商工組合中央金庫
株式会社商工組合中央金庫(しょうこうくみあいちゅうおうきんこ、テンプレート:Lang-en-short)は、特別法(株式会社商工組合中央金庫法)に基づく特殊会社で、日本の政策金融機関。略称商工中金。
目次
概要
政府と民間団体が共同で出資する唯一の政府系金融機関。他の政府系機関に比して民間金融に近い性質を持つ[1]とされ、多くの政府系金融機関が融資のみに特化した機能を持つなか、預金の受け入れ、債券の発行、国際為替、手形を通じた短期金融など、「幅広い総合金融サービス」[2]を行っている[1]。
後述する通り、信用格付けは高い水準を維持している。ただ多くの格付け会社は、AAAではなく、AAクラスの評価にとどめており、その理由としては、メガバンクと比較すれば資産の質が見劣りすることなどを挙げている。ただし、1936年(昭和11年)に設立されて以来70有余年にわたって、政府からの赤字補填を受けた経験はない。
当初は旧商工組合中央金庫法に基づき政府や中小企業団体が出資する協同組織金融機関として設立され、それら所属団体に対する貸付け、債務保証等を業務としてきたが、2008年(平成20年)に株式会社化された。株式会社化された当初では、遅くとも2015年(平成27年)までに全ての政府保有株式を処分し、完全民営化される予定であったが、2009年(平成21年)6月19日に公布・即日施行された平成21年法律第54号による改正において、2011年度末を目途に、政府保有株式の処分の在り方および商工中金に対する国の関与の在り方について検討を加え、その検討結果に基づく措置が講じられるまでは政府保有株式の処分は行われないことになった。
中小企業金融
主として中小企業金融の円滑化を目的として、預金の受け入れ、資金の移動や貸し付け、手形取引その他の「株式会社商工組合中央金庫法」で規定する業務を行っている。融資の対象は、商工中金に出資する中小企業団体の構成員などに限定されている。また、かつて長期信用銀行であった新生銀行・あおぞら銀行とともに、「長信銀・商中キャッシュサービス」(LONGS)に加盟しているほか、2009年10月19日にはセブン銀行ATMとの提携に参加している[3]。
営業地域
全ての都道府県に最低1ヵ所は拠点を持つ。店舗数は国内99ヵ所。中華人民共和国(香港・上海)とアメリカ合衆国(ニューヨーク市)に、それぞれ一か所ずつ海外支店を開設している。
特徴的な業務
政府系金融機関が一般的に行う融資に加えて、預金、債券、各種経営情報の提供、国際業務など、幅広く業務を展開している。そのほか、小切手法上銀行と同視の扱いをうけるほか、手形割引などを通じた短期資金融資、国際為替業務なども行う点で、他の政府系金融機関との違いが鮮明である。
民営化に伴い、普通銀行に転換したかつての長期信用銀行同様、預金・融資取引において債券購入が必須用件から外れている。ただし、かつての長期信用銀行とは異なり、打切期限付きの特例で債券の発行継続を行っているわけではなく、従来どおりの発行形態となっている。
金融債
一般の金融機関は、預金を主な原資として業務を行うが、当金庫は法律で金融債の発行が認められており、割引商工債券(通称ワリショー)、利付商工債券(通称リッショー、リッショーワイド)を発行している。資金量全体(9兆1,149億円)のうち、債券は71.9%(6兆8,219億円)を占める[4]。
上述のように、民営化に伴って長期信用銀行が普通銀行に転換したことに伴う期限付きの特例発行が継続されたわけではなく、従来どおりの発行形態で販売が行われてきたが、金融商品の購入に金融債の保有が絶対条件ではなくなった(この点は、普通銀行に転換したかつての長期信用銀行と同様)ことに加え、民営化後の商品の多様化に伴い、2012年12月後半債(同年12月27日付発行分)を以って、販売を終了することになった。
段階的民営化
小泉内閣が進めた行財政改革の一環として、段階的な民営化が決められたが、2008年に始まる世界的な金融危機に直面し、政策金融機関に対する政府の関与を維持するべきであるとの見直しが行われ、修正が加えられた。
概略
- 2002年12月 - 経済財政諮問会議、「政策金融改革について」を決定
- 2005年11月 - 同、「政策金融改革の基本方針」を決定
- 2005年12月 - 「行政改革の重要方針」を閣議決定
- 2006年6月 - 行政改革推進法(平成18年法律第47号)成立、政策金融改革推進本部・行政改革推進本部合同会議が「政策金融改革に係る制度設計」決定
- 2007年6月 - 株式会社商工組合中央金庫法(平成19年法律第74号)成立
- 2008年10月 - 株式会社に改組
民営化と特例措置
従来の商工組合中央金庫法は廃止され、2008年10月1日に、株式会社商工組合中央金庫法に基づいた、政府と既存の出資者のみが株主となる特殊会社たる「株式会社商工組合中央金庫」を発足させたうえ、おおむね5年後から7年後を目途に、徐々に政府出資の縮減を図り、最終的には完全民営化し、完全民営化後は会社法に基づく一般の株式会社となって、移行期間中のための「株式会社商工組合中央金庫法」は廃止されることとされた。
特別の配慮
ただし、民営化法が可決される際、衆参両院で付帯決議がなされ、当金庫の金融機能を確実に維持するために、金融行政のうえで特に配慮を行うこと、必要十分な財政措置を講じることが確認されている[5]。また、民営化法では、当庫が買収を受けて中小企業金融分野から撤退することがないよう、法律をもって株主資格に特別の制限を付した。
なおこの一連の組織改編は、政府系金融機関の抜本再編の一角で、他にも政府系金融機関の抜本改革が同時進行中である。 テンプレート:Main
完全民営化の見直し
2008年に始まった世界的な金融危機に対応し、商工組合中央金庫への政府関与の意義を重視する観点から、従来の政策金融機関民営化方針を見直す趣旨の改正法案が議員立法で提案され、その中で、株式会社化の5年後から7年後を目途にしていた政府保有株式の処分を、2012年4月の5年後から7年後と改め、また政府保有株式の処分の時期について2011年度末を目途に検討を加えるとする内容が盛り込まれた。
この改正法案の審議の中で、野党からの修正提案を与党が合意し、政府保有株式の処分の時期について検討するだけでなく、処分の在り方自体を検討すること、商工中金に対する政府の関与の在り方についても検討すること、その検討結果に基づく措置が講じられるまでは政府保有株式の処分を行わないこととの修正案が可決成立した。この修正案を内容とする改正法が2009年6月19日に平成21年法律第54号として公布・即日施行されたため、完全民営化は当面遠のいた。
格付け
当金庫への格付けは、次のとおりである。
格付け会社 | 評価対象 | 評価 | 当該評価の定義 | 方向性・見通し |
---|---|---|---|---|
ムーディーズ | 長期資金 | Aaa[6] | 9段階中1位。信用力が最も高く、信用リスクが最小限であると判断される債務に対する格付け[7]。 | ネガティブ |
短期資金 | P-1[6] | 4段階中1位。短期債務の返済能力が極めて高いと判断される発行体(または信用補完提供者)に対する格付け[8]。 | 安定的 | |
JCR 日本格付研究所 |
長期優先債務格付 | AA+[1] | 10段階中2位。債務履行の確実性は非常に高い[9]。 | 安定的 |
R&I 格付投資情報センター |
発行体格付 | AA-[10] | 9段階中2位。信用力は極めて高く、優れた要素がある[11]。 | 安定的 |
経営陣
歴代理事長
- 結城豊太郎(任:1936年 - 1937年) 日本興業銀行総裁。のち第15代日本銀行総裁
- 宝来市松(任:〜1941年)日本興業銀行総裁
- 河上弘一(任:〜1942年)日本興業銀行総裁
- 吉阪俊蔵(任:〜1947年) 内務省社会局参与を経て就任
- 豊田雅孝(任:〜1953年) 商工次官を経て就任。のち参議院議員
- 村瀬直養(任:〜1958年) 商工次官を経て就任
- 北野重雄(任:〜1967年) 群馬県知事を経て就任
- 髙城元(任:〜1975年) 東京通産局長、日商専務理事を経て就任。のち日刊工業新聞社長・会長
- 影山衛司(任:〜1983年) 中小企業庁長官、日商専務理事を経て就任
- 佐々木敏(任:〜1987年) 通産省繊維雑貨局長(1971-72)を経て就任
- 宮本四郎(任:〜1993年) 通産省産業政策局長(1980-81)を経て就任
- 児玉幸治(任:〜2001年) 通産事務次官を経て就任
- 江崎格(任:〜2008年) 通産省産業政策局長(1997-99)を経て就任
歴代社長
- 関哲夫(2008年〜2013年)新日本製鐵株式會社代表取締役副社長、のち同社監査役・日本郵政社外取締役
- 杉山秀二(現職)(元経済産業事務次官)
- 代表権のある役員は、ほか、副社長2名(大蔵省OBと通産省OB)と専務(民営化前の商工中金プロパー)で構成される。
沿革
- 1936年5月 - 商工組合中央金庫法(昭和11年法律第14号)公布(6月施行、11月設立)
- 1936年12月10日 - 営業開始。東京都千代田区丸の内(当時東京市麹町区)に本所、全国6ヶ所に支所開設
- 1937年3月 - 利付商工債券の発行を開始
- 1940年7月 - 割引商工債券の発行を開始
- 1944年5月 - 東京都中央区京橋(当時京橋区)へ移転
- 1948年3月 - GHQの圧力で債券発行一時中止(1950年6月再開)
- 1972年12月 - 現在地へ移転
- 1985年6月 - 債券総合口座を創設
- 1994年11月 - 都市銀行、長期信用銀行とオンライン提携
- 2000年 - 郵便貯金(現:ゆうちょ銀行)(4月)、信託銀行(12月)とオンライン提携
- 2007年6月 - 株式会社商工組合中央金庫法(平成19年法律第74号)成立
- 2008年10月 - 株式会社へ改組
- 2009年10月19日 - セブン銀行とオンライン提携(片乗り入れ)
- 2010年4月26日 - インターネットバンキング・モバイルバンキングを提供開始。
関連法人
脚注
- ↑ 1.0 1.1 1.2 商工中金の格付け情報 - JCR(日本格付情報センター)、2008年11月25日確認。
- ↑ 業務の概要 - 商工組合中央金庫、2008年。
- ↑ ただし、当座預金キャッシュカード・お取引証キャッシュカード・法人向け普通預金キャッシュカードについてはセブン銀行ATMを利用することはできない。
- ↑ 商工中金について - 商工組合中央金庫、2008年
- ↑ 第166回国会・衆参両院決議「株式会社商工組合中央金庫法案に対する附帯決議」参照
- ↑ 6.0 6.1 格付情報 - 商工組合中央金庫、2008年11月25日確認。
- ↑ Long-Term-Obligation-Ratings - ムーディーズ、2008年11月25日確認。
- ↑ Short Term Ratings - ムーディーズ、2008年11月25日確認。
- ↑ JCR「格付記号」の定義 - JCR、2008年11月25日確認。
- ↑ 格付け一覧 - R&I、2008年11月25日確認。
- ↑ 格付け符号と定義 - R&I、2008年11月25日確認。
関連項目
- 株式会社商工組合中央金庫法
- 旧商工組合中央金庫法
- 商工組合
- 中小企業団体中央会
- 商工会
- 商工会議所
- 金融庁
- 吉沢京子(初代CMモデルを務めた)
- 榊原郁恵(1980年代にCMモデルを務めた)
- 沢口靖子(2005年まで長年CMモデルを務めた)
- 吹石一恵(2006年より沢口の後任としてCMモデルを務める)
外部リンク
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