熱帯夜
熱帯夜(ねったいや)は、日本の気象庁の用語で、「夜間(夕方から翌朝まで)の最低気温が摂氏25度以上のこと[1][2]」をいう。
概要
気象庁は熱帯夜における「夜間(夕方から翌朝まで)」が時刻何時から何時までを指すのかについて定義していない。そのため、気温推移による「熱帯夜」そのものの公式な統計はない(気温#気温の測定と統計を参照)。「1日(0時1分から24時まで)の最低気温が摂氏25度以上の日」の統計は公表されているので、新聞・放送等では便宜的にそのデータが報道の根拠として用いられている。なお、この「1日の最低気温が摂氏25度以上の日」を指す、気象庁による特別な用語はない[1][2]。
俳句においては夏の季語。近代気象学を前提とする語であるため、伝統的俳諧や明治など近代初年の俳句においては作例をもたない。
超熱帯夜
「最低気温が摂氏30度以上の夜」を指す用語は公式には定義されていないが、倉嶋は「超熱帯夜(ちょうねったいや)」という表現を紹介しているテンプレート:要出典。
原理
夏になると日照時間が増え、熱が地面や建物に伝導して蓄積される。コンクリートやアスファルトのような熱容量の大きな物質から熱放射(輻射熱)が起こり、夜になっても続くために、夜間でも気温が下がらなくなる。ヒートアイランド現象の要因とされる。
観測
日最低気温摂氏25度以上日数の推移
下記の表は、日最低気温(日界24時)が25℃以上となった日数であり、増加・長期化している傾向にある。
東京都 千代田区 |
大阪府 大阪市 |
沖縄県 石垣市 | |
---|---|---|---|
1931年 - 1935年 | 7.6日 | 11.0日 | 80.6日 |
1936年 - 1940年 | 6.4日 | 8.6日 | 89.8日 |
1941年 - 1945年 | 9.8日 | 12.0日 | 92.2日 |
1946年 - 1950年 | 6.4日 | 7.4日 | 84.4日 |
1951年 - 1955年 | 12.0日 | 15.0日 | 111.2日 |
1956年 - 1960年 | 12.8日 | 19.8日 | 111.8日 |
1961年 - 1965年 | 14.0日 | 29.2日 | 110.0日 |
1966年 - 1970年 | 15.8日 | 32.5日 | 100.2日 |
1971年 - 1975年 | 14.8日 | 23.8日 | 103.8日 |
1976年 - 1980年 | 17.2日 | 27.4日 | 110.4日 |
1981年 - 1985年 | 24.2日 | 30.6日 | 116.2日 |
1986年 - 1990年 | 23.4日 | 30.4日 | 116.2日 |
1991年 - 1995年 | 28.8日 | 37.6日 | 119.0日 |
1996年 - 2000年 | 30.4日 | 39.0日 | 123.2日 |
2001年 - 2005年 | 29.4日 | 44.6日 | 120.4日 |
2006年 - 2010年 | 30.4日 | 42.4日 | 128.4日 |
例として、東京で日最低気温が25℃以上となった日数は、1930年代から1940年代にかけてはほとんどが年間10日以内しかなく、1948年は1日しかなかった(例外的に、1942年は24日あった)。1990年代半ば以降は年間30~49日に達することも珍しくなくなってきている[3]。特に、2010年は観測史上最も多い56日、翌年と翌々年も同2位タイとなる49日を記録した。また本州では、以前は7月中旬から8月中旬頃までの観測が多かったが、近年では6月下旬から9月中旬まで記録することもあり、長期化傾向にある。例えば、2011年6月には東京で、日最低気温25℃以上を4回記録している。
1941年-1970年 | 1971年-2000年 | 1981年-2010年 (平年値) | |
---|---|---|---|
北海道札幌市 | 0.0日 | 0.1日 | 0.1日 |
宮城県仙台市 | 0.1日 | 0.8日 | 1.4日 |
東京都千代田区 | 11.8日 | 23.1日 | 27.8日 |
神奈川県横浜市 | 5.6日 | 14.4日 | 18.5日 |
新潟県新潟市 | 4.4日 | 8.4日 | 11.1日 |
静岡県静岡市 | 4.4日 | 8.4日 | 11.6日 |
愛知県名古屋市 | 3.3日 | 12.8日 | 19.4日 |
京都府京都市 | 6.2日 | 15.9日 | 20.7日 |
大阪府大阪市 | 18.9日 | 31.5日 | 37.4日 |
兵庫県神戸市 | 18.7日 | 22.7日 | 43.1日 |
岡山県岡山市 | 5.3日 | 17.7日 | 28.8日 |
広島県広島市 | 7.4日 | 16.8日 | 28.2日 |
香川県高松市 | 6.4日 | 12.1日 | 22.5日 |
福岡県福岡市 | 14.2日 | 26.8日 | 33.2日 |
熊本県熊本市 | 9.1日 | 16.0日 | 24.0日 |
鹿児島県鹿児島市 | 15.7日 | 35.8日 | 51.6日 |
沖縄県那覇市 | 74.1日 | 89.8日 | 99.0日 |
観測所 | 変化率(日/10年) | 都市率[5] | |
---|---|---|---|
1 | 福岡県 福岡 | +5.0日 | 62% |
2 | 沖縄県 石垣島 | +4.9日 | 5% |
3 | 山口県 下関 | +4.8日 | 32% |
4 | 東京都 東京 | +3.7日 | 92% |
和歌山県 和歌山 | +3.7日 | 35% | |
熊本県 熊本 | +3.7日 | 51% | |
7 | 愛知県 名古屋 | +3.6日 | 86% |
三重県 津 | +3.6日 | 24% | |
京都府 京都 | +3.6日 | 64% | |
10 | 徳島県 徳島 | +3.5日 | 27% |
- | 大阪府 大阪[6] | +6.3日 | - |
日最低気温摂氏30度以上日数の推移
気象台や測候所では1分間に観測された平均値を1分ごとに記録している[2]が、アメダスでは10分ごとに観測(2002年以前の記録は1時間ごとの観測値が記録として採用)しているので、アメダスの方がより高い最低気温が観測される傾向にある(2008年3月25日より10秒ごとの観測を順次導入しており、気象台や測候所と同じく1分ごとに記録する予定である[7])。
前日に異常な高温を記録したり、台風などの通過で発生するフェーン現象によって、まれに夜間(0時~9時)の最低気温が30℃以上になることはあるが、一日の最低気温が30℃以上になったことは日本国内の気象台・測候所では2例しかない。
- 日最低気温(日界24時)が30℃以上
- 参考(アメダス観測)
- 最低気温(0時~9時)が30℃以上(参考)
日最低気温は当日24時までを対象とするため、昼間~日没後に最低気温が記録される場合もあり、夜半~未明を最低気温と見る人の感覚とは乖離がある。例えば、2004年7月21日の東京は、前日に観測史上最高の気温(39.5℃)を記録した影響で、明け方でも気温は30℃を下回らず、当日のメディアでは超熱帯夜だと話題になった。しかし、23時頃になって30℃を下回り、日最低気温は過去最高(当時)の29.6℃であった[14]。
この他、最低気温(0時~9時)が30℃以上だった例は、石川県金沢市(1990年8月23日)31.5℃(日最低気温は26.8℃)[15]などがある。(日本最高記録であるかは不明)
出典・脚注
関連項目
テンプレート:気象要素テンプレート:Asbox- ↑ 1.0 1.1 予報用語(熱帯夜) 気象庁
- ↑ 2.0 2.1 2.2 気温について 気象庁 気象等の知識
- ↑ 東京 毎年の値(気温) 気象庁
- ↑ 『ヒートアイランド監視報告(平成19 年冬・夏-関東・近畿地方)』 気象庁
- ↑ 観測地点を中心とした半径7kmの円内に、建物用地・幹線交通用地などが含まれる割合。
- ↑ 統計期間: 1968-2007年 『ヒートアイランド監視報告 近畿版(平成20年)』 大阪管区気象台
- ↑ アメダスデータ等統合処理システムの運用開始について 気象庁 報道発表資料(2008年3月7日)
- ↑ 東京 2013年8月11日(1時間ごとの値) 気象庁
- ↑ 富山 2000年7月31日(1時間ごとの値) 気象庁
- ↑ 糸魚川 1990年8月22日(1時間ごとの値) 気象庁
- ↑ 小松 2000年7月31日(1時間ごとの値) 気象庁
- ↑ 上市 1997年8月9日(1時間ごとの値) 気象庁
- ↑ 越廼 2000年7月31日(1時間ごとの値) 気象庁
- ↑ 東京 2004年7月21日(1時間ごとの値) 気象庁
- ↑ 金沢 1990年8月23日(1時間ごとの値) 気象庁