ガンダムNT-1
ガンダムNT-1(ガンダム・エヌティー・ワン)は、OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』に登場する架空の兵器。
目次
概要
地球連邦軍のモビルスーツ (MS) の内、ガンダムタイプに分類される機体の1つ。アムロ・レイ少尉のパイロットとしての能力にRX-78-2の機体反応速度や追従性が追いつけなくなったことから、専用機として開発された[1]。
事前のリリース情報での名称は「ガンダムNT-1」のみであったが、脚本上で「アレックス」(ALEX) というコードネームが登場した。その後、メディアワークス『データコレクション3機動戦士ガンダム外伝』(1997年)で「ガンダム アレックス」(GUNDAM ALEX) という愛称も掲載されたが、バンダイのプラモデルシリーズでは「ガンダムNT-1」に統一されている。デザインは出渕裕。
機体詳説
テンプレート:機動兵器 コードネームは「アレックス」(ALEX)。一年戦争当時、地球連邦軍はRX計画において機体のレスポンスを向上させる必要が生じ、宇宙世紀0079年8月に本機の開発に着手した。一方、実戦において第13独立部隊所属のアムロ・レイ少尉のニュータイプ能力にRX-78-2 ガンダムの反応が追いつけなくなってしまっていた。そこで本機の機体追従性能の目標値をニュータイプに合わせた高い数値に設定することで一種の「ニュータイプ専用機」とし、これに対処することとした。機体色はRX-78-2ガンダムのトリコロールに対し、本機はほぼ白青のツートンカラーである。左胸に「RX78NT-1」と白く書かれている。
当時地球連邦軍ではニュータイプの存在について疑問を抱いていたため、ジオン公国軍のサイコミュ兵器のような技術は未開拓であった。そのため、パイロットの操作に敏感に反応するために関節部にはマグネット・コーティングが施され、機体各部に姿勢制御バーニアを増設し運動性を向上させた。このため、NT専用機とは銘打たれているものの、実態は純粋に性能を高めただけのただのMS[2]であった。だが同時に、その性能は化物と呼ばれたRX-78-2を凌駕する「怪物」であり、一般のパイロットはもちろん、テストパイロットに選ばれた腕に覚えのある人物にとってすら敏感過ぎて却って操縦し難いものであった。
さらに、コア・ブロック・システムを廃し、初の全天周囲モニター・リニアシートが装備された。ただしこれは水平・垂直360度を網羅していない不完全なものであり、完全な状態での採用はガンダム試作3号機まで待つ必要があった。
コードネームのアレックス (ALEX) はRXをもじったものとも、装甲積層試験 (Armor Layered EXamination) の略称とも言われている。機体各所にマーキングされたU.N.T.SPACYは地球連邦軍の極秘計画コードを表し、それぞれUnder Normal Tactics(非通常戦術)SPecial Assortment Construction Yard(特別分類建造場)を意味する。
開発は地上のオーガスタ基地において行われ、配備のため北極基地からサイド6リボーコロニーに移送された。その際にジオン公国軍の特殊任務部隊の2度の強襲により中破し、機体はホワイトベースに届けられることなく終戦を迎えた。この機体の肩部エアインテークやバックパックなどの意匠はその後に開発されたジム・カスタムやジム・クゥエルなどのオーガスタ系の機体に引き継がれることとなった。 一年戦争後、反連邦組織シン・フェデラルによって再生産された赤い機体が登場している。
なお小説版において、ジオン軍ではガンダムNT-1を未完成品ということで「出来損ない」(グリナス・ヘッド)と呼ぶ場面がある。
武装
- 60mmバルカン砲
- 頭部に2門装備。敵機への牽制および近接防御に使用される。
- ビームサーベル
- 型式番号:Blash・XB-B-09。バックパックに2基装備している。RX-78-1、2、3号機まではランドセルの外側にホルダーが装備されていたが、NT-1は内側に移設されている。
- 90mmガトリング砲
- 両手前腕部分に装備されている。通常はカバーによって外側に露出していないため、敵機の意表をつくこともでき、当時の連邦製MSでは異色な存在である一方、振動や装弾数の点で課題を抱えていた。この兵装の採用にはフィールドモーター技術の向上により関節部の小型化が可能となり、スペースに余裕ができたことが寄与している。
- チョバムアーマー装着時は、腕が覆われているため、使用することができない。
- ビームライフル
- 型式番号:Bauva・Norfolk XBR-L Type-3。ボウワ社のビーム発振器、ノーフォーク産業の収束装置とハウジングが用いられ、出力と収束率が向上し、貫通力が増している。
- ハイパーバズーカ
- スコープ付きの専用バズーカ。
- シールド
- 型式番号:RX・C-Sh-05 UBC/S-0003。後述するチョバムアーマーの構造を流用し、耐ビームコーティングを施したもの。上面に「ALEX」と半ば殴り書きで書かれている。
ライフル、バズーカ、シールドは劇中では使用されなかった。
チョバムアーマー
アレックスは一年戦争末期に地球連邦軍で進められていたフルアーマーオペレーションの一環として開発された複合装甲、チョバムアーマー(CHOBAM; Ceramics Hybrid Outer-shelled Blow up Act-on Materials、セラミックス複合外装による爆発反応材質)を装備することができる。これを装備した形態は俗にFAガンダムNT-1(型式番号:RX-78NT-1FA)と呼ばれる。本作品におけるチョバムアーマーの名称は、開発にチョバム地方の技術者が関わっていたことに由来するとも言われる[3]。
この装甲はナイロンによるマイクロメッシュとチタニウム合金のシートを積層したハイブリッドアーマーであり、装甲自らが破壊することによって衝撃を吸収し、機体本体へのダメージを最小限にする。またサイド6という中立地帯で極秘に調整を行うための、機体外観の偽装にもなっている。チョバムアーマーの装備により本体重量が95tと大幅に増加したため、これによる機動性の低下を補うため肩部に補助バーニア、腰部にスラスターが追加されている。さらに損傷などにより不要となった場合、爆発ボルトにより緊急に除装できる。なお、後のジム・キャノンIIやガンダムTR-1[ヘイズル]などにも用いられている。
また、チョバムアーマーが実用に適さなかった場合の別案として、FSWS計画に従ったフルアーマー構想機のアレックス増加装甲試験型などがある。
劇中での活躍
サイクロプス隊の標的となった連邦軍の新型モビルスーツとして、第1話から登場。北極基地にてパーツの状態でコンテナに収まっていたが、そこからサイド6へ輸送用の大型スペースシャトルで搬送される。
サイド6リボーコロニーにおいては、地球連邦軍が用地を買い上げた極秘工場内部にて、機体の組み立てとクリスチーナ・マッケンジー中尉による最終調整が行われていた。しかし、ガンダムNT-1を追ってきたサイクロプス隊の襲撃で敵MSケンプファーが目前にまで迫った中、マッケンジー中尉がフルアーマーNT-1を緊急起動させ、危うく即時破壊を免れる。チェーンマインによりチョバムアーマーを破壊されたが、ガトリングガンによる反撃でこれを撃破する。本体には頭部アンテナを折られた以外に目立ったダメージはなかったが、存在しないはずの基地のせいで大惨事が起こった混乱によりガトリングガンの弾薬補充も出来ないままだった。
その後、サイクロプス隊の残兵となったバーナード・ワイズマンの搭乗するザク改と交戦し、辛くも撃破するがガンダムNT-1もかなりの損傷を被ったために、ホワイトベースに届けられることなく終戦を迎えた。
設定の変遷
『月刊ニュータイプ』の初リリース記事では「ニュータイプ専用ガンダムRX-79」と報じられたが、間もなくサンライズ、バンダイサイドより「NT-1」と再発表された。
U.N.T.SPACY表記については、OVA発売当時はUnited Nation Troops.SPACYと「地球連邦宇宙軍」を表すものだったが、その後、上記の設定へと変更されている。
また、本機のフルアーマー構想機はいくつかの模型雑誌において立体化されているが、本来の姿がどのようなものかは不詳である。バンダイから発売されたプラモデル「1/144 RX-78NT1 ガンダムNT-1」の組み立て説明書にあるイラストは、あくまで『0080』版(もしくはデザインした福地仁版)FA-78-1 フルアーマーガンダムというべきものであって、本来はアレックスのフルアーマーでは無かった。
漫画『機動戦士ガンダム MSジェネレーション』では、ガンダムNT-1は「G-4計画」という一年戦争末期にRX-78-3(G-3ガンダム)を開発母体とした次期構想機として計画された機体のひとつで、宇宙軍主体で開発が進められたという。なお、「G-4計画」では空軍主体のガンダムGT-FOUR、陸軍主体の格闘専用型、重火器型、海軍主体の水中戦型が計画・開発されたと設定されている。
ガンプラ「SDガンダム BB戦士」のアレックスでは、キットオリジナルの仕様として頭部にも「ヘッドギア」と呼ばれるチョバムアーマーがあり、ガトリングガンが内蔵されているほか、チョバムアーマーと90mmガトリング砲、シールドが合体することによって「チョバムタンク」という戦闘車両形態を取ることが可能になっている。また、マスターグレードの解説書にはスラスター総推力が132,000kg、FA時146,000kgと記載されている(ゲーム作品ではOVAの設定で記載されていることが多い)。
アラカルト
- 雑誌企画『ガンダム・センチネル0079』に登場したRX-78-2 ガンダム(ガンダムVer.ka)は、「当時最新のガンダムであったガンダムNT-1のデザインから逆算したRX-78-2というコンセプトでデザインされている」とカトキハジメとあさのまさひこは語っている。頭部頬当てや鎖骨部のダクト、肩アーマー部のスラスターなどからそれが読みとれる。
- アムロが搭乗したRX-78-2 ガンダムと同じくトリコロールカラーに塗られたアレックスが、模型誌『月刊ホビージャパン』の作例として掲載されたり、玩具の限定商品になったことがあった。
- OVA『機動戦士SDガンダムMk-IV』に収録されている『夢のマロン社「宇宙の旅」』には、わずか数秒ではあるが、トリコロールカラーに塗られたSDではなく通常の等身のアレックス[4] が登場する。この作品は、SDガンダム世界の住人たちが旅行中に、事故によってリアルガンダムの世界に迷い込んでしまうという話であった。トリコロールカラーのアレックスはジャブローの場面で登場している。
- アナザーストーリーにあたるゲームブック『機動戦士ガンダム0080 消えたガンダムNT』ではコア・ブロック・システムが実装されており、後半の展開次第ではア・バオア・クー攻防戦に乗り込み、そこで放棄されたコア・ブースターのコア・ファイターやRX-78-2のBパーツ等をドッキングさせることができた。
バリエーション
- RX-78NT-1 ガンダムNT-1プロト
- RX-78NT-2 ガンダムNT-2
- RX-78NT-3 ガンダムNT-3
- RX-78NT-X (MRX-003) ネティクス
- MRX-002 NT専用プロトタイプガンダム
ガンダムNT-1プロト
模型雑誌『モデルグラフィックス』61号に登場する、白と赤の2色で塗装された機体(型式番号:RX-78NT-1)。
外見はガンダムNT-1とほとんど変わらないが、胸に「RX79NT」、腰に「3」のマークが施されている。塗装原案は明貴美加。なお、バンプレストより発売された「宇宙世紀オールガンダムキーホルダー Ver.2.0」には、 当機を模した「クリスチーナ・マッケンジー専用ガンダムアレックス」というオリジナル配色の機体が登場している。
ガンダムNT-2
模型雑誌『B-CLUB』44号に作例として掲載されている、グレーと青の2色で塗装された機体(型式番号:RX-78NT-2)。
外見はガンダムNT-1とほとんど変わらないが、全天周囲モニターではなく、0079〜0080年代に使用されている通常型コックピットとなっている。これはコア・ファイター採用を前提とした設計であるという説が存在する。
ガンダムNT-3
模型雑誌『B-CLUB』50号に作例として掲載されている、黒と白と赤の3色で塗装された機体(型式番号:RX-78NT-3)。
配色はRX-78-1 プロトタイプガンダムを模しており、外見はガンダムNT-1とほとんど変わらない。
ネティクス
ゲーム『SDガンダム GGENERATION SPIRITS』に登場するアレックスの発展機(型式番号:RX-78NT-X / MRX-003)。
一年戦争終結後、ジオン公国の各機関からサイコミュ技術を接収した地球連邦軍によって、研究の一環として開発された。背部に有線式ビットを2基装備しているのが特徴であり、それを用いたオールレンジ攻撃が可能であるが、当時の連邦軍の技術力では有線式サイコミュシステムの小型化には至らず、超重量の機体となった。しかし、この実験データはインコムの元になったといわれており、後のMSに影響を与えたようである。
なお、当機はオーガスタ基地にて開発が行われていたが、後にムラサメ研究所へと開発が引き継がれ、その際にMRX-003の型式番号を与えられている。
漫画『機動戦士ガンダム カタナ』では、宇宙世紀0084年にシン・フェデラルによって開発されたFA-78NT-1 フルアーマー・アレックスをベースに、ムラサメ研究所から取り寄せたサイコミュ機器のパーツを換装した機体が登場する。
NT専用プロトタイプガンダム
雑誌「コミックボンボン」90年3月号に掲載されたメカニックデザイン企画『MSV90』に登場する、アレックスの発展機(型式番号:MRX-002)。
両腕、両肩、両足とバックパックに、有線式ビットを計10基装備している。その超重量をカバーするため、各部にバーニアが搭載されている。なお、当機はのちにMRX-009 サイコガンダムの原型となったといわれている。
デザイナーは友杉達也。
脚注
- ↑ 書籍『機動戦士ガンダムMS大図鑑PART.1[1年戦争編]』(バンダイ)による。NT-1の正式な受領、就役は終戦に間に合わず、アムロ少尉の操作ストレスへのフォローは、RX-78-2へのマグネットコーティング処理のみに終わった。これについて、アムロは反応速度の向上を歓迎はしたが、機体構造にかかる負担が増えることには不安の声をもらした。
- ↑ ゲーム『機動戦士ガンダム 戦士達の軌跡』 M.S.GRAPHICS 「RX-78NT-1 "ALEX"」より
- ↑ 現実世界のチョバムアーマーはイギリスが開発したチャレンジャー主力戦車用ハイブリッドアーマーのことであり、これを開発した陸軍の研究所のある地名から命名され、ガンダムNT-1の物とは構造その他、全くの別物である。
- ↑ ただし、このアニメの解説アニメのMSカタログ編では、RX-78 ガンダムとして紹介および、説明されており、ガトリングも確認できない。