仲畑貴志

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テンプレート:BLP unsourced 仲畑 貴志(なかはた たかし、1947年8月20日 - )は、日本コピーライター事業構想大学院大学事業構想研究科教授京都府出身、京都市立洛陽工業高等学校機械科卒業。

略歴

京都で生まれ育ち、高校卒業後は設計事務所に就職するも、一年余りで設計事務所を辞める(一説には「実は設計の仕事が好きではなかった」らしい)。グラフィックデザインをしていた友人からコピーライターという仕事があることを知り上京。様々な仕事を経験しながら、宣伝会議コピーライター養成講座を受ける。その後広告代理店に入社、1970年にはTCC(東京コピーライターズクラブ)の新人賞を得ている。

1972年サントリーが設立した広告制作プロダクション、サン・アドに入社する。最初はサン・アドに一足早く入社した西村佳也と共に、上司であった品田正平によるコピーチェックの洗礼を受ける日々が続く。品田の役割はクライアントに広告のゲラを納める役割であった為、コピーのチェックが重要責務であったこともあって、仲畑本人が書いたコピーを読んではボツ…が幾度となく繰り返され、完成までは締め切り関係なし、という厳しさの中でコピーを書き続けてゆく。やがてサントリー角瓶の新聞広告等でその実力を発揮し、1977年には「角÷H2O」でTCCクラブ賞を受賞。1979年にはソニーウォークマンやサウンドセンサーIIなどのコピーも担当するようになり、文字通りの売れっ子コピーライターに成長する。

1981年にサントリー・トリスの子犬が京都の路地裏を駆け巡るCMの企画・コピーを担当し、カンヌ国際広告映画祭金賞を受賞。これを機に同年サン・アドより独立し、フリーとなり仲畑広告制作所を設立する。翌1982年にはTOTOウォシュレット発売キャンペーンを手掛けて話題を集めると共に、以後TOTOが発売する商品のキャンペーンクリエイターとして活躍(この後、仲畑広告制作所乃木坂に在するTOTO乃木坂ビル内にオフィスを移している)。またTOTOが九州発祥の企業であることなどの経緯もあってか、その後もJR九州岩田屋など九州を本拠とするの企業の広告を多数手掛けてゆく。1988年には、爆発的反響を呼んだソニーのウォークマンでニホンザルのチョロ松が目を閉じて音楽を聴き入る姿を映したCMなど、CM企画にも数多く関わってゆく(コピーの「音が進化した。ヒトはどうですか。」はサントリー宣伝部を経て、仲畑の門下生の一人となった一倉宏が書いた。一倉は他にサントリーモルツの「うまいんだな、これが。」などの名コピーを書いている)。

また、毎日新聞の『万能川柳』の選者も務めているほか、1976年には仲畑にとって初めてのCM企画となった野坂昭如が出演したことで知られるサントリーゴールド900のCMソングや、1978年サントリー樹氷のCMソング「マイルド・ナイト」(歌・いしだあゆみ)や「マイルド・ウォッカ」(歌・チェリッシュ)の作詞も手掛けたりもしている(「マイルド・ナイト」「マイルド・ウォッカ」は、共に宇崎竜童が作曲を担当)。この他、「恋はルンルン」(歌・伊藤つかさ、作曲・坂本龍一)など作詞多数。

2008年6月には電通と共に、企業のブランディングを手掛ける広告制作プロダクション「ナカハタ」を共同で設立する。また東京コピーライターズクラブ会長、宣伝会議コピーライター養成講座校長としての職も継続している。

人物

糸井重里川崎徹などと共に広告業界から頭角をあらわし、コピーライターブームの立役者となった一人として知られる。また「コピーライターの神様」と称される存在でもあり、過去に自身が携わったキャンペーンの中には、TOTOセゾンカードなど、現在でも自身が代表をつとめる仲畑広告制作所のクライアントになっている企業も多数存在する。

仲畑の代表的なコピーとしては、「人と人の間の言葉を拾う」タイプのコピーが多く、「当たり前に存在する言葉を、皆が共感できるように表現をアレンジしてメディアに乗せて発信する」ことこそが、コピーライターの仕事だという思考の持ち主であり、また「コピーは書いたり、つくったりするものではなく、チョイスするもの」というスタンスで仕事をしている[1]

企業同士の広告・CMをメディアで見て、相手に好感を持ってもらう、差異をつくるなど…そうした消費者の興味を持ってもらう競争について「広告はケンカだ。」と発言したり、また競争相手の企業が10枚のポスターを貼ってキャンペーンしたのに対し、それを3枚のポスターで対抗できるように、アイデアを思案することを「広告のクリエイティブは、予算節減の工夫だ。」といった名言を持つ一方で、桃井かおりが出演し、「世の中、バカが多くて疲れません?[2]のセリフで知られる、エーザイチョコラBBのCMのように身も蓋もない表現で物議を醸したこともある。

受賞歴

  • カンヌ国際広告映画祭金賞
  • 朝日広告賞
  • 毎日広告デザイン賞

他多数。

著作

  • 「コピーライターの仕事~プロの世界、仕事の魅力」(ワニブックス・1990年)
  • 「みんなのつぶやき万能川柳」シリーズ(毎日新聞社
  • 「この骨董が、アナタです。」(講談社
  • 「仲畑広告大仕事」(同上)
  • 「コピーのぜんぶ」(宣伝会議
  • 「みんなに好かれようとして、みんなに嫌われる。勝つ広告のぜんぶ」(同上)
  • 「ホントのことを言うと、よく、しかられる。勝つコピーのぜんぶ」(同上)

これまで手掛けたキャッチコピー

  • タコなのよ、タコ。タコが言うのよ。(サントリー・マイルドウォッカ樹氷
  • 樹氷にしてねと、あの娘は言った。(同上)
  • みんな悩んで大きくなった。(サントリー・サントリーゴールド900)
  • トリスの味は人間味。(サントリー・トリスウイスキー)※カンヌ国際広告映画祭金賞受賞
  • 働いているお父さんより、遊んでるお父さんのほうが、好きですか。(サントリー・オールド
  • ウイスキーも音楽もなかったら、心がグシャグシャになってしまうなぁ。(サントリー・ホワイト
  • 初めて会ったのに、親友だと思った。(同上)
  • いい曲は、企画書からは生まれない。(同上)
  • 知性の差が顔に出るらしいよ……困ったね。(新潮社・新潮文庫)
  • 知性って、すぐ眠りたがるから……若いうちよ。(同上)
  • おしりだって、洗ってほしい。(TOTOウォシュレット
  • やっぱり、おしりは締まり屋さん。(同上)
  • 好きな人のもにおうから。(同上)
  • カゼは社会の迷惑です。(武田薬品工業・ベンザエース)
  • ベンザエースを買ってください。(同上)
  • そこにカゼがある限り、ベンザエースは許しません。(同上)
  • キミがつらそうだと、あのヒトもつらい。(リクルート・Bing)
  • キミが幸せになっても、誰も困らない。(同上)
  • キミが幸せだと、よろこぶヒトは多い。(同上)
  • 夢中になれば、みんな少年少女だね。(ニチイ・現マイカル
  • 大人の気持ちが、子供にわかって、たまるか。(ワールド ゴールド カウンシル)
  • 私は、あなたの、おかげです。(岩田屋
  • できれば、あなたと、くっつき虫。(同上)
  • にんげん、岩田のつもりです。(同上)
  • 昨日は、何時間生きていましたか。(パルコ
  • 荒野に出ることだけが、冒険じゃない。(同上)
  • 学校じゃ教えてくれなかったけど、知りたいこと、知りたかった。(同上)
  • 目的があるから、弾丸は速く飛ぶ。(同上)
  • ケンカはやめた。だから、もう負けない。(同上)
  • 死んだらどうなるのだろう。考えていたら涙が出ちゃった。(同上)
  • 心を動かしても、汗を流せることを知った。(同上)
  • 賛成1、反対9。どちらも、まちがいじゃない。(同上)
  • 奇麗なものと奇妙なものは、どこか似ているね。(同上)
  • あなたも、わたしも、ちょっとずつ狂っています。(同上)
  • こんなに憎み合うのは、あんなに愛し合ってたからですか。(同上)
  • キミがいないと、みんなさみしがるよ。(同上)
  • 顔は、ハダカ。(コーセー・アンテリージュ)
  • 毎日の、毎日が、変わる。(毎日新聞社毎日新聞
  • なんだ、ぜんぶ人間のせいじゃないか。(同上)
  • 歴史は、あっちこっちでつくられる。(朝日新聞社朝日新聞
  • 勝つのは、負けるより大変だ。(講談社・CADET)※現在は廃刊。
  • 好きだから、あげる。(丸井・1980年キャンペーンCM)
  • ソニー製ではない。ソニー生まれである。(SONYAIBO
  • 「むずかしい」を「カンタン」に。(IBM
  • 反省だけなら猿でもできる。(大鵬薬品工業・チオビタドリンク)
  • 無くしてわかるありがたさ。親と健康とセロテープ。(ニチバンセロテープ
  • 目のつけどころが、シャープでしょ。(シャープ
  • ではどこで選ぶか? お答えします。(同上)
  • 今日、私は、街で泣いている人を見ました。(エーザイ・チョコラBB)
  • 男が、大泣きしたって、いいじゃないか。(月桂冠
  • 明るいニュースだけの新聞は無いか?(同上)
  • 人類はアブナイものをつくり過ぎた。(農協
  • 農業が壊れたら、日本人は全員会社員になるのだろうか?(同上)
  • 痛いのはイヤだ。苦しいのはイヤだ。殺されるのもイヤだ。(アムネスティ・インターナショナル
  • 仲良くしていれば、ケンカにならない。(住友林業
  • 会社、コンクリート。帰ったら、木の家。妻、美人。(同上)
  • 愛とか、勇気とか、見えないものも乗せている。(JR九州
  • 夢とか、希望とか、見えないものも乗せている。(同上)
  • 顔を見ないと話せない。顔を見たら話さなくていい。好きなふたりは、行ったり来たり。(同上)
  • 一緒なら、きっと、うまく行くさ。(セゾンカード)
  • 生きるが勝ちだよ、だいじょうぶ。(同上)
  • いわゆる、キミの味方になれそうだ。(同上)
  • あなたの人間は、大丈夫ですか。(同上)
  • 技はいろいろ、カードはひとつ。(同上)
  • 百年、貯めたっていい。(同上・永久不滅ポイント)
  • ココロも満タンに、コスモ石油。(コスモ石油
  • アデランスは誰でしょう?(アデランス
  • 地球の上、野菜があってよかった。(ピエトロ・ドレッシング)

他多数。

脚注

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  1. マドラ出版広告批評の別冊① 仲畑貴志全仕事」1983年
  2. このCMは桃井かおりが言う「バカ」というセリフに、視聴者から苦情が相次ぎ、その後「世の中、お利口が多くて疲れません?」というセリフに差し替えられて放送されることになった。元々クレームを想定してCMを企画・撮影していたこともあり、大きな騒ぎにはなることなく済んでいる。