マツ

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テンプレート:Redirectlist テンプレート:出典の明記 テンプレート:生物分類表 マツ属(マツぞく、学名テンプレート:Snamei)は、マツ科の一つ。マツ科のタイプ属である。

分布

マツ属の天然分布は赤道直下のインドネシアから、北はロシアカナダの北極圏に至り、ほぼ北半球に限られるといってよい。これは針葉樹としては最も広い範囲に当たる。温度の適性が広いことが一因としてあげられており、亜熱帯や熱帯に分布する種でも摂氏-10度程度の低温・組織の凍結には堪えて生存するという[1]。現在では植栽の結果南半球でも見られ、オーストラリアニュージーランド、アフリカ諸国で大規模に植栽されているラジアータマツ (P. radiata) が特に有名。

化石の研究によれば、マツ属は比較的古い時代に登場したとされ、現生種の多様性は進化してきた年月の長さによるものとされている[2]

形態

マツ属に含まれるものは、前述の通りにいずれも木本であり、草本は含まれない。樹高は10 m未満のものから、大きいものでは40ないしは50 mに達する種もある。アメリカ合衆国西部に分布するサトウマツ Pinus lambertianaP. ponderosa では樹高70 mを超える個体も報告されている。

成木の樹皮は一般に亀甲状に割れる、もしくはうろこ状になるものが多い。しかし、多くの種の幼木時代、また一部の種では成木でも滑らかである。色は一般に褐色で、黒っぽいものや赤みの強いものなどある。

マツの葉は子葉初生葉鱗片葉尋常葉(針葉)の4種類に分けることが出来る。このうち、私たちが普段目にするのは尋常葉(針葉)のみであり、他の3種類は発芽直後から数年の間でのみ見られる。以下、「葉」と言った場合には特に断りの無い限り、尋常葉(針葉)を指す。

  • 子葉
胚において形成されており発芽後に最初に開く葉。後述のようにマツの葉は種類によって葉中の維管束の数が違うことが知られているが、子葉においてはいずれの種でも維管束は一つだという[3]
  • 初生葉
2番目に出てくる葉であり、縁には鋸歯を有する。
  • 鱗片葉
  • 尋常葉
短枝と呼ばれる枝の一種に数枚が束生する。1本の短枝に束生する葉を全部集めると断面は円形になる。すなわち2葉のマツならば個々の葉の断面は中心角が180度の扇形、5葉のマツのそれは中心角72度の扇形になる。

葉はベトナムに分布するP. krempfiiという例外を除いて、細く針のようになっている。葉の長さにも色々あり、僅か3 - 4 cmのバンクスマツ P. banksianaから40cmを超えるようなダイオウマツ P. palustris に至るまで様々なものがある。一般に温暖な地域に分布するものの方が葉の成長期間が長く、長い葉を持つ傾向にあるという[4]

マツ属の葉は短枝と呼ばれる枝の一種に数枚が束になってつく。その数は個体内での多少の差はあるものの2枚、3枚ないしは5枚が束になって生えていることが多く、種によってその数は決まっている。日本では2葉のアカマツP. densiflora)やクロマツP. thunbergii)、5葉のヒメコマツチョウセンゴヨウP. koraiensis)が知られている。3葉のマツは、アメリカ大陸を中心に分布しテーダマツP. taeda)やダイオウマツP. palustris)などが知られている。日本には3葉のマツは自生していないものの、化石の研究からオオミツバマツ(P. trifolia)と名付けられた種が分布していたことが確認されている。

葉の数による分類は直感的で非常に分かりやすい方法であり、両者には葉の数以外にも多数の違いがあること、遺伝的にも交雑出来ないことから、分類学的にも古くから認められていた方法である。

さらに、葉の断面を顕微鏡で観察すると維管束が見える。その数は2葉・3葉のマツと5葉のマツで異なるという特徴もよく知られており、一般に2葉・3葉のマツは2つの維管束を持つことから複維管束亜属(subgenus: Pinus)、5葉のマツは1つの維管束しかないことから単維管束亜属(subgenus: Strobus)とされてきた。しかしながら、北米やアジアに分布する一部の種は維管束は1つであるが、葉の数は2枚ないしは3枚であり、両者の中庸の形態を持つ。これらはStrobus 亜属に含める場合の他、 Ducampopinus亜属として分けられることがある。

マツの花は雌雄同株[注釈 1]である。風媒花であり雄花で作られた花粉は風で、雌花に運ばれて受粉する。雌花において受粉した後に、胚珠が受精完了するまでの期間が長く、翌年の春から夏になって受精に至る。受精後に球果は急激に成長し同年の秋には熟すというパターンが多い。例外的にメキシコに分布するP. nelsoniiは受粉後に年内に受精し球果が成長を始める他、イタリアカサマツP. pinea)のようにさらに1年かかり、受粉後3年目の秋に球果の成熟を迎える種もある[5]

マツの球果(松かさ)は鱗片状のもの(種鱗)が集まった形状である。この球果についても形や大きさ、個々の鱗片状の凹凸の状態、表面の棘の有無、熟した時の色合いなどに違いが見られる。形や硬さについても色々あり、2葉・3葉のマツの多くの球果は卵型で硬く種鱗を剥がすのは素手では困難であるが、5葉のマツの球果は細長い円筒形(カプセル型)で比較的軟らかく素手でも容易に分解できるものが多い。ただし、例外もある。

球果と枝とを結ぶ柄(果柄)についても長いものから短いものまでいろいろある。球果が樹上から落ちる際には果柄と球果実の間、もしくは枝と果柄の間に離層が形成されることが条件であるが、どちらに形成されるのかという違いもある。前者の場合、さらに一部の種では球果の種鱗数枚を果柄に残したまま落果するものもあるという。なお、種類によっては離層が形成されにくく、樹上に何年にもわたって球果が残るものもある。また、球果が開く条件は乾燥によるものが多いが、中には火災による高温や動物による摂食が条件の種もある。

種子の形態にも違いがあり、翼のあるものや無いものがある。また、翼のあるものであってもその大きさは色々である。

生態

アカマツやクロマツなどといった温帯地域のマツは一般に春から初夏にかけて主軸と枝が一節ずつ伸びて、夏には成長を止める成長様式を見せるものが多い。しかしながら、特に亜熱帯や熱帯に分布する種類では1年間に多節成長するものがある[4]

球果が開くタイミングは種によって異なる。アカマツやクロマツは種子が成熟すると、すぐに種鱗が開くようになる。一方で成熟後数年間開かない、もしくは好適な条件下にならないと開かない(晩生球果、serotinous coneなどと呼ばれる)仕組みを持つものもあり、特に火災時に種を散らす仕組みを持つものが多い。また、チョウセンゴヨウやP. cembraなどのように樹上からは落果するものの自然には決して開かず、動物による摂食、もしくは球果が腐敗することによって種子の散布、発芽へとつながる種もある。

陽樹であり、遷移が未発達の厳しい場所に生えるというイメージが強いが、チョウセンゴヨウP. koraiensis) のように動物による種子散布を期待する種は実際に動物が生息するようなある程度遷移の進んだ森林においても苗が成長する。一方で火災によって種子を散布するような種は極めて耐陰性が低く、遷移の進んだ状態では更新できないものが多い。厳しい環境下でも生育できるようにマツ属は自身の根に菌類の菌糸を侵入させた、特別な根である菌根を形成する。マツは菌類を通じて土壌中の栄養分や水分の吸収を助けてもらっており、逆に菌類に対しては光合成によって得られた同化産物を分け与えているという共生関係にある[6]。マツと共生して菌根を形成する菌類は多数知られている。「キノコ」として我々が利用できる種も多く、わが国ではマツタケ(松茸)、ショウロ(松露)、アミタケなどが特に有名。

マツは様々な動物に利用される。昆虫に対しては餌や隠れ家を提供する。葉は蛾やハバチの餌に、木材はカミキリムシゾウムシキクイムシやキバチなどの餌として利用される。球果に侵入して中の種子を食べる昆虫もいる。これらのマツに集まる昆虫を目当てにサシガメなどの肉食性昆虫や寄生蜂なども集まってくる。鳥や獣に対しては営巣場所を提供する。カートランドアメリカムシクイSetophaga kirtlandii)とバンクスマツ(P. banksiana)のように密接な関係を持つものから、何種もの木の中からマツ類を営巣場所に選ぶと言った程度のものまで様々である。また、種子は餌として利用され、特に一部のマツでは顕著である。マツの方でも動物を利用して種子の散布を計ろうとするものが知られている。

微生物や菌類にもマツを利用して生きていく種は多い。前述のように菌類には菌根を形成してマツと共生関係を築くものもある。一方でマツに一方的に被害を与える微生物も多い。何種ものサビキン類やある種の線虫、菌類であってもマツノネクチタケ類ツチクラゲナラタケ類Armillaria sp.)などは一方的にマツの生体を攻撃して時に枯死させる。

マツを利用する動物の中には菌類や微生物の中には移動能力に乏しく動物を利用するものが知られている。逆に菌類や微生物によって衰弱したマツを昆虫が利用するということも知られており、両者は共生関係にあるとも言える。例えば我が国のマツに大きな被害を与えているマツ材線虫病はマツノザイセンチュウによって引き起こされる病気である。この病原の媒介者であるマツノマダラカミキリは、健全なマツよりも衰弱しているマツに好んで産卵する。線虫の感染によって材線虫病を発症し、衰弱したマツにカミキリは産卵、センチュウはカミキリが羽化する際にカミキリと共に次のマツへと移る。カミキリは線虫の病原性によって産卵場所の増加が、線虫はカミキリによって分布の拡大が利益になる。オーストラリアニュージーランドで大きな被害を出したノクチリオキバチSirex noctilio)の場合も同様の関係があるが、共生菌はマツを衰弱させるだけでなく、キバチの幼虫の餌としても利用される。キクイムシの仲間も同様の関係を持つものが多い。、

更新は一般に実生による。萌芽更新や伏条更新[注釈 2]といった栄養繁殖は多くの種類では一般に行わない。ただし、火災が頻発するような地域に分布する一部の種は萌芽力が発達しており、火災で焼損しても枯死せずに萌芽で再生することがある。また、ハイマツ (P. pumila)のように伏条更新を行うものも知られている。

人工的に繁殖させる場合、挿し木接ぎ木による繁殖も考えられる。しかし、マツ類は接ぎ木はともかく、挿し木が困難なグループとして昔から知られている[7]。特に挿し穂を採取する母樹の樹齢が高い場合は極めて発根しにくいという報告が多い。挿し木の一種として、挿し穂として長枝ではなく、短枝を使う方法もありハタバザシ(葉束挿し)と呼ばれる。発根はするものの、地上部が成長せずに結局枯れるなどという報告もあるが、地上部の成長に成功している場合もある[8]

マツは五葉マツ類発疹さび病やマツ材線虫病といった世界的に流行している病害への対策や、他の優良形質の固定も含めて、接ぎ木よりも効率的なクローン技術である挿し木の研究が古くから研究されてきた。前述のように若い個体は発根率が良いことが知られている。しかしながら、若い個体は挿し穂に出来る枝が少ないことから優良個体を量産するには課題があった。近年、植物ホルモンの一種、サイトカイニンを投与することでマツの不定芽を活性化され、若い個体でも多数の挿し穂を確保できる技術が開発され、これを利用した挿し木量産技術が確立されつつある。わが国ではこれをマツ材線虫病の抵抗性育種に応用することが考えられており、抵抗性の親木から得られた実生苗に病原であるマツノザイセンチュウを接種、接種試験によって枯死しなかった苗にサイトカイニンを投与して、材線虫病抵抗性の挿し穂・挿し木苗を量産することが考えられている。

名前・方言名

マツ(松)の由来は、「待つ」や「保つ」が転じて出来たものであるなど諸説ある。マツは英語ではpineと呼ばれ、ラテン語のpinus(この属の名前としても使われている)に由来する。ラテン語のpinusの由来はタール状のものを指すと言う

和名ではマツ属で無い樹木にも「マツ(松)」の名が充てられることがあり、以下にその例を示す。いずれも針葉樹であるが、マツ属ではない。

漢字表記は椴松。モミ属Abies)に属する。
漢字表記は蝦夷松。トウヒ属Picea)に属する。
漢字表記は落葉松で、その名の通り冬に落葉する珍しい針葉樹。カラマツ属Larix)に属する。
漢字表記は落羽松。これも冬に落葉する針葉樹。スギ科に属し、マツとは科単位で異なる。湿地でも生育できることからヌマスギ(沼杉)の別名を持つ。
漢字表記は米松。トガサワラ属Pseudotsuga)に属する。由来はアメリカ(米国)原産であることから、アメリカでもDouglas fir(ダグラスのモミ)、Oregon pine(オレゴンのマツ)などと呼ばれているが、マツでもモミでもない。

また、マツの形態的特徴(鋭い葉)に由来したマツバギク(松葉菊、Lampranthus spectabilis)やマツバボタン(松葉牡丹、Portulaca grandiflora)などの和名を持つものが、草本植物にも見られるが、もちろんこれらはマツではない。

世界のマツ属植物

以上の分類を踏まえて世界のマツを列挙する。なお、研究者によって分類に多少の相違がある。やや古いが書籍としてまとまっているもので特に有名なものにMirov(1967)[9]があるので興味がある方はそちらも参考にされたい。

Pinus 亜属

一般に二葉松と呼ばれるグループである。針葉は二葉ないし、アメリカ大陸には三葉のものも多い。葉断面を観察すると維管束が二つあることから複維管束亜属と呼ばれることも多い。火災発生後や荒れ地でいち早く成長するものが多く、先駆種としてのマツのイメージのあるグループ。

Pinus

Pinus 亜節

アカマツやクロマツなどの日本でなじみの深いマツを含むグループ。針葉は2葉。大半がユーラシア地域に分布し、アメリカ大陸に分布するものは僅かである

  • P. densata
日本原産。名前の通り樹皮は赤茶色で針葉は2葉で軟らかい。主に防災機能を重視されるクロマツに対して、木材生産を目的とした植栽も多い種。アメリカからの侵入病害であるマツ材線虫病(松くい虫)に弱い[10]。マツタケの採れるマツとしても有名。
  • P. fragilissima
  • P. heldreichii
  • P. henryi
  • P. hwangshanensis
  • P. kesiya
南西諸島を中心に、小笠原諸島にも移入分布する。沖縄ではマーチ、マチなどと呼ばれる。マツ材線虫病に弱い。
  • P. massoniana
ムゴマツと呼ばれることもある。日本で言うハイマツに相当し、ヨーロッパの高山に分布。
  • P. nigra
アメリカ合衆国東部・カナダ原産。針葉は2葉でアメリカ大陸のマツとしては非常に珍しく、他にP. tropicalisが知られるのみ。英名はRed Pine(赤いマツ)でその名の通り、樹皮の赤みが強い。
オウシュウアカマツ(欧州赤松)とも呼ばれる。学名のsylvestrisは森林に分布を意味する。ヨーロッパからシベリアにかけての広い範囲に分布し地方名も多い。
中国原産で中国語では「油松」と呼ぶことから、和名でもこの名前で呼ぶことがある。他にマンシュウクロマツ、マンシュウアカマツなどの表記もあるがはっきりとしない。乾燥地での緑化等に使われる。
台湾に分布。現地では馬尾松と書く。アジアのマツであるが、マツ材線虫病に強いという報告がおおい。
日本原産。樹皮はアカマツよりも赤みの無い茶色。針葉は2葉でアカマツよりも太く長く硬い。沿岸部の防風・防砂のために江戸時代から植栽された記録が残る。アカマツに比べて耐塩生は高いという報告が多い[11]。このため海岸のマツと言うイメージがあるが、三陸海岸のようにアカマツの方が優勢な地域もある。マツ材線虫病(松喰い虫)に非常に弱く[10]、アカマツ以上に弱いという報告が多い。
  • P. tropicalis
  • P. yunnanensis

Pinea

いずれも地中海沿岸に分布

Pineae 亜節
カサマツとも呼ばれる。傘を広げたような独特の樹形になる。球果は受粉の翌年から成長を始めるものの、その年には熟さずに受粉から3年目に熟す。種子は食用でイタリアではパスタのソースなどに使う。
Pinaster亜節
  • P. brutia
  • P. canariensis
地中海地域原産。
  • P. latteri
  • メルクシマツ P. merkusii
インドシナ半島、およびインドネシアに分布。分布域は僅かに赤道を越え、南半球に天然分布する唯一のマツとされる。樹高は40m以上になることもあり、大きい部類に入る。
地中海西部地域、特にフランスからイタリアにかけての一帯と、対岸のアルジェリアからモロッコを原産とする。フランス語名Pin maritimeは海岸のマツの意味で和名もここから来てるが、海岸だけでなく分布南限では標高2000 mの山岳地にも生える。。樹皮は赤く、針葉は2葉で非常に太く長さも20cm以上になる。原産地では有用な林業用樹種で製材用として広い範囲で植栽されている。また、樹皮に含まれるポリフェノールの一種は健康食品の原料として利用される。南アフリカオーストラリアにも移入され、移入先で生態系の破壊を起こしており、世界の侵略的外来種ワースト100にも指定されている一方で、原産地ではアメリカからの侵入病害であるマツ材線虫病(松喰い虫)による枯死が問題となっている。
  • P. roxburghii

Trifoliae

いずれもアメリカ大陸に分布Trifoliaeは3つの葉を意味し、その名の通り3葉のマツが多いものの例外もある。

Leiophyllae亜節
  • P. leiophylla
  • P. lumholtzii
Australes亜節
  • P. caribaea
カリブ海沿岸諸国原産。東南アジア等でも移植栽培されている。東南アジアの栽培地では、横枝が出ないまま主軸ばかりが数年間にわたって伸び続ける現象が報告されており、まるでキツネの尾のように見えることからFoxtailingなどと呼ばれている[4]
  • P. cubensis
アメリカ合衆国南東部原産。
アメリカ合衆国南東部原産。熟した球果は細長くテーダマツによく似るが、より光沢がある。
  • モミハダマツ P. glabra
英名Spruce Pine(トウヒの様なマツ)。学名のglabraは一般に無毛を表わす単語。針葉は2葉で5 cm程度とかなり短い。マツ属の中ではかなり耐陰性が強く、荒れ地に純林を形成するというより広葉樹林の中に転々と生えるという。
  • P. occidentalis
アメリカ合衆国南東部原産。漢字では大王松と書き、ダイオウショウと呼ばれることもある。名前の通り非常に大きくなり、針葉は3葉で40cm以上になり垂れさがることから英名はLongleaf Pine(長い葉のマツ)。極めて耐陰性が低く、火災の発生が次世代更新の条件となる。
  • P. pungens
種小名のpungensは尖った、針のようなの意味。名前の通り球果の棘は鋭い。
ミツバマツ、アメリカミツバマツなどとも呼ばれる。幹の不定芽が発達している。球果は卵型で樹上に永く残るものの、成熟後早期に開いてしまうことが多い。英名はPitch pineで樹脂の多さに由来するという。
  • ヌママツ[12] P. serotina
和名は英名Pond pineの直訳。アメリカ合衆国南東部原産でリギダマツより南に分布する。リギダマツに酷似しており、別種ではなく亜種と考える学者もいる。球果はリギダマツ同様樹上に永くとどまるが、開く条件がリギダマツよりも厳しく、晩生(serotiny)であり火災などに乗じて開くという。
比較的水辺を好むマツといわれ、英名Loblolly PineのLoblollyは湿地を指すという。樹高50 m以上まで非常に大きくなる種で、製材やパルプを目的とした林業用の樹種としてもよく用いられる。球果は細長く種鱗には鋭い刺を持つ。日本で流行しているマツ材線虫病に強く[10]、一時期わが国での導入も検討された。
Contortae亜節

以下の4種を含む[13]。いずれも北米大陸に分布。球果は晩生の性質を持ち、火災時に開くものが多く、成長時も極めて耐陰性が低い。

主にカナダ東部と中央部に分布。分布の一部は北極圏にかかり、アメリカ大陸のマツとしては最も北に分布する種類である。樹高は10m程度と低め、針葉は2葉で5cm未満と非常に短い。球果もマツ属の中で最も小さい。球果は晩生で成熟後も樹上から落ちず、また開かずに残り、山火事の強熱で開く特性がある。マツ材線虫病に強い[10]
  • スナチマツ[12] P. clausa
 和名は英名Sand Pine の直訳、学名由来のクラウサマツの表記も見られる[14]。学名の clausa はcloseに由来し、晩生球果を表している。この亜節の中では最も南方に分布する種で、アメリカ合衆国のフロリダ半島を中心に分布。
主にカナダ西部に分布。針葉は2葉。葉や球果の大きさなどはバンクスマツとよく似ている。球果はバンクスマツよりも凹凸が目立つ。球果は一般に晩生だが、亜種によっては山火事が無くとも開く。英名のLodgepole Pineはインディアンがロッジを作る際に用いたことに由来。
  • バージニアマツ P. virginiana
アメリカ合衆国東部に分布。球果は成熟後早期に開くが、成熟後1年程度してから開くものもあるという。天然分布は重ならないものの、スナチマツと雑種を形成することが報告されている[14]
Oocarpae 亜節
  • P. attenuata
  • †P. foisyi
  • P. greggii
  • P. herrerae
  • P. jaliscana
  • P. lawsonii
  • P. muricata
  • P. oocarpa
  • P. patula
  • P. praetermissa
  • P. pringlei
 カリフォルニア原産。英語名Monterey PineのMontereyは原産地の地名。原産地では林業用樹種としては用いられていないが、移入先のニュージーランドオーストラリアでは徹底した品種改良の上で、製材利用も可能な有用品種を大規模に植栽しており、特にNZは本種に全面的に頼る林業を行っていることで有名。木材の一部は日本にも輸出されている。一方でこれらの地域では外来種である本種の野生化問題も表面化している。
  • P. tecunumanii
  • P. teocote
Ponderosae 亜節
  • P. apulcensis
  • P. arizonica
  • P. cooperi
  • P. coulteri
  • P. devoniana
  • P. durangensis
  • P. engelmannii
  • P. hartwegii
  • P. jeffreyi
  • P. johndayensis
  • P. maximinoi
  • P. montezumae
  • P. ponderosa
  • P. pseudostrobus
  • P. sabiniana
  • P. torreyana

Strobus 亜属

一般に五葉松と呼ばれる仲間である。葉内の維管束は一本であるから単維管束亜属とも呼ばれる。一般にその材は白く柔らかく英語ではWhite Pine(白いマツ)やSoft Pine(軟らかいマツ)類と呼ばれることもある。一般に2葉、3葉のマツ類より耐陰性は高いとされ、種子の散布も風だけでなく動物によって行うものもある。成長も2葉、3葉のものに比べると遅い。

Strobi

日本原産。屋久島種子島に分布。ただし下記のタカネゴヨウ(カザンマツ)の変種とも扱われることもある。絶滅危惧種。
中国原産で山西省から雲南省に分布。台湾に変種が分布する。カザンは火山ではなく華山で、中国にある険しい山に由来。
  • P. ayacahuite
メキシコ南部から中米西部の海抜2200-3500 mに分布
  • P. bhutanica
ブータン・インド北東部・中国南西部に分布
  • P. chiapensis
  • P. dabeshanensis
  • P. dalatensis
  • P. fenzeliana
  • P. flexilis
  • P. reflexa
北米アリゾナ・ニューメキシコに分布。上記P. flexilisと同種または変種ともみなされる場合もある。
カリフォルニアに分布 。和名は英名Sugar Pineの直訳。最大50 cmにもなる非常に大きく細長い球果を付け、ナガミマツ(長実松)とも呼ばれる。アジアからの侵入病害である五葉マツ類発疹さび病[注釈 3](White Pine Blister Rust)に弱い
  • P. morrisonicola
北米西部山岳地帯に分布。英名はWestern White Pine(西の白いマツ)林業用樹種として有用であったが、五葉マツ類発疹さび病によって壊滅的な被害を受けた。
日本原産。名は針葉が5枚になることから。北方系の個体と南方系の個体では形態的に異なり、一般に変種として認められている。この2変種の和名については混乱しており、南方系をヒメコマツ、北方系をゴヨウマツとするものや、その逆などはっきりとしていない[3]
  • P. peuce
シベリアから朝鮮半島、日本にかけて分布。寒冷地を好み、日本では北海道から本州中部の山岳地帯にかけて分布する。和名は地表を這うように生える樹形からの命名。学名のpumilaも小さいことを指す。ただし、北方の分布地ではこの通りの樹形にはならないこともあるという。種子は動物散布型であり、また、マツとしては珍しく伏条更新と呼ばれる取り木的な方法で増えることが知られている。本州中央部の個体と北海道産個体を比較した場合、形態的な特徴、特に針葉内の樹脂道の配置に明らかな違いがあるという[3]
  • P. strobiformis
北米大陸東部原産。英名Eastern White Pine(東の白いマツ)。現地では有用な林業用樹種であり、欧米や日本(特に北海道)にも移入されて造林された。アジアからの侵入病害五葉マツ類発疹さび病に弱く壊滅的な被害を受けた。
  • P. wallichiana
  • P. wangii

Cembra

球果は成熟後に自然に落果するものの、自然には開かず種子を撒き散らさない。球果は柔らかく、素手でも分解することは容易で種子には翼が無く大きい。種子の発芽には球果の腐敗か動物による散布が必要になるグループで一般に耐陰性は高い。

  • シモフリマツ[15] P. cembra
シベリアから朝鮮半島にかけてと日本に分布。シベリアではカラマツ属やトウヒ属の樹木とともに森林の主要な構成種であるが、日本では比較的まれな種である。木材採取を目当てに伐採される他、種子は食料として利用される。
  • P. sibirica
シベリアに分布。

Ducampopinus 亜属

北米大陸を中心に一部がアジアに分布する。維管束は一つなのでStrobus 亜属に含まれることもあるが、別亜属として認める場合が多い、葉は2葉、3葉ないしは5葉。形態・生態的に独特な種が多い。大半がアメリカ大陸に、ごく一部がアジアに分布する。

Parrya

Nelsonianae 亜節
  • P. nelsonii
メキシコ原産。樹高10 m程度の小型のマツ。針葉は3葉であるが基部では、癒着しておりまるで1葉のように見える。球果はカプセル型の独特の形で、長い柄を持つ。他のマツに比べると受粉後極めて速く受精に至り、球果は受粉同年に成長を開始し翌年に熟す。種子は食用。
Krempfianae 亜節
  • P. krempfii
ベトナム原産。マツ属の中で唯一、扁平の葉を持つ。
Gerardianae 亜節
中国原産。漢字表記は白松で、音読みからハクショウと呼ばれることも多い。針葉は3葉。樹皮は滑らかでマツとは思えない装いである。成木の樹皮は名の通り、白色になる。
  • P. gerardiana
  • P. squamata
Rzedowskianae 亜節
  • P. maximartinezii
  • P. pinceana
  • P. rzedowskii
Cembroides 亜節
  • P. monophylla
針葉が1葉の珍しいマツ。
  • P. remota
Balfourianae 亜節

3種が含まれ、いずれもアメリカ合衆国西部の山岳地帯に局地的に分布する。現地では厳しい気候ゆえに樹体のほとんどが白骨化した独特の様相を呈することが多い。天然では分布域は重ならないものの、交雑可能であることが確認されている。針葉はいずれも5葉、その他の多くの特徴も共通する。球果(cone)に棘(bristle)を持つことから、この3種はまとめてBristlecone Pineと称される(ただし、P. balfourianaはFoxtail Pineという名称も普及している)。

  • P. aristata
Bristlecone Pineの仲間は長寿として知られており、本種は現在知られている寿命は2500年ほどである。しかしながら、後述のP. longaevaには及ばない。和名としてイガゴヨウが充てられるが、非常に長寿なマツであると紹介されるためにP. longaevaと混同していると思われる。
  • P. balfouriana
  • P. longaeva
非常に長寿のマツとして知られており、1964年に伐採された個体の年輪を数えたところ4800を超えていた。本種の形態はP. aristataと酷似しており、当初は同種と考えられていた。和名には現在も混同が見られる。

松の部位

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文化

松は常緑樹として冬も緑の葉を茂らせることから、若さ・不老長寿の象徴とされ、と合わせて「松竹梅」としておめでたい樹とされる。能舞台には背景として必ず描かれており(松羽目)、 歌舞伎でも能、狂言から取材した演目の多くでこれを使い、それらを「松羽目物」というなど、日本の文化を象徴する樹木ともなっている。松に係わる伝説も多く、羽衣伝説など様々ある。また日本のにも植えられているが、非常時に実や皮が食料になるため重宝されてきた。「白砂青松」は日本の美しい海辺の風景を表す言葉だが、近年松くい虫により松枯れの被害が相次いでいる。害虫対策として幹に藁を巻く「こも巻き」は冬の風物詩でもある。

和歌

松は和歌にも古来より取り上げられている。特に古くは子の日の小松引きという行事にあわせて和歌を詠むことがあり、それらの和歌が残る。また高砂の松、尾上の松などが歌枕として詠まれ、特に高砂の松はのちに謡曲高砂』の題材とされ名高い。

ときはなる まつのみどりも はるくれば いまひとしほの いろまさりけり(『古今和歌集』巻第一・春歌上 源宗于
たれをかも しるひとにせん たかさごの まつもむかしの ともならなくに(同上巻第十七・雑上 藤原興風
ちとせまで かぎれるまつも けふよりは きみにひかれて よろづよやへん(『拾遺和歌集』巻第一・春 大中臣能宣

松の位

始皇帝が雨宿りに使った松に「大夫」の爵位を授けたことから松の異名を大夫という。また逆に大夫を「松の位」とも言う。一般的には遊女の最高位である大夫すなわち太夫(たゆう)を指すことで知られる。遊女を太夫と称するのは、古くに猿楽能楽)を遊女が演じた時、座を率いる主だった者が本来五位の通称であった大夫(太夫)を男の能楽師に倣って称したことが始まりだという。邦楽の曲中ではしばしば「松」が松の位の遊女を連想・暗示させるような表現をとっているものがある。

音曲

  • 『高砂』(謡曲)
  • 『老松』(同上)
  • 『末の松』(箏曲
  • 『松づくし』(上方唄端唄)(地歌箏曲)作曲者不詳
  • 『松尽し』(地歌、箏曲)藤永検校作曲
  • 『松風』(地歌、箏曲)岸野次郎三作曲
  • 『新松尽し』(地歌、箏曲)松浦検校作曲
  • 『松の寿』(地歌、箏曲)在原勾当作曲
  • 松竹梅』(地歌、箏曲)三ツ橋勾当作曲
  • 『根曵の松』(地歌、箏曲)三ツ橋勾当作曲
  • 『老松』(地歌、箏曲)松浦検校作曲
  • 『尾上の松』(地歌、箏曲)作曲者不詳、宮城道雄箏手付
  • 『松の栄』(地歌、箏曲)菊塚検校作曲
  • 『松風』(山田流箏曲)山田検校作曲
  • 『松の栄』(山田流箏曲)二世山登検校作曲
  • 老松』(長唄)杵屋六三郎作曲
  • 『松の緑』(長唄)四世杵屋六三郎作曲
  • 『松襲』(一中節)初代菅野序遊作曲
  • 『松の羽衣』(一中節)
  • 『老松』(常磐津)初世常磐津文字太夫作曲
  • 『老松』(清元)富本豊前掾作曲
  • 『老松』(地歌、箏曲)菊岡検校作曲
  • 『松』(箏曲)宮城道雄作曲
  • ローマの松』(交響詩)レスピーギ作曲

利用

観賞

庭木盆栽などに利用されている。コンパクトなスタイルのもの、葉に斑や模様が入るもの、樹皮が荒れて独特の風格を持つものなど、改良種が多い。

また、日本庭園や、松島天橋立桂浜虹ノ松原、大覚寺など景勝地の景観植物としても重要な役割を果たしている。

木材

ファイル:Pain floor.jpg
パインのフローリング材(ドイツ産)

木造建築用の梁・桁などに利用される。近年、マツクイムシなどの被害が多く純林が減少。手に入りにくくなっている。また、鉄道枕木としても使われていた。

なお木材としてのマツの呼称として近年ではパイン材という呼び名が使われることがある。 これはヨーロッパからの輸入住宅のフローリングなどに使われている場合は、欧州赤松を指していることが多い。また北米からの輸入の場合は、2×4建築の構造材やホームセンターに部材として販売されているカナダ産の白っぽい木肌のSPF材を指す場合や、ボウリング場のレーンなどはアメリカ産の黄色っぽい木肌のSouthan Yellow Pine(サザンイエローパイン)を指す場合もある。また、北米産のものは「米松(べいまつ)」、国産のものは「地松(ぢまつ)」と総称することもある。

燃料

他の木材と比べ可燃性の樹脂を多く含み、マッチ1本で着火できるため以前は焚き付けに用いられた。分離した樹脂である松脂もよく燃える燃料として使用された。また、第二次世界大戦中の日本では、掘り出した根から松根油を採取し、航空機の燃料に用いようとしたことがある。

他の木材と比較し単位重量当りの燃焼熱量が高いことから、特にアカマツは陶器を焼き上げる登り窯など、窯の燃料として珍重される。

食用

イタリア笠松などから採取された松の実は、食用にも供される。60%を超える脂質のほか微量元素も含まれ、独特の香りを持つことから健康食品、菓子等にも使用される。

また、フランスカイガンショウP. pinstar)の樹皮から抽出されるピクノジェノールPycnogenol)を多く含むエキスは、サプリメントに利用されている。

アカマツなどの若葉を洗浄して、砂糖水に漬け、葉に付着している細菌の作用で炭酸ガスを発生させて水中に溶け込ませて作る松葉サイダーという飲み物がある。松葉は食用にしないが、成分が溶け込んで、独特の味わいがでる。韓国では、マツの芽の風味を付けた缶入りの炭酸飲料が販売されている。また、松葉風味のも売られているほか、松葉を敷いて風味を付けた「松餅(송편ソンピョン)」と呼ばれる蒸し餅が作られている。

紅茶ラプサンスーチョンは、タイワンアカマツなどの木材や樹皮でいぶして、独特の香りを付けて作られる。

樹脂である松脂香料として使うこともあり、フランスなどではマツの香りのするが作られており、ギリシャではレッチーナ(Retsina)と呼ばれる着香ワインが作られている。

松脂の採取

松脂(まつやに)は松の枝、芽などを折ったり、幹に傷を付けたりした際に出る樹脂の事である。樹脂は樹脂道という特殊な組織で、主に昆虫の幼虫の寄生を妨げる目的で合成され、テルペン等の揮発成分を大量に含み、水には溶けない。生成当初は透明から淡黄色で流動性に富むが、揮発成分が減少するにつれ粘り気が増え固化する。揮発成分は特有の芳香がある。酸化により黄色や茶色に着色する。そのまま地中に埋もれても腐らないため、酸化固化を経て琥珀になる。虫がこの樹脂の中に捕捉され、長期間保存されることもある。松脂と同じような樹脂はスギヒノキトウヒモミ等針葉樹の全てで作られるが、松は特に材の中にも樹脂道を多く持っているため、表面に現れやすく、もっとも有名で、また、幹に傷をつけて採取する場合にも大量の樹脂の収集が可能である。また、マツはもっとも人に近いところに生育あるいは、植栽されてきたため、松脂は世界中で様々な物に活用されてきた。現在は、中国などのアジアを中心に、幹にV字型の切り込みを入れる方法で、染み出す松脂の採取が行われている。

松脂を蒸留するとロジンテレピン油ピッチなどの成分が得られ、燃料粘着剤生薬香料滑り止めの添加剤などに用いられる。ロジンは、マツの根などからも得ることができる。詳細はロジンテレピン油を参照。

樹皮

樹皮園芸用品としてインテリアバーク、バークチップBark chips)などの通称で流通している。アカマツ、クロマツの樹皮が用いられることが多いがマツ以外のものも存在するので一概にバークチップ=マツとは言えない。波紋のような縞模様が浮き出たバークは見た目の美しさから観葉植物の鉢植えやグラウンドカバーなどとして利用される。室内向けの鉢植えで多く見かける理由は美しさだけではなく、虫が湧きにくく、保湿効果が得られることも挙げられる。屋外では主に装飾、飛び石や花壇の隙間などのアクセントとして、グラウンドカバーに使用される。踏むと崩れてしまうので装飾用途の場合直接歩くような通路には向かない。付随効果としては厚めに敷き詰めることで遮光による効果と樹皮は炭素率が高く、植物の窒素飢餓を招くため、雑草を生え難くしたり、降雨による土壌流出や泥跳ねを抑え、植物原料のため環境汚染の心配がないことが挙げられる。樹皮(バーク)を発酵させて炭素率を低くし堆肥化させたバーク堆肥は、土壌改良材として使用される。

青松葉

油紙に文字を書くとき、青い松葉を数本水に浸し、その水で墨をすったもので書くとよい[16]

手入れ

松の管理

庭木や盆栽の松の手入れとして他の植物と際だったものとして、「みどりつみ」と「もみあげ」がある。

みどりつみ
松の新芽を「みどり」という。若木や栄養豊富な木ではこの「みどり」が勢いよく伸びて、結果として間延びした樹形となってしまうので、5 - 6月頃に、本数は2、3本くらいに、長さは好ましい枝の長さに指で「みどり」を折ってやる。
もみあげ
古葉取りのことである。葉をむしり取る様子がもみあげという言葉を生んだのだろうか。作業は秋以降に原則として前年葉を全てむしり取るということである。目的とするのは次の通り。
  • 能力の弱まった古い葉を捨てる。
  • そのことによって日当たり、風通しをよくする。
  • 全体としてすっきりとした樹形にする。
木全体のことを考えれば、前年葉でも少しは残すこともあるだろうし、本年葉でも少しむしるということもありうる。
  • 植生の遷移に注目すると、マツとは砂地や岩場などの荒地に比較的早く侵入し、その後広葉樹などと入れ替わるように枯れる。つまり広葉樹林の様に地面に腐葉土などが溜まると衰弱する。したがって地面に腐葉土や枯葉などの有機物を溜めない為に掃除する必要がある。

注釈

  1. 1つの株に雄蕊のみを持つ雄花、雌蕊のみを持つ雌花という2種類の花を付けること
  2. 地面に近い枝が接地することで発根し、それが新しい個体へと成長する更新様式
  3. 病名和名は「林業技術ハンドブック(2001)全国林業改良普及協会」を参考にした

出典

  1. 酒井昭・倉橋昭夫(1975)日本に自生している針葉樹の耐凍度とそれらの分布との関係. 日本生態学会誌25(4), 192 -200.
  2. 大畠誠一(1995)マツ属における適応と種分化(2)―地理分布圏と分布の様相―. 生物科学47(2).
  3. 3.0 3.1 3.2 石井盛次(1968)マツ属の基礎造林学的研究 特にその分類学的ならびに地理学的考察. 高知大学農学部紀要19号
  4. 4.0 4.1 4.2 大畠誠一(1995)マツ属における適応と種分化―(1)―マツ属の多様な形質と性質. 生物科学47(1), 32 -39.
  5. 石井盛次(1952)マツ属の分類学的研究. 高知大学研究報告 自然科学2(2), 103 -123.
  6. 二井一禎・肘井直樹(2000) 森林微生物生態学. 朝倉書店. 東京.
  7. 戸田良吉(1953)マツ類のサシキについて―綜合妙録―. 研究報告65号
  8. 石川博隆・草下正夫(1959)マツ類のさし木に関する研究(第1報)―クロマツのハタバザシ法について―研究報告116号
  9. Mirov N. T.(1967)The genus Pinus. The Ronalld Press Company, New York.
  10. 10.0 10.1 10.2 10.3 清原友也・徳重陽山(1971)マツ生立木に対する線虫Bursaphelenchus sp.の接種試験. 日本林學會誌 53(7), 210-218
  11. 中野秀章(1962)岩手・宮城両県下防潮林のチリ地震津波時における実態・効果と今後のあり方.林業試験場研究報告140
  12. 12.0 12.1 12.2 12.3 平井信二(1998)木の大百科―解説編―. 朝倉書店, 東京
  13. Taxonomy, History, and Biogeography of the Contortae (Pinus spp.)
  14. 14.0 14.1 中井勇(1990)バージニアマツとクラウサマツの雑種.日本林學會誌 72(4), 335-338.
  15. 朝日新聞社(1997)朝日百科 植物の世界11 種子植物3 単子葉類・裸子植物. 朝日新聞社, 東京.
  16. 『現今児童重宝記 : 開化実益』佐藤為三郎編、此村彦助刊、明19.10

関連項目

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