都市銀行
テンプレート:独自研究都市銀行(としぎんこう)とは、普通銀行のなかで、東京・大阪などの大都市に本店を構え、広域展開している日本の銀行である。略して都銀(とぎん)。法的根拠はなく、明確な基準を持たない一方で、その対象は限定されており、現在は5行(定義によっては4行)が該当する。
目次
概要
都市銀行は、1968年10月から始まった大蔵大臣の諮問機関「金融制度調査会」第1分科会における「普通銀行の諸問題」の審議にて、「普通銀行のうち6大都市またはそれに準ずる都市を本拠として、全国的にまたは数地方にまたがる広域的営業基盤を持つ銀行」のことと定義された[1]。
当時、都市銀行に分類されたのは、第一銀行、三井銀行、富士銀行、三菱銀行、協和銀行、日本勧業銀行、三和銀行、住友銀行、大和銀行、東海銀行、北海道拓殖銀行、神戸銀行、東京銀行の13行(統一金融機関コード順)である。1968年に日本相互銀行が相互銀行から普通銀行に転換し、太陽銀行に商号変更して都市銀行に加わった。1969年には埼玉銀行が地方銀行から都市銀行に転換した。1971年に第一銀行と日本勧業銀行が合併して第一勧業銀行が、1973年に神戸銀行と太陽銀行が合併して太陽神戸銀行が誕生し、その後は長らく13行体制となっていたが、北海道拓殖銀行の破綻や都市銀行同士の合併・再編により、2006年以降は現在の5行体制となった。
このことから都市銀行は大手銀行である場合が多く、現在では莫大な預金残高を抱えるいわゆるメガバンクとその系列銀行、メガバンクに匹敵する銀行が占める。ゆうちょ銀行は国営現業の郵便貯金を出自とする特殊性から都市銀行と定義されない。
現在の都市銀行
2006年以降、都市銀行は次の5行に限定されている。埼玉りそな銀行は都市銀行に含める場合とそうでない場合がある。すべて前述の13行の流れを汲む銀行で、これ以外の銀行は都市銀行と呼ばない慣例が存在する(店舗数は2012年3月末時点。日本国外の店舗を含む[2])。
銀行名 | ロゴマーク | 銀行コード | 本店所在地 | 店舗数 |
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みずほ銀行 | 0001 | 東京都千代田区 | 459 | |
三菱東京UFJ銀行 | 0005 | 東京都千代田区 | 818 | |
三井住友銀行 | 0009 | 東京都千代田区 | 679 | |
りそな銀行 | 0010 | 大阪府大阪市 | 347 | |
埼玉りそな銀行 | 0017 | 埼玉県さいたま市 | 132 |
普通銀行統制会
1942年の金融統制団体令施行に際して、普通銀行統制会に加入した銀行グループにその起源を求めることもできる。
- 旧財閥系銀行 - 三井銀行(三井財閥系)、三菱銀行(三菱財閥系)、住友銀行(住友財閥系)、富士銀行(旧安田銀行・安田財閥系)、第一銀行(渋沢財閥系)、大和銀行(旧野村銀行・野村財閥系)
- 旧特殊銀行 - 日本勧業銀行、北海道拓殖銀行、東京銀行(横浜正金銀行の資産を承継)
- 旧地方銀行等で業容が拡大したもの - 三和銀行、東海銀行、神戸銀行、埼玉銀行、協和銀行(旧日本貯蓄銀行)、太陽銀行(旧日本相互銀行)
曖昧化する基準
埼玉りそな銀行は都市銀行であった旧埼玉銀行を源流としていることから「都市銀行」とされるが「全国展開」していない[3]。大企業のみを顧客とするみずほコーポレート銀行(当時)[4]は都市銀行とされていたのに対し、長期信用銀行から転換した新生銀行やあおぞら銀行は「大都市に本店を構え、全国展開している」という条件を満たすが都市銀行とされないなど、近年の銀行再編成によって「都市銀行」の基準は曖昧化しつつある。
全国地方銀行協会(地銀協)・第二地方銀行協会(第二地銀協)のいずれにも属していない普通銀行とみなす見方もあるが、これは銀行の運営方針などの問題もあるため[5]、明確な定義でない。ただし「都市銀行懇話会」という、日本経済団体連合会加盟の任意団体は存在し、全国銀行協会のプレス発表でも「都銀懇、地銀協、第二地銀協、信託協は」というような言い方をしている。
全国銀行協会などの発行物、日本銀行の定義[6]、財務省の分類[7]では、埼玉りそな銀行とみずほコーポレート銀行(当時)を「都市銀行」として扱っている。しかし、金融庁のウェブサイトで公開している「免許・許可・登録等を受けている業者一覧[8]」では、みずほコーポレート銀行(当時)を金融庁所管の「都市銀行」、新生銀行及びあおぞら銀行を金融庁所管の「その他」とする一方、埼玉りそな銀行を関東財務局所管の「その他」としているなど定義は分かれている。
本項では埼玉りそな銀行及びみずほコーポレート銀行(後にみずほ銀行と合併)を都市銀行として扱う。
行政上の都市銀行
金融行政での統計資料等においては都市銀行を普通銀行のうちの本庁直轄銀行(ただし業態が従来型のもの)と同義語であるかのごとく使用している。
銀行法第59条第2項では、金融庁長官は権限の一部を財務局長(財務支局長を含む)に委任することができると規定されている。これは金融庁自体に地方支分部局がないため、発足の際の母体となった財務省の地方支分部局に委ねているためである。この規定に基づき、銀行法施行令第17条の2第1項では個別の権限を列挙して(銀行業の免許、銀行の合併等、経営の基本的事項以外は全部)長官権限を財務局長に委任しているが、同条第4項により、金融庁長官の指定するものには適用しない、換言すれば、金融庁長官の指定した金融機関については財務局長に委任せず金融庁長官自身が権限を行使することと規定された。
この規定に基づいて、「銀行法施行令第17条の2第1項から第3項までの規定を適用しない金融庁長官の権限等を定める件」(平成14年金融庁告示第35号)が制定されて、この中で、みずほ銀行・みずほコーポレート銀行(当時)・三井住友銀行・三菱東京UFJ銀行・りそな銀行の5行が「本庁直轄銀行」とされ、これが行政上、「都市銀行」と表現されている。その他、長期信用銀行から移行した2行(新生銀行、あおぞら銀行)、新たな形態の銀行や信託兼営銀行も本庁直轄銀行だが、これらは都市銀行とはされない。また、埼玉りそな銀行は本庁直轄銀行ではないため、金融庁の作成資料では都市銀行としては扱われていないが、全国地方銀行協会・第二地方銀行協会のいずれにも加入していないので、地方銀行・第二地方銀行には分類されず、関東財務局所管の「その他」というジャンルに分類されている。
これに伴い、金融庁の組織において監督局銀行第一課と同銀行第二課との間の監督対象銀行の区分は、銀行第二課は「社団法人全国地方銀行協会又は社団法人第二地方銀行協会の会員その他金融庁長官が定める者」(金融庁組織令第21条第1項第1号イ)、銀行第一課はそれ以外の銀行業を営む者(金融庁組織令第20条第1項第1号イ)と区分している。
都市銀行のあゆみ
財閥・政府系銀行誕生 (1873年 - 1939年) |
戦時統制 (1940年 - 1945年) |
戦後改革・財閥解体 (1946年 - 1951年) |
財閥名復帰・長期金融整備・高度成長 (1952年 - 1970年) |
高度成長終焉・安定成長・バブル経済 (1971年 - 1989年) |
金融ビッグバン (1990年 - 1999年) |
不良債権処理 (2000年 - ) | |
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三菱銀行 (1919年 - 1948年) |
千代田銀行 (1948年 - 1953年) |
三菱銀行(1953年 - 1996年) | 東京三菱銀行 (1996年 - 2006年) |
三菱東京UFJ銀行 (2006年 - ) | |||
横浜正金銀行 (1879年 - 1946年) (1946年閉鎖機関指定、東京銀行に業務承継) |
東京銀行(1946年 - 1996年) | ||||||
三和銀行(1933年 - 2002年) | UFJ銀行 (2002年 - 2006年) | ||||||
愛知銀行 伊藤銀行 名古屋銀行 (1890年代 - 1941年) |
東海銀行(1941年 - 2002年) | ||||||
相互無尽(1917年 - 1951年) | 第一相互銀行(1951年 - 1989年) | 太平洋銀行 (1989年 - 1996年) (1996年破綻、わかしお銀行へ営業譲渡) |
わかしお銀行 (1996年 - 2003年) |
三井住友銀行 (2003年 - ) (わかしお銀行から商号変更) | |||
住友銀行 (1895年 - 1948年) |
大阪銀行 (1948年 - 1952年) |
住友銀行(1952年 - 2001年) | 三井住友銀行 (2001年 - 2003年) | ||||
神戸銀行(1936年 - 1973年) | 太陽神戸銀行 (1973年 - 1990年) |
太陽神戸三井銀行 (1990年 - 1992年) さくら銀行 (1992年 - 2001年) | |||||
無尽会社5社 ( - 1940年) |
大日本無尽 (1940年 - 1948年) |
日本無尽 (1948年 - 1951年) |
日本相互銀行 (1951年 - 1968年) 太陽銀行 (1968年 - 1973年) | ||||
三井銀行 (1876年 - 1943年) |
帝国銀行 (1943年 - 1948年) |
帝国銀行 (1948年 - 1954年) |
三井銀行(1954年 - 1989年) | ||||
第一銀行 (1873年 - 1943年) |
第一銀行(1948年 - 1971年) | 第一勧業銀行(1971年 - 2002年) | みずほ銀行 / みずほコーポレート銀行 (2002年 - )[9](2013年7月1日付で、みずほコーポレート銀行がみずほ銀行を吸収合併) | ||||
日本勧業銀行 (1897年 - 1950年) |
日本勧業銀行 (1950年 - 1971年) | ||||||
安田銀行 (1876年 - 1948年) |
富士銀行(1948年 - 2002年) | ||||||
日本興業銀行(1902年 - 2002年) | |||||||
貯蓄銀行9行 (1890年代 - 1945年) |
日本貯蓄銀行 (1945年 - 1948年) |
協和銀行(1948年 - 1991年) | 協和埼玉銀行 (1991年 - 1992年) あさひ銀行 (1992年 - 2003年) |
りそな銀行 / 埼玉りそな銀行 (2003年 - ) | |||
八十五銀行 武州銀行 忍商業銀行 飯能銀行 (1890年代 - 1943年) |
埼玉銀行(1943年 - 1991年) | ||||||
野村銀行 (1918年 - 1948年) |
大和銀行(1948年 - 2003年) | ||||||
北海道拓殖銀行 (1900年 - 1950年) |
北海道拓殖銀行(1950年 - 1997年) (1997年破綻、北洋銀行と中央信託銀行に営業譲渡) |
(2006年法人格消滅) | |||||
(勧銀・拓銀の長期金融を承継) | 日本長期信用銀行 (1952年 - 2000年) (1998年破綻、2000年投資組合ニューLTCBパートナーズ(リップルウッド)に売却) |
新生銀行 (2000年 - ) |
- 埼玉銀行は成立当初は地方銀行。1969年に都市銀行へと転換した。
- 背景濃灰は特殊銀行または長期信用銀行・外国為替専業銀行。
- 住友銀行は1986年平和相互銀行と、三井住友銀行は2003年わかしお銀行と合併している。
- りそな銀行は旧大和・あさひの埼玉県外店舗を、埼玉りそな銀行は同じく埼玉県内店舗を引き継いでいる。また、りそな銀行は2005年に奈良銀行と合併している。
- 新生銀行は都銀の部門譲渡によって設立された長信銀の後継行のため、この図表に掲載しているが、都市銀行には含まない。
- カッコ内は銀行の存在期間。
かつてBANCS加盟13都市銀行の現状
BANCSは、都市銀行間を接続するCD/ATMの相互接続ネットワーク。
脚注
関連項目
外部リンク
テンプレート:都市銀行- ↑ マーケティング・エクセレンス著『図解30分で「銀行のしくみ」がすっきりわかる本』38頁、ISBN 978-4-7980-2565-0
- ↑ 全国銀行資本金、店舗数、銀行代理業者数、役職員数一覧表
- ↑ 旧埼玉銀行は大阪・札幌などにも支店を持っていた。
- ↑ 登記上は旧富士銀行が改称した銀行だが、本店所在地や業務内容は長期信用銀行だった日本興業銀行を引き継いだ形になっている。
- ↑ ネット銀行も地銀協、第二地銀協には加盟していない
- ↑ 用語の定義、日本銀行
- ↑ 国債に係る入札参加者一覧、財務省
- ↑ 銀行免許一覧(都市銀行・信託銀行・その他)、金融庁
- ↑ 2013年7月1日付で、みずほコーポレート銀行がみずほ銀行を吸収合併し、みずほ銀行に改称。