スパイ・ゾルゲ
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『スパイ・ゾルゲ』は、2003年6月14日公開の日本映画。実在のスパイ、リヒャルト・ゾルゲの半生を描いた、全編3時間を越える大作である(映画上映の場合、途中休憩を入れたテンプレート:要出典)。
概要
映画監督篠田正浩の十数年の構想によるラスト・フィルム作品であり、全編がHD24Pによるデジタル撮影された事、CGによる大規模な合成などで、映像業界では非常に話題を集めた。興行的には成功しなかったが、CGで描かれた戦前の東京は、歴史の教科書を読んだだけではわからない、当時の雰囲気を伝えている。また、忘れられつつあった事件を掘り起こしたことも、注目を集めた。尾崎が元朝日新聞社員だったこともあり、朝日新聞社が製作に大きく関与している。
キャスト
- イアン・グレン:リヒャルト・ゾルゲ
- 本木雅弘:尾崎秀実
- 椎名桔平:吉河光貞(同事件を主任として担当した、いわゆる思想検事)
- 上川隆也:特高"T"
- 葉月里緒菜:三宅華子(カフェの女給)
- 小雪:山崎淑子(ブランコ・ド・ヴーケリッチ夫人)
- 夏川結衣:尾崎英子(尾崎の妻)
- 永澤俊矢:宮城与徳(画家)
- 榎木孝明:近衛文麿(公爵・首相)
- 花柳錦之輔:昭和天皇(大元帥)
- 麿赤児:杉山元(陸軍大臣)
- 吹越満:西園寺公一(西園寺公望の孫)
- 鶴見辰吾:牛場友彦(近衛文麿秘書)
- 津村鷹志:内務省の男(Tの上司)
- 河原崎建三:朝日新聞上海通信局長(尾崎の上司)
- 原口剛:本庄繁(侍従武官長)
- 不破万作:見物の男
- 観世栄夫:能/善知鳥
- 石原良純:中島莞爾中尉
- 竹中直人:東条英機(陸軍大臣)
- 佐藤慶:墓守
- 大滝秀治:西園寺公望(元老)
- 加藤治子:1990年の華子
- 岩下志麻:近衛千代子(文麿夫人)
- 菊地康二:大橋秀雄(特高警察)
- 松村穣:拘置所通訳
- 津田健次郎:報道カメラマン
- 鶴岡大二郎:栗原安秀中尉
- 佐藤学:安藤輝三中尉
- 田中弘太郎:青年将校
- 秋間登:刑務所看守
- りゅう雅登:満鉄社内会議司会者
- 野村信次:避難訓練の男
- 江口ナオ:娼婦
- 沈莉輝:上海の少女
- 江川達也:大陸浪人
- 木村翠:華子の母
- 篠田正浩:淑子の父
- 福井友信:日光東照宮の通訳
- 岡村洋一:緒方竹虎(東京朝日新聞主筆)
- 山本哲也:肖像画の軍人
- 大島隆宏:逓信省通信士
- 金子達:高橋是清(大蔵大臣)
- 中村方隆:街頭写真屋
- 石毛誠:インテリ失業者
- 福井晋:ロシア語の男
- 野田よし子:クララ
- 峰岸みくさ:ベルタ
- 松永恵美:モニカ
- 下出丞一:バーテン
- 麻丘しのぶ:女中
- 神野寛子:受付嬢
- ウルリッヒ・ミューエ:オイゲン・オット(駐日ドイツ大使)
- Mia Yoo:アグネス・スメドレー(ジャーナリスト)
- Wolfgang Zechmayer:マックス・クラウゼン
- Armin Marewski:ブランコ・ド・ヴーケリッチ
- Catherine Flemming:カーチャ(ゾルゲの妻)
- Karen Friesicke:ヘルマ・オット
- Lena Lessing:アンナ・クラウゼン
- Marian Wolf:ヘルベルト・フォン・ディレクセン(前任の駐日ドイツ大使)
- Max Hopp:ショル少佐
- Michael Christian:ヨーゼフ・マイジンガー(ナチス親衛隊大佐、駐日ドイツ大使館極東部長)
- Alexandra Finder:キーファ秘書
- Roger Pulvers:新聞記者
- Vincent Giry:U.S.MP
- Georg O.P.Eschert:ケテル
- Marek Wlodarczyk:ヤン・ベルジン(ソ連軍大将)
- Jurij Rosstalnyi:セミョーン・ウリツキー(ソ連軍大尉)
- Robert Mika:ラヴレンチー・ベリヤ(ソ連内務人民委員)
- Jarek Wozniak:ヴィクトール
- Peter Borchert:ヨシフ・スターリン
スタッフ
- 監督・原作:篠田正浩
- 脚本:篠田正浩、ロバート・マンディ
- 音楽:池辺晋一郎
- 監督補:浜本正機
- 衣裳デザイン:森英恵
- エグゼクティブ・スーパーバイザー:原正人
- 製作者:篠田正浩、岩下清、椎名保、島谷能成、香山哲、牧山武一、野田順弘、長瀬文男、増田宗昭、早河洋、里見治、山本英俊
- プロデューサー:鯉渕優、マンフレッド・ドルニオク
- 協力:朝日新聞社、角川書店、本庄市、早稲田大学
- 製作プロダクション:表現社
- 製作委員会メンバー:表現社、アスミック・エース、東宝、セガ、日本情報通信コンサルティング、オービック、IMAGICA、カルチュア・パブリッシャーズ、テレビ朝日、サミー、フィールズ
その他
- 篠田正浩のラスト・フィルムということで、妻の岩下志麻がメイキング監督として自らカメラを回し、後に『わが心の「スパイ・ゾルゲ」~妻・岩下志麻が見た監督・篠田正浩』として発売された。
- 最先端のデジタルシネマ撮影技術が大規模で投入された。HD24Pはテープ収録ではなく非圧縮ハードディスクレコーディングで行われ、CG製作においては早稲田大学やNTTなどの産学協同体制がとられた。
- 三宅華子のモデルであった石井花子はじめ、登場人物の大部分は映画公開時点で物故者であったが、ヴケリッチの妻である山崎淑子(2006年死去)は当時存命で、子息である山崎洋(彼も生誕間もない姿で本作に登場する場面がある)とともに試写会に招かれている。ヴケリッチと淑子が出会う場面で淑子は和装であるが、史実では洋装であった。これに関しては衣装担当の森英恵がそれを知った上で和装にするよう篠田に勧めたという(出典:近藤節夫「ある女性の波乱の生涯」『知研フォーラム』290号、知的生産の技術研究会、2006年)
- 音楽のメインテーマは、池辺晋一郎の交響曲第6番「個の座標の上で」の冒頭部分をそのまま引用している。
- 本作の予告編及びテレビCMではBGMにフィンランドのヘヴィメタルバンド『ストラトヴァリウス』の「Infinity」が使用されていた。
- 篠田正浩によると、この作品は日本で初めて撮影から編集まで、フィルムを一切使用せずに制作された映画だという[1]。
出典
関連項目
外部リンク
テンプレート:篠田正浩監督作品- ↑ 「時代の証言者」『読売新聞』2012年6月9日