津島佑子
津島 佑子(つしま ゆうこ、1947年3月30日 - )は、東京都北多摩郡三鷹町(現・東京都三鷹市)生まれの日本の小説家。本名は津島里子(つしま さとこ)。
作品は英語・ドイツ語・イタリア語・フランス語・オランダ語・アラビア語・中国語に翻訳され、国際的に評価が高い。
読売文学賞、野間文芸賞、伊藤整文学賞、川端康成文学賞、朝日賞選考委員。
来歴・人物
小説家太宰治の次女。1歳のとき父を失い、母子家庭に、さらに12歳のとき3歳上の実兄が病没し母・姉と"女系家族"に育つ 。 白百合学園中学校・同高等学校を経て、1966年、白百合女子大学文学部英文科在学中、ガリ版同人誌『よせあつめ』を創刊。処女作『手の死』『夜の……』を発表。同年「文芸首都」会員となる。1967年、成人式を迎えるに際して山梨県の富士五湖を訪れ、父の文学碑を見る。同大学卒業後、1969年4月、明治大学大学院(英文学専攻)に入学テンプレート:要出典範囲
1970年11月、結婚により財団法人放送番組センターを退社。1971年、第一作品集『謝肉祭』を刊行。この時期は母子家庭のテーマを繰り返し描く。1972年5月、長女を出産。後年夫とは不和となり離婚。テンプレート:要出典範囲またこの男性との間に1976年8月、長男を出産するが、長男は1985年3月に呼吸発作のため死去。この体験は後に『夜の光に追われて』『真昼へ』などの作品の主題となる。
1991年10月、パリ大学国立東洋言語文化研究所に招聘され日本の近代文学を講義。
1998年、構想から5年をかけた大作『火の山―山猿記』を完成。家族、生と死、言葉の隔たりといったそれまでのテーマを集大成し谷崎潤一郎賞・野間文芸賞を受賞。この作品は後に2006年4月から放送のNHK連続テレビ小説『純情きらり』の原案となった。
実姉は、津島雄二代議士夫人の津島園子。作家・太田治子は異母妹にあたる。
太宰治について
太宰治については、「また、これは私の個人的な事情なのだが、太宰治の作品だけは、その人が私の父親であることから、かなり早くから読みはじめていた。(中略)芥川や谷崎の愛読者であった私は、太宰の作品をも芥川と同列のところに並べて読んでいた。すなわち、価値をすでに見いだされて、教科書にも載るような作家として読んでいたわけで、時代背景の生き生きした臨場感はほとんど味わうことはなかった。」(『透明空間が見える時』所収)と記している
主な受賞作品
- 1976年 - 『葎の母』 第16回田村俊子賞
- 1977年 - 『草の臥所』 第5回泉鏡花文学賞
- 1978年 - 『寵児』 第17回女流文学賞
- 1979年 - 『光の領分』 第1回野間文芸新人賞
- 1983年 - 「黙市」 第10回川端康成文学賞
- 1987年 - 『夜の光に追われて』 第38回読売文学賞
- 1988年 - 『真昼へ』 第17回平林たい子文学賞
- 1995年 - 『風よ、空駆ける風よ』 第6回伊藤整文学賞
- 1998年 - 『火の山―山猿記』 第34回谷崎潤一郎賞、第51回野間文芸賞
- 2001年 - 『笑いオオカミ』 第28回大佛次郎賞
- 2005年 - 『ナラ・レポート』 平成16年度芸術選奨文部科学大臣賞、第15回紫式部文学賞
- 2012年 - 『黄金の夢の歌』 第53回毎日芸術賞
親族
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著作
小説
- 謝肉祭(河出書房新社 1971.11)のち文庫
- 童子の影(河出書房新社 1973.3)のち集英社文庫
- 生き物の集まる家(新潮社 1973.4)
- 我が父たち(講談社 1975.4)のち文庫
- 葎の母(河出書房新社 1975.11)のち文庫
- 草の臥所(講談社 1977.7)のち文庫
- 歓びの島(中央公論社 1978.4)のち文庫
- 寵児(河出書房新社 1978.6)のち文庫、講談社文芸文庫
- 氷原(作品社 1979.7)
- 光の領分(講談社 1979.9)のち文庫、文芸文庫
- 最後の狩猟(作品社 1979.9)
- 燃える風(中央公論社 1980.4)のち文庫
- 山を走る女(講談社 1980.11)のち文庫、文芸文庫
- 水府(河出書房新社 1982.9)のち文庫
- 火の河のほとりで(講談社 1983.10)のち文芸文庫
- 黙市(新潮社 1984.1)のち文庫
- 逢魔物語(講談社 1984.6)のち文芸文庫
- 夜の光に追われて(講談社 1986.10)のち文芸文庫
- 真昼へ(新潮社 1988.4)のち文庫
- 夢の記録(文藝春秋 1988.12)
- 草叢 自選短篇集(学芸書林 1989.12)
- 溢れる春(新潮社 1990.8)
- 大いなる夢よ、光よ(講談社 1991.6)
- かがやく水の時代(新潮社 1994.5)
- 風よ、空駆ける風よ(文藝春秋 1995.2)
- 火の山―山猿記(講談社 1998.6)のち文庫
- 私(新潮社 1999.3)
- 笑いオオカミ(新潮社 2000.11)
- ナラ・レポート(文藝春秋 2004.9)のち文庫
- あまりに野蛮な(講談社、2008.11)
- 電気馬(新潮社 2009.3)
- 黄金の夢の歌(講談社 2010.12)のち文庫
- 葦舟、飛んだ(毎日新聞社 2011.1)
- ヤマネコ・ドーム(講談社 2013.5)
随筆
- 『透明空間が見える時』(青銅社 1977)
- 『夜のティー・パーティ』(人文書院 1979)
- 『夜と朝の手紙』(海竜社 1980)
- 『小説のなかの風景』(中央公論社 1982)
- 『私の時間』(人文書院 1982)
- 『幼き日々へ』(講談社 1986)
- 『本のなかの少女たち』(中央公論社 1989)のち文庫
- 『伊勢物語/土佐日記 古典の旅2』(講談社 1990)※文庫版は『「伊勢物語」「土佐日記」を旅しよう』
- 『アニの夢 私のイノチ』(講談社 1999)
- 『快楽の本棚 言葉から自由になるための読書案内』(中公新書 2003)
- 『女という経験』(平凡社 2006)
共著・共訳ほか
- 『何が性格を作るか 性格学講義』(宮城音弥との対談 朝日出版社レクチャーブックス 1979)
- 『キャリアと家族』(マーガレット・ドラブルとの対談 高野フミ共訳 岩波ブックレット 1990)
- 『愛の時代』(クリステン・ビヨンケア著 福井信子共訳 福武書店 1990)
- 『うつほ物語』(現代語訳)少年少女古典文学館(講談社 1992)
- 『日本の名随筆 別巻 77 嫉妬』(編纂)(作品社 1997)
- 『津島佑子・金井美恵子・村田喜代子』女性作家シリーズ(角川書店 1998)※『草の臥所』、『水府』、『黙市』、『夢の記録』を収録
- 『山のある家 井戸のある家 東京ソウル往復書簡』(申京淑共著 きむふな訳 集英社 2007)
- 『トーキナ・ト ふくろうのかみのいもうとのおはなし』(杉浦康平構成 福音館書店 2008)
翻訳
- Child of fortune(寵児)Geraldine Harcourt Kodansha International, 1983
- L'enfant de fortune(寵児、仏語) Rose-Marie Fayolle Des Femmes, c1985
- Kind van de wind(寵児、蘭語)Kathleen Rutten De Geus, c1985
- Territoire de la lumière(光の領分、仏語)Anne et Cécile Sakai, Des Femmes, c1986
- Au bord du fleuve de feu(火の河のほとりで、仏語)Rose-Marie Fayolle Des Femmes, c1987
- Les marchands silencieux(黙市、仏語)Rose-Marie Fayolle. Des femmes, c1988
- The shooting gallery and other stories (短編選集) Geraldine Harcourt. London : Women’s Press, 1988.
- Poursuivie par la lumière de la nuit(夜の光に追われて、仏語)Rose-Marie Fayolle, Des Femmes, c1990
- Domein van het licht(光の領分、蘭語)Noriko de Vroomen en Han Timmer Meulenhoff, c1990
- Woman running in the mountains(山を走る女)Geraldine Harcourt. New York : Pantheon Books, c1991.
- Lichtkreise(光の領分、独語)Heinrich Reinfried.Theseus, c1991,
- Il figlio della fortuna(寵児、伊語)Maria Terasa Orsi.Giunti, c1991
- La femme qui court dans la montagne (山を走る女、仏語)Liana Rosi.Albin Michel, c1995
- Ô vent, ô vent qui parcours le ciel (風よ、空駆ける風よ、仏語) Ryôji Nakamura et Renê de Ceccatty.Seuil, c1995
- Vous, rêves nombreux, toi, la lumière! (大いなる夢よ、光よ、仏語)Karine Chesneau - Philippe Picquier, c1997
- タイ語訳「光の領分」2000
- 微笑的狼(笑いオオカミ) 竺家荣 [訳] 中国文联出版社 2001