国語
国語(こくご、テンプレート:Lang-en-short、テンプレート:Lang-fr-short)は、その国家を代表する言語で、公の性格をになった言語のことを指す[1]。
「国家語」ともいい、国民にとって共通の言語というべき性質をもち[1]、国民国家形成の必須条件である。「外国語」と対をなす言葉であると一般に認識されている。
目次
概要
日本語、英語、フランス語などの国名を冠する言語は、その国家の中枢を形成する民族による言語であることを意味し、これらは真の意味での「国語」であるといえる[1]。この意味でアイヌ語、ロマ語などは国語とはみなされない[1]。また、スペイン語のように複数の国家において強い地位をもつ言語は、いわゆる言語帝国主義の観点によると、それぞれの国家における国語とみなしうるものであるという。
民族の歴史と地域の歴史に乖離のあるインドなどにおいては、「インド語」という呼称が指す範囲は不透明であり、少なくとも学術的な文脈では用いない。中国語という呼称も同様の問題が提起されることがあり、「漢語」あるいは「シナ語」という旧来の術語を好んで用いる専門家も存在する[2]。
複数の言語を有する国家が、どの言語を国語として認定するかは、しばしば深刻な民族問題を招くことがあるという。言語はそれぞれに異なった民族集団を抱えており、その言語の優位性が、民族どうしの文化的・宗教的な衝突の直接の原因となりうるからである[1]。
使用頻度が少ない言語を国が選択することも多い。例えばシンガポールは、歴史上の理由から国民の大多数の母語である中国語を国語とせずマレー語を国語にしている。アイルランドにいたっては、日常用いる機会がかなり限定された言語であるにもかかわらず、アイルランド語を民族本来の言語であるという理由で国語と制定している。
日本における“国語”
日本では、学校教科名に“国語”科、日本語の辞典を“国語”辞典というように、“日本語 (Japanese)”と呼ばずに“国語 (National language)”と呼ぶが、世界的に見ればこのような例は少ない。例えば、イギリスやアメリカなど英語圏国家では“English”すなわち“英語”と呼称し、“National language”とは呼ばない。ただし、憲法上あるいは法律上、優勢な言語を国語 (National language)と定める国は少なくない。
「国語」という単語は、明治時代に作られた和製漢語であり[3]、この語の創始者については三宅米吉、物集高見、上田万年など諸説があるが、明治18年(1885年)に三宅米吉が立ち上げた『方言取調仲間』の趣意書に「我が日本の国語」という表記が初めて使用され、定着した[4]。なお、この「国語」という単語は、中国・朝鮮半島・ベトナムなどの漢字圏に逆輸入され使用されている。(ただし、ベトナムにおける「國語」はベトナム語を表記するラテン文字を指し、意味的には「国字」に近い。)
日本では、言語を「○か国語」と数えることが多い。しかし、世界には国語になっていない少数話者の言語が多数存在したり、国に複数の公用語がある場合など、国の数と言語の数を結びつけるのは適切ではないという考えから、「○言語」という表現もある。同様に「母国語」に対し「母語」という表現がある。
日本の国語施策
日本の漢字制限などの国語施策は、文部科学省・文化庁の管轄にある。国語審議会での審議結果を反映する形で、現代仮名遣い、当用漢字/常用漢字などとして実施されてきた。国語審議会は2001年の省庁再編時に解散し、現在は文化審議会国語分科会として、教育漢字などの日本語教育、漢字制限の在り方などを検討している。国立国語研究所は、これに協力する形で各種資料などの作成も行っている。
近年の動向
「国語」という呼称は国民国家を前提とした語であり、「日本語」を「国語」と呼ぶことは、日本語以外の言語を用いて日本語を指す場合には適切な呼称がない。例えば、英語では日本語は「Japanese」であり、イギリスやアメリカにおける国語は「English」すなわち英語である。
2004年には国語学会が日本語学会へと名称変更がなされた[5]。
脚注
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 「国語」『言語学大辞典』546頁。
- ↑ 高島俊男『本が好き、悪口言うのはもっと好き』文藝春秋、1998年。
- ↑ 同じ文字の単語として、紀元前の中国で成立した歴史書「国語」があるが、この書名の「国」は特定の国ではなく「諸国」を、「語」は語る手段としての言語ではなく「語られた内容」を指し、本稿の「国語」とは全く意味が異なる。
- ↑ 紀の国の先人たち 三宅 米吉|和歌山県ホームページ
- ↑ 日本語学会-あいさつ
参考文献
- 鈴木重幸「国語学と日本語学」(『教育国語』86号,むぎ書房,1986年9月。のち、『形態論・序説』,むぎ書房, 1996年,ISBN 978-4-8384-0111-6に所収)
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