クラウディオス・プトレマイオス

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クラウディオス・プトレマイオス

クラウディオス・プトレマイオステンプレート:Polytonic, テンプレート:Lang-la, 83年頃 - 168年頃)は、『アルマゲスト』の著者として知られる古代ローマ天文学者数学者地理学者占星術師エジプトアレクサンドリアで活躍した。英称はトレミー (Ptolemy)。

出自

クラウディオス(クラウディウス、Claudius)はローマ人の一般的なノーメン(氏族名)の一つであり、プトレマイオス(テンプレート:Polytonic)はギリシャ人の名である。このため、クラウディオス・プトレマイオスは、ローマ市民権が与えられたギリシャ人と考えられる。つまり、クラウディオス・プトレマイオスという名は、ギリシャ人としての本来の名であるプトレマイオスをコグノーメンとして、市民権とともにクラウディオスというノーメンを与えられたローマ人としての名である。したがって、ギリシア人としては、アレクサンドリアのプトレマイオス(テンプレート:Polytonic)と呼ぶべきであるが、一般的ではない。一方、ローマ人としては、ほかにプラエノーメンを持っていたはずであるが、これは不明である。ただ、クラウディオスというノーメンはローマ皇帝クラウディウスによって与えられた可能性が高く、ティベリウス(Tiberius)というプラエノーメンがともに与えられていたと思われる。すなわち、彼のローマ人としての本名はティベリウス・クラウディウス・プトレマエウス(Tiberius Claudius Ptolemaeus)であった可能性が指摘されている。

主な業績

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天動説にもとづく天球図

主著『アルマゲスト』で、地球宇宙の中心にあり、太陽やその他の惑星が地球の周りを回るという天動説を唱えた。ただし、天動説などはプトレマイオスが初めて唱えたわけではなく、『アルマゲスト』の内容は、アリストテレスヒッパルコスなど、それ以前の古代ギリシアの天文学の集大成である。幾何学におけるエウクレイデスの『原論』のように、『アルマゲスト』はそれまでの天文学を数学的に体系付け、実用的な計算法を整理したことで、何世紀もの間天文学の標準的な教科書としての地位を得た。この中で、当時火星などの惑星で見られた逆行を星が「周転円」という小さな円を描きながら地球の周りを回転することによって起こると説明し、これによって天動説の地位を守った。天体観測の方法や天体軌道計算、太陽までの距離やその大きさといったあらゆる知識をひとつにまとめたことが天文学におけるプトレマイオスの業績である。

なお、『アルマゲスト』の本来の書名はギリシャ語で『テンプレート:Polytonic』(Mathematike Syntaxis、Mathematical Treatise、数学全書)である。通称として『テンプレート:Polytonic』(He Megale Syntaxis、The Great Treatise、大全書)が用いられており、アラビア語に翻訳された際に付いた定冠詞Alが、ラテン語に再翻訳されたときにもそのまま残り、Syntaxis(Treatise)が省略されて『Almagest』(The-greatest、最大)になった。このことからもわかるように、『アルマゲスト』は当時は数学書として扱われており、球面幾何学など最先端の数学的な内容を含んでいた。

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プトレマイオスの地図(150年ころ)、15世紀の複製品

著書『テンプレート:仮リンク』(Geographia、地理学)に収められている地図は、世界で初めて緯線を用いた物であり、古代の人々の地理に関する知識を集成したものである。しかしながら天文観測等のデータがあまり正確な物ではなく、地球の周長を実際の7割ほどの大きさと計算している。この地図は、約1,000年後の大航海時代にも影響を及ぼし、クリストファー・コロンブスは「東よりも西方に航海したほうがアジアへは近道である」と考えてアメリカ大陸を発見する事になる。

また、著書『テトラビブロス』(Tetrabiblos、四つの書)は、占星術の古典として知られている。

ほかに、平行線公理に関する著書や音楽に関する著書もあった。

音楽については、音程を二つの音の数比で表すピュタゴラス派の方法論を批判的に継承した。定性的な方法を示した古典期のアリストクセノスの『ハルモニア原論』を新ピュタゴラス派(ピュタゴラス派の伝統は紀元前4世紀の末に一度途切れている)の立場から痛烈に批判し、独自の見解を提起したハルモニア論(全三巻)を著した。

19世紀になり、プトレマイオスの観測結果を再調査した天文学者らは、結果の中にある誤差を発見。古代天文学と比べても観測地点や観測時間が間違っているなどミスの多いものだった。カルフォルニア大学サンディエゴ校の天文学者デニス・ローリンズen:Dennis Rawlins)は、プトレマイオスが行ったとされる天体観測は、プトレマイオス観測以前のロードス島、ヒッパルコスの観測を丸ごと盗用したものであると指摘している。

著作邦訳

  • アルマゲスト 藪内清訳.恒星社厚生閣,1958
  • プトレマイオス世界図 大航海時代への序章.岩波書店,1978.3.
  • 宇宙誌 日本語版監修 下村寅太郎ほか 岩波書店,1984.2.
  • プトレマイオス地理学 中務哲郎訳.東海大学出版会,1986.5.
  • 古代音楽論集 ハルモニア論 山本建郎訳.京都大学学術出版会,2008.5.西洋古典叢書

関連項目

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