山田錦
山田錦(やまだにしき)は、イネ(稲)の品種の一つ。主に日本酒醸造に用いられており、酒造好適米の代表ともいわれる。
目次
概要
- 1923年(大正12年)に兵庫県加東郡社町(現:加東市)の兵庫県立農事試験場(現:兵庫県立農林水産技術総合センター)で山田穂と短稈渡船を人工交配させて誕生し、1928年(昭和3年)に酒造米生産地(現:酒米試験地)で産地適応性の試験が行われた。1936年(昭和11年)に「山田錦」と名付けられ、兵庫県の奨励品種になった。その後、全国でも栽培されているが、全国の生産量8割を兵庫県産が占める。特に、三木市や加東市の一部は特A地区に指定されており、「酒米買うなら土地を買え」と言われるぐらいこの地区産のものが珍重されている(ただし、この地区指定は栽培地域の歴史的経緯に基づくものであり、必ずしも生産される米の品質を反映しているわけではない。この点で、毎年評価が更新される食用米の地区指定とは意味合いが大きく異なる)。なお、北限地は新潟県上越市吉川区とされる。[1][2][3][4]
利用
由来
- 「山田錦」の「山田」は「山田穂」から取り、「錦」は命名当時の稲の品種名に一般的に用いられていたことから名付けられた。当初は昭和とする予定であったが、この名称に変更したことは不明である。[7][8][9]
歴史
誕生前は「山田穂」を生産していた。[1]
- 1923年(大正12年) - 兵庫県立農事試験場(現:兵庫県立農林水産技術総合センター)で母親の「山田穂」と父親の「短稈渡船」を人工交配させて誕生する。[10][11][1][2][12][4][13]
- 1928年(昭和3年) - 酒造米試験地(現:酒米試験地)で産地適応性の試験が行われる。[12][14]
- 1936年(昭和11年)1月31日 - 午前11時から開催された水稲原種改廃協議会で「山田錦」と命名する。当初は「昭和」と命名する予定であったが、理由が不明である。[11][1][12][15][16][13]
- 1945年(昭和20年)7月6日 - 明石大空襲により、兵庫県立農事試験場本館が消失し、この年までの資料が焼失した。[14]
特徴
- 短稈の長さが約130㎝程であり、一般的な酒米の重さは25 - 29グラムであるが、この米は27 - 28グラムである。高精米が可能であり、砕米が少ないのが特徴である。また、米粒が大きく通常の米と比較するとタンパク質・アミノ酸が少なく心白が大きいが、短稈が長いので倒れやすく病気や害虫・風に弱いので作りにくい酒米である。[17][18][2][3][19][20][21][22][13]
酒造好適米
山田錦は酒造好適米の代表例に挙げられるように、その登場以後全国新酒鑑評会では鑑評会上位を占めるようになっていった。このため、鑑評会では平成12年度から山田錦の使用割合別にI部とII部を設け別々に品評した。[23][24]
その後、山田錦以外の原料米の向上に伴い、山田錦を主体とした出品酒の下降傾向、及び山田錦以外の使用(越淡麗や千本錦など)が増加傾向にあるため平成22年度からI部とII部は廃止された。しかしながら、依然山田錦を主体とした出品酒の金賞受賞率が高く、山田錦の優位性を感ずるところと総括されている[25]。
古酒にも適している。
栽培適地
- 地層は神戸層群と大阪層群にはマグネシウムとリンの成分が豊富であり、水田土壌は粘土質であり、水はけが良好である。地形は六甲山地の北側の丘陵部となっており、特に、東西に開けた中山間の谷あいや盆地では、夏季の気温の日較差は10℃以上に達する場所が適している。[26][18][12][3][13]
生産
生産時期
春から秋にかけて生産される。[27]
- 5月 - 播種・育苗をする。全国の産地の中では神戸市・三木市が早く、その時期を皮切りに6月中旬ごろまで続く。[27][28]
- 6月 - 田植えをする。良好な収量と品質の関係上、この時期に田植えをするのがのぞましいが、水利慣行のために5月下旬ごろに行う地域がある。[29][28]
- 7月 - 中干しをする。[29]
- 8月 - 上旬から中旬ごろに穂肥をし、下旬ごろに出穂・開花するが、6月上旬頃に田植えをした時である。[29][30]
- 9月 -
- 10月 - 上旬ごろに収穫するが、8月下旬頃に出穂した時である。[29][30]
- Shijimitown Hosome Mikicity Hyogopref in2013.JPG
シーズンオフの山田錦の栽培地
- Daikaitown Onocity Hyogopref Yamadanishiki No,2.JPG
栽培中の山田錦の栽培地
- Bessotown Kobayashi Mikicity Hyogopref No,7.JPG
収穫直前の山田錦の栽培地
- Ogotown Katsuo Kita-ku Kobecity Hyogopref Yamadanishi.JPG
刈り取り中の山田錦の栽培地
- Ogotown Katsuo Kita-ku Kobecity Hyogopref Yamadanishi No,2.JPG
刈取り後の山田錦の栽培地
発祥地
主な生産地
兵庫県で最も多く生産されており、国内の生産量の8割を占めている。特に播磨地区の北播磨地区、阪神地区の三田市・川辺郡猪名川町と神戸市北区に集中しており、その中で三木市が生産量が全国一である。丘陵地の棚田で主に栽培されている。福岡県・岡山県・徳島県・佐賀県の順に生産量が多く東北地方の南側から九州地方まで全国30府県で生産されている。[33][18][12][3][34][19][35] [9]
- 兵庫県
- 神戸市北区
- 西脇市
- 三木市 - 質量と共に酒造米の産地として知名度が有り、市内の第一次産業の米作部門の中で約8割を占めている。1988年には生産量が3000トンを超え、生産量が全国の25.2%であり、全国一の生産量になりかつ高級品であり、主に別所・志染・細川・口吉川・旧・吉川町で栽培されている。その内、旧・吉川町と口吉川などの地区では最上級の特A地区に指定されている。北海道・関東地方・京阪神・四国地方などに酒米用として出荷している。[1][6][2][3][34][36][9]
- 小野市 - この米を使ったパンが学校給食に提供されている。[37] [38]
- 三田市
- 加西市 - この米の一部である酒粕を使った羊羹が販売されている。[39][40]
- 加東市 - 市内で生産されている米の栽培の半分を占め、平成22年度の収穫量は全体の49.2%を占める。旧東条町・旧社町米田の地区などでは最上級の特A地区に指定されている。[2][3][40]
- 川辺郡猪名川町
- 多可郡多可町 - この酒米の発祥地である。[31][32]
- Daikaitown Onocity Hyogopref Yamadanishiki No,1.JPG
小野市の山田錦の栽培地
小野市大開町で撮影
生産量
戦前は臨時米穀配給統制の規制により移出には知事の許可が必要になったので「中上米」の使用が出来なくなり、山田錦の改良を進めて行った。その結果、高評価され、需要が伸びた。戦後も生産量は拡大し、1963年に約7,840haでピークを迎え、その後はいったん減少したが、1985年頃から増加し、1998年に生産量が再びピークを迎え、現在では日本酒の消費減少により、生産量が約3,500haに減少している。[2][38][43][44]
栽培面積
- 兵庫県:3534ha(2007年(平成19年))
特色
関連施設・イベント
施設
イベント
関連項目
参考文献
書籍
パンフレット
脚注
外部リンク
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- ↑ 人と風土が育てた日本一の酒米 p12
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- ↑ 独立行政法人酒類総合研究所「平成22酒造年度全国新酒鑑評会の審査結果について」総評
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