嘔吐

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嘔吐(おうと)とは、動物ヒトの口から胃の内容物を吐き出す行為、又は症状である。

概要

一般に過度の飲酒や摂食、腐敗・変質した食物の摂取、過度の運動、体調不良などの際にまず脳内の「嘔吐中枢」が刺激され、「吐き気」を催し、それに続いて嘔吐する(但し吐き気が来ないままいきなり嘔吐する場合もある、特に乳幼児や泥酔している場合)。嘔吐の結果、吐き出されたものを「吐瀉物(としゃぶつ)」と呼ぶ。またの奥に指を入れたりして吐き気を催すことを「嘔吐反射」という。(くしゃみ)・射精と同様、反射であることから、本人の意思では制御できない。

また、船舶遊園地遊具などで長時間もしくは激しく揺れる環境下にあった場合、「酔い」が発生して嘔吐に至る場合がある。この他、高温になる閉所、きつすぎる衣服(特に着物)、帽子、ヘルメット、日本髪(結婚式舞踊発表会、等)、等の重量があったり蒸れたりする物を長時間着用の場合や、他者の嘔吐(いわゆる貰いゲロ)、吐瀉物、排泄物、等、を見たり聞いたり各種の悪臭を嗅いだり、恐怖映画マインドクラッシャー等の不快な映像、音声を見たり聞いたりした場合にも、精神的なストレスから、吐き気・嘔吐を引き起こす場合が多い。

バス酔いなどする人は、予めエチケット袋(ビニール袋など)を持ったり、薬局などで売られている酔い止め薬を乗車前に飲むと良い。長距離バスや観光バスなどでは、エチケット袋が用意されている場合が多い。

嘔吐行為を強制的に停止させようとするとパニック状態に陥る場合がある。

早期の治療が必要な場合

  • 前述した要因に当てはまらず、頭痛など他の部位の症状を伴う嘔吐の場合には、臓器や脳・神経系の損傷などと言った、別の病因による副次的な症状である可能性があり、場合によっては生命の危険にかかわる。このため早急な医師診察が必要である。
  • 一般的に嘔吐した場合、吐瀉物は胃酸を中心に胃の内容物であるが、胃炎胃潰瘍などの病気により発生した場合には、それら以外に血液を含む場合がある。状態によって以下のような、それぞれ別の原因によるものである。
  1. 茶褐色である(胃酸と反応するため)
    吐瀉物中にこのような茶褐色の血液の塊がある場合は、消化器潰瘍が疑われるため、早めの消化器科への受診が勧められる。嘔吐によって初めて自覚されるが、普段はそのまま消化してしまっているため、自覚症状に乏しい。
  2. 鮮血を吐く(赤い・量が多いなど)
    吐血と呼ばれ、重大な消化器の損傷が疑われるため、嘔吐とは違いより救急的な医療を必要とする。消化器科・内科外科を含む救急指定病院へ急ぐ事が勧められる。
  3. 咳き込んだ際にも血液が混じる
    喀血と呼ばれ、嘔吐や吐血とは原因が異なり、呼吸器の損傷で咳や痰と共に血液が排出される。その一部が胃に入って、吐瀉物にも血が混じる事もある(茶褐色)。感染症(伝染病)も疑われるため、早期の呼吸器科への受診が勧められる。

吐き方・吐かせ方

嘔吐物が気管に入らないように頭を下に向けて吐かせる。吐くだけ吐いてすっきりさせる。気分が悪く吐きそうだが吐けないなどの場合は、指を舌の奥に入れるなどの嘔吐反射を用いる。特に臭気が不快感を催させるため、吐瀉物の処理はし尿など汚物全般に準じ、また嘔吐に際して着衣が汚れないよう注意を必要とする。吐いた後は十分に水分及び塩分補給をすべきであるが、その際に冷たいものを飲ませるとそれが胃に刺激を与え、さらに吐いてしまう場合がある。そのため、体温程度に温めたスポーツドリンクなどを与えるのが望ましい。

意識を失っている場合や、意識がはっきりしない場合などは、嘔吐の後に窒息する危険性があるため、喉の奥や鼻腔の中に吐瀉物が詰まっていないか注意する必要がある。緊急的には指で掻き出したり、後ろから抱きかかえて鳩尾(みぞおち)を斜め後ろ上方に押し込むなど、喉の奥にモノが詰まった時同様の処置をするが、乳幼児の場合などでは、逆さにして背を強く叩いたり、大人が口で幼児の鼻と口を覆って吸い出すことも行われる場合がある。

吐かせた、または吐いた後は、患者に回復体位を取らせるのが望ましいが、回復体位を取らせるのが難しい場合は、嘔吐物により窒息しないために体を横に向けて寝かせる。特に意識が朦朧としている場合や意識を失っている場合、嘔吐物が気管に入り、窒息の危険がより高まるために仰向けに寝かせてはならない。

また、飲み込んだ物を強制的に吐かせるために催吐薬を用いる場合もある。

治療方法

上記の(早期の治療が必要な場合)の場合、至急医師の診察を受け、原疾患の治療を受けるべきだが、特に異常が無く不定愁訴として嘔気・嘔吐が起きる場合、消化器機能改善剤であるメトクロプラミドドンペリドン、ドパミン遮断効果・鎮静効能のある抗精神病薬のクロルプロマジン等の投与を対症療法として使用される場合がある。

小児科領域の嘔吐

成人では消化器の領域の感染症や潰瘍などによって起こる嘔吐が最も多いのだが、小児ではその他の疾患も鑑別に上がってくる。先天性腸閉鎖は腸回転異常でも起こるし、輪状膵でも起こりえる。治療には原因精査が必要である。これらの疾患ではその他の奇形の精査も重要となることがある。

発症時期 疾患 吐物 画像所見
出生直後 先天性食道閉鎖症 泡沫様 coil up sign
出生数時間~1週間 先天性腸閉鎖症 胆汁性 microcolon 多数のniveau
出生数時間~1週間 鎖肛   直腸体温計が入らない、倒立位撮影
出生数時間~1週間 ヒルシュスプルング病   megacolon caliber change narrow segment
出生2,3週 肥厚性幽門狭窄症 噴水状嘔吐 string sign umbrella sign showlder sign
数ヶ月~2歳 腸重積 胆汁性、黄色吐物 かにの爪、target sign

派生語

小間物(こまもの)

吐瀉物のことを婉曲した語。吐瀉物は飲食したさまざまな種類の食物が混ざっていることから、小間物の扱う商品(日用品・化粧品はど)は種類が多く、いろいろな商品が混じっているため、それになぞらえた。また、小間物屋が商品を広げて見せながら、商売をしている姿に似ていることから、俗語として、飲食したものを吐き出す行為。反吐を吐くこと。また、吐瀉物そのものを指す。

「小間物屋(こまものや)を開く」
慣用句として用いられる。「小間物屋を広げる」小間物店(こまものみせ)を広げる」ともいう。飲食したものを吐き出すこと。反吐を吐くこと。

その他

  • ウサギは胃の噴門幽門が接近しているため、嘔吐することができない。
  • カエルは胃袋ごと嘔吐する。その際、胃袋は裏返しになる。
  • ネコもよく嘔吐する動物でありその原因は毛玉だと思われているが、あまりに頻繁に続くようなら獣医に診せた方が良い場合がある。

関連項目

外部リンク

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