アメリカザリガニ

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ハサミを持ち上げ威嚇するアメリカザリガニ
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抱卵するアメリカザリガニ

アメリカザリガニ (学名:Procambarus clarkii) は、エビ目(十脚目)・ザリガニ下目アメリカザリガニ科に分類されるザリガニの一種。学名は Scapulicambarus clarkii とされることもある。アメリカ原産だが、日本を含む世界各地へ移入され、分布を広げた外来種である。

日本でザリガニといえば、本来は北日本に分布する固有種ニホンザリガニCambaroides japonicus)を指すが、昭和以降ではより身近になったアメリカザリガニの方を指すことが多い。

分布

ミシシッピ川流域を中心としたアメリカ合衆国南部を原産地とする[1]

アメリカ(南部以外)、メキシコドミニカフランススペイン、日本(北海道から沖縄本島)などに外来種として移入分布する[1]

特徴

体長は8cm - 12cmほどで稀に20cm近い大きさの個体もいる。赤色褐色の2色である。アメリカザリガニは体色が赤いことからマッカチンという別名もあるが、色素変異などが原因により青色や白色をしている個体もいる。

頭胸甲の上は"Y"の字で区切られている。5対の歩脚のうち、第1脚は大きな鋏脚になっていて、特にオスの鋏脚は大きく発達する。また、第2脚と第3脚にも小さなはさみがある。

にはクチクラ繊維が角化し、炭酸カルシウム等が沈着した胃歯が存在する[2]臼歯と形態が似ているが、外胚葉性の分泌物がなぜ臼歯と似た形態になるのかは判明していない[2]

平野部の水田、用水路など、水深が浅くて流れのゆるい泥底の環境に多く生息し、流れの速い川には生息しない。湿地に穴を掘って生息し、夜になると出歩いて餌を探す。冬は穴にひそんで冬眠する。

食性は雑食性で、藻類水草、小魚、オタマジャクシ水生昆虫、動物の死骸など何でも食べる。飼育下で長期間サバなどのカロチンを含まない食品を与えると体が青くなる[3]天敵オオクチバスライギョナマズウシガエルサギ類、イタチカメなどだが、餌が少ないと共食いもする。

繁殖期はで、交尾を終えたメスは直径2mmほどの大粒の卵を数百個産卵し、腹脚に抱えて保護する。卵は初めのうちは紫色をしているが、やがて褐色になる。孵化した子どもは体長4mmほどで、半透明の褐色だが、他の多くのエビ類と違って既に親と同じ形をしている。子どもは孵化後もしばらくはメスの腹脚につかまって過ごすが、最初のうちは餌をとらず、体内に蓄えた卵黄で成長する。体長8mmほどになると親から離れ、藻類や水垢、小動物を食べて大きくなり、2年後には体長6cmほどとなって繁殖を始める。寿命は5年ほどである。

水辺に生息する身近な水棲動物で、外敵に対しはさみで威嚇するなどの習性から子どもたちの水辺での遊び相手である。丈夫で飼育も簡単なので、学校などでもよく飼育されており、青色や白色の体色変異個体も観賞用に珍重される。なお日本では嗜好の違いからあまり食用とされないが、原産地の北アメリカでは食用に漁獲され地元の名物料理とされている。

一方、水田ではに穴を開け、イネの根を食い荒らすとして嫌われる。また、アメリカザリガニが侵入し繁殖した水域では水草や小動物がことごとく食い尽くされ、残るのはアメリカザリガニだけという状況が発生することもある。

また、食べる餌に偏りがあったり、周囲の環境などによっては、体色が等になったりするが、自然界でこのようなアメリカザリガニを見ることはあまり無い。

外来種問題

日本に移入されたのは1927年(昭和2年)で、ウシガエルの餌用として神奈川県鎌倉郡岩瀬鎌倉食用蛙養殖場に20匹持ち込まれた[4]。その後、養殖池から逃げ出した個体が1960年頃には九州まで分布域を広げた。エサとして与えるはずのウシガエルも逃げ出して、アメリカザリガニ同様に全国各地に分布した皮肉な話が実在する。日本では全国各地に分布するが、人の手によって日本に持ち込まれ分布を広げた動物だけに、分布地は都市近郊に点在する。

水草を切断したり、水生昆虫を捕食するなど陸水生態系に影響を与える[4]。また、ザリガニカビ病を媒介して在来種ニホンザリガニを脅かす恐れが指摘されている[1]

こうした悪影響から日本生態学会によって日本の侵略的外来種ワースト100に選定されている。

特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律によって要注意外来生物に指定されている。特定外来生物の指定ではないため、飼育や販売などの規制はない。ただし、いくつかの都道府県では移植が禁止されている。

別名

ザリガニ、エビガニ、マッカチン、マッカーサー、アッカンなど。英名でも Red swamp crawfish(crayfish), Louisiana crawfish(crayfish) などの呼び名がある。

ザリガニ釣り

日本では、ザリガニ釣りは生息域各地のこどもの遊びとしてよく知られる。

釣り竿は、落ちている木の枝や棒の先に凧糸などを結び付け、糸の先に餌を縛りつけるだけである。棒を使わないこともある。餌はスルメ煮干などの乾物を使うことが多いが、生息地周辺のカエルタニシを使ったり、捕獲したザリガニをちぎって尾の部分を使う場合もある。中には竹輪蒲鉾ソーセージ等を使う地域もある。ザリガニ類は巣穴に侵入してきた外敵に飛びつくという習性があることから、餌は輪ゴムでも釣れることがある。

釣り方も、ザリガニが餌をつかんだら吊り上げるだけである。ザリガニは餌をはさんでいるだけで、驚くと餌を離してしまう。水面上に揚げられた時に餌を離すことが多いので、馴れていないと吊り上げる際にがないとうまく捕えることができない。なお、水中のザリガニが目視確認できる場合は、や素手で直接捕獲することが可能な場合もある。

本格的になると、通常の釣り竿やエビ針(釣り針の一種)を用いて釣ることもある。

飼育

捕獲後に飼育する場合は、横幅が30cmくらいの水槽を用意する。孵化1年未満のアメリカザリガニは多数を同じ水槽で飼育すると、かなりの確率で共食いを起こす。脱皮の際には、ザリガニ類の殻も柔らかく、また、機敏に動くこともできないため格好の餌食として、共食いの対象となる。よって(繁殖を目指す場合をのぞいて)共食いを避けるために一匹ずつの飼育が望ましいが、隠れ場所、水槽の広さ、餌の量、オスとメスの比率に注意すればある程度の共食いを防げる。

水槽には投げ込み式の濾過器などで酸素の供給を確保することを前提に、水を水槽の上部までたっぷり入れる。人工的な酸素の供給を考えない場合は、ザリガニ類の背中が隠れる程度までの水位とするか、上陸できる陸地を作る。しかし、が少ない場合、餌等によって水質が悪化しやすく、またそれによって酸素の含有量が減るため、ザリガニには過酷な環境となり生育に困難を来すことになる。大きな個体であれば多少は持つが、稚ザリガニの場合、このような環境では数日のうちに死んでしまう。できる限り何らかの形で酸素を供給することが大切である。ただ、ザリガニは脱走の名人でもあるのでチューブや電源ケーブルを器用に登るため、何らかの逃走防止を行った方が良い。

ザリガニは臆病なため、隠れ場所を用意してやると良い。塩ビ管のような筒状のものを水槽に投入すると喜んですみかにする。割れて使えなくなった植木鉢でも良い。ペットショップにはこれに適した素焼きの土管や、たこつぼが売られている。水槽の底に砂利を敷くとザリガニも移動しやすい。砂利としては、大磯砂硅砂等が適している。

雑食性であるため、様々なものを食べる。煮干しするめ、ゆでたホウレンソウ人参等もよく食べる。低層で生息する熱帯魚コリドラスプレコ)用の餌や沈降タイプのの餌が非常に便利である。これらの餌は、水槽に投入後、迅速に沈むように作られているためザリガニの餌として好都合である。食べ残したを汚し、手入れに手間がかかるようになる。そこで、淡水性のエビ等を飼えば食べ残しを掃除する。もしあまり食べなくなった場合は、いくつかの可能性はあるが脱皮の前である可能性があるので過剰に反応せずにそっとしておく(脱皮した殻をザリガニに見間違えるほど、綺麗に脱皮する)。脱皮前は背と尻尾の間に空間が出来ていたり、黒く変色するので判断できる。個体の大きさにもよるが、大きめの個体でも餌の頻度は一日に一度、上記の熱帯魚用の餌を1つ程度で生きることができる。

水は水道水でもすぐさま死んでしまうということはないが、出来れば1、2日間汲み置きをしてカルキを抜いた水、または井戸水等を用いた方が良い。水換えは、水質の急激な変化を避ける為、一度に全ての水を換えることはせず、多くても半分程度の水換えにと留めるべきである。バクテリア等が安定しバランスが取れた水槽では1ヶ月以上交換しなくても飼育可能である。

室内で飼う場合、水温にはあまり気を使う必要がない。ただし、30℃を超えた水温のもとでの生育は厳しいようである。水温が高い場合は送風することで水温が下がる。送風は蒸発量が多くなるので水質や水量の監視が必要である。

食材

フランス料理の高級食材エクルビスには、アメリカザリガニ、ウチダザリガニなどが使用される。豪州でも日常的に家庭で調理される。また、中華料理でも小龍蝦 (xiao long xia) と呼ばれ人気の高い食材である。

アメリカ合衆国の南部でもよく食される。 特にルイジアナ州郷土料理ケイジャン料理クレオール料理では、ガンボジャンバラヤの食材として頻繁に使われ、更にザリガニを大鍋で茹でただけのボイルド・クロウフィッシュ(茹でザリガニ)も名物料理である。

日本でも外国料理店や一部の料亭などでザリガニ料理を出す場合があるが、これは食用として流通しているものを使用している。市場価格では海産のエビ類と比較しても高価な部類である。 家庭での扱いは、日本での主な生息地が沼やドブ川、農業用水といった不衛生なイメージの箇所が多いことや、泥地を好むため、捕獲直後に一定期間、浄水で泥抜きをする必要がある点から、調理して食べるといった行為は一般的ではない。ザリガニの食味は、淡白で癖の無い味で、食感はシャコに似ている。通常の加熱調理ではサイズに対して可食部は少なく歩留まりが悪いが、高温の油(200℃)で一定時間揚げると殻ごと食する事が出来る。

出典

  1. 1.0 1.1 1.2 アメリカザリガニ 国立環境研究所 侵入生物DB
  2. 2.0 2.1 テンプレート:Cite book
  3. 『トリビアの泉〜へぇの本〜 第Ⅱ巻』p.63-64 講談社
  4. 4.0 4.1 テンプレート:Cite book

関連項目

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