ホッカイエビ

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ホッカイエビ(北海海老)Pandalus latirostris は、エビ目(十脚目)・コエビ下目・タラバエビ科に分類されるエビの一種。北西太平洋沿岸部の海岸藻場に生息するエビで、食用に漁獲される。本種の学名に関しては、これまで Pandalus kessleri が用いられてきたが、Holthuis (1995)は学名の再検討を行い、その結果、先取権の原則に従って本種の学名をPandalus latirostris とすることを提唱した。

図鑑等の科学書では標準和名としてホッカイエビと呼ばれるが、商業流通上ではホッカイシマエビ(北海縞海老)、又は単にシマエビ(縞海老)とも呼ばれる。また、漁業法にかかる水産庁長官通達ではほくかいえびとされていることから、漁業権免許状等の公文書では専ら「ほくかいえび」が用いられている。

特徴

体長は8-13cmほど。全身が黄緑色と緑褐色の縦じま模様で、「シマエビ」の別名もこの体色に由来する。額角は長いが上方にはあまり反り返らず、前方にまっすぐ伸びる。体は紡錘形で、ホッコクアカエビよりも太い体型をしている。甲はわりと硬い。

宮城県以北の北日本日本海北部、オホーツク海沿岸に分布する。タラバエビ類は深海に生息するものが多いが、ホッカイエビは内湾の海岸部にあるアマモスガモ藻場に生息する。特徴的なしま模様はアマモの茂みに紛れる保護色となる。食性は雑食性で、小さな甲殻類や貝類を捕食する一方で、植物も摂食する。

春から夏にかけてが産卵期で、直径2mm前後の球形の卵を一度に200-300個ほど産卵する。メスは受精卵を腹脚に抱えて孵化するまで保護する。孵化までには9ヶ月ほどかかる。一般的な海産無脊椎動物とは異なり、本種の幼生は浮遊幼生期を持たずに直達発生で孵化する。他のタラバエビ科のエビと同じく雄性先熟の性転換を行うので、若い個体はまずオスとなり、10cm以上に成長するとメスに性転換して繁殖に参加する。寿命は3-4年ほどと考えられるが、高齢のメスはほとんど漁獲されるため、実際の寿命は不明である。

利用

生息域では重要な漁業対象の一つで、日本でも漁業法によって第一種共同漁業権対象魚種に指定されている。主たる産地は北海道東部で、特にオホーツク海沿岸の能取湖網走市)、サロマ湖(北見市常呂町佐呂間町湧別町)、太平洋沿岸の野付湾別海町)での生産量が多い。特に野付湾での漁法は、漁場のアマモを傷つけないよう帆掛け舟により動力を用いない打瀬網漁業で、その漁獲風景は野付湾の初夏の風物詩となっている。

7月を中心に、主にかご漁業により漁獲される。身は美味だがエビ自身の筋肉中の消化酵素の働きで鮮度が落ちやすく、漁獲されたあと生きたまま魚市場へ運ばれ、競り落としから十数分のうちにほぼ全量が茹でエビに加工される。新鮮なものは茹でると縞模様を残したまま赤色に変わる。加工場では単純な塩茹でのみを行うため、塩加減が味を大きく左右すると言われる。

かつては乱獲と、特に野付湾では湾周辺を牧場開発したことにより資源の枯渇に見舞われたこともあったが、現在は漁期を制限したり漁具の目を大きくする、植樹を行うなど、地域や漁協によって資源管理が進められている。

参考文献

  • Holthuis LB 1995 Notes on Indo-West Pacific Crustacea Dacapoda IX, The status of the name Pandalus kessleri Czerniavsky, 1878, Zoologische Mededelingen 69(13) 150-151.
  • テンプレート:ITIS
  • 三宅貞祥「原色日本大型甲殻類図鑑 I」保育社 ISBN 4-586-30062-0
  • 武田正倫ほか「新装版 詳細図鑑 さかなの見分け方」講談社 ISBN 4-06-211280-9