盆栽
盆栽(ぼんさい)とは、草木を鉢(盆栽鉢、盆器)に植えて、枝ぶり、葉姿、幹の肌、根及び鉢の総称、もしくはその姿全体を鑑賞する趣味。自然の風景を模して造形するのが特徴である。
目次
特徴
植物を観賞する方法として、植木鉢に栽培するのは広く行われるもので、鉢物などと呼ばれる。盆栽は広義にはこれに含まれるが、盆栽はその中で独自の位置を持つ。その目的は自然の風景を、植木鉢の中に切り取って作り出すところにある。その植物の、野外で見られる大木の姿を、鉢の上に縮尺して再現することを目指すものである[1]。そのために剪定を施したり、自然の景観に似せるために枝を針金で固定し時に屈曲させ、あるいは岩石の上に根を這わせたりと様々な技巧を競うのも楽しみの一つとされる。
施肥、剪定、針金掛け、水やりなど手間と時間をかけて作る。生きた植物なので「完成」というものがなく、常に変化するのも魅力の一つである。
歴史
中国で唐の時代に行われていた「盆景」(en)が平安時代に日本へ入ってきて始まった。江戸時代になると盆栽の栽培が盛んになり、盆栽や園芸は興隆する。明治時代以降も盆栽は粋な趣味であったが、培養管理・育成には水やりなどの手間や数年がかりの長い時間が必要なために、生活環境の推移によって次第に愛好者は時間的余裕のある熟年層が多くなった。そのため、戦後から1980年代ぐらいまでの間は、年寄り臭い趣味とされたこともあった。しかし、1990年代以降盆栽が海外でも注目を集めるとともに見直す動きが高まり、若者の間でも粋な趣味として再認識されるようになってきている。テンプレート:要出典。英語でもBONSAIと呼ばれることもある。
樹齢
名品と評される盆栽においては樹齢100年~300年以上のものが知られるが、近時は盆栽の促成栽培の技術が向上し、短期間でも(例えば10年未満)相応のものに仕上げられることがある。樹齢が明記されることも少なくないが、実際には樹齢の正確な把握は容易でないことに注意を要する。
種類
- 木を中心としたもの
- 草を中心としたもの
- 異種の植物や造形物を組み合わせたもの(寄せ植え、彩花盆栽など)
品種もの
数ある松の品種の中でも、葉の短く、節間が短い「八房(やつぶさ)」という種類が盆栽においては小さい鉢の中で大木を表現するのに適するため珍重される。黒松(寿、寸梢など)や五葉松(銀八房五葉=略して銀八、瑞祥、九重、明星など)に多い。
過去において八房ブームの時代があり、特に八房五葉松は投機の対象となって広がるとともに値段が高騰し粗製乱造されるにいたって評価を落とした時期もあった。しかし近年、樹齢50年足らずの瑞祥が盆栽展の中でも最高峰ともいわれる「国風展」でグランプリをとり、再び評価されるようになってきている。
また石化性と言って葉や幹の一部が刷毛状になるものもその形の面白さから珍重される。石化ヒノキや石化黒松、石化スギがこれに当たる。
樹形
- 直幹(ちょっかん)
- 幹が上に向けて垂直に一直線に伸びている形を直幹と呼ぶ。幹が根元から樹芯へ徐々に細くなっていくのが理想である。これを「こけ順がよい」と言う。枝も前後左右に順序よく出ており、枝と枝の間隔も上に行くに従って、狭くなっていくような状態を「枝順がよい」と言う。そして根も四方八方に伸びた根張りが理想的である。
- 模様木(もようぎ)
- 幹が左右に曲線を描くように曲がっている木を模様木と呼ぶ。こけ順が素直で、模様が前後左右にバランス良く曲がっていることが重要である。枝の出し方には注意が必要であり、自然樹のように枝は曲の外側に残して、内側の枝は剪定をする。根元からの垂直線上に樹芯があると、観る者に安定感を与える。
- 斜幹(しゃかん)
- 一方向からの風に晒されていたり、障害物などがあるために根元から斜めに立ち上がり、樹芯にかけて一方向に傾いた樹形を斜幹と呼ぶ。枝は一方になびかないで、前後左右に伸び出しているのが特徴である。
- 吹流し(ふきながし)
- 斜幹よりも、さらに過酷な環境に曝されて、幹も枝も一方向になびき、樹高よりも長く枝が伸びたものを、吹き流しと呼ぶ。これは、枝先の位置以外は半懸崖と似ている。
- 懸崖(けんがい)
- 海岸や渓谷の断崖絶壁に生えて、幹が下垂して生育を続ける樹木の姿を表現したものを懸崖と呼ぶ。ちなみに、幹や枝が鉢の上縁よりも下に垂れ下がっているものを懸崖、鉢の上縁ぐらいのものを半懸崖、と呼ぶ。
- 蟠幹(ばんかん)
- 幹が著しく捩れているもの、または捩れて成長する性質のものを捩幹と呼び、幹が更にネジれた状態、あたかも蛇がとぐろを巻いた様な樹形を蟠幹と呼ぶ。
- 箒立ち(ほうきだち)
- 幹の途中から、放射状に細かく分かれてどれが主幹なのか、区別のつかなくなった樹形で、それがあたかも竹箒に似ているので箒立ちと呼ぶ。枝の素直な分岐と、分岐点と樹高などとのバランスが鑑賞のポイントになる。
- 根上り(ねあがり)
- 厳しい生育環境により、地中で分岐した根元の部分が、風雨に晒されて表土から浮き出して露出している状態を根上りと呼ぶ。
- 多幹(たかん)
- 根元から複数の幹が立ち上がったもの。幹が2本のものを双幹、3本のものを三幹、5本以上のものを株立ちと呼ぶ。幹数は奇数が好まれており、2本以外の偶数は嫌われるので避ける。
- 根連なり(ねつらなり)
- 3本以上の複数の同樹種の根が癒着して1つに繋がっているもの、または立木が地面に倒れて地中に埋まり、元は枝であったものが幹として育ち、その枝元からも根を出して、根が一つに繋がっている様な多幹樹形である。これと似たものに、筏吹きがある。これも、立木が地面に倒れて、元は枝であったものが、幹として育ち多幹樹形となったもので、根連なりと違う点は、根が1ヶ所にある。多幹樹形と同様に、幹数は偶数を避ける。
- 寄せ植え(よせうえ)
- 複数の木を一つの鉢や石に植え付けたものを寄せ植えと呼ぶ。同樹種だけの物や、異種の植物を組み合わせた物、または造形物などと組み合わせてより創作性を高めた作品もある。
- 文人木(ぶんじんぎ)
- 中国の南画に見られる様な樹形が発端。明治時代の文人達に好まれたのでこの様に呼ぶ。現在では、細幹で枝数少なく枝嵩も小さいものも文人木と呼ぶ。
- 石付(いしつき)
- 石に根を這わせるなどして植え付けたもの。より自然な風景を想像させること、石の持つ情景との組合せが多彩なことといった理由から人気が高い。
- 変わり木
- 上記の範疇に入りきらないものもあり、そういうものは多くの場合変わり木といわれる。
- Bonsai streng aufrechte Form.svg
直幹
- Bonsai locker aufrechte Form.svg
模様木
- Bonsai windgepeitschte Form.svg
吹流し
- Bonsai Kaskaden-Form.svg
懸崖
- Bonsai Halbkaskaden-Form.svg
半懸崖
- Bonsai Bankan-Form.svg
蟠幹
- Bonsai Besen-Form.svg
箒立ち
- Bonsai Doppelstamm-Form.svg
双幹
- Bonsai Literaten-Form.svg
文人木
神と舎利
枝や幹の一部分が枯れることによって、樹皮が剥がれ白色の木質部分が剥き出しになることがある。こうなった部分を、枝で起こったものを神(ジン)、幹で起こったものを舎利(シャリ)と呼ぶ。自然に起こるものだが、盆栽では彫刻刀などで削り人為的に作り出すという技法がある。主に真柏などの松柏に行うが、梅などにも施すことがある。
主な産地
香川県鬼無地方は松盆栽のシェア8割を占める。
その他にも盆栽育成の盛んな地域があり、埼玉県さいたま市には、盆栽町という地名がある。これは、関東大震災後に、東京の盆栽業者が盆栽の育成を行うために集団で移転してきたためである。
日本から世界へ
日本の盆栽はヨーロッパでは1970年頃から「Bonsai」として根強い人気がある。盆栽は日本から盛んに輸出されるほか、ヨーロッパ産の木を盆栽に仕立てることも一般化している。
1970年代にはすでに米国やヨーロッパにおいて盆栽協会があり、イタリアには日本にもない盆栽のための専門学校まである。
1989年4月初旬に第1回世界盆栽大会が大宮にて開催され、参加国は32ヵ国、参加者は1200人に達した。それにあわせて、世界盆栽友好連盟(WBFF)が発足。その後、4年ごとに世界各地で世界盆栽大会が開かれ、これまで米国のニューオーリンズ(第2回)、韓国のソウル(第3回)、ドイツのミュンヘン(第4回)、ワシントンDC(第5回)、プエルトリコのサンフアン(第6回)、中国の金壇市(第7回)で開催された。2017年の第8回世界盆栽大会はさいたま市で開かれる予定。
2008年10月15日、オランダ輸出向けの庭木よりゴマダラカミキリが寄生されたものが見つかったことにより輸入規制強化の緊急措置が施行された。ゴマダラカミキリが侵入しない施設で2年間生育されたもの以外は輸入を認めないとする内容であり、2009、2010年度の輸出が事実上不可能となった[2]。
JETROによると、盆栽と庭木を合わせた日本の輸出額は、2001年時点で6億4000万円だったが、2011年には過去最高の67億円に達した。
なお、基本的に植物であるため、海外に発送するときには検疫が必要となる。インターネットオークションなどが発達し、国境を超えた個人間の売買が簡単になった近年では、検疫を行わずに盆栽を日本国外に輸出しようとする事件が時折発生している[3]。
その他
講演に用いられる演台の隣に置かれる花台には松の盆栽が置かれることも多い。
参考文献
出典・脚注
関連項目
外部リンク
- ↑ 西(1971)、26–29ページ。
- ↑ テンプレート:Cite newsテンプレート:リンク切れ
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