アイヌ語方言
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アイヌ語(アイヌご)の方言について。
アイヌはコタン毎に生活をしており、コタンは主に川筋か海岸線に沿って存在したため、川筋ごとに方言が少しずつ異なる場合が多く、また海岸部と内陸部でも差異が見られた。
かつては大きくは北海道・千島(北千島)・樺太(南樺太)の三方言があった。北海道方言は、さらに北東部方言と南西部方言の二つに分類したり、もっと細かく分類されることもあるが、方言間の詳細な比較研究が進んでいないため定説はない。千島方言は日本の千島領有以後急速に廃れ、第二次大戦後には既に話者が見つからなかったとされる。樺太方言は1994年に最後の話者とされる浅井タケが亡くなった。北海道内でも和人の移住が早くから進んだ渡島地方や石狩川下流域などの方言は記録がほとんど残っていない。かつてアイヌが居住していたとされる東北地方北部、カムチャツカ半島南部にもアイヌ語の方言が存在していたと考えられるが、詳細は知られていない。
国家を持ったことのないアイヌ民族のアイヌ語には標準語が存在しない。アイヌ語を学ぶ場合は沙流方言や千歳方言の資料が比較的手に入りやすい。
主な方言
括弧内は使用地域。話者、教材を後述。
- 北海道アイヌ語
- 北海道南西部方言
- 北海道北東部方言
- 千島アイヌ語 (旧新知郡以北の千島列島) - 村山七郎『北千島アイヌ語』 古い時代にはカムチャツカ半島でも話されていた可能性がある。北千島アイヌは明治時代に色丹島へ移住し、後に北海道本島へ再移住した。なお、元々の択捉島以南のアイヌ語は北海道方言の一種とされる。
関連項目
参考文献
(複数の方言についてふれた書籍もここに記載)
- 浅井亨「Classification of Dialects: Cluster Analysis of Ainu Dialects」(方言の分類「アイヌ語諸方言のクラスター分析」)『北方文化研究』第8号北海道大学 1974年
- 「アイヌ語諸方言の基礎語彙統計学的研究」(服部四郎、知里真志保共著) 日本民族学協会編集『民族学研究』Vol.24,No.4 1960年
- 『アイヌ語方言辞典』服部四郎
- 『北海道あいぬ方言語彙集成』吉田巌
- 『アコロ イタク』北海道ウタリ協会
外部リンク
- アイヌ語学習者のためのアイヌ語基本文献・音声資料リスト 田村すず子(早稲田大学語学教育研究所)編、奥田統己(札幌学院大学人文学部)増補
- 白老のアイヌ語単語集
- 私家版浦河アイヌ語辞典