名古屋市交通局3000形電車 (鉄道)
名古屋市交通局3000形電車(なごやしこうつうきょく3000がたでんしゃ)は、1977年(昭和52年)に登場した名古屋市交通局(名古屋市営地下鉄)鶴舞線用の通勤形電車。
鶴舞線のほか、名古屋鉄道の犬山線・豊田線・三河線へ直通運転をしている。
車両概要
1977年(昭和52年)3月18日に鶴舞線伏見 - 八事間開業とともに営業運転を開始した。
当初の編成組成は4両だった。車体は台枠と骨組を普通鋼製、外板をステンレス製としたセミステンレス構造で、両開きの客用扉を片側あたり4箇所に配した標準的な20 m 級通勤型車両(車体長19.3m)である。それまで全長15.5 m × 全幅2.5 m × 全高3.4 m が車両の標準寸法となっていた名古屋市営地下鉄にとっては初の大型車となった。車体全高および室内高(平天井構造)の寸法も一般的なものとなっており、同じ目的で同時期に製造された名鉄100系よりも高い。車体幅も外板間は2740mm、最大幅当初2805mmで、地方鉄道車両定規を超えていた(現在は2746mm)。車体長がJRなどの20m車よりも200mm短い関係で客扉間隔も50mm短く、扉間座席の1人当り占有幅は約443mmである。これは6000形、3050形や名鉄100系についても同様である。その他、運転台窓の平面ガラス構成のパノラミックウインドウや、側窓の天地が小さめで幕板の広い側面見付けに名鉄の影響がうかがえる。またこの車両から、先頭車両前部上段には名古屋市営地下鉄のシンボルマークが入るようになった。
名鉄豊田線(当時豊田新線)との相互直通運転のため、保安装置は鶴舞線内でのCS-ATCに加え、名鉄用のM式ATSも搭載している。
鶴舞線開業の5日前(13日)に開業した神戸市交通局(神戸市営地下鉄)西神・山手線の1000形と同様に、自動可変界磁電機子チョッパ制御と回生ブレーキと冷房装置が導入された。なお、車両への冷房装置搭載は名古屋市営地下鉄では初めてである。このため、初期の車両は客室側窓がHゴム支持による固定窓とされたが、第14編成以降の増備車は省エネルギー対策として約半数の客室側窓が金属支持によるサッシ付きの開閉式に変更された。室内化粧板は濃クリーム色である。
チョッパ制御装置は1C8M方式で、容量1,800kW、合成周波数486Hzである。主電動機の定格値は端子電圧375V、電流395A、出力135kW、定格回転数1,960rpm(80%界磁)、最弱め界磁率39%である。最長編成をMT比6M2Tの8両編成と設定したため、大出力の主電動機を採用した。
1977年[1]から庄内緑地公園 - 浄心間が延長された1984年までの間に、4両組成23本の計92両が製造された。将来の8両編成化を前提として、車両番号は百の位の3 - 6(4両分)を欠番として付番されたが、6両編成化は3050形の導入および本形式の組成変更により実施されたため、現行編成の車両番号下2桁は6両編成のうち、中間の2両が他の4両と異なっている(さらに一部は側窓も異なる)。このほか、すべての編成に先頭車が1両ずつ改造を受けた上で中間車代用として組み込まれている。
車内放送には自動放送装置を採用し、名鉄線内でも使用されている。また、名鉄線対応設備として中間車両にもドア開閉装置(車掌スイッチ)を設置している。これは名鉄線内において車内を巡回する車掌が任意の車両において扉扱いを行うために設置されていたが、同社の駅員無配置駅における出改札自動化(駅集中管理システム)の進展により、運用線区全線において原則的に車内改札を省略するようになったことから、豊田線以外での使用は少なくなった。
1993年(平成5年)8月12日の全線開業と名鉄犬山線への直通運転開始時に6両編成に組成変更された。この際、中間車代用として埋め込んだ先頭車は貫通路の整備および行先表示幕の埋め込みを行い、6両固定編成化されたが、前照灯・尾灯は残された。また、これにより余剰となった2両ユニット1本(3706・3806)は、新造された3050形3159編成に組み込まれ、同編成の3・4号車として運用されている。
その後、2003年(平成15年)から2004年(平成16年)の間に各車両の連結部に転落防止用幌が取り付けられた際、中間車代用として組み込んだ先頭車は取り付けスペースの関係で、残された前照灯・尾灯が撤去された[2]。
編成
形式 | テンプレート:TrainDirection | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
3100 (Mc) |
3200 (M) |
3100A (M) |
3200 (M) |
3700 (M) |
3800 (Mc) | |
車両番号 | 3111 | 3211 | 3103 | 3203 | 3711 | 3811 |
3112 | 3212 | 3106 | 3206 | 3712 | 3812 | |
3113 | 3213 | 3109 | 3209 | 3713 | 3813 | |
3114 | 3214 | 3119 | 3219 | 3714 | 3814 | |
3118 | 3218 | 3117 | 3217 | 3718 | 3818 | |
3122 | 3222 | 3121 | 3221 | 3722 | 3822 | |
形式 | テンプレート:TrainDirection | |||||
3100 (Mc) |
3200 (M) |
3700 (M) |
3800A (M) |
3700 (M) |
3800 (Mc) | |
車両番号 | 3110 | 3210 | 3704 | 3804 | 3710 | 3810 |
3115 | 3215 | 3709 | 3809 | 3715 | 3815 | |
3116 | 3216 | 3717 | 3817 | 3716 | 3816 | |
3120 | 3220 | 3719 | 3819 | 3720 | 3820 | |
3123 | 3223 | 3721 | 3821 | 3723 | 3823 |
※当初は4両編成であったが、現在は6両編成に組成変更されたため、編成組成には上表のとおり2種類ある。これは、元々全て以下のような組成であった4両編成の一部を中間で2両ずつに分割してそれぞれ別の4両編成と組み合わせる、という手法で6両編成としたためである。また、この過程で3706+3806の2両1組が余ったため、3050形3159編成に中間車として組み込まれている。
形式 | テンプレート:TrainDirection | 製造車両 | |||
---|---|---|---|---|---|
3100 (Mc) |
3200 (M) |
3700 (M) |
3800 (Mc) | ||
車両番号 | 3101 | 3201 | 3701 | 3801 | 初期車 |
: | : | : | : | ||
3113 | 3213 | 3713 | 3813 | ||
3114 | 3214 | 3714 | 3814 | 後期車 | |
: | : | : | : | ||
3123 | 3223 | 3723 | 3823 |
廃車
当形式のうち、開業当初からの車両は車齢が30年を数えており、2006年(平成18年) - 2010年(平成22年)度の計画により、新型車両に置き換わることが決定していたが、交通局の予算の関係上、鶴舞線への新型車両投入は2011年(平成23年)度に延期され、3050形とは別の新形式であるN3000形[3]が導入されたが、3115編成と3050形3159編成にそれぞれ組み込まれている初期車の置き換えについては未定である。
運用
営業区間
急行運転
- 2005年(平成17年)1月29日のダイヤ改正から、名鉄犬山線の線路容量の関係で当形式と3050形が初めての急行運転を開始した。また2007年(平成19年)6月30日のダイヤ改正では岩倉行きの急行を新設(普通から急行に格上げ)した。なお、2008年のダイヤ改正以降、急行運転の時は名鉄線内に入ると自動放送の使用を停止し、車掌が案内している。これは同改正時に急行が扶桑駅にも停車することとなったが、自動放送が更新されていないためである。なお、各務原線(新鵜沼を含む)や広見線の駅名や準急の種別は入っていない。
脚注
参考文献
- 電気学会「チョッパ制御ハンドブック(第2版)」1980年1月15日発行