AT&T
AT&T(エイ ティ アンド ティ、AT&T Inc.)はアメリカ合衆国最大手の電話会社。インターネット接続サービス等も提供する。本社をテキサス州ダラスに置く。AT&Tは、旧社名 The American Telephone & Telegraph Company の略。
沿革
1877年、19世紀における米国の二大発明家であるグラハム・ベルが興したベル電話会社が前身であり、1885年に世界初の長距離電話会社として発足。社長となったセエドア・ニュートン・ヴェイルは「垂直統合」と「水平統合」と呼ばれる研究開発(ベル研究所)から機材製造(ウェスタン・エレクトリック)、市内交換から長距離交換までの独占を展開。ネットワーク経済学におけるボトルネック独占を見事に現実のものとした。
20世紀初頭には政府との折衝の結果キングズベリー協定により事業の独占権「規制下の独占」を認められるようになった。この規制された独占の状態は1970年代に始まる反独占訴訟(United States v. AT&T, 552 F. Supp. 131 (D.D.C. 1982))の結果解体されることになる。1984年1月1日をもって、地域電話部門は地域ベル電話会社8社(アメリテック、ベル・アトランティック、ベルサウス、ナイネックス、パシフィック・テレシス、サウスウェスタン・ベル、USウエスト)通称:ベビーベル(Bebybell)へと分離された。また、ベル研究所もAT&T本体から分離され、子会社のAT&Tテクノロジーズ(旧ウェスタン・エレクトリック)の傘下に置かれた。これにより、AT&Tは基本的に長距離電話会社となった。アメリカの電話産業は市場競争へと開放され、特に長距離部門ではMCIやスプリントなどの大手長距離電話会社の成長を見ることになる。
1990年代後半からは、大手ケーブル会社のTCI、メディアワンを買収、ケーブル施設を全国に保有し、その施設を通じた高速インターネット通信事業においても大手事業者となった。
1995年には、1983年にAT&Tから分離された地域ベル電話会社サウスウェスタン・ベルがSBCコミュニケーションズに改名。SBCコミュニケーションズは、1996年にパシフィック・テレシス、1997年にサザン・ニューイングランド・テレフォン、1999年にアメリテックを合併吸収して巨大化する。
1996年には、機材製造・研究開発部門のAT&Tテクノロジーズをルーセント・テクノロジーズ(現アルカテル・ルーセント)としてスピンオフ。また、1991年に買収したNCR(買収後にAT&Tグローバル・インフォメーション・ソリューションズに改称)も、1997年にNCRとしてスピンオフした。
2001年の企業再構築により、旧TCIのメディア部門であったリバティメディアがスピンオフし、AT&Tは、AT&Tワイヤレス、AT&Tブロードバンド(ケーブルTV & ケーブルインターネット)、AT&Tコンシューマー、AT&Tビジネスの四事業体制となる。このうちAT&Tワイヤレスは切り離され独立し、2001年から2004年まではNTTドコモが筆頭株主(16%)となるが、2004年にはSBCコミュニケーションズとベルサウスの合弁会社であるシンギュラー・ワイヤレスに買収されることになった。2002年には、AT&Tブロードバンドは、ケーブルテレビ事業大手のコムキャストに買収されて、AT&T本体に残るのは、昔からある長距離通信事業のみとなった。
2005年には、SBCコミュニケーションズにより、残っていたAT&T自体(AT&T Corporation)が買収される。SBCは、ブランド名として価値の高いAT&Tを社名にすることにし、AT&T Inc.と改称した。買収されたAT&T Corp.は、新AT&Tの長距離通信事業を担当する子会社として残され現在も存続している。SBCコミュニケーションズは、1983年のAT&T分割でできた地域通信会社であり、経営陣の多くがAT&T出身ではあるが、子が親を買収するようなイメージの合併であった。従って、旧AT&Tの流れは、資本上はここでいちど切れたと考えるべきである。SBCのAT&Tへの社名変更はSBCの経営陣がAT&Tの圧倒的なブランド力、認知度を利用するとともに、誇るべきNYSEにおける"T"の一文字ストックシンボルの伝統を消したくなかった、と言われている(参考:英語版 AT&T)。AT&Tのロゴは買収後に若干変更された。
2006年には、地域ベル電話会社のベルサウスを買収。ベルサウスとは携帯電話事業で合弁事業を行っており、共同出資会社シンギュラー・ワイヤレスは米国内でベライゾン・ワイヤレスやスプリント・ネクステル、T-モバイルを抑えトップシェアとなっていた。また、この合併で地域電話会社はAT&T、ベライゾン・コミュニケーションズ、クウェスト・コミュニケーションズ・インターナショナル(現センチュリーリンク)の3社に集約されることとなった。これによりAT&Tは、長距離データ通信、長距離電話、携帯電話、公衆無線LANサービス、米国本土のおよそ半分で地域電話サービス(インターネット接続サービス、IPTV・ビデオサービスを含む)を提供する巨大通信事業者となった。2007年、シンギュラー・ワイヤレスをAT&Tモビリティに名称変更し、すべてのサービスをAT&Tのブランドに統一した。
2007年12月3日、2008年度末までに公衆電話事業の完全撤退を発表した。[1]
2011年3月20日、ドイツテレコムの米国携帯電話事業子会社であるT-Moblie USAを390億ドルで買収することを発表。しかし、この買収計画は、司法省による反トラスト法違反での提訴につながり、結局、12月にAT&Tは、買収断念を発表した。[1]
2013年7月12日、リープ・ワイヤレスを1株当たり15ドルで買収することで合意 [2]。
2014年5月18日、ディレクTVを485億ドルで買収することで合意したと発表[3]。
組織
AT&T Inc.は持株会社として存在し、個々の事業・地域ごとの事業は以下の事業子会社が担当している。
- サウスウェスタン・ベル・テレフォン・カンパニー
- AT&Tテレホールディングス
- イリノイ・ベル
- インディアナ・ベル
- ミシガン・ベル
- オハイオ・ベル
- ウィスコンシン・ベル
- AT&Tコーポレーション
- AT&Tアラスコム
- ベルサウス
- ベルサウス・テレコミュニケーションズ
- AT&Tモビリティ
- クリケット・ワイヤレス
他国展開
日本
日本においては、1985年に長距離国際サービスを主にした日本AT&T株式会社が設立された。1998年の日本IBMとの戦略的合意に基づき、1999年にAT&TジャパンLLC(2007年9月1日にAT&Tグローバル・ネットワーク・サービス・ジャパンLLCから社名変更)が設立された。なお、AT&TジャパンLLCは株式の15%をNTTコミュニケーションズが持ち、AT&TIncの100%子会社である日本AT&T株式会社と若干資本関係が異なる。 AT&TジャパンLLCはAT&Tの技術を日本に導入するとともに、企業向けネットワークのアウトソーシングサービスなどを行っている。技術力は高く、顧客層はかなり大企業に偏っている模様である。国際サービスはAT&Tのサービスを使い、国内サービスはNTTコミュニケーションズ、KDDI、日本テレコム、KVHテレコムなどの回線を調達しAT&Tがマネージメントとカスタマイズをして、顧客に提供するサービスをしている。複雑なネットワークであるほど、AT&Tの評価は高い。
2010年9月に、AT&Tジャパンのネットワークアウトソーシング事業をインターネットイニシアティブへ譲渡した。
また、かつて存在したAT&TのプロバイダーサービスはAT&Tと日本テレコムとの合弁会社JENSが運営していたが、AT&TがNTTコミュニケーションズと提携した後、合弁は解消、現在AT&Tとは無関係の会社になっている。しかし、ドメインとしてはatt.ne.jpがそのまま残っている。 ブリティッシュテレコムとの合弁、コンサートジャパンも合弁解消、こちらはAT&Tに吸収合併されている。
日本電気(NEC)は、ベル電話会社(旧AT&T)の機材製造部門ウェスタン・エレクトリックと岩垂邦彦による日本初の外資との合弁企業であった。現在はAT&Tとの資本関係はない。
スポンサー活動
タイガー・ウッズ
プロ・ゴルファーのタイガー・ウッズがイメージ・キャラクター。 ただし、2009年12月31日に契約解除を発表した。
ネーミングライツ
SBC時代より、現在のAT&Tパーク(2000年開場)、AT&Tセンター(2002年開場)のネーミングライツを保有している。また、2013年7月にはカウボーイズ・スタジアムの命名権も取得した(AT&Tスタジアム)。
F1
2012年からF1チームのレッドブルのスポンサーを務めている[4]。過去スポンサーを務めていたチームの移り変わりは多くジャガー・レーシング、マクラーレン、ウィリアムズ、レッドブルと推移している。
関連項目
- シンギュラー・ワイヤレス
- アレクサンダー・グラハム・ベル
- 反トラスト法
- サンアントニオ・スパーズ
- AT&Tセンター
- サンフランシスコ・ジャイアンツ
- AT&Tパーク
- ダラス・カウボーイズ
- AT&Tスタジアム
- AT&T・コーポレートセンター
- アメリカ合衆国における携帯電話
- アルビン・トフラー
脚注
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外部リンク
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