豊郷町

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テンプレート:Infobox 豊郷町(とよさとちょう)は滋賀県東部(湖東地方)に位置する犬上郡である。江州音頭の発祥地の一つとして知られるほか、町立豊郷小学校の校舎改築問題が全国的に注目された。滋賀県内にある自治体で最も面積が小さい。

地理

宇曽川中流右岸に広がる犬上川扇状地で、全域がほぼ起伏のない低地帯である(最高地点115m、最低地点95m)。

地域

  • 豊郷小学校区
町北東部。旧犬上郡豊郷村に当たる。安食西(あんじきにし)・安食南(あんじきみなみ)・三ツ池(みついけ)・四十九院(しじゅうくいん)・石畑(いしばたけ)・八目(はちめ)・八町(はっちょう)・雨降野(あめふりの)の八つの大字からなる。
  • 日栄小学校区
町南西部。旧愛知郡日枝村に当たる。高野瀬(たかのせ)・大町(おおまち)・沢(さわ)・上枝(かみえだ)・下枝(しもえだ)・杉(すぎ)・日栄(ひえ)・吉田(よしだ)の8つの大字からなる。

隣接市町村

歴史

古代

豊郷町の町域は古代(大化の改新後)の犬上郡安食(あじき、あんじき)と愛知郡吉田(よしだ)郷に当たる。安食郷は百済からの渡来人阿直岐氏の居住地であったとされ、安食西にある阿自岐神社は阿直岐氏の邸宅跡とされる。また「犬上郡」の由来となった犬上氏(犬上君)とのゆかりが伝わる地域であり、八目に稲依別王を祭る犬上神社があり、境内近くに犬上君の居館跡とされる場所がある。三ノ坪(沢)や五ノ坪(高野瀬)など、条里制にちなむ小字名が残る。四十九院にある唯念寺は天平3年(731年行基の開基を伝える。

中世

中世には安食荘・甲良(かわら)荘・日枝荘・吉田荘に属した。東山道に沿う四十九院村と枝村に関所ができ、商業が活発化する。枝村商人は紙座の特権を持ち、主に美濃で仕入れた和紙を京都へ運ぶことで利益を上げた。鈴鹿山脈の八風峠を越えて伊勢や尾張へも行商したが、峠の通行権などを巡って蒲生郡の保内商人としばしば争論を起こした。

交通の要衝であるために南北朝以降戦乱に巻き込まれることが多く、文和年間(1352-56年)には足利義詮後光厳天皇を奉じて四十九院に下向している。城砦としては那須城(石畑)・吉田城(吉田)・高野瀬城(高野瀬)・赤田城(八町)があった。那須城は那須与一の次男と伝わる那須宗信の居館で、現在の八幡神社。宗信はのちに仏門に入り、称名寺(石畑)の開祖となった。吉田城は近江源氏六角氏の一族である吉田氏の居館で、現在も跡地は「吉田屋敷」や「城屋敷」と称される。吉田氏は応永年間(1394-1428年)に上洛し、1496年明応5年)から京極氏が入城した。上洛後の吉田氏の子孫に角倉了以がいる。高野瀬城は六角氏の部将である高野瀬氏の居館で、現在の古河AS豊郷工場。赤田城は永正年間(1504-21年)に赤田源隆が多賀荘(現在の多賀町)から移り住んだ居館で、現在の白山神社。源隆はのちに仏門に入り、常禅寺(八町)の開祖となった。

近世以降

江戸時代には全域が彦根藩領となった。中世から続く商業活動がなお活発に行われ、江戸時代から近代にかけて多くの近江商人が生まれた。特に下枝村の藤野家は蝦夷地の開拓・交易で成功、貧民救済事業でも活躍した。また伊藤忠商事丸紅の創業者である初代伊藤忠兵衛は八目村の出身である。明治以降も藤野家や伊藤家をはじめとする豪商達は豊郷の発展に大きく貢献した。しばしば村政に関わったほか、石畑郵便受取所(現在の豊郷郵便局)の開設(1901年、中島常七)、電話サービスの開始(1912年二代目伊藤忠兵衛)、豊郷病院設立(1925年七代目伊藤長兵衛)、豊郷小学校校舎建設(1937年、古川鉄治郎)などの功績が残っている。

干ばつとの闘い

豊郷町は面積の半分以上が農地であり、稲作が古くからの主産業である。しかし水利に恵まれない土地で水争いが絶えず、犬上川からの用水(一の井)の最下流である四十九院・石畑・八目・八町・雨降野はとりわけ深刻であった。商業活動が活発であったのも、農業だけでは生活に困るという事情が背景にあった。明治中期以降は多くの村民が工場労働や商店勤務のため大阪・京都・東京などへ流出した。生活苦からの人口流出であったが、都会との接触は豊郷の近代文化普及を促すことにもなった。明治時代だけでも13回の干ばつが発生し、特に1909年(明治42年)の干ばつは大きな被害をもたらした。

1909年の大干ばつを受け、被害の大きかった四十九院と石畑の有志が中心となって1910年に「豊郷村耕地整理組合」を発足。村岸峰吉が中心的指導者となって、水利向上が模索され、イギリスのアーレン社から「コンケロル式離心動ポンプ」を購入し、1913年(大正2年)に日本初となる蒸気動力による揚水事業が竣工した。その後も水利開発が進められ、地下水利用の成功や農業協同組合の発展、犬上ダム(多賀町萱原)の建設などで水利問題は解消された。大正時代に竣工した揚水施設およびポンプは現在も保存されている。

「豊郷」という地名は米穀の豊穣を願ってつけられた瑞祥地名であり、ここにも干ばつとの苦闘の歴史が反映されている。

沿革

  • 1872年明治5年)10月10日 - 大区小区制施行。吉田村・上枝村は愛知郡第9区、下枝村・沢村・高野瀬村は愛知郡第11区、四十九院村・石畑村・八目村・八町村・雨降野村は犬上郡第19区、安食西村・安食南村は犬上郡第21区に属す。
  • 1874年(明治7年) - 高野瀬村から大町村が独立。安食南村から三ツ池村が独立。
  • 1885年(明治18年)4月1日 - 連合戸長役場制施行。下枝村を中心とする7村(現在愛荘町に属する目加田を含む)、四十九院村を中心とする9村で連合戸長役場を設置。
  • 1889年(明治22年)4月1日 - 町村制の施行により、安食西村・安食南村・三ツ池村・四十九院村・石畑村・八目村・雨降野村・八町村の区域をもって犬上郡豊郷村が、吉田村・上枝村・下枝村・高野瀬村・大町村・沢村の区域をもって愛知郡日枝村がそれぞれ発足。
  • 1942年昭和17年) - 豊郷村と日枝村を統合して犬上郡犬上町とする合併案が浮上するも、地元の反対でまとまらず。
  • 1956年(昭和31年)9月30日 - 犬上郡豊郷村・愛知郡日枝村が合併し、改めて犬上郡豊郷村が発足。実現の背景には1948年(昭和23年)に創設された組合立豊日中学校の存在があったとされる。
  • 1971年(昭和46年)2月11日 - 豊郷村が町制施行して豊郷町となる。

人口

平成22年国勢調査より前回調査からの人口増減をみると、2.049%増の7,570人であり、増減率は県下19市町村中5位。 テンプレート:人口統計

行政

産業

農業が古くからの主産業であり、田園風景が広がるが、現在は第2次産業や第3次産業が中心である。第2次産業では安食西にあるアキレス滋賀第二工場が最大であるほか、中小の金属・繊維工場などが立地している。第3次産業では国道8号にロードサイド店舗が並ぶほか、高野瀬にチェーンストア丸善の本部がある。

教育

  • 中学校
    • 豊郷町立豊日中学校
  • 小学校
  • 幼児教育
    • 豊郷町立豊郷幼稚園
    • 豊郷町立愛里保育園

交通

町の中央を旧中山道東山道)と近江鉄道と東海道新幹線が並行して通過し、旧中山道の西寄りを国道8号が通過している。

鉄道

バス

彦根観光バスが稲枝駅と豊郷町・愛荘町を結ぶ路線バスを運行していたが、2011年10月1日に廃止となり、現在は町内に一般路線バスがない。

  • 愛のりタクシーこうら - 予約制乗合タクシー。湖東圏域公共交通活性化協議会が運行主体となり近江タクシーが運行し、甲良町彦根市(高宮・ひこね市文化プラザ・彦根市立病院など)と豊郷町(豊郷駅・豊郷病院など)を結ぶ。
  • すまいるたうんばす - 町が運行。65歳以上の人・障害者・介護者などのみ利用可。

道路

高速道路の最寄りインターチェンジは名神高速道路彦根インターチェンジ

名所・旧跡

  • 阿自岐神社 - 安食西。日本最古級の池泉多島式庭園を残す、阿直岐氏ゆかりの神社。庭園は県指定名勝、本殿は県指定有形文化財。
  • 千樹寺 - 下枝。臨済宗永源寺派の寺院。江州音頭発祥地の一つ。
  • 唯念寺 - 四十九院。真宗大谷派の寺院。行基が建立したとされ、「行基の庭」と呼ばれる枯山水の庭園がある。
  • 豊会館 - 下枝。豪商藤野喜兵衛の本宅を利用した資料館。別名、又十屋敷。
  • 伊藤忠兵衛記念館 - 八目。豪商伊藤忠兵衛の本宅。近くには伊藤忠兵衛を顕彰する公園(くれない園)もある。
  • 古川家住宅 - 四十九院。主屋は江戸時代後期、付属建物は昭和前期の建築。主屋など4棟が国の登録有形文化財
  • 旧豊郷尋常高等小学校本館 - 四十九院。1887年に至熟小学校(豊郷小学校の前身)の講堂として建てられた木造建築。国の登録有形文化財
  • 豊郷小学校旧校舎群 - 石畑。ウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計による鉄筋校舎。
  • 先人を偲ぶ館 - 四十九院。豪商薩摩治兵衛薩摩治郎八の先祖)など豊郷出身の偉人の業績などを紹介する資料館。建物は、戦前に薩摩家が寄付した「パリ日本館」を模している。

豊郷町出身の有名人

参考文献

  • 『角川日本地名大辞典 25 滋賀県』(1979年、角川書店
  • 『日本歴史地名大系 第25巻 滋賀県の地名』(1991年、平凡社

外部リンク

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