予備自衛官補
予備自衛官補(よびじえいかんほ、Reserve Candidate)とは、 陸上自衛隊において採用している官職である。一般国民より公募され、教育訓練終了後は非常勤公務員の予備自衛官となり、有事・訓練等の際は召集され、陸上自衛隊における各任務に就く。RCの略称は徽章のデザインにもなっている。
目次
概要
自衛隊勤務未経験の一般国民を対象に公募され、試験を経て採用される。身分は非常勤の防衛省職員(特別職国家公務員)・自衛隊員であり、防衛省職員の定員外の扱いである。所定の教育訓練を修了した後、予備自衛官に任官する。なお、予備自衛官補を経て予備自衛官になった者は公募予備自衛官といい、自衛官退職者たる予備自衛官と区別される。
教育訓練招集に応招する義務のみを有し、 教育訓練招集手当がある。予備自衛官補制度は平成13年(2001年)に創設され、平成14年度(2002年度)から陸上自衛隊で採用されている。予備自衛官補には階級が存在せず、その官職名をもって称される。但し、予備自衛官任官後は技能試験による任用であればそれぞれの領域において定められた階級、一般の予備自衛官としての任用であれば予備2等陸士の階級に指定される(予備自衛官任用後の職種・階級については、公募予備自衛官の項参照。ちなみに任官後については、勤務成績により昇進の機会がある。但し、技能公募はともかく、一般公募についての昇進は予備陸士長を上限としているテンプレート:要出典)。
この制度の目的は、一般国民が自衛隊に接して理解を深める機会を設け、予備自衛官への門戸を広く開放すること、および優れた専門技能を持つ民間人の力を防衛力に組み込むことにある。また最近では、一般大学に通う幹部候補生学校を目指す学生が、その士気向上の為に志願するケースが目立っている。予備自衛官補には一般公募と技能公募があり、それぞれ筆記試験・口述試験・適性検査・身体検査が科せられる。
一般公募
18歳以上34歳未満で自衛官であった期間が1年未満(未経験含む)の者が受験でき、3年間で合計50日の教育訓練に出頭し、修了後に予備自衛官に任用される。
任用後は後方地域での警備要員等になるため、現職自衛官の新隊員教育とほぼ同じ教育課程を修了する必要がある。具体的には基本教練(隊列行進や敬礼など)から始まり、歩哨・斥候、野戦築城、長距離行進、武器の分解結合、戦闘訓練、射撃訓練等が行われる。
現職新隊員教育より訓練期間が短いため、体力練成は各自が招集期間以外に自主的に行うことが推奨されている。
技能公募
語学、医療、車両整備等の専門技術者たる予備自衛官になることを目的とする。
受験資格及び必要な資格免許・実務経歴等
18歳以上で自衛官であった期間が1年未満(未経験含む)かつ所定の資格に応じ53~55歳未満。(下表参照)
平成25年度より弁護士(法務)・司法書士(法務)・臨床心理士(衛生甲)が追加されている。
資格免許・実務経歴一覧(予備自衛官補(技能公募)募集要項(平成23年度)より抜粋) | ||
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技能区分 | 国家免許資格等 | 年齢 |
衛生(甲) | 医師(経験年数12年以上) 薬剤師(経験年数16年以上) |
55歳未満 |
医師(経験年数12年未満) 薬剤師(経験年数16年未満) |
54歳未満 | |
衛生(乙) | 理学療法士 作業療法士 診療放射線技師 臨床検査技師 看護師 救急救命士(准看護師の資格を併せて保有する者) 栄養士 准看護師 歯科技工士 |
53歳未満 |
語学(英語) | 外国語短期大学等以上卒業者(※1)又は実用英語技能検定(英検)準1級以上 若しくはこれと同等以上の能力(※2)を有する者 | |
語学(ロシア語) | 外国語短期大学等(※1)以上卒業者又はこれと同等以上の能力(※2)を有する者 | |
語学(中国語) | ||
語学(朝鮮語) | ||
整備 | 一級大型又は小型自動車整備士 一級又は二級二輪自動車整備士 二級ガソリン自動車整備士 二級ジーゼル自動車整備士 | |
情報処理 | システムアナリスト プロジェクトマネージャ
上級システムアドミニストレータ | |
通信 | 第一級総合無線通信士 第二級総合無線通信士
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電気 | 第一種、第二種又は第三種電気主任技術者 | |
建設 | 一級又は二級建築士 測量士 測量士補 1級又は2級建設機械施工技士 | |
放射線管理 | 第一種又は第二種放射線取扱主任者 | |
※1 外国における大学の卒業者等を含む。 ※2 国際連合公用語英語検定試験A級以上、通訳技能検定試験または通訳案内士試験合格者等 |
訓練日数は2年間で合計10日である。訓練内容は一般公募に比べて少ないが、基本教練から射撃まで最低限必要なことは一通り行われる。
予備自衛官補の宣誓
予備自衛官補は、自衛隊法第五十三条及び自衛隊法施行規則第四十一条の三に則り、入隊時に以下のような文章の記された宣誓文に署名捺印をする事が義務付けられている。
予備自衛官補制度の今後の動向
防衛省内に設置された「防衛力の人的側面についての抜本的改革に関する検討会」が平成19年(2007年)に同省に提出した「防衛力の人的側面についての抜本的改革報告書」では、今後の検討課題として特に医療、語学、情報通信など特殊技能を有する者については予備自衛官補制度の海上自衛隊、航空自衛隊への導入も検討する方針を示している[2]。
著名な予備自衛官補経験者
- 技能公募
- 荒木和博(拓殖大学教授・特定失踪者問題調査会代表)
- 若林亜紀(ジャーナリスト)
- 山本健一(いわき市議会議員)
- 清水哲(元印西市議会議員)
- 金子快之(札幌市議会議員)
- 一般公募
- 古賀壮志(日野市議会議員)
- 伊勢田幸正(富士見市議会議員)
- 谷本進(俳優・アーティスト・劇団NEVER LOSE主宰)
- 高沢一基(前板橋区議会議員・日本文化チャンネル桜キャスター)
- 上島義盛(世田谷区議会議員・日本文化チャンネル桜キャスター)
- 佐波優子(フリーアナウンサー、日本文化チャンネル桜キャスター、「祖父たちの戦争体験をお聞きする孫の会」代表)
- 葛城奈海(女優・日本文化チャンネル桜キャスター)
- 岡田真理(フリーライター)
- 宮本佳那子(歌手・声優)
関連書籍
- いざ志願! おひとりさま自衛隊(2010年8月文藝春秋刊)
- 第4期予備自衛官補一般公募の岡田真理が、予備自衛官補の招集教育訓練についてを記したエッセイ・ルポ
関連項目
脚注
- ↑ テンプレート:PDFlink(防衛省 情報検索サービス)
- ↑ テンプレート:Cite web