ニュートロンジャマー

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ニュートロンジャマーNeutron Jammer)、通称Nジャマーは、テレビアニメ機動戦士ガンダムSEED』に登場する架空の兵器


概要

プラント最高評議会議員である物理学者オーソン・ホワイトによって開発された戦略兵器である。C.E.70年2月14日の「血のバレンタイン」で地球軍の核ミサイルから受けた被害によって、ザフトは、改めて核の脅威を認識、その対抗手段としてNジャマーの実戦投入が行われたという[1]。そしてニュートロンジャマーは「血のバレンタイン」の8日後、2月22日の「世界樹攻防戦」において初投入された。

Nジャマーの影響下では、自由中性子の運動を阻害することにより全ての核分裂を抑制する。このため、核ミサイルをはじめとする核分裂兵器、核分裂エンジン、原子力発電などは使用不可能となる。

副作用として電波の伝達が阻害されるため、それを利用した長距離通信や携帯電話は使用不可能となり、レーダーも撹乱される。しかし、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』でマユ・アスカは携帯電話を持っており、また、ギルバート・デュランダル、パトリック・ザラ、ラクス・クラインカガリ・ユラ・アスハ等は全世界に自らの演説を中継させていたため、何らかの方法で回避することは可能な模様。これにより精密誘導兵器が使用不可能となり、戦場は再び有視界接近戦闘の時代を迎えた。そして、その環境下で最も有効な兵器としてザフトが開発した新兵器がモビルスーツ(MS)である。ただ、戦闘中のMSと母艦の通信にも阻害が及び、特に通信対象との距離が離れると、その影響はより顕著になる。ザフトではこの通信妨害効果を活用すべく、ほぼすべての艦艇にニュートロンジャマーを搭載。戦闘時に稼動させるのが定石となっている。[2]

本体下部には地面を掘り進むためのドリルが備えられており、着地後は自動的に地中数百メートルまで掘削し自己埋没するうえ、あらゆる遠隔操作に対しプロテクトがなされているため、敵に無力化される危険性は非常に低い。打ち込んだザフト自身ですら除去、回収は困難だという。また、Nジャマーの有効範囲は非常に広く、オペレーション・ウロボロスにおいて使用されたものは数基で地球全域を影響下に置けるほどである。しかも投下時にはダミーを含めて大量にばら撒かれており、地球連合軍は数すら把握していない。

作品制作上の事情としては、宇宙世紀におけるミノフスキー粒子の代わりとして、在来の誘導兵器や火器管制装置を無効化し、接近戦や格闘戦を得意とする人型ロボット兵器が活躍できる条件を作る必要があった。

なお、ニュートロンジャマーには地熱を電気に変換して動力源とする装置を搭載しており、偶然の要素による装置の破壊(地殻変動による圧壊など)が無い限り半永久的に動作する。

劇中での動向

地球連合軍ユニウスセブンに核ミサイルを打ち込んだ「血のバレンタイン事件」の報復として、ザフト軍がC.E.70年4月1日に、オペレーション・ウロボロスの発動により地球全土に撃ち込んだ。この事件はエイプリル・フール・クライシスと呼ばれ、地球に未曾有のエネルギー危機を引き起こした。

地中深くに埋め込まれたNジャマーの影響から以後ザフト軍、地球連合軍の双方は核の使用が不可能となり、MSを有するザフト軍が戦争の主導権を握った。なお、この影響で原子力発電も不可能となり、化石燃料資源が既に枯渇しているコズミック・イラの地球全土に深刻なエネルギー不足が起きたことで、当時の地球人口の約1割、およそ10億人の餓死者・凍死者(その大部分は貧困層を主とした一般市民である)を出す人類史上最大の惨事が起きた。これにより、人々の反プラント、反コーディネイター感情が高まることになった[3]

ニュートロンジャマーキャンセラー

Nジャマーの影響を打ち消す装置としてザフト軍自身が開発した。有効範囲はMS1機の原子炉をカバーする程度となっている。なお、製造にはベースマテリアルとなる特殊な物質を必要とする。このベースマテリアルは地球でも産出されTVシリーズ『機動戦士ガンダムSEED』、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』登場のニュートロンジャマーキャンセラーにはそれが使われているが、『機動戦士ガンダムSEED C.E.73 Δ ASTRAY』では火星においてその大鉱脈が新たに発見された。

初期型のキャンセラーは効果範囲が広く、核搭載機に接触ないし接近すれば核エンジンを稼働させる事が出来る。この事から接敵または核搭載機と接触する事で大電力を使用するローエングリンランチャーを使用する戦法もあった。

ゲーム作品においては作品による違いはあるものの『SDガンダム GGENERATION』シリーズが「他のアビリティ(フェイズシフト装甲など)やオプションパーツによるエネルギー消費を無効にする」、『スーパーロボット大戦シリーズ』シリーズが「ターン開始時のエネルギーの回復量を引き上げる」といった形でそれぞれ設定され、エネルギー切れを起こさないという設定を再現している。

劇中での動向
ニュートロンジャマーキャンセラーを使用することで、フリーダムジャスティスなどの核エンジン搭載型MSが開発された。その後、ラウ・ル・クルーゼの手により、意図的に漏洩されたデータがブルーコスモスの盟主ムルタ・アズラエルの手に渡り、プラントが核攻撃の危機に陥った。
ニュートロンジャマーキャンセラー搭載MS
ニュートロンジャマーキャンセラー搭載MA

ニュートロンスタンピーダー

機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場。

中性子の運動を暴走させ強制的に核分裂を起こし、有効半径内に存在する核弾頭をその場で起爆させる事が出来、さらにはフリーダムをはじめとする核エンジン搭載MSの原子炉を暴走させることも可能[4]。ただし、使用は無重力下でのみと限定されている。

ナスカ級高速戦闘艦を改装して装備し照射を行う。ただし、システムを構成する6対、計12枚のブレード状の電磁波放射装置「量子フレネル」は1度の使用で焼き切れてしまい搭載した艦も機能停止に陥るため、複数回連続使用は不可能である。なお、放出された電磁波そのものには直接的殺傷力は無い。

ニュートロンジャマーキャンセラーと同じくコア部分に特殊なレアメタルであるベースマテリアルが必須だが、ニュートロンジャマーキャンセラーと比較してもニュートロンスタンピーダーに使用されるベースマテリアルは膨大である。大西洋連邦と違いベースマテリアルの新規供給源を持たないプラントは、隠匿していた核動力MS、ザク量産試作型計47機のニュートロンジャマーキャンセラーを解体して、コア部からベースマテリアルを抽出しこれの開発に充てた。

また、核兵器が使えない世界を描くために造った設定であるニュートロンジャマーが、Nジャマーキャンセラーによって無効になってしまったため、新たな核封印のために設定された背景がある[4]

劇中での動向
第9話にて地球連合軍MS部隊が、搭載した核ミサイルでプラントのコロニーに対して攻撃を行った際、ザフト軍がニュートロンスタンピーダーを迎撃に使用した。これにより、発射された核ミサイルは全て誘爆を起こし破壊され、地球連合軍のMS部隊は母艦ごと爆発に巻き込まれ壊滅した。ただし、実際には上記の通りザフト側もようやく1隻に装備できただけであり、もし仮に奇襲部隊が2段階以上に分けて攻撃を行っていれば核は防げなかったというギリギリの状況であった。この後、地球連合軍はうかつに核兵器を使用する事が出来なくなっている。劇中の作画ではニュートロンスタンピーダーの効果がジェネシスと同じに描かれており、直接MS部隊と母艦がニュートロンスタンピーダーの掃射で消滅しているが、これはアニメのスタッフが設定を確認せず作画した事によるミスである。実際は上記解説にあるように物体を直接破壊する効果は無い。

脚注

  1. メディアワークス『データコレクション 機動戦士ガンダムSEED 上巻』「OFFICIAL REPORT」による。これの公式年表によるとNジャマー下における主力兵器MSの完成は戦前C.E.65年、Nジャマーの初投入は「血のバレンタイン」の8日後であり、Nジャマーの研究は戦前から既に行われていたことになる。
  2. 電撃ホビーマガジン2003年3月号より
  3. エイプリル・フール・クライシスによって地球人類が被った被害は、『機動戦士ガンダムSEED』本編における第1話序盤のニュースでの「アフリカの万単位の餓死者」や、14話総集編におけるニュートロンジャマー投下と、それに続く「エネルギーが供給されずゴーストタウンとなった大都市」のカット。そして同14話前半でNジャマーの意味が説明される直前にプラント評議員タッド・エルスマンが言及した「地球に打ち込めば地球の経済は、分けてもエネルギー問題は深刻な打撃を被りますぞ! 併せ持つ電波攪乱の性質も生活に多大な影響を…」という発言にも示唆されている。
  4. 4.0 4.1 『パーフェクト・アーカイブ・シリーズ 機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(竹書房)掲載の、森田繁インタビューによる。

関連項目

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