レギオン (架空の怪獣)
レギオンは、映画『ガメラ2 レギオン襲来』(以降、『2』)に登場する宇宙怪獣。
目次
概要
隕石と共に地球へ飛来した。炭素化合物(有機物)で形成されている地球上の生物とは異なり、ケイ素(シリコン)の化合物で形成されているケイ素生物であり、未知の絶縁体で構成された甲殻は各種の電磁波を反射する。
「レギオン」とは、新約聖書のマルコによる福音書5章9節「主が、『名は何か』とお尋ねになると、それは答えた。『わが名はレギオン。我々は、大勢であるがゆえに』」に現れる言葉。ローマ軍団のレギオン(古典ラテン語:legio)から転じているが、ここでは男に取り付いた悪霊が自らのことを指して呼んでいる。劇中では、ガメラを襲ったソルジャーレギオンの群れを見た自衛隊隊員により、「大勢」の意味から名づけられた。
次作『ガメラ3 邪神覚醒』(以降、『3』)にも、『2』の映像流用で登場している。
当初、平成ガメラシリーズ2作目の敵怪獣候補にはギロンや大型バルゴンが挙がっていたが没になり、自由な発想ができるよう新たな宇宙怪獣に決まった[1]。
監督の金子修介は『宇宙大怪獣ギララ』をイメージした頭部で初期デザインを描いており、ヘラクレスオオカブトやバッタ、カニ、シャコなどといった節足動物がマザーレギオンのデザインモチーフとなっている[1]。巨大レギオンのスーツ造形は品田冬樹が行っているが、金子は造形処理ディテールのイメージにオーラバトラーのサーバイン(を品田がB-CLUBで造形したフィギュア)を指定しているという。前述のような節足動物をモチーフにしたデザインにより、演じるスーツアクターのフォルムを感じさせないよう工夫された[1]。
スーツアクターはマザーレギオンが吉田瑞穂(前方部分)、田村浩一(後方部分メイン)、佐々木俊宜(後方部分サブ)、 (巨大レギオンのスーツは2人が入って演じる[1])。ソルジャーレギオンが秋山智彦、渡部佳幸、小林勇治、中田晶宏。
レギオンと連携して存在する巨大なプラントレギオンは、金子がジュランを登場させようと考えていた『ウルトラQ』の映画化企画が中止されたことに対するリベンジとされる。
生態
高さ100メートルに及ぶ「草体」と名付けられた巨大な植物状の「レギオンプラント」と、全長160メートルに達する「マザーレギオン」の共生関係を中心に、体長1 - 2メートルの小型個体「ソルジャーレギオン」によるアリやハチのような社会性(社会性昆虫)を持った群れを形成する。
レギオンプラントは、土中の二酸化ケイ素などを分解してケイ素と酸素を産出する。マザー及びソルジャーレギオンは、そのケイ素を食料としている[2]。また、ソルジャーレギオンはガラスなどからケイ素を直接摂取する場合もある。宇宙からの外来種であるレギオンは、大気中の酸素濃度を改変することで地球の生態系自体を破壊してしまうため、地球上の生物とは共存できない。
マザー及びソルジャーレギオンは、電磁波を知覚して個体同士のコミュニケーションに用いており、群れの会話を阻害する特定波長の電磁波発生源を攻撃する。劇中では携帯電話などの電磁波発生源を所持している人間や、自らの通信サイクルと同じ周波数を放つパチンコ店のネオンサインなどを攻撃している。また、レギオンが大都市を標的にしたのは、電磁波を発するものが多い土地を攻撃し、占領するための行動だと推測された。
劇中ではソルジャーレギオンの死骸が解剖調査にかけられており、筋肉に相当する器官が存在せず、体内に詰まったガスの圧力で関節を動かしているものと推測された。
繁殖サイクル
宇宙空間を漂流しているレギオンプラントの「種」は、地球のような惑星へ落下すると根を張り、土中の成分からケイ素と純酸素の大量生産を開始する。これと共に孵化したマザーレギオンは、胸部の「エッグチャンバー」と呼ばれる器官から無数のソルジャーレギオンを生み出し、短時間で大繁殖する。マザーとソルジャーはプラントを守り育て、高濃度酸素を利用した大爆発によって新たなプラントの「種」と新たなマザーの「卵」を宇宙へ打ち上げる。
本編での繁殖活動
最初の種は、北海道札幌市郊外の支笏湖付近へ落下した。ソルジャーレギオンの群れはガラスなどを吸収しながら地下を移動し、すすきの駅付近で地下鉄の乗員乗客と救助に向かった機動隊を襲撃した。その後、発芽したレギオンプラントはロビンソン百貨店札幌店[3]を突き破り、巨大な花状構造を展開した。自衛隊はプラントの根を地下鉄構内のみ爆破した後、ソルジャーレギオン駆除に取りかかろうとするが、ガメラが飛来してプラントを破壊し、起爆と発射を阻止する。しかし、無数のソルジャーレギオンに襲われたガメラは空へ逃れ、その後に登場したマザーレギオンも飛び去った。
レギオンが仙台市の仙台駅付近に出現し、再び発芽したプラントは札幌より温暖な気候のために急成長する。ガメラは霞目飛行場でマザーレギオンと戦った後、レギオンプラントにたどり着いた。花が引き倒されて種子打ち上げは阻止されるが、完全に破壊される前に爆発が起こり、仙台は壊滅してしまう。爆発の直撃を浴びたガメラも全身が炭化し、仮死状態となった。
再三に渡って種子打ち上げを阻止されたレギオンは、総力を挙げて東京を目指す。地下から出現したマザーレギオンは、群馬県で防衛線を張っていた自衛隊の攻撃をものともせず、復活して飛来したガメラとも優勢に戦う。しかし、途中から自衛隊がガメラの援護を始めたために形成は逆転する。ソルジャーレギオンの群れは発信所のアンテナへおびき寄せられて対戦車ヘリコプターに殲滅され、マザーレギオンは栃木県利根川の最終防衛ラインでガメラのウルティメイトプラズマを受け、粉砕された。
こうして、地球での繁殖や別惑星への種子発射は、全て失敗に終わった。
ガメラ3との関連
レギオン自体は地球外生命体であり、地球への飛来も偶然によるものと思われていた。しかし、『3』では地球(特に日本)でのマナの消耗が、レギオンの飛来と何らかの形で影響していた可能性が指摘されている。また、レギオンの飛来とガメラのマナを消耗しての攻撃が、『3』におけるギャオス・ハイパーの大量発生とイリスの出現の原因となったと推論されている。
データ
マザーレギオン(巨大レギオン)
- 全高:140メートル(最大成長時)[2]
- 全長:160メートル(最大成長時)[2]
- 体重:600トン(最大成長時)[2]
- 飛行速度:マッハ1(亜成体時)[2]
- 地中進行速度:時速50キロメートル[2]
- 出身地:不明(外宇宙のどこか)[2]
- 好物:珪素(シリコン)[2]
- 身体構造:甲殻類に似た構造を持つ。珪素質で構成される体組織は半導体の化学構造に似ている。高い耐久力を持ち、自衛隊の攻撃にはほぼ無傷で耐える。
- 主要器官
- ハイバンド電子眼[1](目):あらゆる波長の電磁波を視覚として認識できる[2]。普段は青色だが、興奮すると赤く発光する。
- 口(大角):左右に開く大きな角状の器官でマイクロ波を集束して打ち出す[2]。マイクロ波シェルを打ち出そうとした隙を突いて、ガメラに力ずくでもぎ取られた。中心にある部分からはレッドロッドを複数本発生させられる。
- エッグチャンバー(卵巣)[2]:腹部にあるオレンジ色に発光する器官。1時間で100匹単位のソルジャーレギオンを生み出す[2]。最終決戦で、ガメラのエルボークローによって破壊される。
- スレッジアーム[1](大槌腕[2]):武器としても使われる前脚で、地中潜行時には掘削機ともなる[2]。
- サイズレッグ(太鎌脚)[1]:鎌のような2本の後脚。自在に動き可動範囲が広く、体正面に突き出したり、地中に潜った状態から地上の敵を攻撃することもできる。パワーも強く、飛来したガメラを叩き落としたり、ガメラの甲羅の端部を大きく削り取るほどの威力がある。
- 甲羅[2]:甲羅状の外骨格は硬質シリコン樹脂によく似た絶縁物質でコーティングされ、あらゆる攻撃を弾き返す[2]。
- 干渉波クロー[2]:頭部の周りに10本(5対)の爪状器官がパラボラ型に配置されており、各種の電磁波を放射する[2]。主にソルジャーレギオンとの交信にも使われるが、ガメラのプラズマ火球を中和して無効化したり、通信や電子機器などに干渉して妨害することも可能[2]。ただし、デリケートな器官であるため耐久性は低く[2]、完全に妨害しきれなかった対戦車ミサイルの直撃で破壊されている。欠損のある状態ではプラズマ火球を無効化しきれない。
- 主な攻撃手段
- マイクロ波シェル[2]:頭部の大角=口部分が左右に開いた状態で、身体の最上部にある大きな角と分かれた角の3本の間でマイクロ波を収束し、打ち出す。青く発光する光線で、命中した対象物は一瞬で高温に加熱され、蒸発する。
- レッドロッド(赤熱鞭)[1]:大角を引きちぎられた頭部の中心の口部分から飛び出す赤く発光する触手。非常に細いが自在に動き、高熱を発して威力も高い。ガメラの身体をやすやすと貫く。テンプレート:要出典範囲。
劇中では「マザーレギオン」の名称は登場せず、「巨大レギオン」と呼称される。また、飛行能力を持っている成長途中の状態は「亜成体[2]」「幼体レギオン[1]」などと表記される(劇中で呼称する場面は無い)。
ソルジャーレギオン(小型レギオン)
マザーレギオンによって生み出される兵隊。大きさは、体長3メートル・体重300キログラムである[1]。体組織は半導体の電子顕微鏡写真に酷似している。
胴体中央に大きな1つの眼を持ち、その両端に小さい眼が2つずつ、計5つの眼を持つ。地下鉄車両の運転席のガラスを吸収し、車両内の乗員・乗客や駆けつけた機動隊員を殺害した。マザーレギオン同様、あらゆる電磁波を視覚として認識可能。マザーレギオンのように光線状のマイクロ波を撃つことはできないが、ミツバチの蜂球のようにガメラに集団で群がり、マイクロ波による加熱攻撃を行った[1]。足利における戦闘では、羽根のある飛行形態でガメラ攻撃に向かったが、電磁波に反応する性質を逆手に取ったNTT北海道職員、帯津の機転で通信施設におびき寄せられ、アンテナに群がったところを対戦車ヘリコプターAH-1Sのロケット弾攻撃によって一掃された。また、名崎送信所内に侵入した1体は渡良瀬が9mm拳銃の連射で駆逐した。草体活動時には活動しない特徴があり、その死骸が発見された場所にはほぼ確実に草体が繁殖している。
劇中では「ソルジャーレギオン」の名称は登場せず、「小型レギオン」と呼称される。別称は「群体レギオン[2]」(劇中で登場する報告書では「Symbiotic Legion」)。また、成長して飛翔する能力を持ったソルジャーレギオンは「翔レギオン(はねレギオン)」と呼称される[1]。
ソルジャーレギオンの着ぐるみは3体製作され スタッフからキャンディーズにちなんでラン、スー、ミキと呼ばれていた。担当は秋山がラン、渡部がスー、小林と中田がミキ[4]。
レギオンプラント(草体)
レギオンが繁殖に使う共生生物。大きさは、全高100メートル・全経60メートル・重量3000トンに及ぶ[1]。高濃度の酸素を利用し、大爆発を起こすことにより宇宙へと種子を打ち上げる。レギオンと草体は、互いの繁殖に欠かすことのできない存在となっている。
札幌と仙台に出現。札幌ではガメラの火球により炎上し、未然に発射は阻止されたが、仙台では霞目飛行場におけるマザーレギオンの妨害により、爆発前の阻止に失敗。ガメラが直前に草体を引きずり倒し、種子を受け止めることで宇宙への発射は防がれたものの、種子の直撃と爆発によってガメラは仮死状態に、仙台はほぼ壊滅した。暖かい場所では成長が早くなる傾向があり、仙台では短時間で種子発射段階まで変化している。活性化すると、夜間であれば花の上に緑色のオーロラが確認される。帯津による計算では、打ち上げ時の酸素爆発によって札幌市中心部6キロメートル四方の範囲は確実に壊滅するという結果が出た。
劇中では「レギオンプラント」の名称は登場せず、一貫して「草体」と呼称される。
脚注
関連項目
テンプレート:ガメラ- ↑ 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 1.11 1.12 てれびくんデラックス愛蔵版 ガメラ2レギオン襲来 超全集(1996年 小学館)
- ↑ 2.00 2.01 2.02 2.03 2.04 2.05 2.06 2.07 2.08 2.09 2.10 2.11 2.12 2.13 2.14 2.15 2.16 2.17 2.18 2.19 2.20 2.21 2.22 劇場パンフレット
- ↑ 店側からの要望で名称は変更されている。
- ↑ 『平成ガメラ パーフェクション』178ページ KADOKAWA/アスキー・メディアワークス、出版