プロテアーゼ
プロテアーゼ(Protease、EC 3.4群)とはペプチド結合加水分解酵素の総称。広義のペプチダーゼ(Peptidase)のこと。タンパク質・ペプチド加水分解酵素。ヒトでは小腸上皮細胞から分泌する。
機能
アミノ酸がペプチド結合によって鎖状に連結したペプチド(一般に100残基未満、比較的分子量が小さい)やタンパク質(一般に100残基以上、比較的分子量が大きい)のペプチド結合を加水分解する酵素で、様々な種類のものが、生理的役割として、栄養吸収、タンパク質の廃棄とリサイクル、生体防御、活性の調節、などの幅広い分野で働いている。
分類
プロテアーゼの分類は歴史的に様々な変遷を経ている。今日では切断位置によるエキソペプチダーゼないしはエンドペプチダーゼの分類が広く用いられる[1]。
- 分解の位置による分類
- 基質による分類
- 触媒機構による分類
- セリンプロテアーゼ– キモトリプシン(chymotrypsin)、スブチリシン(subtilisin)など。
- アスパラギン酸プロテアーゼ(酸性プロテアーゼ)(aspartic protease)– ペプシン、カテプシンD(cathepsin D)、HIVプロテアーゼなど。
- 金属プロテアーゼ(metallo protease)– サーモリシン(thermolysin)など。
- システインプロテアーゼ(cysteine protease)– パパイン、カスパーゼなど。
- この他にもプロテアソ−ム(proteasome)で知られるようになったN-末端スレオニンプロテアーゼ(N-terminal threonine protease)やグルタミン酸プロテアーゼ(glutamic protease)などが新たに見つかっている。
古くはタンパク質を基質にするものを「プロテイナーゼ」、合成ペプチドを基質にするものを「ペプチダーゼ」としていたが、分類の境界が不明瞭である。現在のエンドペプチダーゼには従来プロテイナーゼに分類されていた大半の酵素が含まれ、エキソペプチダーゼには従来ペプチダーゼに分類されていたものの多くが属する。
エキソペプチダーゼのうち、基質のN末端から1残基ずつ切断する酵素をアミノペプチダーゼ、C末端側から1残基ずつ切断する酵素をカルボキシペプチダーゼと呼ぶ。
ペプチダーゼのうち、アルカリ性領域に至適pHを持つものは、洗剤補助剤として日用品に利用されるため、アルカリ(性)プロテアーゼとよばれることがある。
基質特異性
プロテアーゼには切断する配列をあまり選ばない(基質特異性が低い)ものや、特定のタンパク質・ペプチドの特定の部位だけを特異的に切断するという切断する配列に対する高度な選択性を持つ(基質特異性が高い)タイプのものがある。ペプシン(pepsin)やキモトリプシン(chymotrypsin)などが前者の、ケキシン(Kexin)やフューリン(Furin)のようなプロセッシングプロテアーゼ、Xa因子のような血液凝固因子などが後者の例として典型的なものである。前述のHIVプロテアーゼはその基質特異性故にHIV治療の重要な標的となり、阻害剤による治療が大きな成果を上げている。
植物
植物には、プロテアーゼを豊富に含むものがある。
- パパイヤ - 果肉にパパインを含む。食肉の改質剤(軟化剤)としての利用も行われている。
- パイナップル - 果肉にブロメラインを含むため、大量に食べると舌に痺れを感じさせる。
- ショウガ - 根にショウガプロテアーゼを含む。牛乳の凝固剤としての利用がある。
- イチジク - 果肉にフィシンを含む。
- キウイフルーツ - 果肉にアクチニジン (酵素)を含む。
菌類
- マイタケ - マイタケプロテアーゼを含む。
- 麹
- ケカビ
- クモノスカビ
細菌類
脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
- Merops - the peptidase database: http://merops.sanger.ac.uk/