政治犯
政治犯(せいじはん)とは、ある国の政治体制の中で「反政府的」とされる態度・言動をとったり、「反政府的」とみなされる組織をつくるなど革命運動・抵抗運動・反政府活動を展開したことが元で、政治的理由で逮捕状が出されていたり、刑務所・収容所などに収監されている者を指す。「思想犯(しそうはん)」とも言う。
概要
イスラム教が国教となっている地域では、同性愛者等も含まれることがある。また、内戦など政治体制が混乱あるいは瓦解に瀕した場合には、強盗・略奪・強姦などの粗暴犯も政治犯と見なされる場合がある[1] 。虚偽の申告で有罪にされる例も多い。なお、良心的兵役拒否が合法化されていない国家(韓国、トルコ、イスラエルなど)では、兵役を拒否して刑務所に収監されている者も政治犯の一種と見なされる。特に、思想や信条・宗教的理由などを理由に拘束されている者についてはアムネスティ・インターナショナルなどにより「良心の囚人」とも呼ばれる。
ナチス政権下のドイツでは、ユダヤ人を中心に収容した強制収容所にも、政治犯のための強制収容所があった。泥炭地での長期の強制労働などにより多数の犠牲者が出ている。また、北朝鮮においては、「政治犯は3代に至るまで根絶やしにしろという金正日の指示によって、人間以下の生活を強要され、生体実験や南侵工作員の最後の実践訓練の対象などにされている」と脱北者が証言している[2]。
政治犯を処刑する場合は、政治的に意味のある日に行われることもある。例えば、リヒャルト・ゾルゲはロシア革命記念日の11月7日に死刑に処された。また、極東国際軍事裁判(東京裁判)で死刑判決を受けたA級戦犯7人は、当時の皇太子(現天皇・明仁)の誕生日である12月23日に処刑された(のちに昭和殉難者と呼ばれるようになる)。
一方で、政治犯はその時々の政体により定義されるものであるため、政治状況の変化によって、政治犯だった人間が一転して国政の中心に座するケースも少なくない。アドルフ・ヒトラー自身もかつてはミュンヘンにおいてクーデターに失敗して投獄されており、近年では韓国の金大中元大統領や南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ元大統領の例がある。独裁政権や軍事政権において政治犯とされている人権活動家や民主化活動家に対しては、国際社会から釈放を求められたり、アムネスティ・インターナショナルによる“良心の囚人”認定、亡命や活動の支援、ノーベル平和賞などの授賞が行われる事がある。
俗に政治犯は一般の囚人と一緒にすると周囲を洗脳するので、特別待遇がなされ服役生活の環境は良好であるとも言われるが、あくまで俗説であり実際の状況は定かではない。
中華人民共和国では少数民族の人権活動家はハダのように分裂主義者、スパイなどとして拘留するとともに、漢民族の民主活動家は劉暁波のように国家政権転覆扇動罪などで拘留されることとなっている。