ユリウス通日

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ユリウス通日(ユリウスつうじつ、Julian Day、JD)とは、紀元前4713年1月1日(-4712年1月1日)の正午(世界時による。)からの日数である[1]。単にユリウス日ユリウスび)ともいう。なお、ユリウス日の換算においては、紀元元年の前年を0年としているため、これを紀元前1年とする方法とは1年ずつの差異があることに注意しなければならない(例えば-4712年は紀元前4713年である)[2]

例えば、協定世界時(UTC)での2024年11月21日11:47:00 のユリウス日の値は、構文エラー: 認識できない区切り文字「[」です。である。

概説

ユリウス通日(Julian Day)(JD)

数年にわたる2時点の間の日数や秒数を計算するのに便利で、天文学年代学Chronology)などで使われている。小数を付けることにより時・分・秒数(と更に、その小数)を表現することができる。

ユリウス通日は天体観測に便利なように正午を起点にしている。つまり、天体観測は通常は夜間に行われるので、夜の0時(世界時)の時点で日付が変わる(ユリウス通日の整数部分が増加する。)のではなく、正午の時点で日付が変わるように決められたのである。この慣習は「天文時」の時刻系の伝統であり、クラウディオス・プトレマイオス に始まるものである。天文時の時刻系は通常一般の時刻系と紛らわしいので、1925年1月1日からは天文学においても「天文時」を廃止し、正子真夜中)を1日の始まりとする「常用時」に統一された。しかし、ユリウス日については、1925年以降も継続して正午を起点としている[3][4]

ユリウス通日は、前述のとおり、世界時正午(昼の12時)に日数(の整数部分)が増加するが、真夜中の0時に日数が増加するようにユリウス通日に0.5を加え、かつタイムゾーン(time zone)を考慮したChronological Julian Day(CJD)(en:Julian day#Variants)があるが、日本ではほとんど使われない。CJDを使用する環境では、CJDとJDとの区別を明確にするために、JDをAstronomical Julian Dateと呼んで、AJDと略称することがある。

修正ユリウス日(MJD)

ユリウス通日では桁が多すぎるとして、ユリウス通日から2 400 000.5を差し引いた修正ユリウス日(Modified Julian Date:MJD)(1858年11月17日0時UTを元期とする。)も広く使われている。この修正ユリウス日では、真夜中の0時に日数が増加する。

リリウス日(LD)

Lilian Day number(LD、リリウス日)はグレゴリオ暦使用開始日の1582年10月15日からの通算の日数で、整数で表示される。復活祭の日付を決定するために使われる。 リリウス暦とユリウス通日・修正ユリウス日との換算式は次の通りである(但し <math> \lfloor x \rfloor</math> は床関数)。

<math>\mathit{LD} = \lfloor \mathit{JD} - 2~299~159.5 \rfloor = \lfloor \mathit{MJD} + 100~841 \rfloor</math>

したがって、リリウス日では、真夜中の0時に日数が増加する。

歴史

ユリウス通日は1583年にスカリゲル(ジョゼフ=ジュスト・スカリジェ)(テンプレート:Interlang)(1540-1609)によって考案された。スカリゲルは1582年のグレゴリオ暦改暦によって年代学Chronology)における日付けの計算が煩雑かつ混乱してしまうことを予想して、ユリウス暦グレゴリオ暦双方での日付の換算や日数計算の便のためにこれを考案したのである。

その後、天文学者ジョン・ハーシェル1849年の著書Outlines of Astronomyで日数や時間の計算にユリウス通日を利用する方法を考案した[5]。これが広まり、世界中の天文学者が日数計算にユリウス通日を用いるようになった。

「ユリウス通日」の名はスカリゲルの父の名前であるジュール・セザール・スカリジェ(ラテン語音はユリウス・カエサル・スカリゲル)(テンプレート:Interlang)(1484-1558)から取られたものであって、ユリウス暦の名の由来となったジュリアス・シーザー(ラテン語音ガイウス・ユリウス・カエサル)とは直接の関係はないと「一般的には」言われている[6]

スカリゲルが基準にした紀元前4713年(-4712年)は、以下の周期の第1年目が重なる年である。

太陽章Solar cycle (calendar))(28年)
日付と七曜がそろう周期
太陰章(メトン周期)(19年)
月相(月の満ち欠け)と日付がそろう周期
インディクティオ(15年)
ローマ帝国での徴税額の査定更正周期

以上の3つの周期がそろうには7980年 (=28×19×15)を要する。これをユリウス周期という[7]

西暦からの換算

国立天文台暦計算室のページで、グレゴリオ暦からもユリウス暦(1582年10月4日以前)からも、秒単位でユリウス日と修正ユリウス日が簡便に換算できる[8]

フリーゲルの公式

年月日から修正ユリウス日を算出するためのアルゴリズムである。

グレゴリオ暦からの換算

グレゴリオ暦から修正ユリウス日を計算するには次の公式を使う。 グレゴリオ暦 ymd 日午前0時の修正ユリウス日は次式で表される。但し1月、2月は前年の13月、14月として計算する。

<math>\mathit{MJD} = \lfloor 365.25 y \rfloor + \lfloor y / 400 \rfloor - \lfloor y / 100 \rfloor + \lfloor 30.59(m - 2) \rfloor + d - 678~912</math>
  • 例: 2012年1月1日
y = 2011, m = 13, d = 1 なので、次式より修正ユリウス日は 55 927 である。
<math>\mathit{MJD} = {\lfloor 365.25 \times 2011 \rfloor + \lfloor 2011 / 400 \rfloor - \lfloor 2011 / 100 \rfloor + \lfloor 30.59(13 - 2) \rfloor + 1 - 678~912} = 55~927</math>

ユリウス暦からの換算

ユリウス暦から修正ユリウス日を計算するには次の公式を使う。 ユリウス暦(紀元後) ymd 日午前0時の修正ユリウス日は次式で表される。但し1月、2月は前年の13月、14月として計算する。

<math>\mathit{MJD} = \lfloor 365.25 y \rfloor + \lfloor 30.59 (m - 2) \rfloor + d - 678~914</math>
  • 例: 1582年2月1日
y = 1581, m = 14, d = 1 なので、次式より修正ユリウス日は -101 086 である。
<math>\mathit{MJD} = {\lfloor 365.25 \times 1581 \rfloor + \lfloor 30.59(14 - 2) \rfloor + 1 - 678~914} = -101~086</math>

紀元前の場合、修正ユリウス日を計算するには次の公式を使う。 ユリウス暦紀元前 ymd 日午前0時の修正ユリウス日は次式で表される。但し1月、2月は前年の13月、14月として計算する。

<math>\mathit{MJD} = \lfloor -365.25 y - 0.75 \rfloor + \lfloor 30.59 (m - 2) \rfloor + d + 366 - 678~914</math>
  • 例: 紀元前4713年1月1日
y = 4714, m = 13, d = 1 なので、次式より修正ユリウス日は -2 400 001 である。
<math>\mathit{MJD} = {\lfloor -365.25 \times 4714 - 0.75 \rfloor + \lfloor 30.59(13 - 2) \rfloor + 1 + 366 - 678~914} = -2~400~001</math>

但し、初期のユリウス暦(紀元前45年 - 紀元前8年)では閏年を3年に1度実施していたため、実際の暦日とは合致しない。 この式が利用できるのは、紀元4年3月1日以降である。ユリウス日の算定は、グレゴリオ暦開始(1582年)以前はすべて4年に1度閏年が実施されたと仮定している。

ユリウス通日から曜日等を求める

ユリウス通日は1日に1ずつ増えるため、当日のユリウス通日または修正ユリウス日が判明すれば曜日干支などを求めることができる。

七曜日の求め方

該当日の修正ユリウス日を7で割り、余りを求める。余りが0より小さい場合は7を加える。下記の換算表により曜日に変換する。これは本質的にはツェラーの公式と同等である。

修正ユリウス日による曜日の換算表
余り 0 1 2 3 4 5 6
曜日
  • 例: 2012年1月1日
修正ユリウス日は55 927である。7で割ると7989余り4となる。よって、曜日は日曜日である。

十二支の求め方

該当日の修正ユリウス日を12で割って余りを求める。余りが0より小さい場合、12を加える。余りを下記の換算表により十二支に変換する。

修正ユリウス日による十二支の換算表
余り 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
十二支
  • 例: 2012年1月1日
修正ユリウス日は55 927である。12で割ると4660余り7となる。よって、十二支はである。

十干の求め方

該当日の修正ユリウス日を10で割って余りを求める。余りが0より小さい場合、10を加える。余りを下記の換算表により十干に変換する。

修正ユリウス日による十干の換算表
余り 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
十干
  • 例: 2012年1月1日
修正ユリウス日は55 927である。10で割ると5592余り7となる。よって、十干はである。

干支紀日の求め方

該当日の修正ユリウス日を60で割って余りを求める。余りが0より小さい場合、60を加える。余りを下記の換算表により干支による紀日に変換する。

修正ユリウス日による干支の換算表
余り テンプレート:00 テンプレート:01 テンプレート:02 テンプレート:03 テンプレート:04 テンプレート:05 テンプレート:06 テンプレート:07 テンプレート:08 テンプレート:09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
干支 甲寅 乙卯 丙辰 丁巳 戊午 己未 庚申 辛酉 壬戌 癸亥 甲子 乙丑 丙寅 丁卯 戊辰 己巳 庚午 辛未 壬申 癸酉
余り 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39
干支 甲戌 乙亥 丙子 丁丑 戊寅 己卯 庚辰 辛巳 壬午 癸未 甲申 乙酉 丙戌 丁亥 戊子 己丑 庚寅 辛卯 壬辰 癸巳
余り 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59
干支 甲午 乙未 丙申 丁酉 戊戌 己亥 庚子 辛丑 壬寅 癸卯 甲辰 乙巳 丙午 丁未 戊申 己酉 庚戌 辛亥 壬子 癸丑
  • 例: 2012年1月1日
修正ユリウス日は55 927である。60で割ると932余り7となる。よって、干支紀日は辛酉となる。

その他

  • Google検索のdaterangeオプションでは、日付を指定するのにユリウス通日を用いるようになっている。
  • データ長が16ビットの修正ユリウス通日を日付表現に使用しているシステムでは、16ビットで表せる整数の最大値である65535にあたる2038年4月22日までしか表現できず、この次の日である23日を迎えると、桁あふれが発生してしまう2038年問題が存在する。 (2038年問題とは別物)

ユリウス日の例

ユリウス日 西暦年.月.日(世界時12時)
1 000 000 -1975.11.07
1 234 567 -1332.01.23
2 000 000 763.09.14
2 345 678 1710.02.23
2 451 545 2000.01.01
2 456 789 2014.05.11
2 567 890 2318.07.18
3 000 000 3501.08.15
3 456 789 4752.04.07
4 000 000 6239.07.12

関連項目

参照

  1. [1] 国立天文台暦計算室、ユリウス日とは
  2. 天文学における紀元前
  3. [2] 国立天文台 > 暦計算室 > 暦Wiki >1日の始まり
  4. テンプレート:Cite journalp.157 下段の最後の段落
  5. [3] 18 editions of "Outlines of astronomy" by Herschel, John F. W. Sir, pp.676-681
  6. 例えば、[4] Duncan Steel, "Marking Time: The Epic Quest to Invent the Perfect Calendar", p.154, How the Julian Date Got Its Name, John Wiley & Sons: New York, 2000, ISBN 0-471-29827-1
  7. [5] 国立天文台 暦計算室 暦象年表 ユリウス日 ユリウス日とは
  8. [6] 国立天文台 暦計算室 暦象年表 ユリウス日

外部リンク

  • [7] 国立天文台 暦計算室 暦象年表 ユリウス日 - 秒単位まで、世界時と日本標準時の両方、ユリウス暦にも対応、修正ユリウス日も算出
  • 日時とユリウス日の変換 - 世界時(UT) と日本時(JST)の両方の時分までの換算に対応。
  • 換暦 - 和暦、グレゴリオ暦、ユリウス暦、ユリウス日などの相互変換を行う。日付のみの換算であり、時分秒の換算はできない。