ウルトラマンUSA
『ウルトラマンUSA』(ウルトラマンユーエスエー)は、アメリカのハンナ・バーベラ・プロダクションと日本の円谷プロダクションが製作したアニメ作品および、その劇中に登場する架空の組織の呼び名。アニメーションの実制作はスタジオ・ザインと葦プロダクション(現:プロダクション リード)が請け負った。英題『ULTRAMAN THE ADVENTURE BEGINS』。アメリカでは1988年にテレビ放送され、日本では「ウルトラマン大会(フェスティバル)」と題して、1989年4月28日に劇場公開された。同時上映は『ウルトラマン 恐怖のルート87』『ウルトラマンA 大蟻超獣対ウルトラ兄弟』。上映時間は78分。
目次
概要
M78星雲ソーキン星の爆発によって地球に飛来したソーキン・モンスターを追ってやってきた3人のウルトラ戦士が、アメリカ空軍のアクロバットチーム「フライング・エンジェルス」のメンバーと一心同体となり、「ウルトラフォース」として地球の各地に落下したソーキン・モンスターに戦いを挑むストーリー。
アニメのウルトラマンは、『キッズ』を除けば『ザ☆ウルトラマン』以来10年ぶりの制作となる。円谷プロダクションはウルトラシリーズのアメリカ進出に際して現地法人ウルトラ・コムを設立したが、同社社長の提案によりまずは実写作品ではなくアニメ作品を製作することとなった。本作はパイロット版として製作され、好評であればシリーズ化し、さらには実写作品の製作も予定されていたが、興行的には失敗となりシリーズ化は実現しなかった。アメリカでの実写作品は、その後オーストラリア製作の『ウルトラマンG』(1990年)の成功を経て『ウルトラマンパワード』(1993年)が製作されている。[1]
主人公は「ウルトラフォース」のパイロット、チャック、スコット、ベスの3人で、それぞれウルトラマンチャック、ウルトラマンスコット、ウルトラウーマンベスに変身する。変身の際には『帰ってきたウルトラマン』と同様、特に用具は用いない。彼らはM78星雲から来たヒーローであり、設定上は他の「ウルトラ兄弟」たちも存在する世界が舞台になっているが本編中では語られない。映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』では当初は登場予定は無かったが「設定上さしさわりないなら出したい」というスタッフの意向で[2]、宇宙警備隊の隊員としての姿が描かれた。
戦士として男性のウルトラマンと肩を並べて戦う「ウルトラウーマン」の登場やキスシーンなど、これまでのウルトラシリーズに無かった試みも多く取り入れられた。円谷皐は「(私が)ウルトラマンを男女3人にしたのですが、熱烈なファンのいる日本でなら抵抗があったでしょう」と語っている[3]。
当初ハンナ・バーベラ側から提示されたデザインでは、ウルトラマンがマントを付けていた。これは、アメリカでは「マントも付けずに空を飛ぶヒーロー」という概念が理解できなかったからだと言われている[4]。日米間で何度も打ち合わせを続け、ようやく決定稿のデザインに落ち着いたという。
国内公開は他の劇場版ウルトラシリーズの多くを手がけた松竹ではなく東宝の配給である。
ウルトラマン
ウルトラマンスコット
ソーキン・モンスターを追って地球へやってきたM78星雲からやってきたウルトラ戦士の一人。アメリカ空軍のアクロバット飛行チーム「フライングエンジェルス」のスコット・マスターソン大尉に宿って一心同体となり、当初は彼自身が危機に陥ると変身できたが、中盤では自らの意思で変身できるようにもなった。腹部に青色の星型をしたバックルを持ち、太陽エネルギーが減ると額にあるビームランプが青色から赤色に点滅し警告音を発する。ガルバラードを発電所に投げつける等、やや荒っぽい戦い方を得意とする。
必殺技
- グラニウム光線
- 両手を十字に組んで放つ必殺光線。3戦士共通の技だが、単独で使用したのはスコットのみである。3人で同時に発射すればウルトラシンクロビームとなって威力が増す。
- ウルトラ・プッシュビーム
- 両腕を「グラニウム光線」とは逆の形に組んだのち、立てた左手から帯状に発射する、黄色の光線。ウルトラマンチャックの「ウルトラ・バブル・ビーム」に包まれたズーンに放ち、アンドロメダ星雲の惑星・M11に向けて押し出した。
- ウルトラ・エナジー・ボール
- 腰のバックルから発するエネルギーを凝縮して投げつける。ガルバラードの本体イームにダメージを与えた。
- ウルトラスライサー
- グラニウムエネルギーを丸ノコギリ状にして投げる技で初代ウルトラマンの八つ裂き光輪と同じである。ウルトラ・エナジー・ボールでダメージを受けたイームに2連続で投げつけて、4つに切り裂いた。それからグラニウム光線を放ち、イームを消滅させた。
- ウルトラ投げ
- 強大なパワーで相手を投げ飛ばす技。150m以上の体長を誇る巨大なガルバラードを、サンフランシスコの市街地から、沖合にあるアルカトラズ島まで、一気に投げ飛ばした。
- ウルトラアタック
- 猛スピードで突進したのち、全体重を敵にぶつける肉弾技で、巨大な敵を数百m吹き飛ばすほどの威力を持つ。ニューヨークの市街地を破壊していたキングマイラの第3形態に向かって空中から繰り出し、一時的にひるませた。
- トリプルパワー
- 3人でキングマイラの3本の尻尾を掴み、投げ飛ばして太陽に突き落とした。
ウルトラマンチャック
ソーキン・モンスターを追って、他のウルトラチームと共に地球へやってきたウルトラ戦士の一人。スコットと同様、フライングエンジェルスの一人チャック・ギャビン大尉に宿り、一心同体となった。冷静に物事を対処し、他の2人に指示を出す指令塔に近い。太陽エネルギーが減ると額にあるビームランプが青色から赤色に点滅し警告音を発する。
- 年齢:1万4000歳
- 身長:79メートル
- 体重:6万8千トン[6]。
- 飛行速度:マッハ22
必殺技
- グラニウム光線
- 両手を十字に組んで放つ必殺光線。3戦士共通の技。ウルトラマンチャックが単独で使用したことはなかった。
- ウルトラ・シンクロビーム
- ウルトラマンスコット、ウルトラウーマンベスと同時に「グラニウム光線」を放つことで生まれる光線技で、単独で発射する場合の何倍もの破壊力を生み出す。キングマイラ第4形態に対して繰り出したが、テレポーテーション能力によってかわされてしまった。
- ウルトラ・バブル・ビーム
- 両手先から発射する防御エネルギー光線。敵を光の球に包んで動きを封じる。球体の中に入れば、バリヤーとしても使える。ズーンを保護するためと、キングマイラを閉じ込めて太陽に投げ込むために使用。
ウルトラウーマンベス
ソーキン・モンスターを追って、他のウルトラチームと共に地球へやってきた女性ウルトラ戦士。他の2人と同様に、フライングエンジェルスのベス・オブライエン中尉に宿った。太陽エネルギーが減ると額にあるビームランプが青色から赤色に点滅し警告音を発する。日本で映画が公開された当時の名称は「ウルトラウーマン」[7]。
- 年齢:1万歳
- 身長:76メートル
- 体重:5万4千トン
- 飛行速度:マッハ23
必殺技
- グラニウム光線
- 両手を十字に組んで放つ必殺光線。3戦士共通の技。
- ウルトラ・スパウト
- 水面に立ち、周囲の水を吸い上げて、手先から噴射する技。海水に弱いグリンショックスを倒した。姿を隠したキングマイラを探すためにも使用。
- ウルトラチョップ
- 体内のエネルギーを手先から放出しながら、手刀を敵に叩き込む攻撃。グリンショックスの触手をたやすく切り裂いた。
ウルトラフォース
謎の老人ウォルター・フリーマンが結成した組織。本部はジョージア・ナショナル・ゴルフクラブの地下にあり、ラシュモア山にメカの格納庫がある。
- スコット・マスターソン
- 24歳。大尉。ウルトラマンスコットと一体化する。若い女性に目がない性格。スーザンに好意を寄せる。
- チャック・ギャビン
- 35歳。大尉。ウルトラマンチャックと一体化する。戦闘現場でのリーダー格。
- ベス・オブライエン
- 25歳。中尉。ウルトラウーマンベスと一体化する。休日に、ダンス教室に通っている。
- スーザン・ランド
- 26歳。F.R宇宙生物研究所の職員。スコット達がウルトラマンであること知っている人物。後にスコットとは恋仲になる。キングマイラ戦では、生物の脳波を中和させて生物を麻痺させる装置・ニューラルインターフェザーを用いてウルトラチームを援護した。
- ウォルター・フリーマン
- 年齢60歳代の謎の老人。普段はゴルフ場のグリーンキーパーを務める。ウルトラフォースの隊長格。
- ロボットトリオ
- ユリシーズ、サムソン、アンディの3体のロボット。ユリシーズは本名コンボットMF842号でレーザー兵器のプロフェッショナル。サムソンはコンボットBA666号で武装システムのオーソリティー。アンディは本名ユーティロイドZQ14582号でトランスポーテーションシステムの専門家。本名が長いのでユリシーズとサムソンはスコットが、アンディはベスが命名した。3体の頭文字を並べると「USA」となる。
- マザーシップ
- ウルトラフォースの母艦。ウルトラジェットを搭載する。キングマイラ戦ではエネルギーの尽きかけていたウルトラチームに搭載していたパラボラで太陽光を集めて補充させたり、ウルトラチームを乗せて大気圏外にまで運ぶことが可能。
- ウルトラジェット
- スコットらが乗る戦闘機。飛行速度はマッハ7.3。ミサイルとレーザーを装備している。キャノピーがスコット機は青、ベス機は赤、チャック機は黄色に塗装されている。
ソーキン・モンスター
- テンプレート:Anchor
- 身長:100メートル
- 体重:3万トン
- ルイジアナ州ガジナル川中流の湿地帯に落下したから隕石から出現したソーキン・モンスター。ニューオーリンズに向かう途中でベスと戦う。無数の触手で獲物を捕らえ、頭部の花弁の中にある溶解液で溶かしてしまう。攻撃を受けてもすぐに修復することが可能だが、植物であるため、海水(塩水)が弱点。ベスを窮地に陥れ、アンディの助言を受けたベスに海に落とされるが、残しておいた触手から再生した。最後はチャックの援護を受けたベスのウルトラスパウトで海水を浴びせられて倒された。
- テンプレート:Anchor
- 身長:91.44メートル
- 体重:9万1千トン
- サンフランシスコ州に落下したから隕石から出現したソーキン・モンスター。電磁球獣イームが自らの体を隕石の破片で覆って誕生した。両肩にある角と尻尾から電撃を発する。スコットによって発電所に叩きつけられ、体が崩壊した。
-
- テンプレート:Anchor
- 身長:152.4メートル
- 体重:2万7千トン
- ガルバラードの中から出てきた本体。発電所の電気を吸収し、スコットを窮地に陥れる。両眼からプラズマを放出する。だが、ロボットトリオ(ユリシーズ、サムソン、アンディ)の機転によって危機を脱したスコットのウルトラ・エナジー・ボール、ウルトラスライサー、グラニウム光線を連続で受けて倒された。
- テンプレート:Anchor
- テンプレート:Anchor
- 身長:35.05メートル
- 体重:3万5千トン
- ユタ州のスキー場に落下した隕石に出現したソーキン・モンスター。おとなしく臆病な性格で、背中にある羽で飛行することができる。このスキー場で軍に攻撃されたが、おとなしく臆病な性格で攻撃を怖がっていた。人間に危害を及ぼさないと判断したチャックによって保護され、軍から守られる。その後、チャックのウルトラ・バブル・ビームで保護されながら宇宙に運び出され、スコットによってアンドロメダ星雲のM11惑星に送られた。
- テンプレート:Anchor
- 身長:40センチメートル(ウィロン)~無限に成長
- 体重:5キログラム(ウィロン)~無限に成長
- ニューメキシコ州の荒野に落下した隕石から出現した90分ごとに2倍の大きさへの巨大化と変身を繰り返す凶暴なソーキン・モンスター。第2段階は6メートルになり宇宙生物研究所を破壊した。劇中では3段階まで進化した。最初はウサギに似た姿で、スーザンに拾われてウィロンと名付けられた。3人を同時に相手にした。両肩から生えた触手と口から火炎を吐き、テレポーテーションでウルトラチームやアメリカ軍を翻弄し、ウルトラチームを一時退却へ追い込んだ。だが、太陽エネルギーを得て復活したウルトラチームと再戦し、チャックのウルトラ・バブル・ビームに閉じ込められて宇宙空間へ連れ出された後、ウルトラチーム3人のトリプルパワーによって太陽に投げ込まれて消滅した。
- 映画『新世紀ウルトラマン伝説』に流用された映像にも登場している。
キャスト
- スコット・マスターソン:古谷徹 / 英 - マイケル・レムベック
- チャック・ギャビン:小川真司 / 英 - チャッド・エベレット
- ベス・オブライエン:鶴ひろみ / 英 - エイドリアン・バーボー
- ユリシーズ:田の中勇
- サムソン:大竹宏
- アンディ:山田恭子
- スーザン・ランド:吉田理保子
- フィルビー博士:田中康郎
- マーク・ワトキンス:塩沢兼人
- ウォルター・フリーマン:宮内幸平 / 英 - ステイシー・キーチ・Sr
- クーパー将軍:青野武
- ボーディンガー大佐:佐藤正治
スタッフ
- 監督:日下部光雄
- 脚本:ジョン・エリック・シーワード
- キャラクターデザイン:飯村一夫
- ヒーローデザイン:吉田等
- メカニックデザイン:佐藤智彦
- モンスターデザイン:雨宮慶太、村山寛貢、杉浦千里
- 美術監督:古谷彰
- 色彩:若井喜治、小針裕子
- 作画監督:飯村一夫、鶴山修、工藤柾輝、羽原信義
- 絵コンテ:奥田誠治、長尾粛、日下部光雄、大庭寿太郎
- 撮影監督:森田俊昭
- 編集:正木直幸
- 音響監督:松浦典良 / ゴードン・ハント(英語版)
- 日本語版演出:松川陸
- 音響効果:スワラプロダクション
- 現像:東京現像所
- 音楽:風戸慎介
- 音楽プロデューサー:木村英俊
- 主題歌:「時の中を走りぬけて」
- ハンナ・バーベラ側スタッフ
- クリエイティブプロデューサー:ジェフ・シーガル、ケリー・ワード
- スーパーバイジング・ディレクター:レイ・パターソン
- プロダクション・スーパーバイザー:ケン・ミムラ
- クリエイティブ・デザイン:イワオ・タカモト
- キー・キャラクターデザイン:フローロ・デリー
- キー・バックグラウンド・スーパーバイザー:アル・グーア
- 編集スーパーバイザー:ラリー・コーワン
- エクゼクティブ制作担当:ジェーン・バーベラ
- エグゼクティブ・コーディネーター:宇川清隆
- アソシエイト・プロデューサー:玉川静
- エグゼクティブ・プロデューサー:円谷皐、ウィリアム・ハンナ、ジョセフ・バーベラ
- 制作プロデューサー:尾崎正善(スタジオ・ザイン)、江藤直行(円谷プロダクション)
- 協力:スタジオ・ザイン、葦プロダクション、龍プロダクション
- 製作提携:円谷プロダクション、ハンナ・バーベラ・プロダクション、講談社、日本コロムビア、バンダイ
- 製作:円谷プロダクション
映像ソフト化
ビデオ(VHS、セル・レンタル共通)とLD(セルのみ)がリリースされている。DVDは2013年現在未発売。
客演作品
本作の主役チーム3人が客演したウルトラシリーズ作品。全て実写。3人のスーツは『ウルトラマンネオス』のパイロット版製作の際にウルトラ戦士全員集合ビジュアル撮影のために制作された[8]。
- 『新世紀ウルトラマン伝説』
- 他のウルトラ戦士と共に天空魔と戦った。
- 『新世紀2003ウルトラマン伝説 THE KING'S JUBILEE』
- ウルトラマンキングの誕生日を他のウルトラ戦士と共に祝福する。
- 『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』
- 光の国の宇宙警備隊員として登場し、光の国を襲撃したウルトラマンベリアルと戦う。だがスコットはベリアルに接近した際、ギガバトルナイザーに両足をはらわれ後頭部を強打。ベスはベリアルの盾にされてパワードのメガ=スペシウム光線をまともに受けて倒れ、チャックは何の前触れもなくいきなりベリアルショットの餌食になっている。その後他のウルトラ戦士と共に光の国の氷結に巻き込まれてしまったが、ウルトラマンゼロがベリアルから「プラズマスパーク・エネルギーコア」を取り戻したことにより、全員復活する。最後の場面では、グレートやパワードと一緒にウルトラマンキングの演説を聞いている。
備考
- 本作以前にも日本国外版の製作は検討されており、『ウルトラマン白書』では『サイボーグ009 超銀河伝説』に携わったジェフ・シーガルや『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』のノベライズを担当したドナルド・F・グルートによる企画が『ウルトラマンUSA』として紹介されている[9]。
脚注
- ↑ 以上の内容はテンプレート:Cite bookより。
- ↑ 『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』劇場パンフレットにおける坂本浩一監督のインタビューより。
- ↑ 例外として『ウルトラマン80』のユリアンが登場して怪獣と戦ったことが一度ある。これは80の危機を救う為の1エピソードのみで、設定上でもユリアンは本来戦士ではなかった。
- ↑ 二見書房『懐かしのヒーロー ウルトラマン99の謎』(著:青柳宇井郎・赤星政尚)p.123の記述より。ただし実際にはアメリカのヒーロー作品においてマントを付けずに空を飛ぶキャラクターは決して少なくはない。
- ↑ テンプレート:独自研究範囲
- ↑ テンプレート:独自研究範囲
- ↑ 「週刊ウルトラマンオフィシャルデータファイル」の記載より。なお、ソフビ人形の初期発売分には「ウルトラマンベス」の刻印が足裏にある。1990年代中頃のウルトラマンフェスティバルのチラシからウルトラウーマンベスの表記が使用されている。
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ テンプレート:Cite book