セレンディピティ
テンプレート:参照方法 テンプレート:Otheruseslist テンプレート:Redirect セレンディピティ(serendipity)とは、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値あるものを見つける能力・才能を指す言葉である。何かを発見したという「現象」ではなく、何かを発見する「能力」を指す。平たく言えば、ふとした偶然をきっかけにひらめきを得、幸運をつかみ取る能力のことである。
語の起源と意味
「serendipity」という言葉は、イギリスの政治家にして小説家であるホレス・ウォルポール(ゴシック小説『オトラント城奇譚』の作者として知られる人物)が1754年に生み出した造語であり、彼が子供のときに読んだ『セレンディップの3人の王子(テンプレート:Sname)』という童話にちなんだものである(セレンディップとは現在のスリランカのことであるから、すなわち、題名は「スリランカの3人の王子」という意味である)。ウォルポールがこの言葉を初めて用いたのは、友人に宛てた書簡において、自分がしたちょっとした発見について説明しているくだりにおいてであり、その書簡の原文も知られている。 テンプレート:Quotation
英英辞書では以下のように説明されている。 テンプレート:Quotation
日本語訳
日本語では、通常は音写の「セレンディピティ」「セレンディーピティー」等が用いられる。「偶察力」と訳される場合もあるが、確固とした訳語は定まっていない。精神科医の中井久夫は『徴候・記憶・外傷』(みすず書房2004年)で「徴候的知」と呼んでいる。
自然科学におけるセレンディピティ
セレンディピティは、失敗してもそこから見落としせずに学び取ることができれば成功に結びつくという、一種のサクセスストーリーとして、また科学的な大発見をより身近なものとして説明するためのエピソードの一つとして語られることが多い。
セレンディピティが見出せる代表例
- ハンス・クリスティアン・エルステッドによる、電流と磁気の関係の発見(1820年)
- チャールズ・グッドイヤーによる、ゴムへの加硫の発見(1839年)
- アルフレッド・ノーベルによる、ダイナマイトの発明(1866年)
- クリップの発明(1890年代)
- ヴィルヘルム・レントゲンによる、X線の発見(1895年)
- ピエール・キュリー、マリ・キュリー夫妻による、ラジウムの発見(1898年)
- ハンス・フォン・ペヒマン(en)による、ポリエチレンの発見(1898年)
- アレクサンダー・フレミングによる、リゾチームとペニシリンの発見(1922年と1928年)
- アルバート・ホフマンによる、LSDの幻覚作用の発見(1938年)
- ロイ・プランケットによる、テフロンの発見(1938年)
- パーシー・スペンサーによる、電子レンジの発明(1940年代)
- ウィリアム・ショックレーらによる、トランジスタの発明(1947年)
- ジョルジュ・デ・メストラルによる、マジックテープの発明(1950年頃)
- 江崎玲於奈らによる、トンネルダイオード、トンネル効果の発見(1950年代)
- アーノ・ペンジアスとロバート・ウィルソンによる、宇宙背景放射の発見(1964 - 1965年)
- アントニー・ヒューイッシュとジョスリン・ベル・バーネルによる、パルサーの発見(1967年)
- 核実験監視衛星ヴェラによるガンマ線バーストの発見(1967年)
- スペンサー・シルバー(en)、アーサー・フライ(en)による、付箋(ポストイット・メモ)の発明(1969年)
- 液晶ディスプレイの交流駆動方式の発明(1971年)
- ルイス・アルヴァレズ、ウォルター・アルヴァレズ、フランク・アサロ(en)、ヘレン・マイケル(en)による、恐竜滅亡の小惑星衝突原因仮説(1980年)
- ハロルド・クロトー、リチャード・スモーリー、ロバート・カールによる、フラーレン(C60)の発見(1985年)
- 田中耕一による、高分子質量分析法(MALDI法)の発見(1980年代)
- 飯島澄男による、カーボンナノチューブの発見(1991年)
- 安全ガラスの発明
- 白川英樹らによる、導電性高分子の発見
- キチンの開発
参考文献
- 外山滋比古『思考の整理学』筑摩書房,ちくま文庫 1986年 - 「セレンディピティ」が章のタイトルになっている。
- R.M.ロバーツ著安藤喬志訳 『セレンディピティー 思いがけない発見・発明のドラマ』化学同人 1993年 ISBN 4759802495
- 沢泉重一 『偶然からモノを見つけだす能力』「セレンディピティ」の活かし方 角川書店 2002年
- 日野原重明 『「幸福な偶然」(セレンディピティ)をつかまえる』 光文社 2005年
- 宮永博史 『成功者の絶対法則 セレンディピティ』 祥伝社 2006年 ISBN 4396681127
- モートン・マイヤーズ『セレンディピティと近代医学』中央公論新社 2010年
関連項目
外部リンク
- Polymers & Serendipity: 事例 :レーヨン、ナイロン、その他化学分野における事例。
- Max : A software agent built to induce serendipity.
- Social Serendipity :MIT メディアラボ 携帯電話を使用した社会的セレンディピティ。
- The Three Princes of Serendip :物語。
- Serendip : a website continually evolving using the principles of serendipity.
- Serendip :オランダ/ベルギーのインターネット検索競争。
- Serendipity Blog :オープンソースブログスクリプト。
- Serendipity and the Internet : from Bill Thompson at the BBC.
- Accidental discoveries. : PBS.
- Serendipity of Science : a BBC 4 Radio series by Simon Singh.
- Top Ten: Accidental discoveries. ディスカバリーチャンネル