理学療法士

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テンプレート:国際化 テンプレート:資格 理学療法士(りがくりょうほうし、Physical TherapistまたはPhysio Therapist、略してPT)は、医療従事者(コ・メディカルスタッフ)の一員であり、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、視能訓練士(ORT)と共に、リハビリテーション専門職と称されるうちの一つである。

定義

厚生労働大臣免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示のもと「理学療法」を行うことを業とする者をいう。 テンプレート:Quotation

業務

主な業務としては、診療の補助として理学療法を行なう[1]。それは一般に考えられている、加齢、事故などによる身体機能障害からの回復目的のトレーニングのみならず、脳卒中での麻痺などから、新生児の運動能力の発達の遅れ、循環器呼吸器内科難病疾患等の身体的な障害を持つ人に対して、医師の指示の下、その基本的動作能力の回復を図ることを目的に、治療体操その他の運動(運動療法という)を行わせ、及び電気刺激、温熱、寒冷、光線、水、マッサージなどの物理的手段(物理療法という)を加える者である。その物理的治療手法による治療を理学療法といい、理学療法・作業療法言語聴覚療法を治療の中心としたものを特にリハビリテーション病院と呼ぶ。

なお、日本においては理学療法士は業務独占資格ではない為、理学療法自体は理学療法士でなくても法律上、業として行うことができる。たとえば、日本運動器科学会(旧日本運動器リハビリテーション学会)では、日本整形外科学会(平成23年4月1日より公益社団法人化)専門医が所属する医療機関に勤務している運動器リハビリテーション従事者(看護師准看護師あん摩マッサージ指圧師柔道整復師など)を対象に運動器リハビリテーションセラピスト認定試験を行い、認定を受ければ運動器リハビリテーションセラピスト(通称:みなしPT)として、定められた基準の施設において、医師と理学療法士の指示・監督の下に、一部の保険点数に関わる立場になれる[2]

作業療法士との違い

一般的に理学療法は運動などの反復が多いが、一方、作業療法士(OT)のおこなう作業療法は、様々な作業の複合的動作バリエーションの中で機能回復を目指す。そのため理学療法士が行うリハビリの目的は「基本的動作能力の回復」であり、障害や後遺症のある「部位」に注目し、運動療法物理療法日常生活活動(ADL)といった手法を使用する。対して、作業療法は、理学療法士のリハビリで基本的動作が回復した患者に対しおこなわれ、「応用動作と社会的適応のための能力回復」つまり日常生活をスムーズに送るための複合的動作を可能とするためのものであり、「創作活動」(手工芸や芸術)や「レクリエーション」(遊び、スポーツ)、日常動作である「生活活動」(食事、料理、掃除、読書等)を通し、次の段階である社会復帰に向けて行われるものである。「体育会系の理学療法士、文化系の作業療法士」[3]などと言われることがある。

有資格者数と組織率

超高齢化社会が進み、社会保障が大きな課題となるなかで、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士の養成が急務となり、養成校開設の規制緩和が行われた。伴い平成12年以降より養成校は急増。とりわけ理学療法士養成校は乱立ともいわれる異常増加が生じた為、有資格者はわずか数年で激増し、平成24年現在には10万人を超えている[4]職能団体である日本理学療法士協会への入会率は約80%と高い組織率を誇る。現在、日本理学療法士協会会員数は、世界理学療法連盟加盟団体中、一位である[5]

今後の課題

  1. 介護予防の職域での活動
    予防は現状では高齢者を対象とした地域支援事業を中隔にする予防事業、要支援1,2 を対象とした介護予防の職域がある。この介護予防に対して介護予防認定理学療法士研修を過去5年間継続し、約2,000名を育成している。さらに、一方で特定健診、特定保健指導を中隔にした生活習慣病予防の観点からの、特に糖尿病に対する運動療法への参画は重要な課題であり、この分野は従来の職域と異なり、理学療法士の業務の位置づけや、報酬設定が不十分なのが現状であり、理学療法士の活動モデルを提示することが課題解決の糸口となりうる。
  2. 産業分野での活動
    日本では産業医を中心とした業務であるが、欧米では作業労作状況の改善を図るために環境改善、運動療法の実施など様々な就労環境に対応した活動が行われている。日本においても理学療法士のこの分野への参画により動作分析能力や動作指導などの効果的な活用が望まれる。
  3. 教育
    理学療法士の養成校は2000 年の132 校(入学定員4230人)から2012 年には249校(入学定員13224人)に増加している。年間10,000 人以上もの新理学療法士を輩出するに至り、有資格者の飽和は明白である。したがって、さらなる職域の拡大が急務であり、現在既に深刻化している雇用待遇の低下を抑えるため、有資格者の専門性及び質の向上が重要課題とされる。

各国における認知度

理学療法士は、理学療法の発祥地と言える米国、ドイツを筆頭に、スウェーデンやイギリス、オーストラリアなどのリハビリテーション先進国では、広く認知され地位が確保されている。日本については認知度・地位とも高いとは言えない。

リハビリテーションについては医療現場では理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が主として関わるが、介護やその他のアスリート等の分野においては、理学療法士の他に、類似資格である柔道整復師、健康運動指導士、マッサージ師、アスレチックトレーナーなど様々な職種が関わっており、理学療法士としての職域は必ずしも確立されてはいない。しかし、日本においても理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、いわゆるリハビリテーション専門職が、脳血管障害などの中枢神経疾患や小児の発達障害、整形外科疾患、呼吸器疾患、循環器疾患、難病疾患等、幅広い分野でその重要性は広く認識されつつある。全国的な「リハビリテーション病院」の増加は現代医療に対するニーズを反映しているものと言えよう。理学療法士の職域の確立、社会保障に関わる問題にたいして、様々な政策提言が求められている。これらを反映すべく日本理学療法士連盟の発足、また2009年の衆議院選挙で理学療法士初の国会議員(山口和之)が誕生している。

養成校(養成施設)

理学療法士の国家試験を受験するためには、養成校で3年以上学び、必要な知識と技術を身につけることが必要である。日本では専門学校教育においてこの職種の養成教育が始まり、当初は養成校の数は少なかったが、近年急激に増設された[6]。現在、養成校には大学(82校)、短期大学(5校)、4年制専門学校(82校)、3年制専門学校(80校)、特別支援学校(視覚障害者が対象)があり、より専門的な知識を身に付ける場合や研究職をめざす場合などは大学院もある(修士課程・博士課程)。学校総数249校(募集校 239校,定員13,224名)[7]

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その他

理学療法士の免許を受けている者は、教育職員検定により特別支援学校自立教科助教諭の臨時免許状が与えられる制度がある[8]。臨時免許状取得者は定められた経験、単位修得により普通免許状が与えられる。

出典

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関連項目

外部リンク