コスモ・ゼロ
コスモ・ゼロ (Cosmo-Zero) は『宇宙戦艦ヤマトシリーズ』に登場する架空の宇宙戦闘機である。デザイン担当[1]は松本零士、加藤直之、宮武一貴。以下は劇中設定。
概要
全長 | 17.4m |
全幅 | 8.2m |
武装 | パルスレーザー機関砲[2]×4門(機首下面) 同×4門(機首上面コクピット両脇に2門ずつ)[3] 対艦ミサイル×2発(翼下の計2箇所のハードポイント)[4] |
地球防衛軍の宇宙戦闘機で、正式名称は「零式宇宙艦上戦闘機」。大気圏内外で運用できる万能戦闘機である。第1作の設定によれば、零式宇宙艦上戦闘機「52型」というサブタイプ名を持つ。「ブラックタイガー」以降に開発・採用された、対ガミラス帝国戦役時の最新鋭機である。
コスモ・ゼロは、その一面における優れた性能にも関わらず、機体の性格が速度や運動性や格闘空戦能力に特化して、機内の余裕が無かったり、増槽やミサイルは外装式で、ハードポイントは2箇所で、胴体下面が使えないなど、機外搭載量も少なく、より総合性能やコストパフォーマンスに優れたマルチロールファイターである「コスモタイガーII」が就役したことにより、本機の本格量産は見送られたらしく、対白色彗星帝国戦役以降では、ストーリー上は、古代機以外、姿を見せていない。コスモ・ゼロは、単独での使用の他、専ら指揮官機として運用されていた。
主翼と上下の垂直尾翼で構成される十文字翼が特徴的。下部垂直尾翼(安定翼)は可動式で、着陸状態では大部分が胴体に収納される。機首部の両側面と下面の計3箇所に、姿勢制御用の噴射ノズルを持つ。
通常は単座機として運用されるが、後部座席を設置して複座型にすることができる[5]。後部座席の使用例としては、第1作第19話で宇宙に飛び出した相原義一を収容。『宇宙戦艦ヤマト2』第25話では真田志郎を乗せて都市帝国に突入。さらに対ディンギル帝国戦役時、古代進が後部座席に森雪をナビゲーターとして同乗させ偵察に出たことなどがある。この時、古代が気絶していたにもかかわらず、母艦であるヤマトに帰投しているため、自動帰投装置でもあるか、もしくは、非常時には後席でも最低限の操縦はできるようである。
機体のカラーリングは、胴体は灰白色もしくはシルバー、機首が赤、コクピット前方は眩惑防止用の黒、各翼の前縁部分は黄色である。ただし対ディンギル帝国戦役時はカラーリングに若干の変更があり、胴体部が薄い水色に、機首は赤だが下部の突起が白に、上部垂直尾翼全体が赤でその前縁は白、エア・インテークの前縁も白になっている。
なお、初登場時の呼称は「宇宙ゼロ戦」であり、機体も複数確認され、明らかに加藤達も乗っている映像や表現があった(艦底部格納庫内の機体全てがコスモ・ゼロと思われるシーンもある)が、ストーリー半ばから事実上ヤマトでは古代進の専用機となり、古代機以外のコスモ・ゼロは第2作以降の映像作品では登場しない。ただし、本機は作中何度か損失しており、同型機が複数存在すると見られ、オクトパス原始星団での大破、『ヤマト2』で都市帝国の艦載機デッキに取り残されるなどした機体がそれに当たる。『ヤマト2』の後継作である『新たなる旅立ち』には本機が登場するが、続編の『ヤマトよ永遠に』では本機が登場せず、古代はコスモタイガーIIのバリエーション機(設定名称は「新コスモゼロ」、垂直尾翼が赤く塗られている[6])に搭乗している。『宇宙戦艦ヤマトIII』第2話にも古代が「新コスモゼロ」を整備するシーンは存在するが、出撃のシーンはなかった。『完結編』においては、前述の通りヤマトに搭載され活躍するが、その後古代は森、真田らと共に内火艇を使用して退艦しており、本機が自沈予定のヤマトより搬出される描写は無かった。
『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』では、古代進は「コスモゼロ21」に搭乗した。この機体は機首と胴体の下にノズルを持ち、垂直離着陸できる。主翼は胴体サイドブロックの副機関ごとその根元から上方に折り畳み式になっている。
発進シークエンス
ヤマト搭載機の場合、コスモ・ゼロは艦後部に2基あるカタパルトの内のひとつより射出される。カタパルトは艦後方を向いている。
発進シークエンスは下記の通り。
- まずカタパルトの直後に位置するエレベーターが、艦内後部上方にある、もっぱらコスモ・ゼロが使用している格納庫の甲板の高さまで下がる[7]。
- コスモ・ゼロがエレベーターへ移動する。
- リフトアップ開始。
- エレベーターが通常時の高さを越えてカタパルトと同じ高さになるまでコスモ・ゼロをリフトアップする。
- コスモ・ゼロがエレベーターからカタパルトへ移動する。
- コスモ・ゼロ、射出機に固定。
- エレベーター、通常時の高さに下がる。
- パイロットによる「コスモ・ゼロ、発進」の合図で射出される。
- 射出後、コスモ・ゼロの下部垂直尾翼が展開する。
- 射出完了。
なお設定では、カタパルトより射出された機体がヤマトに戻るときは、カタパルト下部の着艦口(『さらば宇宙戦艦ヤマト』前半で、救命艇が発進する部分。大和型戦艦では短艇格納庫があった)から収容されることになっているが、画面ではそこまで描かれていない。
漫画版
松本零士や聖悠紀の漫画版では殆ど登場しない。逆にひおあきらの漫画版では頻繁に登場する。
ひおあきら版では「宇宙零戦」と呼称されており[8]、劇中描写からヤマトに40機が艦載されている模様である。古代専用機ではなく加藤も中盤まで愛機としており(バラン星会戦から重戦に乗り換えている)、宇宙零戦隊として複数機が登場。ガミラスの冥王星基地を爆撃して破壊したり、銃撃で高速空母を撃沈するなどアニメ版より活躍している。また、宇宙サルガッソーでの探索や、ガミラスの宇宙要塞潜入にもシームレス機に代わって使用されている。
機体その物はコスモゼロと大差ないが、前述のようにアニメ版にはない爆撃能力があり、主翼下のパイロンが増槽の他に内側へ二箇所増設され、尾部にスネークアイ状のダイブブレーキがある大型の自由落下爆弾を一発ずつ懸架可能[9]。
発進シークエンスはアニメ版とは異なり、発進口がヤマトの第三主砲の直下(旧戦艦大和の短艇格納庫付近)にあり、舷側がスライドして横方向へ発進する。収容は舷側から触手状の着艦マニピュレーターが繰り出され、機体を絡める形で強制着艦させる方式である。
ゲーム版での設定
プレイステーション用ゲームソフト『宇宙戦艦ヤマト 遙かなる星イスカンダル』発売に伴い、登場メカの一部はデザインのリニューアルが行われたが、本機も宮武の手によって新しい設定画が描かれている。基本的なデザインは変わらないが、全体的にエッジがシャープになり、角部の丸みがなくなっている。機体下部垂直尾翼は引き込み式ではなく、折りたたみ式に変更されている。
設定も若干変更され、「コスモタイガーII」に対して「コスモタイガー (I)」 にあたる、2220年以降に配備される予定の最新鋭機の試作機とされている。古代守も開発に関わっていた模様。ヤマトにはこの試作機1機が搭載されているのみで、当初より古代進専用機として扱われている。ただし、続編であるゲームソフト『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』においては、加藤三郎、山本明らも搭乗できる「ブラック・ゼロ」なる機体も存在している。これはボーナスユニットとして登場する、黒を基調としたカラーリングのコスモ・ゼロの同型機である。
『宇宙戦艦ヤマト2199』におけるコスモ・ゼロ
全長 | 16.9m(格納時:15.5m) |
全幅 | 6.8m |
主機 | 軸流式コスモエンジン(彗星5型2号)×1機 |
副機 | 不明×2機 |
武装 | 機銃×4丁 機関砲[10]×1門 ミサイル各種[11] |
特殊装備 | デコイ[12] |
『宇宙戦艦ヤマト』(以降、「旧作」)のリメイク作品である『宇宙戦艦ヤマト2199』では、「零式52型空間艦上戦闘機 コスモゼロ」という名称で、設定やデザインがリファインされて登場する。デザイン担当は玉盛順一朗、コックピット内は山根公利。
国連宇宙海軍/極東方面空間戦闘群/宙技廠が開発した機体で、種別は「全領域制宙戦闘機」である。古代は「ゼロ」、沖田は「零式(れいしき)」と呼んでいる。量産遅延に従い、2機のみヤマトに搭載され、それを補充するためにコスモファルコンが国連地上軍から転用されている。なお、本来は2200年制式化予定であり、「零式」は仮称である。
基本的に単座だが、後部に予備シートが収納されており、複座にも対応している。また、コックピット内モニターや機体各所の細部表示などが漢字やカタカナなど日本語で書かれていることが確認できる。
旧作のコスモ・ゼロとの外見上の相違点は、主翼の下反角が翼の途中からさらにもう一段階付けられていることなど。翼下ハードポイントには高機動ユニットを懸架している[13][14]。艦上戦闘機として開発されたため、機首、主翼、垂直尾翼が折り畳み可能になっている[15]。また、コスモゼロの外観上の特徴とも言える機首・垂直尾翼・主翼に存在する突起状の部分については、近年の戦闘機のステルス化などの状況を鑑み、コスモファルコン編隊のステルス制御用の各種アンテナが内蔵されているという指揮官機・電子戦機の要素を踏まえた解釈となっている。さらに、機首先端の各種複合アンテナには流体制御システムを内蔵し、太陽系標準環境における全領域航行を可能とする。
機体中央に主エンジン、その両側に副エンジンを搭載する。主エンジンは後ろから見て時計回りに回転するため、機体は左旋回が得意[16]。単独での大気圏離脱能力がある。
武装は機銃が機首下面に4丁装備になったほか、機首の穴は機関砲となっている。機銃や機関砲は一見すると実弾を発射しているような描写だが、実際にはビーム兵器であり、機銃は薬室内に力場を形成し弾丸状のプラズマ等のビームエネルギーを銃身内で加速させ連続発射し[17]、機関砲は薬室内で形成した陽電子砲弾を発射している[18]。性能はきわめて優秀で、空戦性能のみならず機関砲やミサイルを使った対地・対艦攻撃能力も強力である。
ヤマトに艦載されている2機は、それぞれ古代と山本玲がパイロットを務めており、古代機は機首が赤色に、山本機はオレンジ色に塗装されている。古代機のコールサインは「アルファ1」、山本機は「アルファ2」。アルファ1は、ガミラス本星戦において爆発する第二バレラスの破片によって大破し、復路で航空隊員にいじられている。亜空間回廊内での白兵戦では篠原達がアルファ1の機銃を持ち出し、敵兵を撃退するのに使用されている。
なお、防空基地に配置されていた機体は、主翼に日の丸が描かれていた。この機体は厳密には51型[19]で、エンジン不調で複座型の試験も兼ねて駐機されていた[20]。
発進シークエンス(2199)
旧作同様、艦後部のカタパルトから発艦する。カタパルトは左右に2基設置されているが、第一格納庫は中央で仕切られているため、使用されるカタパルトは固定されている。
発艦シークエンスは下記の通り。
- 第一格納庫内が減圧される。
- 第一格納庫の側面ハッチが開く。
- 機体がレールに沿ってスライドし、艦外まで移動する。
- 移動中、機首と垂直尾翼が展開される。
- リフトによって、機体がカタパルト後方まで上昇する。
- リフトアップ中またはリフトアップ後に主翼が展開される。
- 機体が前進しカタパルトにセットされる。
- カタパルトが旋回し、射出方向を決める。
- 離発艦管制室から発艦許可をもらい、発艦する。
なお、七色星団海戦において、古代が発艦する際は、カタパルトが破壊されていたことや艦内が無重力状態だったこと、また緊急を要する事態だったこともあり、機体のスラスターを吹かすことで直接格納庫から出ている。
脚注
- ↑ 松本は原案デザイン、加藤が決定稿、宮武は三面図を担当。
- ↑ ただし劇中の描写では、アンテナの先端から発射したり、実体弾らしきものを撃ち出していたりと統一されていない。
- ↑ 『完結編』のみ。史実の零式艦上戦闘機も初期型の21型では7.7mm×2、20mm×2であったのが、後期型の52型丙では12.7mm×3、20mm×2に武装が強化されている。コスモ・ゼロも西暦2203年時には武装が強化されていても不思議ではない。
- ↑ 『新たなる旅立ち』のみ。対暗黒星団帝国戦役において、イスカンダルのマザータウン上空の空戦で敵護衛艦に対し使用。他の作品ではいずれも増槽を2つ懸架している。ただし、増槽とミサイルはデザインがほとんど同じであるため、正確には不明。
- ↑ 『宇宙戦艦ヤマト 完結編』公開時に西崎義展プロデューサーが「コスモゼロが元々複座機だということを知っていたファンがどれほどいたでしょうか」とコメントしたとの説あり。ヤマト後部の上部戦闘機格納庫に収容され、カタパルトから発艦し、元々複座であり、運動性に優れ、格闘戦が可能で、偵察任務も行う事などから、史実における2つの基ネタである、「零式艦上戦闘機」と「零式水上観測機」の、両方の性格を併せ持っていると考えられる。
- ↑ 赤い垂直尾翼の他に、古代専用のエンブレムも入れられる設定であったが、見送られている。
- ↑ ここは上部戦闘機格納庫と呼ばれ、ブラックタイガーなどが使用する艦内後部下方にあるものとは別のものである。なお、この上方格納庫は艦橋構造物後方、第2副砲直下あたりにあり、カタパルトとは移動通路で結ばれている。
- ↑ ただし、一度だけ「コスモゼロ」の名称が沖田の台詞で出る。
- ↑ 2機の合計4発で冥王星基地を完全消滅させた威力から、弾頭は核弾頭かと推測される。
- ↑ ラフ設定ではカノン砲と書かれているが、公式サイトのデータでは機関砲となっている。
- ↑ 対地ミサイル及び対艦ミサイル、対空ミサイルを装備。翼下にハードポイントが左右2箇所、機体上部に左右各1箇所あり、対地ミサイルは各ハードポイントに1発ずつ最大4発、対艦ミサイル、対空ミサイルは3連パイロンを使用し最大12発装備可能。
- ↑ 第4話でフレアのようなものを使用している。
- ↑ 高機動ユニットはミサイル搭載時は機体上部に装着。高機動ユニットについては『グレートメカニックDX21』P67にてチーフメカニカルディレクター西井正典が解説。
- ↑ コミック版では、パージしたユニットを機銃で撃ち抜いて爆発させ、ミサイルのように応用する描写がある。
- ↑ なお、「公式設定資料集[Earth<アース>]」P259に記載されている出渕のインタビューによると、第一格納庫には翼を折り畳まない状態でも収容可能らしいが、航空機としての面白みから折りたたんだ状態で格納されている。
- ↑ ただし、「公式設定資料集[Earth<アース>]」P111によると、劇中でこの設定は採用されていない。
- ↑ 「公式設定資料集[Earth<アース>]」P109。
- ↑ 「公式設定資料集[Earth<アース>]」P106。
- ↑ 「公式設定資料集[Earth<アース>]」P105には、極東管区に配備された増加試作機(9試艦戦)で、宙技廠飛行実験仕様と表記されている。
- ↑ 『グレートメカニックDX23』P23にある、宣伝協力(メカ設定)担当の小泉聰の解説より。
参考文献
- サンコミックス『宇宙戦艦ヤマト』全3巻。作・藤川桂介、画・ひおあきら(朝日ソノラマ・S49~S50)
- 豪華本『宇宙戦艦ヤマト全記録集』上(オフィスアカデミー・1978年)
- 『宇宙戦艦ヤマト全記録集 設定・資料版』(上記廉価版・オフィスアカデミー・1979年)
- 『ロマンアルバムエクセレント53・54 ‘宇宙戦艦ヤマトPERFECT MANUAL1・2’』(徳間書店・1983年)
- 『宇宙戦艦ヤマト2199 公式設定資料集[Earth<アース>]』(マッグガーデン・2013年)