斎藤利三

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『堅田浦の月』(月岡芳年『月百姿』)山崎の戦いに敗れ堅田に逃れた斎藤利三

斎藤 利三(さいとう としみつ)は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将。『明智軍記』では「としかず」とのルビのある箇所がある。

略歴

血筋的には、斎藤道三とは別の系譜の本来の美濃斎藤氏の一族。父は斎藤利賢、母は蜷川親順(室町幕府の重臣蜷川氏)の娘という説がある。親順の孫となる蜷川親長の妻は、利三の姉妹であり、系譜上の錯誤の可能性がある。徳川家の正史である徳川実紀には、「斎藤利三は明智光秀の妹の子」と書かれているが、後世に編纂された可能性もある。斎藤利三と明智光秀の年齢差を考えると、妹ではなく姉だとする説もある。史料として光秀の妹と記されているのは、正室(妻木氏)の姉妹である。その母は、石谷光政に再嫁し、娘(長宗我部元親正室)をもうけた。

前室は斎藤道三の娘であったというが、史料的に明確なものではない。後室は稲葉一鉄の娘で、斎藤利宗、斎藤三存、それに末娘の福(春日局)らを産んだ。福は稲葉重通の養女となり、江戸幕府の第3代将軍徳川家光の乳母となり、権勢を誇った。

生涯

天文3年(1534年)、斎藤利賢の次男として生まれる。

はじめ松山新介に仕え(『寛政重修諸家譜』による)、次いで斎藤義龍に仕え、後に、西美濃三人衆の一人稲葉一鉄が織田氏へ寝返ると、それに従い、稲葉氏の家臣となり、美濃曽根城主となった。しかし後に稲葉一鉄と喧嘩別れし、明智光秀との縁戚関係から光秀に仕えるようになったといわれている。光秀には重用され、明智秀満と並ぶ明智氏の筆頭家老として用いられた。光秀の丹波平定後、1万石を与えられて丹波黒井城主となり、氷上郡統治にあたる[1]

織田信長が明智光秀に討たれた1582年の(本能寺の変)の直前、四国の戦国武将・長宗我部元親が光秀の家臣で親戚関係にあった斎藤利三とやりとりした書状が見つかった。林原美術館(岡山市)と岡山県立博物館(同市)が発表した。

書状で元親は四国侵攻を計画していた信長の命令に従う意向を示しており、同博物館の内池英樹主幹は「本能寺の変直前のやりとりが史料で初めて明らかになった。本能寺の変に影響を与えた可能性がある」と話している。

天正10年(1582年)、光秀が織田信長に対する謀反本能寺の変)を計画すると、藤田行政溝尾茂朝・明智秀満などの一部の重臣に計画を打ち明けているが、利三もそのメンバーの中に含められている(『信長公記』、『川角太閤記』)。利三はその無謀さから秀満と共に光秀に対し反対したと言われている(『備前老人物語』)。しかし主君の命令には逆らえず、また光秀の恩義に報いるため、結局は本能寺の変に首謀者の一人として参加せざるを得なくなったとされる[1]

しかし、これには異説も存在し、当時信長が土佐の戦国大名で利三の妹婿である長宗我部元親攻撃のために織田信孝丹羽長秀を四国に出撃させようとしていたことから、利三が変の主導的な役割を担ったとの説も存在している。この説は現代、八切止夫井沢元彦が支持している。

本能寺にて信長を討った後、中国から引き返してきた羽柴秀吉との山崎の戦いでは先鋒として活躍するが、敗れて逃走した[1]。その後、秀吉の執拗な捜索により近江堅田で捕縛されたが、梅雨時だったため暑さにあたって病となり、衰弱していたという[1]。秀吉の命令で六条河原斬首となった[1]。享年49。にされたともいわれる[1]

首もしくは胴体は光秀とともに本能寺に晒されたと言われている[1]。その後、利三の首は彼と親交の深かった絵師の海北友松により、京都市左京区浄土寺真如町の真正極楽寺へ葬られた。

人物・逸話

光秀は稲葉良通から利三と那波和泉守の2人の家臣を引き抜いて高禄で召し抱えたが、良通は抗議して信長に訴えた[2]。信長は訴えを聞き入れて光秀に2人を返すように命じたが、光秀は拒否して「30万石の大禄を下されるとも、我は栄耀とは存じませぬ。良き士を求めるのも、ひとえに信長公への奉公のためでございます」と述べたと伝わる(『翁草』)。信長は光秀の弁明を認めて利三が明智家の重臣になる事を承認したという(当初、信長は光秀の弁明に激昂して、折檻におよんだ)。

津田宗及らと度々茶の湯を嗜むなど、茶人としての教養を兼ね備えていたとされる。

脚注

注釈

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出典

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参考文献

書籍
史料
  • 『川角太閤記』
  • 『寛政重修諸家譜』
  • 『備前老人物語』
  • 『明智軍記』
  • 『翁草』

関連作品

映画
テレビドラマ
アニメ

関連項目

  • 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 楠戸義昭『戦国武将名言録』P233
  • 楠戸義昭『戦国武将名言録』P232