多摩都市モノレール
テンプレート:Infobox 多摩都市モノレール株式会社(たまとしモノレール)は、多摩都市モノレール線を運営する東京都と西武鉄道・京王電鉄・小田急電鉄などの出資による第三セクター方式で設立された、第三セクター鉄道会社。本社は東京都立川市の運営基地敷地内に所在。略称は多摩モノレール。
概要
全構想路線約93kmのうち、上北台 - 多摩センター間(約16km)が2000年1月に全通した。さらに運輸政策審議会より上北台 - 箱根ヶ崎間(約7km)を「2015年までに整備に着手することが適当である路線」として、また、多摩センターから八王子および町田間が「今後整備について検討すべき路線」と答申されているが、いずれも具体化はしていない段階である。多摩丘陵の大きな起伏を克服すべく導入されたモノレールであり、多摩丘陵外縁部傾斜地に進出した大学、中央大学・帝京大学・明星大学等への、通学の交通手段ともなっている。
経営状態
利用者数は開業以来一貫して高い伸びを示しており、本業の収益性を示す営業収支は開業6年目の2005年に黒字転換を達成し、その後も拡大している。しかしながら事業規模に比して土地取得費・建設費の利払い費用があまりにも膨大であるため、長らく経常収支の黒字化には至っていなかったが、初期投資に伴う借入金の返済が経営を圧迫し、債務超過に陥ったことから、2008年に東京都などから経営支援を受け、債務超過や累積債務は解消された。営業損益は2004年度以降、経常損益・当期純損益も2008年度以降黒字を継続している。
建設工事に遅れが生じたことなどから全面開業が2000年1月までずれ込み、総工費も当初予定の2倍ほどにまでふくれあがっていた。2000年3月末時点で既に100億円近い累積赤字を抱える状態からのスタートであり、その後の単年度赤字額は37億円、30億円、27億円、19億円、11億円、8億円と順調に改善しているものの、累積赤字額は2006年3月末時点で228億円に達し、約22億円の債務超過となっている。建設の遅れもさることながら、総工費が1100億円余りだったのに対し、資本金の額が205億円と自己資本比率が2割にも満たないため、借入金が膨大となり利払い負担が大きくなっていた。
2006年9月29日に開かれた東京都議会財政委員会の中で、多摩都市モノレールが東京都の「負の遺産」の1つとして挙げられた。負の遺産の定義として、説明に立った当時の主計局長は「当初計画と実績とが大きく乖離をいたしまして、いずれ事業の見直し、再構築が避けられないにもかかわらず、いまだ抜本的な対策が講じられていない懸案課題」(「」内は当時の速記録より引用)と述べており、具体例として4事業(多摩都市モノレール、稲城大橋有料道路、ひよどり山有料道路、障害者扶養年金制度)を挙げた[1]。同時に、早いものは2007年度予算の中で抜本的・計画的な解決を行うことも示していた[1]。
その後2008年4月に「多摩都市モノレール経営安定化計画」が策定され、それに基づく財務改善策として
- 東京都が多摩都市モノレール株式会社に対して210億円の追加出資を行うこと(増資)
- 東京都が多摩都市モノレール株式会社に現時点で融資している約270億円のうち90億円は返済を求めず、かわりに同額の同社株式を受け取ること(債務の株式化)
- 沿線5市(立川、東大和、八王子、日野、多摩)による、固定資産税減免の継続
- 東京都、沿線5市、金融機関による借入金の返済期間の延長
- 全株主を対象とする減資
を行い、財務基盤が強化されることになった[2]。同年中に減資が行われ、2008年3月31日時点で205億3900万円あった資本金は2009年3月31日時点で1億円に減った[3]。また、東京都から出資された210億円のうち160億円を借入金の繰り上げ返済に当てたことで、借入金の利払い負担が軽減され、2008年度は路線開業後初めて当期純損益が黒字を記録した[4]。
なお、ひよどり山有料道路は2007年6月1日に、稲城大橋有料道路は2010年4月1日にそれぞれ無料化されている[5][6]。
年度別実績
年度 | 営業利益 | 経常損益 | 当期純損益 | 出典 |
---|---|---|---|---|
2011年度 | 11億5600万円 | 7億0000万円 | 7億9600万円 | [7] |
2010年度 | 12億7500万円 | 7億4500万円 | 8億100万円 | |
2009年度 | 8億7400万円 | 2億7200万円 | 2億300万円 | |
2008年度 | 8億6600万円 | 1億3100万円 | 1億1700万円 | |
2007年度 | 9億9700万円 | ▲1億4300万円 | ▲1億6700万円 | |
2006年度 | 7億7500万円 | ▲3億7600万円 | ▲14億2900万円 | |
2005年度 | 5億7200万円 | ▲6億1500万円 | ▲7億5900万円 | [4] |
2004年度 | 1億9600万円 | ▲10億8100万円 | ▲11億200万円 |
株主
2012年3月31日時点での主要株主と出資比率は下表のとおりである。これらの株主によって、発行済み株式の98%超が保有されている[8]。
株主 | 株数 | 割合 |
---|---|---|
東京都 | 805,704株 | 79.87% |
西武鉄道 | 47,520株 | 4.71% |
京王電鉄 | 26,400株 | 2.62% |
みずほ銀行 | 20,537株 | 2.04% |
小田急電鉄 | 15,840株 | 1.57% |
三菱東京UFJ銀行 | 11,616株 | 1.15% |
みずほコーポレート銀行 | 11,143株 | 1.10% |
東京電力 | 10,560株 | 1.05% |
三井住友銀行 | 7,392株 | 0.73% |
八王子市 | 6,612株 | 0.66% |
立川市 | 6,612株 | 0.66% |
日野市 | 6,612株 | 0.66% |
東大和市 | 6,612株 | 0.66% |
多摩市 | 6,612株 | 0.66% |
歴史
- 1986年(昭和61年)4月8日 - 設立[9]。
- 1987年(昭和62年)12月26日 - 多摩センター - 上北台間の特許を取得[9]。
- 1998年(平成10年)11月27日 - 上北台 - 立川北間5.4kmが開業[9]。
- 1999年(平成11年) - モノレールで初めて貸切車両を使っての結婚式、「モノレールウェディング」が開かれた。
- 2000年(平成12年)1月10日 - 立川北 - 多摩センター間10.6キロが開業[9]。
- 2001年(平成13年)4月20日 - 隣接駅までの運賃を100円とする。
- 2001年(平成13年)11月19日 - 車体広告列車を運行開始。
- 2004年(平成16年)8月 - 車両のシートをボックスシートからロングシートへ改修を始める。
- 2004年(平成16年)8月20日 - 運賃改定(平均5.3%の値上げ)。
- 2005年(平成17年)12月 - 新車両導入、運行開始。
- 2007年(平成19年)3月18日 - PASMOおよび連絡定期券を導入。
- 2008年(平成20年) - 当期純利益で初の黒字を達成。
- 2010年(平成22年)1月10日 - 全線開業10周年。
路線
駅一覧などは下記の記事を参照のこと。
- 多摩都市モノレール線(上北台 - 多摩センター)16.0km
車両
- 1000系 - 旅客車両はこの車両で統一されている。製造時期やリニューアルの関係でバリエーションは豊富である。
運転士
モノレール運転士の養成(動力車操縦者免許取得)は、研修所を持つ他鉄道会社に委託している。委託先はモノレールではなく、例えば西武鉄道、京王電鉄などの、普通の2本レールの鉄道である。そのため、多摩都市モノレールの運転士であっても普通の鉄道(電車)の運転経験があることになる。免許取得後、改めて自社線にて必要な訓練は受けている。
各種乗車券
多摩都市モノレールでは、以下の沿線の観光・レジャースポットと連携した乗車券「多摩モノレールセット券」を発売している。
- 国営昭和記念公園 - 国営昭和記念公園の入場引換券と多摩モノレールの1日乗車券がセット。大人900円
- 多摩動物公園 - 多摩動物公園の入園整理券と多摩モノレールの1日乗車券がセット。大人1,000円
- サンリオピューロランド(パスポート) - サンリオピューロランドのパスポート引換券と多摩モノレールの1日乗車券がセット。大人4,000円、子ども3,000円
- サンリオピューロランド(入場券) - サンリオピューロランドの入場券引換券と多摩モノレールの1日乗車券がセット。大人3,000円、子ども2,000円
- 埼玉西武ライオンズ応援セット券 - 西武ドーム内野自由席入場料と西武バスの上北台 - 西武ドームを結ぶバス乗車券、多摩モノレールの1日乗車券がセット。大人2,400円、中学生1,400円、小学生1,000円 ※西武ドームでのプロ野球開催期間中のみ発売
- パルテノン多摩 - パルテノン多摩で開かれるコンサート等の公演チケットと多摩モノレールの1日乗車券がセット ※一部の公演で取り扱っている
ICカードは、PASMOとSuicaが利用できるが、2013年より開始された全国交通系ICカードの相互利用に対応しておらず、PASMOとSuica以外の相互利用ICカードは使用できない。
イベント列車
車両1編成を貸し切って、夏に「ビール列車」、冬に「ワイン列車」と銘打った臨時イベント列車を多摩モノレールの主催で実施している。参加は事前申し込みで、上北台を出発し多摩センターでトイレ休憩による小停車の後、再び立川北まで戻るコース。車内中央に置かれた長テーブルに料理が並べられ、参加者は見晴らしの良い高架線を走行するモノレールからの景色を眺めながらビールやワインを味わうというもの。両方とも大変な人気で、受付早期で完売する。
脚注
参考文献
- 国土交通省鉄道局監修『平成24年度 鉄道要覧』、鉄道図書刊行会、2012年。ISBN 978-4-88548-120-8。
関連項目
- 多摩モノレールカード - 多摩都市モノレールが発売していたパスネット対応カード
- 東京都交通局上野懸垂線 - 同社の筆頭株主である東京都が運営しているモノレール路線
- 小田急向ヶ丘遊園モノレール線 - 同社の株主である小田急電鉄が運営していたモノレール路線
外部リンク
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