より松本の参加比率の高い次作『ヤマトよ永遠に』ムック本誌上では「決して『新たなる旅立ち』の続編だと思わないで欲しい」旨の発言をしていた。なお、松本は『永遠に』でヤマトシリーズを完結させることを望んでいたという。後年、この松本の想いが、PS2ゲーム版に反映されることとなる。松本が監修した『新たなる旅立ち』のゲーム版である『宇宙戦艦ヤマト イスカンダルの追憶』ではスターシアがゴルバの前に屈服するも、イスカンダルを自爆を悟ったヤマトとデスラーが機転を利かせ、共にゴルバを倒すという展開になっている。
- ↑ 講談社刊『ガンダム者―ガンダムを創った男たち』