シャクトリムシ

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シャクトリムシ(尺取虫)は、主としてシャクガ科類の幼虫である。特徴のある歩き方で愛嬌がある。別名は尺蠖(しゃっかく)、蚇蠖(おぎむし)。

特徴

シャクガ科のガの幼虫は、多くがに覆われない、所謂イモムシであるが、通常のイモムシとは様々な点で異なっている。通常のイモムシは、胸部に3対のを持ち、腹部に5対の疣足があるが、シャクガ科では腹部の疣足が後方の2対を残して退化している。

シャクガの幼虫は、他のイモムシと比べて細長いものが多い。通常のイモムシは体全体にある足と疣足を使い、基物に体を沿わせて歩くが、シャクトリムシは体の前後の端にしか足がない。そこで、まず胸部の歩脚を離し、体を真っ直ぐに伸ばし、その足で基物に掴まると、今度は疣足を離し、体の後端部を歩脚の位置まで引き付ける。この時に体はU字型になる。それから再び胸部の足を離し、ということを繰り返して歩く。この姿が、全身を使って長さを測っているように見えることから、「尺取り虫」と呼ばれる。

特殊な習性

エダシャク亜科には、木の枝に擬態するシャクトリムシがいる。そのような種では、体表が灰褐色のなど、樹皮に紛らわしい色をしている。そうして、自分より太い木の枝の上で、後端の疣足で体を支え、全身を真っ直ぐに緊張させ、枝の上からある程度の角度を持って立ち上がり、静止すると、まるで先の折れた枯れ枝にしか見えなくなる。昔、農作業の際、茶を土瓶に入れて持参し、枯れ枝のつもりでこのようなシャクトリムシに引っ掛けると、当然ながら引っ掛からずに落ちて土瓶が割れる。それで、この様なシャクトリムシを「土瓶落とし」と呼んだという。

また、ハワイ諸島では、1972年肉食性進化したシャクトリムシが発見され、大きな話題を呼んだ。このシャクトリムシは、枝の上に後端の足で体を固定し、全身を真っ直ぐに延ばして枝のように立ち上がり、静止して獲物を待つ。足元を昆虫が通り掛かると、瞬間にその方向へ頭を曲げ、獲物を捕らえる。彼らの胸部の歩脚はよく発達し、左右に大きく広がって、獲物に掴み掛かりやすくなっている。成虫は特に変わったところがないシャクガである。ハワイからは13種の肉食シャクトリムシが知られているが、同属の種は世界に広く分布し、肉食が知られているのはハワイ産のものだけである。従って、ハワイでのみ、このような特殊な適応が生じたと見られるが、その理由等は不明である。

これに似た進化上の現象として、2005年にやはりハワイで、カタツムリを捕食する肉食性のHyposmocoma molluscivoraという蛾が発見されてニュースとなった。これはシャクガ科とは縁の遠いカザリバガ科に属する。

亜科

ファイル:Geometra Papilionaria.PNG
オオシロオビアオシャク(大白帯青尺) Large Emerald
  1. フユシャク(冬尺)亜科 - Alsophilinae
  2. カバシャク(蒲尺)亜科 - Archiearinae
  3. ホソシャク(細尺)亜科 - Desmobathrinae
  4. エダシャク(枝尺)亜科 - Ennominae
  5. アオシャク(青尺)亜科 - Geometrinae
  6. ナミシャク(波尺)亜科 - Larentiinae
  7. ホシシャク(星尺)亜科 - Orthostixinae
  8. ヒメシャク(姫尺)亜科 - Sterrhinae

人間との関係

栽培植物庭木を食害するため、害虫として扱われることもある。特に多食性のヨモギエダシャク(蓬枝尺)蛾は農作物に被害を与えることがある[1]

しかし、その姿や歩き方の面白さから、様々に関心を持たれることがある。先に紹介した「土瓶落とし」もその例であるが、子供がその姿を見て玩具にする場合もある。ほかに、全身の長さをシャクトリムシに測り切られると死ぬ、という言い伝えがある地方がある。

関連項目

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脚注

  1. シャクトリムシ<症状と被害>