連珠

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
連珠盤から転送)
移動先: 案内検索

連珠(れんじゅ)は、五目並べから派生したボードゲームの一種である。

概要

連珠は碁盤の上に黒白の碁石を交互に置き、先に石を縦横斜めのいずれかに5つ並べた者が勝ちである。
五目並べと同一であるが、五目並べは先手の必勝法が解明(後述の#歴史を参照)されているため、ルールにより着手を制限して先手と後手の均衡をとったものを連珠もしくは着手制限連珠と呼称することが多い。連珠は、二人零和有限確定完全情報ゲームに分類される。

かつては「聯珠」と表記していたが、近年は常用漢字制限により「連珠」という表記がほとんどである。

用具

連珠では以下の用具を用いる。

  • 碁石(「珠」ともいう): 黒・白の二色。基本的には囲碁で使う碁石と同じものを使用する。連珠では一度打たれた碁石が移動しないため、中国の碁石は「片面がフラットなドーム形状」になっているので、研究などで変化手順を検討するときは、石を裏返しに置くことで「変化で打たれた碁石」が判別しやすいという特徴がある。
  • 碁笥(ごけ): 碁石を入れる。珠笥(じゅけ)ともいう。連珠用に小さく作られている。
  • 連珠盤: の上に、直交する縦横それぞれ同じ本数の直線を引いたもの。碁石を置くのは囲碁と同様に縦線と横線の交点である。正式には、囲碁の19道(路)盤より各辺2路ずつ狭い、縦横15路ずつの15道盤が使われる。

通常使用される縦横15本の線を持つ盤を15道盤(じゅうごどうばん)という。交点(目)の数は225、マス目の数は196。第3世名人・高木楽山がルールとして15道盤の採用を決めるまでは碁盤(19道盤。囲碁では19路盤という)が使われ、現在でも公式戦以外では碁盤を代用することもある。連珠はそもそも先手が優位に立ちやすい性質上15道より数が増えるとより先手持ちの対局進行になるので先手に禁手を与えると共にこれ以上の数は増やさず15道で定められている。

連珠盤を作る木材には碁盤と同様、カヤスプルース(新カヤ)、カツライチョウヒノキヒバアガチス(新カツラ)などがあり、カヤ製の柾目盤が最も高価である。またプラスチック製のものやゴム製、持ち運び用のマグネット碁石に対応した金属製のものもある。

連珠盤の価格は将棋盤とほぼ同じで数千円から数百万円までさまざま。競技人口が少ないせいもあって受注生産となる場合がほとんどである。

形状は畳などの上で椅子を用いない対局で床に直接置き使用する足付盤以外にも、テーブルの上で用いる薄い板状のものも公式戦で使用される。それ以外にも折畳式のものなどもある。

足付き連珠盤の裏側の中央部分にはへこみがある。これは血溜まりと呼ばれ、対局中に横から口を挟む人間は首を刎ねられ、このへこみに乗せられる事になると言う。しかし実際には打ったときの音の響きをよくするためとも言われている。足付き盤でも2寸程度の薄い盤にはへこみはついていない。

大きさは将棋盤(縦1尺2寸、横1尺1寸)とほぼ同じで、厚さは足付き盤で2寸-9寸程度まである。木製のものは将棋盤用に切った材料から製作され、将棋盤の天面を削り線を引きなおす場合もある。

  • 対局時計: 公式戦では制限時間を定め、時間切れによる勝敗を厳正に定めるために対局時計を用いる。

練習対局では、連珠盤と碁石の代わりに、碁盤や縦横15本ずつ線を引いた方眼紙筆記具を用いることもある。

歴史

五目並べのような、石を連続して並べることを競うゲームについては、日本のほかに囲碁の発祥であった中国、その他の国についても類似のルールがあるとされる。とはいえ、原型であると主張されたものが後に全く別のゲームであることがわかるなど、それらの説はそれほど定かではない。

連珠そのものは日本が発祥であることは明らかである。この原型となった五目並べについて歴史をさかのぼると、平安時代には存在していることははっきりしている。この時期のものは碁盤を使い、特に禁手もないものであったようだ。しかし、明治に入ると、禁手のない五目並べが完全に先手必勝であることがわかるようになる。

黒岩涙香は五目並べに興味を持ち、1899年、自身が主幹であった萬朝報に五目並べの先手必勝法を掲載する。これが反響を呼び、彼は同年12月6日、このゲームを「聯珠」と呼ぶことを同紙上で提案した。この日が連珠の発祥した日となる。このころ既に三三は黒白とも禁手、長連は黒白ともに無効な手とされていたが、1903年には三三は黒のみの禁じ手とされることになった。

なお、連珠の初代永世名人である高山互楽とは黒岩涙香本人であり、高山互楽は彼のである。

1912年には、たとえ守りのためであっても(打たされても)黒が三三を打った際には負けとなる一方、白が長連を打っても勝ちとなるようルール改正が行われた。1918年までに黒の長連ははっきり負けとなり、また同年に黒の四三三も負けとなった。

1931年、第三代の名人であり囲碁も強かった高木楽山は15道盤の採用や黒の四四を禁じ手とするなどのルール改正を提唱した。しかしこれは論争を引き起こし、連珠関連団体の分裂の遠因となった。

1966年、分裂していた連盟が社団法人日本連珠社として1つになる。そして1988年、連珠国際連盟が発足した。連珠国際連盟は日本連珠社のルールに準拠したルールを採用している。

1989年から連珠国際連盟が主催する連珠世界選手権が開始され、奇数年に個人世界選手権が、偶数年にチーム世界選手権が実施されている。

現行の用語と基本ルール

連珠の特徴は、黒と白とでルールが違うところである。

2人の対局者がそれぞれ黒、白の碁石を持ち、交互に1つずつ石を置いていく。石を置く場所は線の交点上である。 黒が先手で1手目は天元(中央の)に打つ。また、白の2手目は天元から1目離れた場所に、黒の3手目は天元から2目以内離れた場所に置かなければならない。このため、3手目までの形が(対称形を除き)26通りあり、これらを珠型(しゅけい)と呼ぶ。珠型にはそれぞれ名がついている。

連珠の用語とその定義
用語 定義
縦・横・斜めのいずれかの隣接する交点に同色の右が空間なく一直線上につらなるもの。ルール用語としての連というのは五連と長連のみに用い、四連・三連などは単に四・三という。
五連 5個の石の連
長連 6個以上の石の連
達四 4個の石の連で、同種の石を1個加えると五連になる点が2カ所あるもの。また、棒四ともいう。
同種の石を1個加えると五連になるもの。白の場合は、珠法の差があるので1個石を加えると長連になるものも四とみなす。(達四の場合も同様である)
同種の石を1個加えると四になるもの。
四四 同一衝点に四または達四が2個以上同時にできるもの。一直線状に四四ができる場合もある。
三三 同一衝点に三が2個以上同時にできるもの。

黒が有利とならないよう、黒に限って五連を並べる前の三三、四四、長連は禁手となる。黒が禁手を打った場合はその時点で指摘されれば負けとなる。白に禁手はなく、長連は五連とみなして勝ちとなる。ただし、長連を除いては、黒が禁手を打ち白が黒の禁手に気づかずに次の手を着手した場合は、禁手が解除され対局を続行させることができる。

ルールより、黒の五三三や五四四、五六は黒の勝ちである。また、黒の四三三や四四三は禁手である。

珠型

白の2手目は、黒の1手目(天元)の1つ上に並べて置くか、右斜め上に置くことになっている。並べて置くほうを直接打ちといい、斜めに置くほうを間接打ちといって区別する。

珠型には、「月」または「星」の文字が入った名がそれぞれの形ごとに決まっている。白石をに見立て、黒石をなどに見立てて名づけられたのが珠型の名の起源である。(例:月、山巓に在り。故に山月と謂ふ。)

かつて珠型は、黒の1手目と3手目を基準に(囲碁でいうケイマの位置)・(縦横斜めのいずれかに1つ飛ばした位置)・(2つの石が隣り合った位置)に分類され、桂と連に「月」、間に「星」のつく名が割り当てられた。現在では珠型を直接打ち・間接打ちに分類するため、それぞれに「月」と「星」のつく名が混在している。

直接打ち

テンプレート:碁盤 5x5直接1号「寒星 テンプレート:碁盤 5x5直接2号「渓月 テンプレート:碁盤 5x5直接3号「疎星 テンプレート:碁盤 5x5直接4号「花月 テンプレート:碁盤 5x5直接5号「残月
テンプレート:碁盤 5x5直接6号「雨月 テンプレート:碁盤 5x5直接7号「金星 テンプレート:碁盤 5x5直接8号「松月 テンプレート:碁盤 5x5直接9号「丘月 テンプレート:碁盤 5x5直接10号「新月
テンプレート:碁盤 5x5直接11号「瑞星 テンプレート:碁盤 5x5直接12号「山月 テンプレート:碁盤 5x5直接13号「遊星    

間接打ち

テンプレート:碁盤 5x5間接1号「長星 テンプレート:碁盤 5x5間接2号「峡月 テンプレート:碁盤 5x5間接3号「恒星 テンプレート:碁盤 5x5間接4号「水月 テンプレート:碁盤 5x5間接5号「流星
テンプレート:碁盤 5x5間接6号「雲月 テンプレート:碁盤 5x5間接7号「浦月 テンプレート:碁盤 5x5間接8号「嵐月 テンプレート:碁盤 5x5間接9号「銀月 テンプレート:碁盤 5x5間接10号「明星
テンプレート:碁盤 5x5間接11号「斜月 テンプレート:碁盤 5x5間接12号「名月 テンプレート:碁盤 5x5間接13号「彗星    

開局規定

開局規定(オープニングルール)とは、その名の通り開局を行うための規定である。単に交互に打ち進めていくだけでは多くの珠型で必ず先手が勝ってしまうため、先手後手の均等を取るために開局規定が考案された。

珠型交替・五珠二ヶ所打ち

現在の世界共通ルール(RIFルール)では珠型交替・五珠二ヶ所打ちが用いられる。これは以下の手順によって行う。

  1. まず、両対局者が任意に白石か黒石を選んで、相手に見えないように石を適当数握った後同時に盤上に出す。
  2. 両者の石数の合計数が奇数ならそのまま、偶数なら黒石と白石とを持ち替える。このとき黒石を持つことになった方が仮先(仮の先手)、白石を持つことになった方を仮後(仮の後手)と呼ぶ。
  3. 仮後は白石一石を仮先に渡す。対局時計を使用している場合はここで時計を押す。→仮先の持ち時間が減っていく。
  4. 仮先は、26珠型の中から1つを提示する。提示後に仮先が時計を押す。→仮後の持ち時間が減っていく。
  5. 仮後は、提示された珠型を見て、黒番白番のうち自分の持ちたい側を選ぶ。これにより黒(先手)と白(後手)が決まる。
  6. 選んだ後に、正式に白番となった側が白の4手目を任意の場所に打つ。
  7. 次の黒番が、黒の5手目の着手位置を2か所指定する。この2か所は互いに対称形とならないようにする。
  8. 白番は、この2か所を比較し、打たせたい珠を残し、もう1か所を取り除くことによって5手目の着手を選択する。
  9. 続いて白が6手目を打ち、以下黒白交互に任意の場所に打つ。

珠型五珠題数提示選択打ち

珠型五珠題数提示選択打ちは日本の山口釉水九段が提唱したルールである。通称で「題数指定打ち」「題数提示打ち」と呼ばれる。

現在の二ヶ所打ちよりオープニングの幅を増やそうと考案された次世代ルール。今後は二ヶ所打ちに変わってこれが主流になると思われる。

  1. 対局者の1人を提示者(仮先)、もう1人を選択者(仮後)と決める(これは握りなどで決める)。
  2. 提示者は、次の2つを盤上に提示する。
    • (α)珠型
    • (β)黒になった対局者が、5手目で打つ題数
  3. 選択者は、提示された内容を見て、黒で打つか白で打つかを選ぶ。
  4. 黒か白かが決まったら、白番になった対局者が白の4手目を任意の場所に打つ。
  5. 黒の対局者は、示された題数分の5手目を打つ。
  6. 白の対局者は、黒が打った5手目の着手の中から1つの着手を選択する。
  7. 続いて白が6手目を打ち、以下黒白交互に任意の場所に打つ。

均衡打ち

均衡打ちとは、坂田吾朗九段が提唱したルール。

  1. まず、黒が天元に黒1を打つ。
  2. 次に、白が天元の一つ斜め隣か、横隣に白2を打つ。
  3. 次に、黒が天元から一間飛びの範囲内に黒3を打つ。このため基本珠形の数は26種になる。
  4. 次に、黒が白4の打つ場所を指定する。
  5. 続いて、黒が黒5を打つ。
  6. 白石を打っている人は、局面を観察して引き続き白石を持って戦うか、交替して黒石を使うかを決める。
  7. 以降は、通常の方法と同じである。

五回交代打ち

五回交代打ちとは、ロシアのユーリー・タラニコフが提唱したルール。 テンプレート:節stub

二回交代打ち

二回交代打ちとは、スウェーデンのピーター・ヨンソンが提唱したルール。 テンプレート:節stub

必勝定石

連珠は先手番による必勝定石が存在することが知られている数少ないゲームである。禁手を設けても、単純に黒白が交互に打っていくならば、先手側に様々な必勝手順があることが確立されている。そこで、現行では珠型交替・五珠二ヶ所打ちなどの開局規定により、両対局者間の均衡をとっている。

ただし、必勝といわれている定石でも非常に変化に富んだものが多く、実際に対局で打ちこなすには相当の知識と技量が必要である。そのため、逆にあえて必勝といわれる形を打たせて、間違いを誘うことで勝ちを得ようとする後手策も数多く存在する。

類似のゲーム

  • 五目並べ: 連珠の起源。
  • コネクト6: 石を6個先に並べたほうが勝ち。1手目以外両者2個ずつ石を置く。主にロシアで行われている。
  • 五子棋: 連珠の中国での名称。
  • 囲連星: 連珠と囲碁がミックスされたゲーム。
  • 二抜き連珠(朝鮮五目): 石を2個はさめば取ることができる(3個以上は取れない)。石を5個並べるか、10個取れば勝ち。
  • ペンテ: 二抜き連珠のバリエーション。
  • 梅花碁: 十字の形に石を並べれば勝ちとなる。大きさは問わない。
  • 四目並べ : 重力付き四目並べで、下から積み重ねる

関連項目

外部リンク

sv:Luffarschack#Renju