白バイ

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白バイ(しろバイ)とは、警察が主に交通取締業務に使用する、業務執行に必要な各種装備を取り付けた白塗りのオートバイの日本での呼称である。警察庁内の公式文書には交通取締用自動二輪車あるいは交通指導取締用自動二輪車と表記される。英語圏ではPolice motorcycleと呼ばれる。乗務し扱うのは専門の訓練を受けた白バイ隊員

日本の白バイ

ファイル:警視庁のホンダ・CB1300P.jpg
警視庁のCB1300P (導入2009 - )
長らく750cc(ナナハン)が主流であった白バイも、1300ccが本格的に導入され始めた。

日本の白バイは装備や規格は警察庁で規定していて、主に大型自動二輪車が用いられる。オートバイの機動力を示す実用例の一つで、指名手配中や逃走中の被疑者の捕捉といった一般的な警らにも使用されているほか、マラソン駅伝競技における先導車として使用される。皇宮警察本部の白バイは交通取り締まりは行わず、専ら要人警護に専従する。警察のみでなく陸上自衛隊警務隊も白バイを保有し、交通統制や車両誘導などの任務に使用される。

装備

テンプレート:出典の明記

ファイル:Cb1300p-mater.jpg
ホンダCB1300Pのインストゥルメンタルパネル。中央に追尾車両の測定速度が表示される。またカウル右には前方録画用のカメラが装備されている。

違反車両追尾時の速度を表示する「測定速度インジケータ」は、インパネ部中央にデジタルメーターが備えられている。メーター下またはフロントカウル内収納ボックス(CB1300Pのみ)に設けられた専用プリンタから違反速度を記載した小さな紙がプリントアウトされ、違反車両を検挙した際に速度違反の証拠となり、違反者は交通反則切符または交通切符とあわせて署名捺印を要求される。従来は自車速度を示す速度計の隣に目盛りがより細かいアナログメーターがあり、測定した速度を保持するボタンを備えていた。白バイの測定メーターは一般の車両のものよりも非常に精密に作られており、定期的にメーターの検査を受けている。検査は月に1度行われて実施記録が残され、検査済みであることを示す点検票を各都道府県警で貼付する。速度違反に関する否認などがあれば、メーターが正常であることを主張する書証として検査記録が提出される。したがって、前回の検査から1か月以上経過している車両でのスピードの測定は、証拠能力が認められない場合がある。20年ほど前は3か月ごとの検査だった。

車体後部の側面に取り付けられた箱(サイドボックス)には、左側に違反キップ類や取締り地点や犯人捕捉・逮捕地点特定のための地図、地点マーキング用白墨など、業務に用いる道具が収められている。

車体後部の上面の箱(トップボックス)には、車両メーカーからの出荷時は何も入っていない箱が取り付けられているが(俗に書類ボックスと呼ばれる。天板兼上部蓋にクリップと青色ランプが付いている。)、配備後に無線機用の箱に付け替えられる。無線機箱には、無線機本体、本部交信用に使う長めのアンテナと運転の警察官が持つトランスミッターとの交信に使う短めのアンテナが付いているほか、古い車種を除き、後方への周知目的で赤色回転警光灯が高い位置でつく。

フロントのサイドバンパーパイプの左側にはトランジスタメガホントランペットスピーカー、右側にはサイレンのトランペットスピーカーが装備されており、取締りの際の誘導や緊急走行時の一般車両への指示、違反行為を未然に注意喚起する際などに用いられる。むかしは赤色回転灯とスピーカーは別体だったが、近年は一体型が用いられる。緊急走行時のサイレンはパトカーや他の緊急車両よりも高い音である(ウーウーではなく、むしろピュイーンという音に近い)。サイレンを吹鳴するまでもない場合や吹鳴が呼びかけ相手の運転技術等から危険である場合には、吹鳴なくマイクでの停止等を呼びかけることもある。日本国内の白バイに取り付けられているサイレンアンプは、かつてはそのほとんどがクラリオン製であったことから、クラリオンサイレンとも呼ばれている。現在のVFR800PとCB1300Pでは、大阪にある「パトライト」社製のサイレンが標準装備になっている。 一部の警察本部で、試験的に、赤色回転灯の中に、回転部の発光体としてのフィラメント付ガラス球のほか、前方周知用に別途LEDを組み込んだものも出回っているが、配備数は多くない。 回転灯は、光らせるとその性質上全方位が眩しく、運転者たる警察官にとっては眩惑で危険であることから、警察官の目に入る部位にはスモークが施され、赤色光が目に入らないようになっている。

ハンドル左には、音声伝達回路の出力先として拡声器と警察無線とを切り替えるスイッチが装備される。ヘルメット内での発話は、運転する警察官の腰に付けられたトランスミッターを通じてバイクに飛んだあと、切り替えスイッチに応じ、マイクから拡声されたり無線で電波に乗る(無線傍受の場合は、逆ルートでヘルメットまで届く)。バイクと警察官との接続は、以前は有線であったが、事故時の引っ張られのリスクを考えていまは無線で結ばれている。なお、無線やマイクシステムはエンジン停止時でも使うことができ、無線機ボックスに独立したスイッチがある。 このほか、新型車種には押すだけで本部に緊急事態を知らせる「EMボタン」が装備されるほか、録画用小型ビデオカメラを装備する警察本部も一部で出てきている。都道府県費で導入した一部の車両には、グリップヒーターを装備する車両も存在する。

訓練用車両も存在しており、個体差はあるものの赤色回転灯やスピーカー、無線機ボックスなどの装備が取り外されているなどの特徴がある。 予備車の場合は、上述装備は一通り付いているものの、音声伝達システムが旧来の有線接続モデルだったり、無線システムが外されてメーカー出荷時の書類ボックスが付けられていたりする。なお、バイク側に無線システムがついていなくても、いわゆる警電携帯等他のコミュニケーションツールを所持していれば、一応は執務は可能である。

運用

警視庁では方面別に置かれる10個隊の交通機動隊の他に各警察署交通課に配備される。警視庁機動隊には、「機動隊自動二輪部隊」(通称MAP Metropolitan Area Patrolの略で地域機動警戒の事)が存在し、警備を主とした任務に白バイが運用されている。このほか、隠密運用されている市販型バイク(オンロード型、オフロード型、スクーター型)の自動二輪車も存在するが、一般に白バイと言われるのは、上述した、主として交通取り締まり業務に従事する、赤色警光灯付き白色二輪車のみである。

多くの道府県警察本部では白バイは交通機動隊での運用が主で、警察署レベルでの運用は少ないが、人口の多い府県では警察署交通課に配備される場合もある。

マラソン駅伝の先導は基本的に交通機動隊所属の白バイが行うが、大会規模によっては高速隊所属の白バイも先導に加わる事がある。なお、健常者のマラソンの巡航速度は時速20km程度で比較的安定しているが、車いすマラソンにおいては巡航速度は時速約30km程度、下り坂で時速50km程度に達する[1]などスピードの幅が大きいため、選手と接触しないように細かいアクセルワークが必要とされる[2]

白バイ乗務員の勤務地については白バイ隊員を参照。

歴代白バイ

1918年大正7年)1月1日に警視庁が初めてオートバイを取締りに使用した[3]。ただし、当時車体は赤色塗装で「赤バイ」と呼ばれた[3]

「白バイ」として初採用されたのは1936年昭和11年)8月1日で[3]、日本国外の警察で利用されている自動二輪車に倣って白色に変更された[4]

排気量750ccの車体(いわゆるナナハン)が採用されることが多かったが、現在はさらに大排気量車が採用される。高速道路交通警察隊皇宮警察本部の白バイには、ゴールドウイングをベースとした特別仕様車も存在し、主に要人警護や各種イベント・パレードなどで運用されるほか、サイドカーも存在する。

主な白バイベース車この書体は現役車種

日本国外の白バイ

日本国外でも日本製の白バイが多く活躍していて、英語では"Police Motorcycle"と呼ばれている。

アメリカ合衆国の警察ではアメリカンタイプであるカワサキ製のKZ1000Pが1974年の初期型C型から2002年の最終型(2005年に生産終了)まで30年間にわたって生産され、現在でもハイウェイパトロールを始め、各公共機関のポリス、シェリフなどで使われている。『白バイ野郎ジョン&パンチ』に登場したカリフォルニア・ハイウェイパトロール(CHP)の白バイはカワサキZ1000Pであった。しかしオレゴン州警察で、また1997年にCHPでもヨーロピアンタイプであるBMWモトラッドのR1100RT-Pが採用されて以来はBMW・RTが主流となり(「P」は市販されない警察仕様を表すコード)、現在はこれに続いてR1150RT-PやR1200RT-Pが採用されている。一部ではホンダのST1100あるいはST1300が採用され、テキサス州などではGL1800が採用されている。過去にはモトグッチやスズキGS1000、ホンダGL1000、CB750Kなども採用されていた。

ハーレーダビッドソン・ツーリング(以下ハーレー)ではFL系(FLHTPエレクトラグライドやFLHPロードキング、過去にはFXRP)が継続して採用されている。他にもこれまでFXDP、2008年からはXL883が警察車両としてハーレー本社により販売されている。最近ではFL系にも新たにABSが装備されて、現在多くの州警察がハーレーを採用している。

ほかに、ホンダST1200ポリスやカワサキ1400GTR(Concours 14)が緊急車両改造制作会社などによって白バイ仕様とされ、地方の警察署やハイウェイパトロールに配備されている。テンプレート:要出典範囲、カワサキGTR1400(Concours 14)がカワサキGTR1400エンフォーサーとしてカリフォルニア緊急車両改造制作会社により白バイ仕様となり販売された。2010年にはカワサキUSAアイダホ州のオートバイ販売会社BEAUDY Motorsportsが共同でConcours 14 Policeを製品化し、カワサキUSAからは官公庁や法人販売マネージャーが担当している。同年には、カリフォルニア・ハイウェイ・パトロールがConcours 14 Policeを大量調達するとの報道があった[10]

欧州においてはBMWのRT系が広く普及している。以前はモトグッチ、トライアンフなども見られたが、BMWのR100RT-P以来、KシリーズやR1100RT-P、R1150RT-Pと、BMWが採用され続け、現在では最新型のR1200RT-Pが主流となっている。ホンダのST1100やST1300の白バイ仕様車が米国導入以前から販売されており、BMWについで多く見られる。このほかには、一部の緊急車両改造会社がヤマハFJR1300などを地方の警察署のために改造したものが配備されている。また、まれにホンダ・CBR1100XXスーパーブラックバードが緊急車両として改造され配備されていることもある。

韓国、台湾、香港、アフリカ、中近東、東南アジアならびに南米では、一部でBMWが採用されている地域もあるが、日本製の白バイが主流である。ホンダCBX650、750、ヤマハXJ600、FZ750P、スズキGSX750、GS500Eなどが警察車両として輸出されている。あるいは日本国外で白バイに改造された日本製バイクも使用されている。たとえば米国の緊急車両改造会社が1000台のカワサキ2005年型GT1200(コンコース)を白バイ仕様に改造してエジプトに輸出していて、同様な例はマレーシアでも見られる。香港やマレーシアではホンダのVFR800Pが採用されている。中国、台湾などでは現地生産の小排気量車も警察用車両として使用されている。

日本と違い、日本国外では青の警光灯が(パトロールカーにも)採用されているが、これは赤よりも青の方が注意を引くとされているためである。

各州の州法によって異なるが、カリフォルニア州の場合は赤灯が緊急指定自動車で青灯が警察車両という定義であり、消防車や救急車などは赤灯だけで、赤灯+青灯で警察緊急車両(パトカー、白バイ)となる(青灯だけでは緊急指定車両にはならない)。同様に多くの州が青灯=警察車両のみ(消防車や救急車の青灯は認められない)という法律を採用しているが、パトカーや白バイに赤灯と青灯の両方を義務付けている州と青灯のみで緊急車両として認められる州が混在している。 後方ナンバープレート脇の直径数センチの常時点灯の青灯は白バイだけに許可されており、警察車両以外のオートバイがナンバープレート脇に青灯を付ける事は違法。

脚注

  1. http://www.kurumaisu-marathon.com/contents/marathon/marathon.html
  2. http://www.oita-press.co.jp/featureNews/128650072089/2010_128883561444.html
  3. 3.0 3.1 3.2 毎日新聞社編『話のネタ』PHP文庫 p.104 1998年
  4. テンプレート:Cite web
  5. CB550Fベース
  6. CB750FBベース
  7. 当初はスポークホイール仕様であったが、1979年以降はキャストホイールのGS750Eがベースとなる
  8. 後方にロータリービーコン(パトライト)をポールで装着するなど安全性を向上させた改良を実施
  9. 女性白バイ隊員誕生をきっかけに採用
  10. CHP Adopts Kawasaki's Concours 14P Motorcycle

参考文献

関連項目

テンプレート:Sister

外部リンク

テンプレート:オートバイの形態