オックスフォード大学
テンプレート:Infobox オックスフォード大学(University of Oxford)は、イギリスのオックスフォードに所在する総合大学である。12世紀には大学の礎が築かれていることから、現存する大学としては世界で3番目に古く、英語圏では最古の大学である。また、ハーバード大学、スタンフォード大学等と並び、各種の世界大学ランキングで常にトップレベルの優秀な大学として評価される世界有数の名門大学である。 世界中の指導的政治家を輩出しており、デーヴィッド・キャメロン現首相(保守党)、トニー・ブレア元首相、マーガレット・サッチャー元首相など26人のイギリス首相、エド・ミリバンド現労働党党首、30人以上の各国元首らがオックスフォード大学出身である。さらに、50人以上のノーベル賞受賞者、6人のイギリス国王、150人以上のオリンピックメダリストなどを輩出している。また、皇太子徳仁親王、皇太子妃雅子、秋篠宮文仁親王ら、日本の皇族の留学先としても知られている。 ちなみに「オックスブリッジ」として並び称されるケンブリッジ大学は、この大学に所属していた学者が1209年に移籍して形作られた。
目次
概要
大学運営の最高責任者は学長(英称; Vice-Chancellor、副総長は誤訳)であり、現在の学長はアメリカ合衆国イェール大学元学長で化学者のアンドリュー・D・ハミルトンが務める(2009年10月1日より)。総長 (Chancellor) と呼ばれる職位は終身の名誉職であり、現在の総長は香港総督を務めたクリストファー・パッテン。副学長 (英称; Pro Vice-Chancellor)は5名の大学運営・学生担当教師と7名のカレッジ長の計12名が務める。
設置形態は、英語圏では公立大学であると認識されている。法的根拠が国王の勅許状により設立された自治団体であること、大学財政審議会(UFC)を通じて国家から国庫補助金の配分を受けており、大学規模や文科・理科の配分比率がUFCにより決定されていることによる。英国で私立大学であると認識されているのはバッキンガム大学のみで、政府から施設補助金も経常費補助金も受けていない。その他のすべての大学は公立大学と認識されている。英国政府が公立大学の資産を保有していないこと、公立大学スタッフは公務員(civil servants)ではないことは、ともに日本の国立大学法人・公立大学法人と共通である。ただし、自然発生的な創立の歴史、高度な大学自治、独自の財産と安定収入のあるカレッジの存在、大学当局が立場を明確に表明していないことから私立大学であると考えられる場合もある。
歴史
オックスフォード大学の創立時期はよく解明されていない。全てが一気に構成されたのではなく、徐々に形成されたものと考えられている。少なくとも1096年には講義が行われていたという証拠がある。
- 1167年、ヘンリー2世によって、イギリスの学生がパリ大学で学ぶことを禁じられたことをきっかけに、オックスフォード大学は急速に発展した。この時期から初期のホール(寮)が設立された。これらのホールは後にカレッジ(学寮)へと発展した。
- 1209年に強姦罪で告発された2人の学生が殺されたことをきっかけに大学は一時解散し、これがケンブリッジ大学の設立につながった。
- 1214年、ローマ教皇特使のニコラス・デ・ロマーニス(テンプレート:Interlang)による交渉の結果、オックスフォードにて大学を再開することが認可された。
- この大学の地位は1571年に「2大学法人に関する法令」(Act for the Incorporation of Both Universities) によって公式に制定された。ここで、大学の正式名称は「オックスフォードの大学の総長、修士、および学士」(The Chancellor, Masters and Scholars of the University of Oxford) と定められた。
学科とカレッジ
オックスフォード大学では、大学 (University) の運営は、学科 (department) とカレッジ (college) が並列に行っており、教育体制としては、カレッジと学科が複雑に相互依存している。大学への入学は、カレッジに認められなければならず、授与される学位も、学科での審査とカレッジの認証によって、大学から与えられる。カレッジは、学生を学科に送って講義 (lecture) を受けさせる一方で、少人数制(通常は3人以下)の個別指導 (tutorial) や、中規模(4 - 15人程度)のクラス (class) を、独自に(専門性が強くなると学科に委託して)主催し、学科で行われる試験に備えさせる。学部生 (undergraduates) は、教育・生活の両面でカレッジへの依存性が強いが、大学院生 (graduates) になると、カレッジ外に住む割合も増え、学科にある研究室や図書館などで行う研究活動が中心になる。
オックスフォード大学で学部に相当する組織としては、division(日本語なら、学部や学系、学群などに相当)があり、その中に複数のdepartment(日本語で言うと、専門性から言って学科に近い)がある。(学科は、運営上の独立性が強いという意味で、学部と見なした方が分かりやすいが、学部という表現は、大学院と対比されて使われることも多いので、学科と訳しておくのが無難であろう。)
日本語では、カレッジが単科大学をさす場合も多いが、オックスフォード大学やケンブリッジ大学のカレッジ制度は、性質が大きく異なるので、後者をあえて学寮やコレッジとよぶこともある。米国のカレッジ制度とも異なるので、便利な表現であるが、学生の多くと一部の教職員とが寝食を共にし、またそこで共に学ぶという、英国内でもまれなシステムである。それぞれのカレッジには、得意とする専攻分野があるが、基本的にはさまざまな学問分野の研究者と学生が揃っており、学際的な環境にある。
大学院生を含めた全ての学生と、ポスドク研究員を除く大学教職員は、カレッジと学科の両方に所属するが、カレッジや学科独自の役職もある。
各カレッジは、代々固有の財産と安定収入のある独立王国のような私立大学である。伝統的な資産はイギリス各地の荘園、農園であり、近年では株式の割合も増えている。したがって歴史あるカレッジ程、資産と安定収入が多いことになる。それぞれのカレッジの資産を管理・運用するフェローのことをバルサー(Bursar)といい、経済学者のケインズはケンブリッジ大学のキングス・カレッジのバルサーであった。
キリスト教系宗派の系統をもつカレッジも多いが、特にクライストチャーチは、イングランド国教会オックスフォード主教管区(diocese of Oxford)の大聖堂でもあり、唯一大学の中にあり、大聖堂の規模としては英国最小という特色をもっている。英国国教会派以外にもカトリック系(トリニティ・カレッジ、セント・ジョンズ・カレッジ)、長老派系(ハリス・マンチェスター・カレッジ)、バプテスト系(リージェンツ・パーク・カレッジ)、福音派教会系(ウィックリフ・ホール)などのカレッジやパーマネント・プライベート・ホールがあり、私立大学の性質を併せ持つ所以ともなっている。
キャンパス
連合王国のうち、イングランド王国オックスフォード市に本部並びにカレッジをおく。各カレッジをキャンパスとみなすこともできるが、学科 (department) や中央図書館などを含めたものと考えるのが一般的であろう。また、ケンブリッジ大学の項にも記載があるように、学校用地という意味であれば、サイト (Site) が用いられる。
組織
中央機関として学部、図書館、科学施設と39のカレッジ、7つのホール (Permanent Private Halls ; PPHs) があり、大学の教職員と学生は、カレッジ又はPPHsのうちいずれか1つに所属する。大学院生のみを受け入れるカレッジ、女性専用のカレッジ (St Hilda's) もある。(St Hilda's は2006年6月6日に男性の将来的受入に同意し、2007年10月より男女共学が始まった)St Hilda's College to admit men
2つのカトリックPPHsの他、St Benet's Hall と Campion Hallは男子学生のみを受け入れている。
教育は、講義だけではなく、個別指導に力を注いだ形態をとっており、とくに学部生はカレッジごとに1対1-5人ぐらいの少数のグループでの教育を受ける。講義は学科 (department) レベルで行われ、基本的には大学に所属する人は誰でも聴きに行くことが出来る。分野によって多少の差はあるが、基本的に講義の出欠を取ることはない。しかし、試験は、講義に沿った内容で、学科 (department) が行うので、カレッジ中心の教育体制ともいいがたい。
学士の学位は第1級 (First Class) 、第2級上 (Upper Second class) 、第2級下 (Lower Second Class) 、第3級 (Third Class) 、合格 (Pass) の5種類があり、一般的な科目では「ファイナルズ」 (Finals) と呼ばれる卒業試験の成績で学位が決まる。ただし、実験レポートなどのコースワークの成績も試験の1科目と扱われるため、試験が全てでない科目も多い。
日本との関係
大学間の連携
当校と日本の多くの大学とが連携し、留学の受け入れを行っている。 キリスト教を信仰する、ミッション系とよばれる大学が多い。
日本分校設立に関わる報道問題
2006年に、オックスフォード大学が三井物産と共同で日本分校の設立を検討中であると、一部マスコミで報道されたことがある。
同年5月10日の報道によれば、三井物産側が出資者を集めてジョイント・ベンチャーを設立し、オックスフォード大学側は教員の派遣や大学運営支援などを行うという形で、日本分校の開設を計画していることが5月9日に明らかになったとされていた。
しかし、この報道を受けて、5月10日、学長ジョン・デランドレアが「オックスフォード大学の分校またはキャンパスを日本に開設するといった計画は現在全くありません」とのコメントを発表し、また三井物産も5月11日に「弊社とイギリスのオックスフォード大学が共同で同大学の日本分校の設立を検討しているという報道がありますが、現在、そのような計画は全くない」と発表した。これにより、本報道内容は両当事者から1日のうちに否定される格好となった。
もっとも、学長もそのコメント中で認めているように、両者の技術分野での提携は継続中である。
カレッジ一覧
- For the college scarf colours see Oxbridge scarf colours.
学位
学士号
- Bachelor of Arts (B.A.):文学士号
- Bachelor of Fine Arts (B.F.A.):美術士号
- Bachelor of Theology (B.Th.) :神学士号
- Bachelor of Education (B.Ed.):教育学士号
修士号(学部、4年制)
- Master of Engineering (M.Eng.):工学修士号
- Master of Physics (M.Phys.):物理学修士号
- Master of Chemistry (M.Chem.):化学修士号
- Master of Biochemistry (M.Biochem.):生物学修士号
- Master of Mathematics (M.Math.):数学修士号
- Master of Earth Sciences (M.EarthSc.):地球科学修士号
文学修士号
- Master of Arts (M.A.):文学修士号
大学院学位
学士号
- Bachelor of Divinity (B.D.):神学士号
- Bachelor of Medicine & Bachelor of Surgery (B.M., B.Ch.):医学士号、外科学士号
- Bachelor of Civil Law (B.C.L.):民法学士号
- Bachelor of Letters (B.Litt.) (no longer awarded):文学士号
- Bachelor of Science (B.Sc.) (no longer awarded):科学士号
- Bachelor of Music (B.Mus.):音楽学士号
- Bachelor of Philosophy (B.Phil.) (only now awarded in Philosophy):哲学士号
修士号
- Master of Surgery (M.Ch.) (10年):外科学修士号
- Master of Philosophy (M.Phil.):哲学修士号
- Master of Letters (M.Litt.):文学修士号
- Master of Science (M.Sc.) (awarded by examination or by research):科学修士号
- Magister Juris (M.Jur.) :法学修士号
- Master of Studies (M.St.):学士号
- Master of Theology (M.Th.):神学士号
- Master of Business Administration (MBA):経営学修士 (サイード・ビジネス・スクール)
- Master of Education (M.Ed.):教育学修士号
博士号
- Doctor of Divinity (D.D.):神学博士
- Doctor of Civil Law (D.C.L.):民法学博士
- Doctor of Medicine (D.M.):医学博士
- Doctor of Letters (D.Litt.):文学博士
- Doctor of Science (D.Sc.):理学博士
- Doctor of Music (D.Mus.):音楽学博士
- Doctor of Philosophy (D.Phil.):哲学博士
- Doctor of Clinical Psychology (D.Clin.Psychol.):臨床心理学博士
- Doctor of Engineering (Eng.D.):工学博士
学生
受験に際しては、ケンブリッジ大学と同じで、通常の試験及び面接による。特徴を挙げると、オックスフォードは、人物評価点を重視、ケンブリッジ大学は客観入試点を重視する所に違いがあるといわれている。その他は、入試期間が約2週間程度になる(アドミッションオフィス入試制)。
スポーツ・サークル・伝統
カレッジによっては通常の夕食の後で「フォーマル・ホール」(Formal Hall)と呼ばれる正装を必要とする晩餐を開催するなど、他の国々の大学制度とは異なったしきたりやルールが多数ある。
学部生、大学院生などそれぞれの立場によって着るべき黒のガウンが決められており、各種式典やフォーマル・ホールなどの公式な場では身に着けることを要請されている。また、ライバル校、ケンブリッジにはないしきたりとして、試験を受ける際、白いシャツ、黒のズボンあるいはスカートに男性はジャケット、その上からガウンを着る、いわゆる「サブファスク」を着るよう義務付けられていることが挙げられるだろう。
教員及び主な出身者
- オックスフォード大学の人物一覧を参照。
関連書籍
関連項目
- ジョンロック講義
- ラッセル・グループ
- ロバート・グロステスト
- ユダヤ学
- アカデミックドレス
- オクスフォード式綴り
- ローズ奨学制度
- Social Science Japan Journal
- サイード・ビジネス・スクール
脚注
外部リンク
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