ビンロウ
ビンロウ(檳榔、学名:Areca catechu)は、太平洋・アジアおよび東アフリカの一部で見られるヤシ科の植物。
中国語では檳榔(ビンラン、テンプレート:注音、テンプレート:ピン音)と書くテンプレート:要出典。種子は嗜好品として、噛みタバコに似た使われ方をされ、ビンロウジ(檳榔子、areca nut / betel nut)という場合は通常この種子を指す。ペナン島の名の由来となった植物である。
生態
単幹で高さ10~17メートル、まれに30メートルに達する。雌雄同株であり、1つの花序に雌雄の花をそれぞれつける。果実は長楕円形、長さ5cm前後でオレンジ色から深紅色に熟す。
用途
檳榔子を噛むことはアジアの広い地域で行われている。檳榔子を細く切ったもの、あるいはすり潰したものを、キンマ(コショウ科の植物)の葉にくるみ、少量の石灰と一緒に噛む。場合によってはタバコを混ぜることもある。しばらく噛んでいると、アルカロイドを含む種子の成分と石灰、唾液の混ざった鮮やかな赤や黄色い汁が口中に溜まる。この赤い唾液は飲み込むと胃を痛める原因になるので吐き出すのが一般的である。ビンロウの習慣がある地域では、道路上に赤い吐き出した跡がみられる。しばらくすると軽い興奮・酩酊感が得られるが、煙草と同じように慣れてしまうと感覚は鈍る。そして最後にガムのように噛み残った繊維質は吐き出す。
タイのバンコクから30 - 80km北方では、農民は水田耕土中の酸性度を吐き出した実の色の変化で測定する。口の中で赤色をしていたものが、土の酸性が強いと黒色に変化し、酸性が弱いと赤い色のままで変化しない性質を利用したものである。黒色だとまだ耕作するのは早いということであり、赤のままであったら播種してよいという判断をする。
また、檳榔子の粉は単独では歯磨剤や虫下しに使用される。漢方方剤では、女神散(にょしんさん)、九味檳榔湯(くみびんろうとう)などに配合される。日本では薬局方にも記載されている[1]。日本への生果実の輸入はミカンコミバエ種群(ミバエ)の発生地域からは不可。一方,韓国などミカンコミバエ種群が発生していない地域からなら可能[2].また,ミカンコミバエが死滅していると考えられる製法(瓶詰,真空パック,十分に乾燥させたもの)を用いていれば,ミカンコミバエ種群の発生地域からも輸入可能である[3].「檳榔は麻薬であるから日本に持ち込むことができない」という認識は誤りである[4].
マレーシアやインドネシアに見られる檳榔酒は、檳榔の実を搾った汁液を発酵させた酒で、『古今図書集成』には「南蛮傳馬留人、取檳榔瀋為酒」(南蛮のマレー人は、酒を造るために檳榔を採った)と書かれている。
仮名垣魯文の西洋道中膝栗毛五編上では、セイロン島で北八が現地人と相撲を取る際に、同行の通訳がビンロウの葉を軍配代わりにして行司を務める。
成分
檳榔子にはアレコリン(arecoline)というアルカロイドが含まれており、タバコのニコチンと同様の作用(興奮、刺激、食欲の抑制など)を引き起こすとされる。石灰はこのアルカロイドをよく抽出するために加える。
檳榔子には依存性があり、また国際がん研究機関(IARC)はヒトに対して発癌性(主に喉頭ガンの危険性)を示すことを認めている。
習慣
檳榔子は古来から高級嗜好品として愛用されてきた。檳榔子とキンマは夫婦の象徴とされ、現在でもインドやベトナム、ミャンマーなどでは、結婚式に際して客に贈る風習がある。
床に檳榔子を噛んだ唾液を吐き捨てると、血液が付着したような赤い跡ができ、見るものを不快にさせる。そのためか低俗な人々の嗜好品として、近年では愛好者が減少している傾向にある。
台湾では、露出度の高い服装をした若い女性(檳榔西施)が檳榔子を販売している光景が見られる。風紀上の問題から2002年に規制法が制定され、台北市内から規制が始まり、桃園県もこれに追従した。台中以南では依然として道端に立つ檳榔子売りの女性が見られるが、過激な服装は影を潜めた。
台湾では現在、道路に檳榔子を噛んだ唾液を吐き捨てると罰金刑が課せられるため、中心街では路上に吐き出す習慣は無くなったが、少し離れると吐き捨てた跡や、噛み尽くしたカスが見られる。購入時にエチケット袋(紙コップとティッシュペーパーの場合が多い)が共に渡される。