ハチ

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蜂の巣。六角形の部屋が密集してできている。

ハチ(蜂)とは、昆虫綱ハチ目(膜翅目)に分類される昆虫のうち、アリ(ハチ類ではあるが、多くの言語・文化概念上、生活様式の違い等から区別される)と呼ばれる分類群以外の総称。ハバチ亜目の全てと、ハチ亜目のうちハナバチスズメバチ等がこれに含まれる(ハチ目を参照)。

共通する特徴

  • が2対4枚あり、どれも膜質である。後ろの翅は前の翅より小さい。
  • 大あごが発達している。ただしミツバチなどのハナバチ類は大あごが小さく、花のを吸うための器官が発達する。
  • 成長段階は幼虫成虫という完全変態をおこなう。
  • メスの成虫には産卵管が発達するが、産卵管を毒針に変化させた種類がよく知られている。

社会性を持つ蜂の特徴

女王蜂働き蜂など、それぞれの役割が決められており、それにより一生の過ごし方が違う。

  • 蜂の社会はメスが中心で、働き蜂も全てメスである。オスは特定の時期に女王蜂と交尾する為にのみ生まれる。そのため、女王蜂は最初は雌を絶えず産み続け、一定数を過ぎるとオスを産み出す。「働き蜂=メス」というのは厳密には間違いである。
  • 女王蜂の腹の中には精子を貯えておける特殊な袋があり、一度交尾すると長期間に渡り産卵し続けることが可能である。
  • 老化怪我などにより繁殖能力を失った女王蜂は、働き蜂によっての外に捨てられる。幼虫のときから餌を与えられてきた女王蜂は、自分でを獲得する能力を持たないため、飢死してしまう。女王蜂を失った巣では、すぐに新しい女王蜂がたてられる。

分類

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単独生活性のハナバチ(トモンハナバチの一種)

ハチといえばスズメバチアシナガバチミツバチなどが有名で、「大きな巣を作って家族でくらす」「花にやってくる」「毒針で刺されるから危ない」などのイメージが定着している。しかしこれはハチ全体で見ると一部の種類にすぎず、その生態や体つきは多様性に富んでいる。

キバチ科
幼虫が木材を食べて育つ。メスの成虫は木材に穴を開けて産卵するため、非常に硬い産卵管を発達させている。
ハバチ科、ヒラタハバチ科、コンボウハバチ科、ミツフシハバチ科
幼虫は植物のを食べて育つ。幼虫は小型のイモムシとよく似ているが、からだをS字型にくねらせるのが特徴。
ヤドリキバチ科、ヤセバチ上科、ヒメバチ上科、コバチ上科、クロバチ上科、ツチバチ科、アリガタバチ科、セイボウ科
他の昆虫に卵を産みつけ、幼虫はその昆虫の組織を食べながら成長し、最後には殺してしまう捕食寄生蜂モンシロチョウの幼虫に寄生するアオムシサムライコマユバチや、長い産卵管を持つウマノオバチなど多くの種類がいて、寄生する宿主も多様。なかには他のハチの巣に寄生する種類もいる。
タマバチ科
植物の組織内に卵を産みつける。植物にみられる「虫こぶ」にはこのハチの仲間の幼虫によるものが多々ある。
ベッコウバチ科
翅が鼈甲色に透き通った種類が多い。クモを襲って毒針で麻酔し、地面に掘った巣穴に運び込んで産卵する狩りバチ。狩人蜂とも言う。幼虫は麻酔で動けないクモを食べて成長する。タランチュラを狩る「タランチュラホーク」という種類もいる。
スズメバチ科
単独生活の狩りバチであるドロバチ類と、女王バチを中心とした家族生活をするスズメバチ類とアシナガバチ類が分類されている。他の昆虫を狩って幼虫のえさとする。スズメバチ類とアシナガバチ類は巣や自分の防衛のためには敵に容赦ない攻撃をする性格などが知られている。人間への被害(ハチ刺症)も頻繁である。
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獲物を抱えたジガバチ(アナバチの一種)
アナバチ科
クモやシャクトリムシコオロギ類などを襲って毒針で麻酔し、巣に運び込んで産卵する狩りバチ。巣は地中に穴を掘る種類と泥などで作る種類とがいて、狩る昆虫も多様。
コハナバチ科、ハキリバチ科、ミツバチ科
いわゆるハナバチ類。花によくやってくるハチで、花粉や蜜を集めて巣に運び込み産卵するが、ミツバチ科は女王バチを中心とした家族生活をおこなう。からだにたくさんのが生えていて、顕花植物受粉に一役買っている。
ギングチバチ科
2011年にインドネシアで発見されたメガララ・ガルーダなど。

アリとハチ

アリは、一般にはハチとは全く違うかのように扱われるが、分類学上は、アリはハチの中の1分類群である。アリは一般に翅がなく、多くのハチは翅をもつが、ハチの中でもアリガタバチアリバチなど成虫(特に雌)が翅を持たない種もあり、それらは外見上アリに類似する。また、アリの女王と雄アリは翅を持ち、結婚飛行を行う。このときの姿はまさにハチで、特に雄アリはハチに似ている。また、一般にはアリは針を持たないが、一部にはハリアリなど、針を持ち、刺されると痛むものもある。アリは、基本的には肉食で、狩りバチの系統から、地上生活へ進み、独自の進化をしたものと思われる。

蜂刺され

予防策はスズメバチ類を例にすると、巣と遭遇した場合は「巣に近づかず」「見張りのハチを刺激せず」姿勢を低くして巣から速やかに離れる。しかし、威嚇や攻撃を受けた時に手で追い払ったり大声で騒いだりする事は禁物で、直線的に追いかけてくるハチ類から逃れるには姿勢を低くしたり、急角度で曲がるなどの方法が有効である。

ハチ毒Bee venomアピトキシンApitoxin)の成分は主に酵素類:ホスホリパーゼ(phospholipase)ヒアルロニダーゼ(Hyaluronidase)プロテアーゼ(protease)ペプチド類:Melittin キニン kinins 、ほかにヒスタミンドーパミンなどの物質で構成されている[1]。これらの成分の相互作用により痛み、血圧降下、蛋白質の分解(体組織の破壊)、アレルギー症状などの症状を引き起こす。ハチ刺症は2回目以降ではアナフィラキシーショックを起こすことがあり生命に危険がある。万一、刺された場合は、毒の種類に関わらず流水で毒液を絞り出すようにして洗い流す。
刺された場合の処置は、こちらの項を参照。

毒針

ハチといえば毒針で刺すものと思われがちであるが、実際に刺すハチはほんの一握りに過ぎない。
本来、ハチの毒針は、産卵管であった。キバチ類においてはこれを材の中に差し込んで産卵し、寄生バチの場合、宿主の体内に産卵するのに用いられる。このあたりから産卵管に針としての性能が与えられるようになる。狩りバチは、毒を注射することで、獲物を麻痺させ、それを巣に蓄えて幼虫に与える。しかし、これらのハチは単独生活であり、自分の身を守るために毒針を使うことはあまりない。狩りバチの系統でも、ハナバチ類でも、家族生活をするようになって、毒針を家族を守るために、つまり利他的に用いるようになる。
社会性昆虫であるアシナガバチスズメバチミツバチは集団で敵に当たる。蜂が他の何かの生物に対して毒針を刺すと、そこから蜂が攻撃的になるフェロモンを発するため、蜂のどれか一匹が刺すと他の蜂もつられて集団で襲いかかるという習性がある。
また、ミツバチの針には返し棘があり皮膚に刺さると抜けなくなり、無理に抜けば毒腺ごと抜けてハチは死ぬ。俗に「ハチの一刺し」というのはこれのことだが、他のハチは連続していくらでも刺すのでこれにはあたらない。他にマルハナバチベッコウバチは刺されるとかなり痛む。

関連項目

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脚注・参考文献

  1. ハチ類の毒液中に含まれる主な成分 国立感染症研究所感染症情報センター

外部リンク

et:Herilane frr:Echt wespen hr:Ose nl:Wespen nv:Tsísʼnáłtsooí pl:Osa sh:Ose sr:Оса (инсект)