文學界新人賞
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文學界新人賞(ぶんがくかいしんじんしょう)は、 文藝春秋が発行する文藝雑誌『文學界』の公募新人賞である。年に2度募集され、前期の受賞作は『文學界』6月号、後期の受賞作は同12月号に掲載される。受賞者には賞金50万円と記念品が与えられる。規定枚数が400字詰原稿用紙で100枚程度と、他の純文学系文芸誌が主催する新人文学賞と比べ短めであることが特徴的である。毎年6月末日。12月末日が締切日。
目次
受賞者一覧
第1回から第10回
- 第1回(1955年) - 石原慎太郎「太陽の季節」(芥川賞受賞)
- 第2回(1956年) - 堀内伸「彩色」
- 第3回(1957年) - 菊村到「不法所持」
- 第4回(1957年) - 城山三郎「輸出」
- 第5回(1957年) - 沼田茂「ある遺書」
- 第6回(1958年) - 仁田義男「墓場の野師」
- 第7回(1958年) - 深田祐介「あざやかなひとびと」
- 第8回 (1959年) - 石川信乃「基隆港」
- 第9回 (1959年) - 岡松和夫「壁」
- 第10回(1960年) - 該当作なし
第11回から第20回
- 第11回(1960年) - 福田道夫「バックミラーの空漠」
- 第12回(1961年) - 該当作なし
- 第13回(1961年) - 該当作なし
- 第14回(1962年) - 該当作なし
- 第15回(1962年) - 阿部昭「子供部屋」
- 第16回(1963年) - 該当作なし
- 第17回(1963年) - 該当作なし
- 第18回(1964年) - 長谷川敬「青の儀式」、五代夏夫「那覇の木馬」
- 第19回(1964年) - 該当作なし
- 第20回(1965年) - 高橋光子「蝶の季節」
第21回から第30回
- 第21回(1965年) - 該当作なし
- 第22回(1966年) - 野島勝彦「胎」
- 第23回(1966年) - 丸山健二「夏の流れ」(芥川賞受賞)、宮原昭夫「石のニンフ達」
- 第24回(1967年) - 桑原幹夫「雨舌」
- 第25回(1967年) - 該当作なし
- 第26回(1968年) - 犬飼和雄「緋魚」、斎藤昌三「拘禁」
- 第27回(1968年) - 加藤富夫「神の女」(「神の女 加藤富夫作品集1」に所収)
- 第28回(1969年) - 内海隆一郎「雪洞にて」(「蟹の町」に所収)
- 第29回(1969年) - 森内俊雄「幼き者は驢馬に乗って」
- 第30回(1970年) - 前田隆之介「使徒」
第31回から第40回
- 第31回(1970年) - 樋口至宏「僕たちの祭り」、田中泰高「鯉の病院」
- 第32回(1971年) - 河野修一郎「探照燈」(「植樹祭」に所収)、長谷川素行「鎮魂歌」
- 第33回(1971年) - 東峰夫「オキナワの少年」(芥川賞受賞)、大久保操「昨夜は鮮か」
- 第34回(1972年) - 該当作なし
- 第35回(1972年) - 広松彰「塗りこめられた時間」、黎まやこ「五月に」
- 第36回(1973年) - 青木八束「蛇いちごの周囲」
- 第37回(1973年) - 高橋揆一郎「ぽぷらと軍神」、吉田健至「ネクタイの世界」
- 第38回(1974年) - 該当作なし
- 第39回(1974年) - 春山希義「雪のない冬」
- 第40回(1975年) - 該当作なし
第41回から第50回
- 第41回(1975年) - 三好京三「子育てごっこ」(直木賞受賞)
- 第42回(1976年) - 該当作なし
- 第43回(1976年) - 該当作なし
- 第44回(1977年) - 該当作なし
- 第45回(1977年) - 井川正史「長い午後」、三輪滋「ステンドグラスの中の風景」
- 第46回(1978年) - 岩猿孝広「信号機の向こうへ」、石原悟「流れない川」
- 第47回(1978年) - 松浦理英子「葬儀の日」
- 第48回(1979年) - 古荘正朗「年頃」(「真夏のドライブ 古荘正朗作品集」に所収)
- 第49回(1979年) - 該当作なし
- 第50回(1980年) - 村上節「狸」
第51回から第60回
- 第51回(1980年) - 木崎さと子「裸足」
- 第52回(1981年) - 峰原緑子「風のけはい」
- 第53回(1981年) - 南木佳士「破水」(「エチオピアからの手紙」に所収)
- 第54回(1982年) - 田中健三「あなしの吹く頃」
- 佳作 - 佐藤龍一郎「A・B・C…」
- 第55回(1982年) - 田野武裕「浮上」、山川一作「雷電石縁起」
- 第56回(1983年) - 高橋一起「犬のように死にましょう」
- 第57回(1983年) - 赤羽建美「住宅」
- 第58回(1984年) - 海辺鷹彦「端黒豹紋」、阿南泰「錨のない部屋」
- 第59回(1984年) - 悠喜あづさ「水位」、佑木美紀「月姫降臨」
- 第60回(1985年) - 武部悦子「明希子」、米谷ふみ子「遠来の客」(「過越しの祭」に所収)
第61回から第70回
- 第61回(1985年) - 早野貢司「朝鮮人街道」、中島俊輔「夏の賑わい」
- 第62回(1986年) - 藤本恵子「比叡を仰ぐ」
- 第63回(1986年) - 片山恭一「気配」、松本富生「野薔薇の道」
- 第64回(1987年) - 鷺沢萠「川べりの道」(「帰れぬ人びと」に所収)、尾崎昌躬「東明の浜」
- 第65回(1987年) - 谷口哲秋「遠方より」
- 第66回(1988年) - 坂谷照美「四日間」、小浜清志「風の河」
- 第67回(1988年) - 梶井俊介「僕であるための旅」、浜口隆義「夏の果て」
- 第68回(1989年) - 山里禎子「ソウル・トリップ」
- 第69回(1989年) - 中村隆資「流離譚」(「地蔵記」に所収)、瀧澤美恵子「ネコババのいる町で」(芥川賞受賞)
- 第70回(1990年) - 河林満「渇水」
第71回から第80回
- 第71回(1990年) - 竹野昌代「狂いバチ、迷いバチ」
- 第72回(1991年) - みどりゆうこ「海を渡る植物群」
- 第73回(1991年) - 市村薫「名前のない表札」
- 第74回(1992年) - 安斎あざみ「樹木内侵入臨床士」、大島真寿美「春の手品師」(「ふじこさん」に所収)
- 第75回(1992年) - 伏本和代「ちょっとムカつくけれど、居心地のいい場所」(「ラクになる」に所収)
- 第76回(1993年) - 高林杳子「無人車」
- 第77回(1993年) - 篠原一「壊音 KAI-ON」(最年少受賞)、中村邦生「冗談関係のメモリアル」
- 第78回(1994年) - 松尾光治「フアースト・ブルース」
- 第79回(1994年) - 木崎巴「マイナス因子」
- 第80回(1995年) - 青来有一「ジェロニモの十字架」(「聖水」に所収)
第81回から第90回
- 第81回(1995年) - 塩崎豪士「目印はコンビニエンス」、清野栄一「デッドエンド・スカイ」
- 奥泉光、山田詠美奨励賞 - 山田あかね「終わりのいろいろなかたち」
- 第82回(1996年) - 該当作なし
- 島田雅彦・辻原登奨励賞 - 新堂令子 「サイレントパニック」
- 第83回(1996年) - 大村麻梨子「ギルド」、最上陽介「物語が殺されたあとで」
- 第84回(1997年) - 吉田修一「最後の息子」
- 第85回(1997年) - 橘川有弥「くろい、こうえんの」
- 島田雅彦・山田詠美奨励賞-砂田ガロン「天麩羅車掌」
- 第86回(1998年) - 若合春侑「脳病院へまゐります。」
- 第87回(1999年) - 該当作なし
- 奥泉光・島田雅彦奨励賞 - 三輪克己「働かざるもの」
- 第88回(1999年) - 松崎美保「DAY LABOUR」、羽根田康美「LA心中」
- 第89回(1999年) - 該当作なし
- 第90回(2000年) - 該当作なし
- 辻原登奨励賞 - 福迫光英 「ガリバーの死体袋」
第91回から第100回
- 第91回(2000年) - 都築隆広「看板屋の恋」
- 島田雅彦奨励賞 - 飯塚朝美「ミゼリコート」
- 第92回(2001年) - 長嶋有「サイドカーに犬」(「猛スピードで母は」に所収)、吉村萬壱「クチュクチュバーン」
- 第93回(2001年) - 該当作なし
- 佳作 - 東野一美「白い夏」
- 第94回(2002年) - 北岡耕二「わたしの好きなハンバーガー」、蒔岡雪子「飴玉が三つ」
- 第95回(2002年) - 該当作なし
- 佳作 - 河西美穂「ミネさん」
- 第96回(2003年) - 絲山秋子「イッツ・オンリー・トーク」
- 第97回(2003年) - 由真直人「ハンゴンタン」
- 第98回(2004年) - モブ・ノリオ「介護入門」(芥川賞受賞)
- 佳作 - 宮下奈都「静かな雨」
- 第99回(2004年) - 赤染晶子「初子さん」(「うつつ・うつら」に所収)
- 島田雅彦奨励賞 - 寺坂小迪「ヒヤシンス」
- 第100回(2005年) - 該当作なし
- 辻原登、松浦寿輝奨励賞 - 佐久吉忠夫「末黒野」
第101回から第110回
- 第101回(2005年) - 中山智幸「さりぎわの歩き方」
- 辻原登奨励 参考作 - 桑井朋子「退行する日々」
- 第102回(2006年) - 木村紅美「風化する女」
- 島田雅彦奨励賞 - 澁谷ヨシユキ「バードメン」
- 第103回(2006年) - 田山朔美「裏庭の穴」(「霊降ろし」に所収)、藤野可織「いやしい鳥」
- 第104回(2007年) - 円城塔「オブ・ザ・ベースボール」、谷崎由依「舞い落ちる村」
- 第105回(2007年) - 楊逸「ワンちゃん」
- 第106回(2008年) - 北野道夫「逃げ道」
- 第107回(2008年) - 上村渉「射手座」、松波太郎「廃車」(「よもぎ学園高等学校蹴球部」に所収)
- 第108回(2009年) - シリン・ネザマフィ「白い紙」(「白い紙/サラム」に所収)
- 第109回(2009年) - 奥田真理子「ディヴィジョン」
- 花村萬月・松浦理英子特別賞 - 合原壮一朗「狭い庭」
- 第110回(2010年) - 鶴川建「乾燥腕」、穂田川洋山「自由高さH」
第111回から
- 第111回(2010年) - 吉井磨弥「ゴルディータは食べて、寝て、働くだけ」
- 第112回(2011年) - 水原涼「甘露」、山内令南「癌だましい」
- 第113回(2011年) - 鈴木善徳「髪魚」、馳平啓樹「きんのじ」
- 第114回(2012年) - 小祝百々子「こどもの指につつかれる」
- 第115回(2012年) - 守山忍「隙間」、二瓶哲也「最後のうるう年」
- 第116回(2013年) - 該当作なし
- 第117回(2013年) - 前田隆壱「アフリカ鯰」、守島邦明「息子の逸楽」
- 吉田修一奨励賞 - 野上健「走る夜」
選考委員
(第10回は遠藤の代わりに吉行淳之介、第11回は曽野の代わりに由起しげ子)
- 第13回から第16回-井上靖、平野謙、吉行淳之介、武田泰淳、江藤淳
(第14回は武田の代わりに曽野、第15回は江藤の代わりに遠藤)
(第18回は大岡の代わりに堀田善衛)
- 第22回から第24回-野間宏、安岡章太郎、佐伯彰一、平野謙、吉行淳之介
- 第25回から第30回-上記のうち佐伯が開高健に交代
- 第31回から第33回-野間宏、井上光晴、中村真一郎、武田泰淳、丸谷才一
- 第34回と第35回-上記のうち武田が佐伯彰一に交代
- 第36回-丸谷才一、開高健、辻邦生、阿部昭
- 第37回から第39回-上記のメンバーに黒井千次が加わる
- 第40回-丸谷才一、開高健、阿部昭、黒井千次
- 第41回から第44回-石原慎太郎、開高健、坂上弘、丸山健二、森内俊雄
- 第45回から第57回-清岡卓行、柴田翔、田久保英夫、古井由吉、阿部昭
- 第58回から第59回-中上健次、田久保英夫、清岡卓行、畑山博、宮本輝
- 第60回より、上記のうち清岡が黒井に代わる
- 第63回から第66回-中上、日野啓三、黒井、畑山、宮本
- 第67回から第69回-青野聰、津島佑子、中上健次、畑山、宮本
- 第70回から第72回-上記のうち中上が池内紀に代わる
- 第73回-青野、柴田、池内、畑山、山田詠美
- 第74回から第79回-木崎さと子、柴田、池内、畑山、山田
- 第80回から第97回 - 浅田彰、奥泉光、島田雅彦、辻原登、山田詠美
- 第98回から第99回 - 浅田彰、奥泉光、島田雅彦、辻原登
- 第100回から第105回 - 浅田彰、川上弘美、島田雅彦、辻原登、松浦寿輝
- 第106回から - 角田光代、花村萬月、松浦寿輝、松浦理英子、吉田修一
初期の文學界新人賞について
初期の文學界新人賞は、現在と違い年に数回募集と選考会を行って入選作を決定し、そのうち最も優れた作品を受賞作とするシステムを採っていた。第1回は1955年4月、7月、10月、1956年1月に入選作が発表されており、受賞作となった石原慎太郎「太陽の季節」は7月の入選作であった。ちなみに、1月の入選作は有吉佐和子の「地唄」である。
第1回においては、入選者には適当な原稿料が、受賞者には賞金5万円が与えられた。また、規定枚数は30枚以上100枚以内とされていた。