エナガ
テンプレート:生物分類表 エナガ(柄長、学名:Aegithalos caudatus)は、スズメ目エナガ科エナガ属に分類される鳥類の一種[1][2]。エナガ科は世界で7種類が知られる。
分布
ユーラシア大陸の中緯度地方を中心にヨーロッパから中央アジア、日本まで広く分布する[2]。
形態
体長は約14 cm[2][3](12.5-14.5 cm)、翼開長は約16 cm[3][4]。体重は5.5-9.5 g。左記体長には長い尾羽を含むので、尾羽を含めない身体はスズメ(体重約24 g[5])と比べるとずいぶん小さい[3]。
黒いくちばしは小さく[6]、首が短く丸い体に長い尾羽がついた小鳥である[7]。目の上の眉斑がそのまま背中まで太く黒い模様になっており、翼と尾も黒い。肩のあたりと尾の下はうすい褐色で、額と胸から腹にかけて白い。雌雄同形同色で外観上の区別はできない[2][7]。羽毛は薄褐色色の初列風切が10枚で野外では黒く見え、次列風切りが6枚で重ねると黒く見え、3列風切が3枚で他の風切羽より褐色味が強く、尾羽は6枚で内側3枚は黒色、外側3枚は黒色に白色の模様が混じる[8]。
学名は、長い尾をもつカラ類を意味する[9]。和名は極端に長い尾(全長14 cmに対して尾の長さが7-8 cm)を柄の長い柄杓に例えたこと由来し[3]、江戸時代には「柄長柄杓(えながひしゃく)」、「柄柄杓(えびしゃく)」、「尾長柄杓(おながひしゃく)」、「柄長鳥(えながどり)」などとも呼ばれていた[5][9]。
- Aegithalos caudatus trivirgatus 0s9.JPG
尾羽が長いのが特徴
- Aegithalos caudatus trivirgatus in flight.JPG
飛行中の様子
生態
おもに平地から山地にかけての林に生息するが[3]、木の多い公園や街路樹の上などでもみることができる。山地上部にいた個体が越冬のため低地の里山に降りてくることがある[6]。
繁殖期は群れの中につがいで小さな縄張りを持つ[2][10]。非繁殖期も小さな群れをつくるが、シジュウカラ、ヤマガラ、ヒガラ、メジロ、コゲラなどの違う種の小鳥と混群することも多い[3]。エナガはその混群の先導を行う[5]。また、非繁殖期にはねぐらとなる木の枝に並列し、小さなからだを寄せ合って集団で眠る習性がある[3]。街中の街路樹がねぐらとなることもあり、ねぐらとなった街路樹は夕方にはたくさんのエナガの鳴き声でザワザワと騒がしくなり木の下にはフンがたくさん落とされることになる。地鳴きで仲間を確認しながら、群れで雑木林の中を動き回る[6]。
木の枝先などで小さな昆虫類、幼虫、クモを食べ、特にアブラムシを好みホバリングしながら捕食することもある[2]。また、草の種子、木の実なども食べ[2]、樹皮から染み出る樹液を吸うこともある[3]。
3月ごろから繁殖期に入りつがいとなって、樹木の枝や幹のまたに、苔をクモの糸で丸くまとめた袋状の精巧な巣を作る[3]。このため巧婦鳥(たくみどり)と呼ばれることもあった[9]。1腹7-12個の卵を産む。4月には雛が見られることがある[4]。産座には大量の羽毛が敷きつめられる[3]。抱卵期間は12-14日で、日中は雌のみが抱卵し夜は雄も抱卵を行う[3]。雛は14-17日で巣立ちする。つがい以外の繁殖に失敗した雄が育雛に参加することもあり[3][7][11]。、シジュウカラの育雛にも参加する例が確認されている[12]。雛が無事に育つ確率は低く、原因は悪天候やカラス、イタチ、ヘビに巣の卵や雛が捕食されることなどが主な原因である[13]。
さえずりは、「チーチー」、「ツリリ」、「ジュリリ」[3]。地鳴きは「チュリリ」、「ジュリリ」[3]。猛禽類のハイタカ、ツミ、モズなどにより捕食されることがあり、これらの外敵を察知すると警戒発声を行う[14]。
- Long Tailed Tit Nest 10-04-12 (6919194038).jpg
袋状の巣
- Long Tailed Tit Nest 02-05-11 (5681127171).jpg
- Aegithalos caudatus trivirgatus eating insect.JPG
幼虫を捕食する
- LongTailedTits 60.JPG
寄り添う雛に給餌する親
分類
亜種
ユーラシア大陸を横断するように分布するエナガ(Aegithalos caudatus)は、以下の亜種に分類されている[15]。日本には4亜種が分布する。
- A. c. caudatus (Linnaeus, 1758) - コウライシマエナガ(島柄長)、ヨーロッパ北部と東部からシベリアにかけてと、韓国、日本の北海道に分布する。稀に本州北部で観察されることがある[5]。頭部全体が白く、幼鳥には他の亜種の成鳥のように過眼線(淡い眉斑[7])があり、成鳥には黒い過眼線がない[3]。シノニムが、A. c. japonicus。北海道とサハリンなどに分布するものを亜種シマエナガ(A. c. japonicus)とされることもある[16]。
- A. c. rosaceus テンプレート:AU, 1938 - ブリテン諸島に分布する。
- A. c. europaeus (テンプレート:AU, 1804) - フランス北東部とドイツからイタリア北部とトルコにかけて分布する。
- A. c. aremoricus テンプレート:AU, 1929 - フランス西部に分布する。
- A. c. taiti テンプレート:AU, 1913 - フランス南西部と南部からスペイン中部とポルトガルにかけて分布する。
- A. c. irbii (テンプレート:AU & テンプレート:AU, 1871) - スペイン南部、ポルトガル、コルシカ島に分布する。
- A. c. italiae テンプレート:AU, 1910 - イタリア中部と南部、スロベニア北西部に分布する。
- A. c. siculus (テンプレート:AU, 1901) - シチリア島に分布する。
- A. c. macedonicus (テンプレート:AU, 1892) - アルバニアとギリシャからブルガリアとトルコ北西部にかけて分布する。
- A. c. tephronotus (テンプレート:AU, 1865) - ギアシア東部からトルコ中部、イラク北部、シリアにかけて分布する。
- A. c. tauricus (テンプレート:AU, 1903) - クリミア半島に分布する。
- A. c. major (テンプレート:AU, 1884) - トルコ北東部とコーカサスに分布する。
- A. c. alpinus (テンプレート:AU, 1783) - アゼルバイジャン南東部、イラン北部、トルクメニスタン南西部に分布する。
- A. c. trivirgatus テンプレート:AU & テンプレート:AU, 1848) - エナガ、日本の本州に分布する[17]。稀に北海道南部で観察されることがある[5]。
- A. c. kiusiuensis テンプレート:AU, 1923 - キュウシュウエナガ、日本の四国と九州に分布し、亜種エナガとの形態の相違はほとんどない[17]。
- A. c. magnus (テンプレート:AU, 1907) - チョウセンエナガ、韓国中部と南部、対馬、隠岐諸島、佐渡島に分布し、、亜種エナガとの形態の相違はほとんどない[17]。
- Wiki-simaenaga.jpg
A. c. caudatus
コウライシマエナガ - Aegithalos caudatus japonicus - National Museum of Nature and Science, Tokyo - DSC07062.JPG
A. c. japonicus
シマエナガ - Aegithalos caudatus Apley 1.jpg
A. c. rosaceus
- Long-tailed Tit Aegithalos caudatus.jpg
A. c. europaeus
- Mito Aegithalos caudatus 1.jpg
A. c. irbii
- Aegithalos caudatus trivirgatus on snow.JPG
A. c. trivirgatus
エナガ
種の保全状況評価
国際自然保護連合(IUCN)により、2004年からレッドリストの軽度懸念(LC)の指定を受けている[18]。個体数は安定傾向にある[18]。
日本の以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている[19]。
エナガ属
テンプレート:Sister テンプレート:Sister エナガ属(エナガぞく、学名:Aegithalos テンプレート:AU, 1804 )は、スズメ目エナガ科に分類される鳥類の一属[22]。以下の種が知られている[15][22]。
- A. caudatus (Linnaeus, 1758) - エナガ、英名:Long-tailed Tit、ユーラシア大陸に広く分布する。
- A. glaucogularis (テンプレート:AU, 1855) - 英名:Silver-throated Bushtit、ヨーロッパと中国中部、北東部、東中部に分布する。
- A. leucogenys (Moore, F, 1854) - ホオジロエナガ、英名:White-cheeked Bushtit、ヨーロッパ南中央部に分布する。
- A. concinnus (テンプレート:AU, 1855) - ズアカエナガ、英名:Black-throated Bushtit、ヒマラヤからベトナムにかけて分布する。
- A. niveogularis (Gould, 1855) - ノドジロヤマガラモドキ、英名:White-throated Bushtit、ヒマラヤ北西部に分布する。
- A. iouschistos (テンプレート:AU, 1845) - ヤマガラモドキ、英名:Rufous-fronted Bushtit、ヒマラヤの中部と東部に分布する。
- A. bonvaloti (テンプレート:AU, 1892) - 英名:Black-browed Bushtit、ミャンマー北東部から中国にかけて分布する。
- A. sharpei (テンプレート:AU, 1904) - 英名:Burmese Bushtit、ミャンマー南西部に分布する。
- A. fuliginosus (テンプレート:AU, 1869) - ギンガオエナガ、英名:Sooty Bushtit、中国の北中部に分布する。
- Long-tailed Titmouse Grönvold.jpg
A. caudatus
エナガ - Aegithalos caudatus vinaceus.jpg
A. glaucogularis
- PsaltriaLeucogenysGould.jpg
A. leucogenys
ホオジロエナガ - Black-throated Tit (Aegithalos concinnus) -on branch.jpg
A. concinnus
ズアカエナガ - White-throated Tit DSC03220.jpg
A. niveogularis
ノドジロヤマガラモドキ - AcanthiparusJouschistosGould.jpg
A. iouschistos
ヤマガラモドキ - Aegithalos fuliginosus.jpg
A. fuliginosus
ギンガオエナガ
脚注
参考文献
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- 黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科9 鳥III』、平凡社、1986年、158頁。
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関連項目
テンプレート:Sister テンプレート:Commons&cat
外部リンク
- テンプレート:Cite journal
- エナガの巣作り NHK for School
- エナガ (日本野鳥の会)
- Northern Long-tailed Tit (Aegithalos caudatus) (Linnaeus, 1758) (バードライフ・インターナショナル)テンプレート:En icon
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