山本義隆

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テンプレート:混同 テンプレート:存命人物の出典明記 テンプレート:Infobox scientist 山本 義隆(やまもと よしたか、1941年(昭和16年)12月12日 - )は、日本科学史家自然哲学者教育者駿台予備学校物理科講師。元・東大闘争全学共闘会議代表。妻は装幀家の山本美智代

来歴・人物

大阪府出身。大阪市立船場中学校大阪府立大手前高等学校卒業。1964年 (昭和39年) 、東京大学理学部物理学科卒業。 東京大学大学院博士課程中退。

1960年代東大ベトナム反戦会議の活動に携わり、東大全共闘議長を務める。1969年 (昭和44年) の安田講堂事件前に警察の指名手配を受け地下に潜伏するが、同年9月の日比谷での全国全共闘連合結成大会の会場で警察当局に逮捕された。日大全共闘議長の秋田明大とともに、全共闘を象徴する存在であった。なお、全共闘に関するマスコミ取材は一切受けていない。

全共闘運動については「68・69を記録する会」として一次資料収集活動をしている。その活動の中で、運動当時のビラ、立て看板などを集め、成果として『東大闘争資料集』全23巻を国会図書館におさめた。また、写真家渡辺眸の写真集『東大全共闘1968‐1969』(2007年) には手稿を寄せた。

学生時代より秀才でならし、大学では物理学科に進んで素粒子論を専攻し、ファインマン・ダイアグラムなどに明け暮れた。大学院在学中には、京都大学湯川秀樹研究室に国内留学しており、物理学者としての将来を嘱望されていたが、学生運動の後に大学を去り、大学での研究生活に戻ることはなかった。

東大闘争後は在野の研究者として研究を続ける。東京拘置所から出獄した後、1979年にエルンスト・カッシーラーの『実体概念と関数概念』を翻訳し評価を受けた。カッシーラーの著作の翻訳にはその後も長く関わることになり、『認識問題』の翻訳も手がけて1996年にみすず書房が公刊した。

哲学以外にも、物理学を中心とした科学史の分野での著作がある。力学の発展を綿密に追いかけた著作群としては、1981年の『重力と力学的世界 古典としての古典力学』、雑誌「数学セミナー」の記事から発展した『古典力学の形成 ニュートンからラグランジュへ』(1997年) 、そして『磁力と重力の発見』(2003年) がある。特に、遠隔力概念の発展史についての研究をまとめた『磁力と重力の発見』全3巻は、第1回パピルス賞、第57回毎日出版文化賞、第30回大佛次郎賞を受賞して読書界の話題となった。さて、近代科学はなぜ西洋に興ったのかという『磁力と重力の発見』の問題意識は、2007年の『一六世紀文化革命』に引き継がれた。

また、熱素説に見られる様な、発展途上の熱力学が抱えていた誤謬とその時代の論理、さらには現代の理解への変容を丹念に調べた『熱学思想の史的展開』も代表的著作である。この本は1987年に現代数学社から出版され、2008年には大幅な改訂を経て筑摩書房から再発された。

研究者のほかに予備校教師として、駿台予備学校で物理科の講師を30年以上務めている。現在はお茶の水校で浪人生のみに授業をしており、東大と京大のクラスに出講している。夏期講習では主に「東大物理」の講座を受け持つ。駿台の過去問題集「青本」では、東大の物理の入試問題を25年以上解説を書いた。現在は森下寛之講師が担当している。

駿台文庫の『物理入門』シリーズは、硬派な参考書として受験生に読まれ続けている。予備校での長い経験から教え子は多く、山形浩生も物理を習ったという。

原子力発電所には東日本大震災以前から警鐘を鳴らし続け、事故後『福島の原発事故をめぐって』を出版した。

著作

評論

物理学・科学史関係

大学受験参考書

編訳書

以下は訳者による解説付き。

論文

  • 山本義隆「GeV領域のRegge Pole現象論」 日本物理学会誌 22, 352-355 (1967).
  • 江沢洋、中村孔一、山本義隆、素粒子論研究 36-4, 456 (1967).
  • H. Ezawa, K. Nakamura, Y. Yamamoto, 「A Renormalization Scheme for the Strong-Coupling λ<math>\phi^4</math> Theory」,Nuov. Cim. 54A, 512-515 (1968).
  • H. Ezawa, K. Nakamura, Y. Yamamoto, 「Numerical Solution of an Unharmonic Oscillator Eigenvalue Problem by Milne's Method」Proc. Japan Acad. 46, 168 (1970).
  • ケプラー問題の初等的解法と離心ベクトルの保存について」 『駿台フォーラム』 4 (1986) ISSN 02895579
  • 「Retarded Gravitational Potential and the Shift in the Perihelion of Mercury (遅延重力ポテンシャルと水星の近日点移動)」 『駿台フォーラム』 13 (1995)
  • "Simon Stevin and the Cultural Revolution in the 16th Century", in a Garden of Quanta, ed. J. Arafune et.al., World Scientific (2003), pp.491-502.

脚注

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関連文献

  • 山本義隆 『東京大学新聞』1967年9月25日(第714号)
  • 最首悟 『山本義隆潜行記』(講談社、1969年)
  • 「特集 山本義隆先生『磁力と重力の発見』受賞記念」『駿台フォーラム』 22 (2004)
    • 特別講演 「近代的自然観の形成」
    • 「『磁力重力の発見』をめぐって」
  • 「幾何光学と変分法」『数理科学』2006年5月号 No.515
  • 渡辺眸、寄稿・山本義隆『東大全共闘 1968-1969』(新潮社、2007年)
  • 文庫版『力学・場の理論 ランダウ=リフシッツ物理学小教程』 解説(筑摩書房、2008年)ISBN 9784480091116
  • 「ニュートンと天体力学」『数学セミナー』2009年7月号 No.574
  • 講演録「原子・原子核・原子力」『駿台教育フォーラム』 29 (駿台教育研究所、2013年)

関連項目

外部リンク