アジ化ナトリウム
テンプレート:Chembox アジ化ナトリウム (アジかナトリウム、sodium azide) は化学式 NaN3 で表される、白色無臭の塩である。ナトリウムアジドともいう。式量 65.0 g/mol、融点 275 ℃、沸騰する前に分解するので沸点は無い。室温では六方晶系の結晶である。窒化ナトリウム Na3N(式量 82.976 g/mol) と混同されやすいが、これとは全く別の化合物である。
製法
性質
生成エンタルピーが正であり、熱力学的に不安定な物質で、融点付近で テンプレート:Indent の反応が起こり、窒素とナトリウムに分解する。特に、急に加熱すると爆発の危険性もある。しかしながら、重金属元素のアジ化物が衝撃に敏感に反応して爆発することと比較して、アジ化ナトリウムは衝撃による爆発性を有しない。これはナトリウムが非常に電気陽性の強い元素であるためである。
水に非常によく溶け (17 ℃で 42 g/100 ml)、弱塩基性を示す。反応性が高く、二硫化炭素や多くの金属と反応し、爆発性の高いアジ化物を形成する[2]。それに加え、酸とも反応し、爆発性をもち刺激臭のある有毒ガスであるアジ化水素を発生する[2]。
アジ化物イオン N3− の構造は直線形であり共鳴しており、N−N結合距離は1.15 Åである[1]。 テンプレート:Indent
用途
アジ化ナトリウムには防腐剤・農薬原料・起爆剤など、さまざまな用途がある。かつては、その爆発・分解性を利用して自動車のエアバッグを窒素ガスで膨らませることに用いていたが、日本では人体・環境に配慮して、2000年より全く使用されていない。
有機合成において、ハロゲン化アルキルから有機アジ化物を調製する際に求核剤として用いられる。
- R-X + NaN3 → R-N3 + NaX (X = Cl, Br, I)
他の金属アジ化物を合成するための原料としても用いられる。また、加熱によってナトリウムと窒素に分解することから、純粋なナトリウムおよび窒素を得るための原料としても利用される[2]。
水質分析において、ウインクラー・アジ化ナトリウム変法によって溶存酸素量 (DO) を測定する際に亜硝酸による妨害をマスキングするために用られる[3]。また、二酸化硫黄や亜硫酸の分析においても同様に、亜硝酸による妨害をマスキングするために用いられる[4]。
測定実験
物理化学的な測定において試料セル (sample sell) と参照セル (reference sell) がある測定装置 (ITC・DSC) は参照セルにアジ化ナトリウムを使用しており、上記に示されるように防腐剤の役割を果たしている。
毒性
酸と反応して生成するアジ化水素を吸引することや、アジ化ナトリウムそのものを経口摂取することは非常に危険である。 また、アジ化物イオンは細胞の呼吸を阻害する働きがある。一酸化炭素がそうであるのと同様に、ヘモグロビンに対して不可逆的な結合を形成し、これにより細胞が死にいたる。アジ化ナトリウムによって最も深刻な被害を受けるのは、多量の酸素を必要とする、心臓と脳である。
気体となったアジ化ナトリウムを吸入、食物から摂取、あるいは皮膚から吸収したりなどすると、以下の兆候を示すことがある。
また大量に摂取すると、痙攣・血圧降下・意識不明・呼吸不全などを引き起こし死に至る。現在この中毒症状に対する、根本的な治療方法は確立されておらず、対症療法のみの治療となる。アジ化ナトリウム中毒から回復したとしても、脳などに深刻な後遺症がのこる場合もある。
日本
日本では特に砒素混入事件のあった1998年夏から秋にかけて、新潟・三重・愛知・京都でポットの湯などにアジ化ナトリウムが混入される事件が相次いだ。薬品のずさんな管理体制が明らかになった一連の事件を受けて、厚生労働省は1999年に毒物及び劇物取締法により、アジ化ナトリウムを毒物に指定した[5]。
脚注
テンプレート:ナトリウムの化合物- ↑ 1.0 1.1 引用エラー: 無効な
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」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません - ↑ 2.0 2.1 2.2 テンプレート:Cite book
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