宗教法人法

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テンプレート:Infobox 宗教法人法(しゅうきょうほうじんほう、昭和26年4月3日法律第126号)は、宗教活動をしやすくする等、信教の自由を尊重する目的で、宗教団体法人格を与えること(第4条)に関する法律。最終改正は2011年平成23年)6月24日法律第74号。法人に関する一般法である民法に対する特別法である。

概要

目的
宗教団体に法律上の能力を与えること」を目的とする。(第1条第1項) -- 即ち、この法律により宗教団体は法人格を持つことが可能となる(第4条第1項)。
憲法で保障された信教の自由ための法であり、宗教上の行為を行うことを制限するための法ではない。
定義
宗教団体の目的は、「宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成すること」である。(第2条柱書)
礼拝の施設を備える」こと。
もしくはそれらの「団体を包括する」団体。

構成

  • 第一章 総則(第1条~第11条)
  • 第二章 設立(第12条~第17条)
    • 第12条:宗教法人の設立には、目的、名称、所在地、関連組織名、代表者名とその権限、上部機関の権限、財産と財務管理等を記し所轄庁に提出する。
    • 第14条:宗教法人は1宗教団体であるか2同法に適法であるか3第12条に沿って手続きが行われているかを審査し認証される。所轄庁は3ヶ月以内に認証を決定しなければならない。所轄庁は「認証不可」の場合、決定の前に申請団体に通告しなければならない。また、所轄庁が文部科学大臣の場合には、「認証不可」の決定前に宗教法人審議会に諮問しなければならない。所轄庁は第12条以外の提出を求めてはならない。
  • 第三章 管理(第18条~第25条)
    • 第18条:役員を3名以上設置する。
    • 第22条:未成年成年被後見人禁錮以上のを受刑中または執行猶予中の者は役員になれない。
    • 第25条:毎年所有財産と財務管理等を所轄庁へ提出し、利害関係人はこれを閲覧することが出来る。
  • 第四章 規則の変更(第26条~第31条)
  • 第五章 合併(第32条~第42条)
    • 第32条:2つ以上の宗教法人は、合併して1つの宗教法人となることができる。
  • 第六章 解散(第43条~第51条)
  • 第七章 登記
    • 第一節 宗教法人の登記(第52条~第65条)
    • 第二節 礼拝用建物及び敷地の登記(第66条~第七70条)
  • 第八章 宗教法人審議会(第71条~第77条)
  • 第九章 補則(第78条~第87条)
    • 第79条:所轄庁は、公益事業以外の事業について1年以内の期間で事業停止を命ずることができる。
    • 第81条:①法令に違反し、著しく公共の福祉を害している②宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしている、または宗教団体の目的を1年以上行っていない③礼拝施設がない④代表者が1年以上いない⑤宗教法人の要件を満たさない等の場合、所轄庁・利害関係人・検察官の請求により、裁判所宗教法人に解散を命ずることができる。
    • 第83条:破産以外において、抵当等の理由で宗教法人の礼拝のための建物や敷地を差押さえることは出来ない。
    • 第86条:同法において、宗教団体が公共の福祉に反した場合に他の法令の規定を妨げるものではない。
  • 第十章 罰則(第88条~第89条)
  • 附則

経過

宗教団体法

大日本帝国憲法においては「安寧秩序を妨げず、及び臣民の義務に背かざる限るにおいて信教の自由を有す」と定められていたが、その後長らく宗教団体に関する一般法は作られなかった[1]

その間、何度も法案が提出されたものの廃案になっていたが、戦時態勢の強化の中、大日本帝国憲法発布から50年を経てついに1939年に宗教団体の法人化を認める「宗教団体法」が制定され、翌1940年4月1日から施行された。宗教団体の設立には「文部大臣又は地方長官の認可」が必要とされ、文部大臣は宗教団体に対し、監督、調査、認可の取り消しなどの権限を持つと定められていた[1]

文部省宗教局長は教会50以上、信徒数5000以上でなければ教団として認可しないことを表明した。[2]

戦後

第二次世界大戦後は、日本に進駐していたGHQによって1945年10月4日、治安維持法などと共に「宗教団体法」の廃止が命じられ、日本政府は同年12月28日、勅令をもってこれを廃止し、それまでの認可制を届出制に変え、宗教法人の設立、規則変更、解散などを自由に行なえるようにした「宗教法人令」を即日施行した[3][1][4]

この「宗教法人令」は当初から平和条約の発効により廃止されるものとされており、それに代わるものとして1951年4月3日「宗教法人法」が公布され、即日施行された。

宗教法人の乱立

新興宗教の法人化が相次いでいた1958年4月22日、「宗教法人審議会」は「宗教法人法における認証、認証の取り消し等の制度の改善方策に関する答申」と題する答申を出した[1]。その内容は宗教団体の定義を明確にすること、宗教法人法と認定する基準を設けること、公告制度、役員制度、財産処分等の手続きなどの改善、公益事業とその他の事業の明確化、宗教法人に対する調査及び報告の取り扱いの明確化などであった。

しかし、この答申は当時の宗教界の反対により、「宗教法人法」に取り入れられることはなかった[1]。その後、1958年の答申でも宗教法人法に対する認証基準が不明確であることが指摘され、1966年には所轄庁となる各都道府県に対し、所轄の宗教法人に法の趣旨を普及徹底させ、規則を遵守させるよう指導すべきとの通達が出された[1]1988年にも文化庁宗務課が宗教法人法に対する認証の際に充分な審査をすべきとの通達を出した[1]

オウム事件

1989年1995年ころ、オウム真理教による一連の凶悪事件によって、社会的問題を起こすとみられる新興宗教が宗教法人資格を得ることが問題視されるようになった。一定の要件を満たしていれば所轄庁は認証しなければならなかったことや、社会を混乱させる準備や行動をしている宗教法人を見つけ出せないことなどが問題となり、改正を求める声が高まった。

創価学会をはじめ一部の宗教団体は改正に反対したが、同法としては大きな改正がなされ、1996年9月に施行された。

問題点

  • 日本国憲法結社の自由信教の自由に考慮したため、宗教法人の「認証」に対してではなく、「認証不可」に対し厳重な手続きとなっている。
  • 宗教法人として認証された後は所管庁のチェックがない。
  • 宗教団体は宗教法人として認証されなくとも、布施などの寄付に対しては税金を課せられないので、問題があって解散を命じられた宗教団体の信者らが「任意団体」として活動を続けたとき、そこで集めた寄付に課税することができない[1]
  • 宗教法人は数々の税制上の優遇措置が与えられるが、「非課税特権」で得た利益をどんな目的に使ってもわかりにくい。そのため、形骸化したり、休眠状態にある宗教法人を買取り転売して利益を得る「宗教法人ブローカー」などにより宗教法人が営利目的や暴力団の隠れ蓑として使われたりしている[1]。アメリカやドイツでは宗教活動に実質的に関連したものだけに限り優遇措置を適用するとしており、実際に優遇する際にはその団体が政治団体化、営利団体化しているかなどを審査する[5]
  • 1996年の法改正で、宗教法人に対し、役員名簿や財産目録などの書類提出が義務付けられ、違反した場合には代表役員などに対し過料が科せられるようになった。しかし、自治体によって提出率に差があり、宗教法人の活動実態の把握が不徹底となっており、形骸化の指摘がある[6]

脚注

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 紀藤正樹 『21世紀の宗教法人法』(朝日新聞社 1995年11月30日)
  2. 徳善和義・今橋朗共著「よくか分かるキリスト教の教派」68項
  3. 第二編 戦後の教育改革と新教育制度の発展 第三章 学術・文化 第五節 宗教(「文部科学省」公式ウェブサイト)
  4. ウィリアム・ウッダード、「天皇と神道 GHQの宗教政策」サイマル出版会、1988年
  5. 第二東京弁護士会 消費者問題対策委員会(編)『論争 宗教法人法改正』 1995年9月30日 緑風出版
  6. 宗教法人:把握が不徹底 名簿未提出率、都道府県で差 毎日新聞 2012年1月30日

関連項目

外部サイト