スパイクタイヤ
スパイクタイヤ(テンプレート:Lang-en-short)は、凍結路での走行性能を向上させるためにタイヤのトレッド面に金属などで作られたスパイク(スタッド=鋲)を打ち込んだタイヤである[1][2][3]。「スパイクタイヤ」は和製英語である。
概要
テンプレート:節stub スパイクタイヤは、1950年代にフィンランドで誕生した。従来のスノータイヤに比べ凍結路を安全に走行でき、チェーンに比べると脱着の手間も不要な為、1960年代にヨーロッパで急速に普及した。スウェーデンやフィンランドなど、一部の国では現在でもスパイクタイヤが使用されている。
日本の法規による規制
日本の法律では、「金属製またはモース硬度4以上の非金属製の鋲状の物が固定されているタイヤ」をスパイクタイヤと定義している。
日本では1963年(昭和38年)に販売が開始された。1970年代に入ると本格的に普及し、積雪寒冷地ではスノータイヤに取って代わり、100%に近い装着率となった。しかし、スパイクタイヤは積雪路および凍結路以外では道路を削るため、粉塵公害が発生して社会問題となった。すると、1980年代からスパイクタイヤ規制条例が各地で施行され、スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律により特殊な例を除いて使用禁止へと向かった。1991年4月にスパイクタイヤが発売中止になりスタッドレスタイヤに取って代わられている。
使用規制
1970年代から急速に普及したスパイクタイヤだが、舗装路で使用した場合の路面へのダメージや、アスファルトを削ることで発生する粉塵などが社会問題となっていった。スパイクタイヤによって発生した粉塵は「車粉」とも呼ばれ人体への悪影響が懸念されたほか、たとえばさっぽろ雪まつりでは雪像が車粉で黒く汚れて観光への悪影響も示唆された[4]。北海道などの積雪地では、雪が無くなる4月頃までスパイクタイヤを装着したまま舗装路を走行する自動車が多く、特に粉塵の被害が目立つようになった。このため、地域住民による脱スパイクタイヤ運動が展開され、これを受けて1983年(昭和58年)に札幌市が国内で初めて指導基準を作成した。その後、宮城県などでスパイクタイヤ規制条例が制定された。
1984年(昭和59年)に社団法人日本自動車タイヤ協会によりスタッドレスタイヤ制動試験が実施された。しかし、スパイクタイヤの販売は1985年(昭和60年)にピークを迎え、年間800万本、冬用タイヤの68%がスパイクタイヤで占められるようになる。スパイクタイヤが原因の粉塵はますます深刻になり、1986年(昭和61年)に通産省よりスパイクタイヤの出荷削減が指導された。
1988年(昭和63年)に公害等調整委員会において、スパイクタイヤメーカー7社と長野県の弁護士等との間で、スパイクタイヤの製造・販売中止の調停が成立し、1990年(平成2年)6月27日にはスパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律が発布、施行された(禁止条項は1991年(平成3年)4月1日施行、罰則規定は1992年(平成4年)4月1日施行)。この法律によって積雪また凍結の状態にある場合はスパイクタイヤ使用が認められるが、それ以外の場合はセメント・コンクリート舗装またはアスファルト・コンクリート舗装が施されている道路での使用は原則禁止された。ただし、緊急自動車(パトロールカー、救急車、消防車および緊急自動車に指定された自衛隊車両など)や肢体に6級以上の障害がある身体障害者[5]が運転する自動車へのスパイクタイヤの装着は例外として禁止規定から除外されている。また、道路運送車両法上の原動機付自転車(125cc以下のオートバイなど)および軽車両(自転車など)には法律は適用されない。
法律や条例による使用規制と代替製品の普及や品質の向上、ピン抜きセンターの設置等の活動により、国内におけるスパイクタイヤ着用率は急速に低下し、併せて降下煤塵の量も減少した。環境白書においてもスパイクタイヤに関する独立した項目があったのは1995年(平成7年)版が最後であり、2003年(平成15年)版を最後にスパイクタイヤの語もなくなっている。
一方で、スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律には次のような問題点がある。
- スパイクタイヤ、及びスパイクピンの製造・輸入・販売に規制がない。
- 製造・輸入・販売の停止は主要メーカー間の申合せ事項に過ぎず、対象外の事業者も多い。
- スパイクタイヤ法による使用禁止地域が18道県内の一部にとどまっている。
- 条例による規制もあるものの、規制対象となっているのは寒冷地の一部地域のみである。
年表
- 1959年(昭和34年)6月 - 日本でスノータイヤ生産開始[6]。
- 1962年(昭和37年) - 日本でスパイクタイヤ生産開始[6]。
- 1981年(昭和56年)3月 - 仙台市役所に「道路粉じん問題研究会」設置。
- 1982年(昭和57年) - 日本で乗用車用スタッドレスタイヤ生産開始[6]。
- 1983年(昭和58年) - 仙台市で「第1回道路粉じん問題行政連絡会議」開催。仙台市が「脱スパイクタイヤ運動」の一環として、スノータイヤでも安全に走行できる冬道環境を目指した除雪・融雪事業を開始[7]。
- 1985年(昭和60年)12月25日 - 宮城県スパイクタイヤ対策条例公布。
- 1986年(昭和61年)
その他
かつては硬質ゴム製のピンを用いたスパイクタイヤが開発、販売されていた。また、氷点下の温度で硬化するゴムのピンを埋め込んだスパイクタイヤが販売されていた。
モータースポーツでは、海外では氷上レースや冬季に行われるラリーイベント(スウェディッシュ・ラリーなど)などで、北欧メーカー製のスパイクタイヤが使用されることがある。一方、全日本ラリー選手権をはじめとする国内のラリーイベントでは、氷上や雪氷路を走行する区間でもスパイクタイヤは一切使用されない。
オートバイ用のスパイクタイヤは業務用途に利用される車種向けに少数の製品が販売されており、新聞配達や郵便配達などの一部で用いられている。一部の国では氷上走行レース専用のものが製造されている。テンプレート:要出典範囲
自転車用のスパイクタイヤは、北欧や日本の少数のメーカー販売されており、主に冬季のマウンテンバイク競技用として使用される。また、シクロクロス競技車用や一般車用も北海道を中心に流通している。テンプレート:要出典範囲、問題として取り上げられた例はない。
ギャラリー
- Spikes-Rennmotorrad.jpg
アイススピードウェイ(アイスレース)用
- Studded tires.jpg
自転車用(拡大)
- Bicycle winter tire.jpg
自転車用
脚注
関連項目
外部リンク
fr:Pneu d'hiver#Pneus cloutés- ↑ Study on Development of Intelligent Spike Tire System based on Environmental Correspondenceテンプレート:リンク切れ(新潟大学学術リポジトリ)
- ↑ CiNii検索(国立情報学研究所)
- ↑ Spike tire (United States Patent 4619301)
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 環境省・スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律施行令及びスパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律施行規則の施行について - 身体障害者は自力でのチェーン脱着が困難なため。
- ↑ 6.0 6.1 6.2 6.3 6.4 6.5 6.6 日本のタイヤ産業 2008(社団法人日本自動車タイヤ協会)
- ↑ 道路の除雪・凍結防止事業を見直します(仙台市「市政だより」2007年11月号)