ジュンサイ
ジュンサイ(蓴菜、Brasenia schreberi)は、ハゴロモモ科(別名ジュンサイ科。またスイレン科に含めることもある)に属する、多年生の水生植物である。本種のみでジュンサイ属を構成する。なお、「蓴菜」の字は難解であるため、「純菜」や「順才」の字があてられることもある。
特徴
スイレンなどと同じように葉を水面に浮かべる水草である。澄んだ淡水の池沼に自生する。若芽の部分を食用にするため、栽培されている場合もある。
東南アジア~インド、アフリカ、オーストラリア、アメリカ等に世界に広く分布する。日本では北海道~九州及び南西諸島(種子島・沖縄島に分布するが、すでに絶滅した地域もある。 多年生の浮葉植物。葉は互生、楕円形で、長さ5~12mm、裏面は紫色。葉柄は裏側の真ん中に着く盾形であり、ハスの葉と同じ付き方である。地下茎は水底の泥の中にあるが、そこから葉柄をのばすのではなく、茎が伸びて水面近くまで達する。秋に地下茎の一部は、養分を貯蔵して越冬用の殖芽となる。この茎からまばらに葉柄をのばし、その先に葉をつける。茎の先端の芽の部分や若葉の裏面は寒天質の粘液で厚く覆われ、ムチンによるぬめりがある。花期は6~8月。花は茎から水面に伸びた柄の先につき、直径1~1.6cm。花弁・がく片は3枚ずつで、スイレンの花を細くしたような姿だが、花弁は紫褐色であまり目立たない。
利用
ジュンサイは世界に広く分布している植物だが、食用にしているのは中国と日本くらいである[1]。
寒天質で覆われた若芽は日本料理で食材として珍重される。ジュンサイは秋田県の郷土料理とされ、同県の三種町は生産量日本一である。
主な用途として、次のような料理に用いられる。
また、北海道七飯町にある大沼国定公園には、大沼三湖のひとつである蓴菜沼があり、ジュンサイの瓶詰は大沼国定公園の名物として売られている。
なお、私有地の池で栽培されることが多いため、採集に当たっては確認が必要。
文化
万葉集に「ぬなは(沼縄)」として歌に詠まれている。
- わが情 ゆたにたゆたに 浮ぬなは 辺にも奥にも よりかつましじ
保護上の位置づけ
生育地である下記の地方公共団体が作成したレッドデータブックに掲載されている。日本全体としては普通種であるが、地域によっては絶滅のおそれが高く、既に絶滅した地域もある。絶滅・減少の要因としては、池沼の開発や水質の悪化等があげられる。
- 岩手県:Cランク(存続基盤が脆弱な種)
- 宮城県:準絶滅危惧
- 栃木県:絶滅危惧II類(Bランク)
- 埼玉県:絶滅
- 千葉県:最重要保護生物
- 東京都:絶滅
- 神奈川県:絶滅
- 新潟県:絶滅危惧II類
- 富山県:希少種
- 石川県:絶滅危惧II類
- 福井県:県域準絶滅危惧
- 長野県:準絶滅危惧
- 静岡県:準絶滅危惧
- 大阪府:要注目
- 鳥取県:絶滅危惧II類
- 島根県:準絶滅危惧
- 徳島県:絶滅危惧I類
- 香川県:準絶滅危惧
- 愛媛県:絶滅危惧II類
- 長崎県:絶滅危惧II類
- 熊本県:絶滅危惧IA類
- 大分県:絶滅危惧II類
- 宮崎県:絶滅危惧IA類
- 鹿児島県:絶滅危惧I類
- 沖縄県:絶滅
脚注
- ↑ 原田治『中国料理素材辞典 野菜・果実編』柴田書店、p.78
参考文献
- 愛媛県 『愛媛県レッドデータブック -愛媛県の絶滅のおそれのある野生生物-』、2003。
- 沖縄県文化環境部自然保護課編 『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-』、2006年。
- 鹿児島県環境生活部環境保護課編 『鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植物-鹿児島県レッドデータブック植物編-』 財団法人鹿児島県環境技術協会、2003年。
- 埼玉県環境部みどり自然課編 『埼玉県レッドデータブック植物編2005』、2005。
- 島袋敬一編著 『琉球列島維管束植物集覧』 九州大学出版会、1997年。
外部リンク
- ジュンサイ:植物雑学事典
- 日本のレッドデータ検索システム - ジュンサイの地域別レッドリストカテゴリーが色分けになっている。