南沙諸島
テンプレート:Redirect テンプレート:Infobox Islands テンプレート:Chinese 南沙諸島(なんさしょとう)又はスプラトリー諸島(Spratly Islands)は、南シナ海南部に浮かぶ数多くの島・岩礁・砂州から成る島嶼群である。岩礁・砂州を含む約18の小島(およそ島と言えるものは11)があり、これらの多くは環礁の一部を形成している。
目次
概要
島は最大でも0.43平方kmしかなく、本来ほとんどの島は一般の人が普通に居住できる環境ではない。しかし、広大な排他的経済水域(EEZ)の海洋・海底資源が見込めるほか軍事的要衝でもあるため、中華人民共和国、中華民国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが領有権を主張しており、現在、ブルネイを除く5カ国(中華民国を含む)が島や環礁などを実効支配している。多くの主要な島は軍隊や警備隊が常駐している。
また、干潮時にも海面に姿を現さない岩礁や砂州・環礁などの浅瀬に対しても各国が領有権を主張しており、特に中国は南沙諸島、中沙諸島、西沙諸島、東沙諸島を総称して南海諸島と呼び、その全域の領有を主張している。中国が主張する境界線はその数から「九段線」、その形から「U字線」、「牛舌線」などと呼ばれる[1]。
領有権をめぐる歴史
南沙諸島の領有権の歴史について述べる。
ベトナムを植民地支配していたフランスによる領有
ベトナムを植民地支配していたフランスが1930年からいくつかの島々を実効支配し、ベトナム南部の総督M. J. Krautheimerは1933年12月21日、4702-CP号の政府決定により同国のバーリア省の一部としていた。
日本による領有
1938年に日本が領有を宣言し、新南群島と命名。以降1945年の第二次世界大戦終結まで支配していた[2]。
行政区分は昭和13年(1938年)12月23日外甲第116号閣議決定により台湾の高雄市の一部としていた。主なる島嶼は北二子島、南二子島、西青島、三角島、中小島、亀甲島、南洋島、長島、北小島、南小島、飛鳥島、西鳥島、丸島である。リン鉱石の採取が主な産業で従事者が住んでいたが戦火の拡大により撤退した。
中華民国による領有
1945年に、主権回復を宣言した。
フィリピンによる領有
その後1949年にフィリピンが一部の領有を宣言した。
南ベトナムによる領有
1951年のサンフランシスコ講和条約で日本が領有権を放棄した後、1956年10月22日に南ベトナムが143/NV号大統領決定により同国のバーリアの一部からフォクトイ省の一部に編入した。1983年にはドイツ人のアマチュア無線家のグループがキャンプを張っての移動運用(DXペディション)を試み、軍の守備隊に銃撃されて死傷者が出る騒ぎになっている。
中華人民共和国による領有
南ベトナム政府が1973年9月にふたたび同国フォクトイ省への編入を宣言したことに対し、中華人民共和国も翌年1月に抗議声明を出して領有権主張を本格化させていった。
1970年代後半に海底油田の存在が確認され、広大な排他的経済水域内の海底資源や漁業権の獲得のため、近隣に位置するフィリピンやベトナムのみならず、遠く離れた中華人民共和国を含む各国が相次いで領有を宣言している。また広大な地域に広がる島々は軍事的にも価値がある。
中国とベトナムとの軍事衝突
西沙諸島の戦い (1974年)
1974年1月に、西沙諸島の領有権を巡って中華人民共和国とベトナム共和国(南ベトナム)が交戦し、西沙諸島の戦いが勃発した。この戦争に勝利した中国は西沙諸島を領有した。
1988年には中国は西沙諸島に2600m級の本格的な滑走路を有する飛行場まで完成させ、南シナ海支配の戦略拠点とし[3]、同年、中国軍はベトナム支配下にある南沙諸島(スプラトリー諸島)にも侵攻した(後述)。
スプラトリー諸島海戦 (1988年)
1988年3月14日、南沙諸島における領有権をめぐり中華人民共和国とベトナム両海軍が衝突した(スプラトリー諸島海戦(赤瓜礁海戦))。勝利をおさめた中華人民共和国が一部を支配する[4]。中国は、この海戦でジョンソン南礁(赤瓜礁)のほか、永暑礁、華陽礁、東門礁、南薫礁、渚碧礁と後に名付けられた岩礁または珊瑚礁を手に入れた[4]。
近年
1995年、中華人民共和国軍の活動が活発化し、ミスチーフ礁等フィリピン主張の島を占領して建造物を構築した。この機会主義的行動が周辺諸国に中華人民共和国の軍事的膨張に対する警戒心を呼び起こしたとされる。
2004年9月に、フィリピンと中華人民共和国が海底資源の共同探査で2国間合意成立。
2005年3月には、フィリピンと中華人民共和国の2ヶ国に続きベトナムも加わり、探査が行われている。
2007年11月、中華人民共和国の中国人民解放軍が西沙諸島の海域で軍事演習を行ったことや、同月中旬に中華人民共和国が中沙諸島だけでなく、南沙、西沙の両諸島にまで行政区「三沙市」を海南省の中に指定したことをきっかけとして、同年12月にベトナムで「中華人民共和国の覇権主義反対」などと唱える反中国デモが行われた[5][6]。
2008年1月に中華民国が実効支配する南沙諸島最大の島である太平島に軍用空港を建設完成させる。滑走路は全長1150メートル、幅30メートル。その後、中華民国総統が視察に訪れ、フィリピン政府の抗議を受けた。
2010年3月にアメリカからスタインバーグ国務副長官とベイダー国家安保会議アジア上級部長が中華人民共和国を訪れた際に、中華人民共和国政府は南シナ海を『自国の主権および領土保全と関連した「核心的利害」地域と見なしている』との立場を、公式に通知したことが報じられた[7]。
2011年2月末から5回以上にわたり、中華人民共和国探査船がフィリピンが主張する領海内において探査活動をくり返し、5月には無断でブイや杭などを設置した。フィリピンのアキノ大統領はこれを領海侵犯とし、同年6月国連に提訴した。
主な島など
島
約18の小島(岩礁や砂州のみを除けば11)があり、その多くは環礁の一部を形成している。
英語名称 | 面積 (km²) | 実効支配 | 係争国 | ||
---|---|---|---|---|---|
Itu Aba Island | 太平島 | 0.43 | 台湾 | 中国・ベトナム・フィリピン | 滑走路あり |
Thitu Island | パグアサ島 | 0.37 | フィリピン | 中国・台湾・ベトナム | 滑走路あり |
West York Island | 西月島 | 0.18 | フィリピン | 中国・台湾・ベトナム | |
Spratly Island | 南威島 | 0.13 | ベトナム | 中国・台湾 | 滑走路あり |
Northwest Cay | ノースイースト島 | 0.127 | フィリピン | 中国・台湾・ベトナム | |
Southwest Cay | サウスウエスト島 | 0.12 | ベトナム | 中国・台湾・フィリピン | |
Sin Cowe Island | 景宏島 | 0.08 | ベトナム | 中国・台湾・フィリピン | |
Loaita Island | 南鑰島 | 0.07 | フィリピン | 中国・台湾・ベトナム | |
Nanshan Island | 馬歓島 | 0.0793 | フィリピン | 中国・台湾・ベトナム | |
Swallow Reef | ラヤンラヤン島 | 0.062 | マレーシア | 中国・台湾 | 滑走路あり |
Namyit Island | 鴻庥島 | 0.053 | ベトナム | 中国・台湾・フィリピン | |
Flat Island | 費信島 | 0.04 | フィリピン | 中国・台湾・ベトナム | 砂州 |
Amboyna Cay | アンバン島 | 0.01584 | ベトナム | 中国・台湾・フィリピン・マレーシア | 砂州 |
Central Reef | トラングサドン島 | ベトナム | 中国・台湾・フィリピン | 砂州 | |
Pearson Reef | 畢生礁 | ベトナム | 中国・台湾・フィリピン | 砂州 | |
Mariveles Reef | 南海礁 | マレーシア | 中国・台湾・フィリピン | 砂州・岩礁 | |
Hugh Reef | 東門礁 | 中国 | 台湾・ベトナム・フィリピン | 岩礁 | |
Johnson South Reef | ジョンソン南礁 | 中国 | 台湾・ベトナム・フィリピン | 岩礁 |
岩礁・砂州
満潮時にも常に海面上に露出している岩礁・砂州。(国連海洋法条約上、領土と認められるが排他的経済水域は設定できない。)
- 費信島(英:Flat Island):フィリピンが実効支配する砂州。
- アンバン島(英:Amboyna Cay):ベトナムが実効支配する砂州。
- トラングサドン島(英:Central Reef):ベトナムが実効支配する砂州。砂州全体の海岸線を囲んで建造物を多数建てている。
- 畢生礁(英:Pearson Reef):ベトナムが実効支配する砂州。浅瀬に建造物を建てている。
- 南海礁(英:Mariveles Reef):マレーシアが実効支配する砂州・岩礁。
- 東門礁(英:Hugh Reef):ベトナムが実効支配していたが、1988年3月、スプラトリー諸島海戦により中華人民共和国が武力奪取し、そのまま実効支配している岩礁。浅瀬に建造物を建築し軍隊が常駐している。
- ジョンソン南礁(英:Johnson South Reef):岩礁が常に海面上に露出しているかどうか不明。ベトナムが実効支配していたが、1988年3月、スプラトリー諸島海戦により中華人民共和国が武力奪取し、そのまま実効支配している岩礁。浅瀬に建造物を建築し軍隊が常駐している。
干出岩
干潮時にのみ海面上に現れる暗礁(干出岩)・砂州は多数存在する。国連海洋法条約上、領土とはならない。また排他的経済水域(EEZ)も設定できないが、自国のEEZ内であればその国が建造物を建設することができる。
* 以下は干出岩に建造物を建築し軍隊が常駐しているもの。
- 大現礁(英:Discovery Great Reef)ベトナムが実効支配。
- 渚碧礁(英:Subi Reef)ベトナムが実効支配していたが、1988年3月、スプラトリー諸島海戦により中華人民共和国が武力奪取。レーダーサイトがある。
- クアテロン礁(英:Cuarteron Reef)ベトナムが実効支配していたが、1988年3月、スプラトリー諸島海戦により中華人民共和国が武力奪取。
- ファイアリー・クロス礁(英:Fiery Cross Reef)ベトナムが実効支配していたが、1988年3月、スプラトリー諸島海戦により中華人民共和国が武力奪取。
- ミスチーフ礁(英:Mischief Reef)フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内でフィリピンが実効支配していたが、1995年にフィリピン海軍がモンスーン期でパトロールをしていない時に中華人民共和国が浅瀬に建築物を建造し、実効支配。
- ガベン礁(英:Gaven Reefs)中華人民共和国が実効支配。
- 簸箕礁(英:Erica Reef)マレーシアが実効支配。
浅瀬・堆
干潮時にも海面上に現れない暗礁(暗岩)・砂州・海面下の台地
- 多数
脚注
参考文献
- 『豊富な資源めぐる広大な海域「三沙」めぐり、中越緊張』 産経新聞、2007年12月24日。