システムアーキテクト試験
テンプレート:Ambox テンプレート:資格 システムアーキテクト試験( - しけん、Systems Architect Examination、略号SA)は、情報処理技術者試験の一区分である。試験制度のスキルレベル4(スキルレベルは1~4が設定されている。)に相当し、高度情報処理技術者試験に含まれる。
概要
この試験は対象業務の分析から要件定義・基本設計・詳細設計・プログラミング・テストといった一連の作業に係わる者、いわゆるシステムエンジニアを対象としている。
業務分析・システム設計以外の情報技術そのものの深い知識はそれぞれの専門家(スペシャリスト)に任せるという姿勢から、問われるデータベースやネットワーク、セキュリティなどの出題はスペシャリスト試験ほど多くはない。
その反面、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験ではほとんど要求されなかった各種専門的な業務分析や業務知識など、システム開発の上流工程で必要な能力を扱う問題が全面に出題される。
特に午後問題では、さまざまな組織の業務過程を知っていないと問題文の読解も困難となる。
学生あるいは情報処理業務未経験者の受験者はきわめて少なく合格者も例年一桁の人数であることからも、この試験が情報処理業務の経験者を主な受験者層として想定していることがうかがえる。技術一本槍では合格が非常に厳しい区分であり、主に理工系の専門教育を受けてきたシステムエンジニア(いわゆる理系SE)はこのあたりからキャリアとしての壁に直面する者もでる。
このため、この試験はシステムエンジニアの能力及び業務経験を認定し、プロジェクトリーダレベルの能力を備えていることを証明すると受け止められている。
沿革
- 昭和46年(1971年)特種情報処理技術者試験新設、年齢制限は受験する年の4月1日時点で25歳以上。
- 昭和61年(1986年)情報処理技術者試験は年二回実施されることとなり、特種情報処理技術者試験は春期に年一回実施。
- 平成6年 (1994年)制度改正によりアプリケーションエンジニア試験と改称、秋期に年一回実施、業務経歴書(経歴の無い者は「業務経歴なし」と記した書類)の提出を要した。
- 同時にシステムアナリスト試験が新設された影響を受けて応募者数・受験者数が減少しはじめた。
- 平成13年(2001年)制度改正により形式変更、年齢制限および業務経歴書の提出を撤廃、科目免除制度導入。
- 同時に情報セキュリティアドミニストレータ試験が新設された影響を受けて更に応募者数・受験者数が減少した[1]。
- 平成17年(2005年)午前の試験時間延長及び出題数増加。
- 春期のみに実施されていたソフトウェア開発技術者試験が秋期にも実施されるようになった影響を受け、応募者数・受験者数がともに前年と比べて30%程度以上減少した[1]。
- 受験対象者はテクニカルエンジニア(データベース)試験(レベル4)やプロダクションエンジニア試験などの合格者とし、受験者の90%以上はこれら下位試験の合格者である。
- 平成21年(2009年)制度改正により形式変更およびシステムアーキテクト試験と改称。
形式
- 午前I
試験時間50分。四肢択一式(マークシート使用)で30問出題され全問解答。他の高度情報処理技術者試験と共通のスキルレベル3相当の問題が出題される。満点の60%を基準点とし、基準点以上で午前I試験通過となる。基準点に達しなかった場合は不合格で、午前II・午後I・午後IIは採点されない。
- 午前II
試験時間40分。四肢択一式(マークシート使用)で25問出題され全問解答。スキルレベル4かつ重点分野は「システム開発技術」「システム企画」である。スキルレベル3の中で試験対象は、「コンピュータ構成要素」「システム構成要素」「データベース」「ネットワーク」「情報セキュリティ」「ソフトウェア開発管理技術」「システム戦略」である。満点の60%を基準点とし、基準点以上で午前II試験通過となる。基準点に達しなかった場合は不合格で、午後I・午後IIは採点されない。
- 午後I
試験時間90分。記述の中規模の問題が4題出題され、2題を選択して解答する。満点の60%を基準点とし、基準点以上で午後I試験通過となる。基準点に達しなかった場合は不合格で、午後IIは採点されない。
- 4題のうち1題が組み込みシステムの問題である。
- 午後II
試験時間120分。論文課題形式で3題出題され1題を選択して解答。業務経験を踏まえて小論文(2200字以上3600字以下)で論述する。A,B,C,Dのランクで採点され、Aランクで最終的に合格となる。Aランク以外の場合は不合格。
- 従前のアプリケーションエンジニア試験と比較し、記述する文字数が若干少なくなっている。
- 3つのテーマのうち1つは「組込システム」関連のテーマで出題されている。これにあわせ、解答用紙の最初にある「論述の対象とするシステムの概要」(開発規模・工数や対象業務を記入する)についても、組み込みシステム用に「論述の対象とする製品又はシステムの概要」が新たに設けられ、組み込みシステムのテーマを選択した場合は、ここに開発規模・工数や対象業務を記入する。
科目免除
下記の試験に合格又は基準点を得れば2年間、午前Iの科目免除が受けられる。
- 応用情報技術者試験に合格すること。
- いずれかの高度情報処理技術者試験に合格すること。
- いずれかの高度情報処理技術者試験の午前Iに基準点以上を得ること。
参考
アプリケーションエンジニア試験
- 午前
試験時間120分。四肢択一式(マークシート使用)で55問出題され全問解答。IRT(項目応答理論)によって、最低200点~最高800点の5点刻みで採点され、600点以上で合格(午前試験通過)である。
- 当初から平成12年(2000年)までは、試験時間150分、80問出題。
- 平成13年(2001年)から平成16年(2004年)までは、試験時間90分、50問出題。また、システムアナリスト試験、プロジェクトマネージャ試験と問題が共通化された。
- 午後I
試験時間90分。業務システムの設計構築に関して主題の設定となる文章とそれに対するいくつかの小問からなる問題(大問)が4問出題。うち2題が必須、残りの2問のうち1問いを選択し解答。素点採点で、最低200点~最高800点の5点刻みで採点され、600点以上で合格(午後I試験通過)である。ただし、午前試験が600点に満たなかった者は採点されない。
- 午後II
試験時間120分。3つのテーマから1つを選んで、業務経験をふまえて小論文(2400字以上4000字以下)を書く。採点はA,B,C,Dの4段階で評価され、Aのみ最終的に合格となる。ただし、午後I試験が600点に満たなかった者は採点されない。
科目免除
平成13年(2001年)よりソフトウェア開発技術者試験、システムアナリスト試験、プロジェクトマネージャ試験のいずれかに合格すればその年の初めから2年間、午前の科目免除が受けられた。
その他
- 合格又は午前Iに基準点以上を得れば2年間、他の高度情報処理技術者試験の午前Iの科目免除が受けられる。
- アプリケーションエンジニア試験の合格者は、合格の年の初めから2年間、平成13年(2001年)からはシステムアナリスト試験、プロジェクトマネージャ試験の午前の科目免除が、平成21年(2009年)からは高度情報処理技術者試験の午前Iの科目免除が受けられた。
- 情報処理技術者試験センターの統計資料による累計値
区分 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | |
---|---|---|---|---|
特種情報処理技術者 | 173,438 | 14,114 | 8.1 | |
アプリケーションエンジニア | 平成6年度から平成12年度 | 262,902 | 19,419 | 7.4 |
平成13年度から平成20年度 | 75,736 | 6,170 | 8.1 |
統計資料の応募者・受験者・合格者の推移表[2]において、上記の数値は、本試験に計上されている。
- 科目免除又は任用資格、これには従前の特種情報処理技術者およびアプリケーションエンジニアを含む。
- ITPro(日経BP)の「社員に取らせたいIT資格」というアンケートの技術職では2005年版以降ソフトウェア開発技術者よりも上位にランクされている。特に2007年版ではアプリケーションエンジニアがプロジェクトマネージャとPMPに次ぐ3位にランクされている[3]。
脚注
- ↑ 1.0 1.1 松田幹子・松原敬二・加藤信行 『情報処理教科書 アプリケーションエンジニア 2008年度版』 翔泳社、2008年、xiii頁。
- ↑ テンプレート:PDFlink(情報処理技術者試験センター)
- ↑ 2010年版、2009年版、2008年版、2007年版、2006年版、2005年版
関連項目
外部リンク
- 情報処理技術者試験センター
- 平成21年度からの試験体系図(新着情報)
- システムアーキテクト試験(SA)(情報処理技術者試験制度 - 制度の概要)
- アプリケーションエンジニア試験(AE) 平成13年度春期から平成20年度秋期まで(同上)
- アプリケーションエンジニア試験(AE) 平成6年度春期から平成12年度秋期まで(同上)
- 特種情報処理技術者試験 昭和46年から平成5年秋期(同上)